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1編 スポーツと健康
第1部 体育・スポーツの振興
第2章 体育・スポーツの振興のための施策の展開
第5節 青少年の体育・スポーツ



1 青少年のスポーツ活動の意義と現状

 青少年のスポーツは,児童生徒の心身の健全な発達を促すとともに,生涯にわたりスポーツに親しむ能力や態度を育てる上で極めて重要なものであり,また,生涯スポーツ,競技スポーツの両面について,その基盤として重要な意義を有しているものである。

 このような青少年のスポーツは,学校体育における各種の活動を始め,スポーツ少年団等の社会体育活動においても広く行われているが,学校週5日制の実施に伴い,今後,青少年の社会体育活動の充実が特に重要となってくると考えられる。

 文部省では,平成4年2月に,中学生・高校生のスポーツ活動の現状を把握するため,前述したスポーツアンケートにおいて,一般社会人とは別に全国の中学1年生から高校3年生を対象に調査を行った(有効回答2,251)。この調査の結果から,中・高校生のスポーツ活動の現状について以下のことが明らかになった。


(1) スポーツの実施率

 この一年間に,体育の授業や必修クラブ,学校の行事以外にスポーツをどのくらい行ったかを尋ねたところ,9割程度の生徒がスポーツを行ったと回答しており,「週に3日以上」スポーツを行った生徒は全体の46.2%に及んでいる。一般社会人のスポーツの実施率が7割程度であるのと比べると,中・高校生の方がより多くスポーツを実施していることが分かる (図1-1-29)


(2) スポーツを行う理由

 この一年間にスポーツを行った生徒に,どのような理由で行ったのか尋ねたところ,「好きだから(趣味として)」と回答した生徒が65.1%ととなっており,一般社会人の場合と順位が逆転している (図1-1ー30)

1-1-29  1年間に行ったスポーツの頻度

1-1-30  スポーツを行う理由(中・高校生)


(3) スポーツに対するニーズ

 現在行っているスポーツを含めて,今後やってみたいものを尋ねたところ,スキーが54.8%と最も多く,次いで,バスケットボール,バレーボール,スケート,硬式テニス,水泳,サッカー,バドミントンの順でいずれも25%を超えており,スポーツに対するニーズの多様化がうかがわれる (図I-1-31)

 なお,この一年間に実際に行ったスポーツは,バスケットボール63.7%,バレーボール63.5%,水泳59.3%,陸上競技56.3%の順となっており, 一般社会人と比べて競技性の高いスポーツに取り組む割合が高くなっている (図1-1-32)

1-1-31  今後やってみたいスポーツの種類(中・高校生)

1-1-32  1年間に行ったスポーツの種類(中・高校生)


(4) スポーツに対する欲求

 体育の授業や必修クラブ,学校の行事以外ではスポーツを行わなかった生徒に,その理由を尋ねたところ,「特に理由はない」と回答した者が51.3%に達しており,そのほか「スポーツが好きではないから」が20.6%,「勉強が忙しくて時間がとれないから」が15.6%となっている (図1-1-33) 。また,スポーツを行っていない生徒に今後,スポーツをしたいと思うか尋ねたところ,「ぜひしたい」という生徒が20.1%,「できたらしたい」とした生徒が51.3%となっており,両者を合わせると,スポーツをしなかった生徒のうち7割程度の者が,今後はスポーツを行いたいと答えている (図1-1-34)

1-1-33  スポーツをしなかった理由(中・高校生)

1-1-34  今後のスポーツの意向(中・高校生)


(5) 「見るスポーツ」への高い関心

 スポーツ観戦の状況について尋ねたところ,「実際に見に行く」と回で聴く」と回答した者が50.9%であり,両者を合わせると9割以上の生徒がスポーツを観戦していることが分かる (図1-1-35)

 次に,観戦するスポーツについて特に関心があるものを尋ねたところ,バレーボールが29.0%,プロ野球が26.7%,高校・大学野球が18.5%,大相撲とバスケットボールが17.0%,サッカーが16.6%となっており,中・高校生のスポーツに対する興味の多様化がうかがえる (図1-1-36)

 また,オリンピック等の国際競技大会での日本選手の活躍に関心があるか尋ねたところ,「とても関心がある」と回答した者が39.5%,「やや関心がある」と回答した者が44.4%であり,両者を合わせると84.0%に及んでいる (図1-1-37)

