ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
1編 スポーツと健康
第1部 体育・スポーツの振興
第2章 体育・スポーツの振興のための施策の展開
第4節 競技スポーツの振興



1 競技スポーツの現状
(1) 競技スポーツの意義

 競技スポーツは,一般に,競技水準の向上を主たる目的として行われるスポーツであり,より速く,より高く,より強く,より美しくを目指して行われるものである。オリンピック競技大会等において行われるトップレベルの選手によるスポーツ活動が,その代表的なものである。一方,競技スポーツと対比して用いられることの多い生涯スポーツは,一般に,すべての人々が,生涯にわたって,生活の中で楽しみながら行う日常的なスポーツ活動の総称であるとされている。

 競技スポーツと生涯スポーツは,スポーツの振興を図る上で,言わば車の両輪と言うべきものであって,競技スポーツの振興を図ることは,明るく活力に満ちた社会の形成に貢献するとともに,生涯スポーツの振興を図る上でも大きな影響を及ぼすものである。


(2) 我が国競技水準の現状

 オリンピック競技大会等の国際競技大会における日本選手の活躍は,国民,特に青少年のスポーツに対する興味や意欲をかきたて,我が国のスポーツの普及・振興を促進するものであり,ひいては明るく豊かで活力に満ちた社会の形成に寄与するものである。

 近年,世界の競技水準は著しく向上しており,特にアジア,アフリカ諸国などの台頭が著しい中で,我が国の競技力の水準は相対的に低下している。我が国の選手がオリンピック競技大会等の国際競技大会において優秀な成績を収めることは次第に困難になっており,特に,ソウルオリンピック競技大会(1988年),北京アジア競技大会(1990年)のころから,我が国選手の成績不振が目立つようになってきた (図1-1-21)

 このように我が国の競技力が相対的に低下してきている要因としては,1)日本選手と外国選手の体格・体力の格差,2)スポーツ科学の成果を取り入れた選手強化の面での立ち遅れ,3)選手に対するジュニア期からの一貫した指導体制の不備,4)選手及びコーチに対する支援体制の不備や選手生活を終えた後の処遇の問題などが考えられ,これらの問題に対する積極的な対応が望まれている。

1-1-21  オリンピック競技大会等におけるメダル獲得状況

 このような中,平成4年2月にフランスのアルベールビルにおいて開催された第16回オリンピック冬季競技大会で,我が国選手は,金メダル1,銀メダル2,銅メダル4の計7個のメダルを獲得した。これは,我が国の選手がこれまでにオリンピック冬季競技大会で獲得したメダル数の合計と同数であり,また,同年7月から8月にスペインのバルセロナで行われた第25回オリンピック競技大会においては,金メダル3個,銀メダル8個,銅メダル11個の計22個のメダルを獲得し,近年の我が国の競技力の低下傾向に歯止めを掛ける形となった。

 今後,我が国においては,長野オリンピック冬季競技大会(平成10年)を始め,広島アジア競技大会(平成6年),福岡ユニバーシアード大会(平成7年)などの国際競技大会が相次いで開催される予定であることもあり,これらの競技大会に向けて,我が国競技力の一層の向上が期待されている。


(3) 競技スポーツに対する国民の意識

 スポーツアンケートによると,オリンピック競技大会等の国際競技大会における日本選手の活躍について,86.5%の者が関心を示している (図1-1-22)

 また,日本選手がこうした国際競技大会で優秀な成績を収めることが一般国民のスポーツ活動の振興に良い影響を与えているかどうかについて,肯定する者が84.7%に達している (図1-1-23)

 さらに,日本選手が,国際競技大会で活躍するため,社会的・公的援助を行うことについては,「積極的に援助すべきだ」とする者が44.8%,「ある程度は援助すべきだ」とする者が43.7%となっており,全体で9割程度が援助の必要性を認めている (図1-1-24)

1-1-22  国際競技大会への関心(一般社会人)

1-1-23  国際競技大会のスポーツ活動振興への影響(一般社会人)

 一方,総理府の「体力・スポーツに関する世論調査」(平成3年10月)によると,公的援助をすべきだと答えた者のうち,具体的な内容として「選手の練習や海外遠征などに経済的な援助を行う」を挙げる者が6割程度に達しているのを始め,国による設備の充実した練習施設の設置などの必要性を指摘している者が多い (図1-1-25) 。また,我が国においては,今後,長野オリンピック冬季競技大会を始め,国際競技大会が相次いで開催される予定であるが,このような国際競技大会を我が国で開催することについては,良いことであると評価する者が9割程度に達しており,世界のトップレベルの選手の技術やスポーツを通じた国際交流に関心が高いことがうかがえる結果になっている。

図I-1-24  国際競技大会に対する社会的・公的援助について

1-1-25  公的な援助として必要なこと


2 競技スポーツの振興方策
(1) 選手強化事業の充実

 我が国スポーツの振興については,(財)日本体育協会が主として国民スポーツの振興を,(財)日本オリンピック委員会(JOC)が,主として国際競技力の向上をそれぞれ担当している。文部省では,この両団