 これらの結果から,現代の中・高校生は,自らスポーツを行う以外にも,スポーツを観戦するものとして強い関心を持っていることが分かる。

 このように中・高校生など青少年は、一般社会人よりもスポーツに親しむ機会が多く,スポーツへの関心も高くなっており,このような状況を踏まえつつ,青少年が生涯にわたりスポーツに親しむ能力や態度を身に付けるよう,学校における体育の一層の充実を図っていく必要がある。

1-1-35  スポーツの観戦状況(中・高校生)

1-1-36  観戦するスポーツの種類(中・高校生)

1-1-37  国際競技大会への関心(中・高校生)


2 青少年のスポーツの振興方策

 青少年のスポーツ活動は,現在,学校を中心に行われており,教科としての「体育」,「保健体育」のみならず,特別活動や部活動等を含めた学校教育全体の中で行われるとともに,地域社会においてはスポーツ少年団等の場を通して行われている。


(1) 教育課程の改善

 平成元年に公示された小学校,中学校及び高等学校の新しい学習指導要領では,「体育」,「保健体育」について各校種を通じて,生涯スポーツと体力の向上を重視する観点から,内容等の改善を図り,児童生徒が自ら進んで運動に親しむ態度や能力を身に付けるとともに,自発的,自主的に運動を実践できることを目指している。

 主な改訂点として,小学校では,「体育」の目標と内容を低学年(1,2年),中学年(3,4年),高学年(5,6年)別に三段階にまとめて示し,児童の一人一人の特性に応じて目標や内容を弾力的に扱い,多様な指導ができるようにした。

 中学校については,生徒の能力・適正等に応じた指導の充実を図るため選択履修の幅を拡大するとともに,運動領域の構成の改善を図った。また,我が国の文化と伝統を尊重する態度の育成を重視する観点から,格技の名称を武道に改めるとともに,武道とダンスについて男女とも履修できるようにした。さらに,第3学年の「保健体育」の授業時数については,年間105時間から140時間の間で各学校の実態に応じて弾力的に設定できることとした。

 高等学校については,中学校と同様,選択履修の拡大や運動領域構成の改善を図るとともに,男女同一の教育課程の編成を行うという観点から,履修すべき単位数の男女の差をなくすなどの改訂を行った。

 この学習指導要領は,小学校においては平成4年度から全面実施されており,中学校においては平成5年度から全面的に,また,高等学校においては平成6年度から学年進行により実施されることとなっているが,中・高等学校とも,全面実施までの間,移行措置として全部または一部を新学習指導要領によることができるとされている。

 また,新学習指導要領の実施に合わせ,平成3年に小・中学校の指導要録の改訂を行った。これは,新学習指導要領が目指す自ら学ぶ意欲や思考力,判断力,表現力などの能力の育成を重視する新しい学力観に立った教育の実践に役立つようにすること,児童生徒一人一人の可能性を積極的に評価し,豊かな自己実現に役立つようにすることなどをねらいとしている。また,新学習指導要領の趣旨を徹底するため,平成4年度においては,小学校については教育課程運営改善講座を全国3会場で,中・高等学校については教育課程講習会を平成3年度に引き続き全国5会場でそれぞれ開催した。

さらに,新学習指導要領の趣旨に沿った学習指導の展開に資するため,各都道府県等の教育委員会の指導主事や全国の小学校,中学校及び高等学校の体育担当教員を対象とした「体育」,「保健体育」の指導資料を作成した。


(2) 学校体育施設の整備

 屋外運動場,体育館,水泳プールや柔剣道場等の学校体育施設については,第2節に既に述べているところであるが,文部省においては,学校体育施設の整備を促進するため,設置者である都道府県,市町村及び学校法人に対して,体育館,水泳プール,中・高校の柔剣道場などの体育施設設置費の補助を行うなど,学校体育施設の計画的な整備に努めており,平成3年度において体育館については,小学校95%,中学校96%,高等学校97%,水泳プールについても,小学校81%,中学校70%,高等学校63%と整備が進んできているところである。平成4年度予算においては,体育施設の整備充実に対する国民の要望が高まっていることを考慮し,新たに屋内水泳プールに対する補助に要する経費を計上するなど約358億円を計上しているところである。


(3) 学校体育指導の充実

 学校における体育の充実のためには,施設の整備を進めるとともに,指導者の資質の向上や指導方法,内容の研究などの充実を図ることが必要である。

 このため文部省では,基礎体力つくりの推進のための体力つくり推進校の指定や学校における武道指導の充実のための武道指導推進校を指定質向上を図るため,学校体育実技指導者講習会,小学校教員指導者講習会,武道指導者講習会,スキー指導者講習会など各種の研修会を開催している。また,都道府県が武道指導の経験の浅い者を対象に開催する武道指導者養成事業,体育担当教員に武道の段位を取得させるための学校体育実技(武道)認定講習会事業等に対する補助を行ってきている。さらに,学校における体育実技指導等の充実を図るため,水泳指導の手引,柔道指導の手引,剣道指導の手引,相撲指導の手引,集団行動指導の手引を作成している。

 各都道府県教育委員会においても,教員の資質向上のための各種研修会,講習会等の開催や学習指導の改善充実のための指導資料の作成を行うほか,児童生徒の体力向上のための各種体育大会の開催,教材の充実,学校体育団体の育成などを行い,学校体育指導の充実に努めている。

 また,優れた指導者を確保するという観点から,昭和63年に教育職員免許法の一部改正が行われ,社会的経験を積み教員にふさわしい識見を有する者を活用し,指導の充実を図る特別免許状制度及び特別非常勤講師制度が創設され,学校体育においても,社会人の活用が可能となった。さらに,同法の改正により,教員の資質向上を図るため,大学において普通免許状の授与を受けるために修得することを要する単位数が引き上げられ,小学校については「体育」が必修となり,中学校及び高等学校については「保健体育」の専門教育科目の単位増が行われ,平成2年度大学入学者から適用された。


(4) 運動部活動等の充実

 運動部活動は,教科としての「保健体育」と並んで,学校における体育活動において重要な役割を果たしているもので,学級・学年を越えて同好の者が集まって行うものであり,個性の伸長,集団の中での役割分担・協力,共通の目標に向かっての努力など児童生徒の心身の健全な発達を図る上で積極的な意義を持つとともに,我が国のスポーツの普及・発展の上で重要な役割を担ってきた。

 運動部活動は,教育課程の基準としての学習指導要領には示されていないが,学校の管理下で計画し実施する教育活動として適切な取扱いが必要である。また,今回の学習指導要領の改訂で,中学校及び高等学校においては,部活動への参加をもってクラブ活動の一部又は全部の履修に替えることができることとなった。このため,運動部活動に対する正しい認識を深め,行き過ぎた活動にならないようにするとともに,運動部活動と体育的クラブ活動の実施の形態と指導の在り方を検討し,両者の望ましい関連を図りながら,教育効果を高めていくことが重要である。

 文部省では,昭和63年度から,運動部活動の人的・物的両面での整備を図り,適切な指導が行われるようにするため,中学校及び高等学校への運動部活動指導者派遣事業と小学校及び中学校における部室(更衣室,器具置場,ミーティング室,便所,シャワー室等)の整備事業を実施してきている。

 さらに,平成2年度からは,運動部活動指導者研修事業を実施し,経験の浅い運動部活動指導者の資質の向上を図るとともに,運動部活動研究推進校制度を創設し,運動部活動のより望ましい在り方についての実践研究を推進している。

 ところで,今日の小学生のスポーツ活動については,一部で児童の発育・発達段階を無視した技術や体力を求める練習や試合が行われ,弊害の発生している例が見受けられる。また,平成元年の保健体育審議会答申においても,小学生の早期トレーニングの弊害が生じない配慮の重要性が指摘されている。このため,平成3年度から,児童の心身の発育・発達段階にふさわしいスポーツ活動の在り方について検討するための小学生のスポーツ活動に関する調査研究会議を設置しており,小学生用トレーニング方法の開発研究,小学生用ルールの開発研究,小学生の都道府県大会開催に関する研究,小学生のスポーツ障害の実態調査等を行っている。

 また,児童生徒の参加する学校体育大会としては,現在,全国大会として,全国中学校選抜体育大会(17種目)及び全国高等学校総合体育大会(29種目)が開催されており,高等学校については,更に競技種目ごとの全国大会が行われている。

 さらに,中学生の国民体育大会への参加については,生徒の個性・能力の伸長,競技力の向上の見地から,昭和63年より3〜5年間の試行措置として,水泳,陸上,体操,フィギュアスケートの4競技に限り,3年生に限って参加を認め,その成果を見極めた上で,その後の取扱いを決める予定である。 なお,児童生徒の参加する対外運動競技に関して,文部省において「児童・生徒の運動競技の基準」を定め,全国大会,都道府県大会の地域の範囲や参加回数の基準を示すなど,その適正な実施を期している。


(5) 大学におけるスポーツ

 大学・短期大学の授業科目としての「保健体育」は,生涯スポーツの一環として学生の心身の調和のとれた発達を促し,また,健康やスポーツに対する科学的理解を深める上でその意義は大きく,大学設置基準等が大綱化・弾力化されたことを踏まえて,今後,各大学・短期大学において,その教育内容・指導方法について積極的な研究・改善が図られることが望まれる。

 また,課外のスポーツは,これまでは競技スポーツを志向する運動部が中心であったが,近年はレクリエーション志向が高まり,同好会等の普及が著しい。各大学・短期大学において,同好会等の活動が生涯スポーツの一環として適切に位置付けられるとともに,競技スポーツの一翼を担う運動部活動の一層の活性化が図られることが期待される。

 スポーツの専門教育は,保健体育教員の養成のほか,社会体育指導者養成等の上で大きな役割を果たしている。また,大学・短期大学は,我が国の国際競技力の向上やスポーツ科学研究の推進にも寄与してきた。

 スポーツ科学研究については,スポーツにかかわる心理学,生理学,医学,運動学など様々な領域にわたって研究が行われており,今後,基礎的研究とともに競技力向上などに直結した応用的研究の一層の推進が求められている。

 文部省は,大学におけるスポーツに関する教育研究の高度化を図るため,平成元年度に,「体育・スポーツ実技指導の在り方に関する調査経費」を措置し,北海道教育大学においては,冬季スポーツ競技に関し,科学的研究の推進と高度の専門能力を有する指導者の養成のための教育研究体制の在り方等について,鹿屋体育大学においては,児童生徒の発達段階,環境等に応じた体育・スポーツの実技指導やジュニアの時期からの競技力向上のための指導に関する教育研究の在り方等について,それぞれ検討を行っている。

 また,大学審議会の答申を踏まえた大学設置基準等の大綱化・弾力化に対応して,保健体育についても,その指導方法,指導内容について一層の研究・改善が求められることとなった。一方,課外のスポーツ活動は,近年のレクリエーション志向の高まりを反映して,同好会等の普及が著しく,言わば体育会系の運動部が敬遠される傾向にある。文部省では,生涯スポーツの基礎づくりと我が国の競技水準の向上の両面において大きな役割を有する大学における体育・スポーツの充実に資するため,平成4年度から「大学における体育・スポーツの在り方に関する調査研究」を開始することとしている。

 さらに,大学・短期大学が教育研究の成果を社会に開放する公開講座の中には,スポーツ関係の内容のものもあり,その講座数は,平成元年度で国公私立を合わせて178である。また,大学・短期大学の体育施設の開放も行われており,大学では,昭和62年度中に381大学で約200万人の利用者があった。スポーツ関係の公開講座や体育施設の開放は,生涯スポーツの推進に資するものであり,今後,その一層の充実・促進が期待される。


(6) スポーツ少年団

 学校外における青少年のスポーツ活動において大きな役割を果たしているものに,スポーツ少年団がある。スポーツ少年団は,全国的に普及しているスポーツクラブで,青少年のスポーツ振興及び心身の健全育成に資することを目的として設立され,小学校高学年を中心に少年団数は約3万団,団員数は約100万人となっている(平成4年3月31日現在)。

 また,(財)日本体育協会には,スポーツ少年団本部が置かれ,スポーツ少年団の指導者の養成・研修,全国スポーツ少年団の交流・交歓大会の実施などにより,スポーツ少年団の育成・指導を行っている。

 文部省では,スポーツ振興基金により,全国スポーツ少年大会等のスポーツ少年団の活動の援助を行うほか,平成4年度からは,従来のスポーツ少年団の指導者養成をより発展させた形で整備し,新たに文部大臣認定の少年スポーツ指導者として,社会体育指導者の知識・技能審査事業の認定制度に追加したところである。

 こうしたスポーツ少年団の活動は,学校週5日制の実施に伴い,今後,生涯スポーツの推進を図っていく上で一層重要な役割を担っていくことが期待されている。


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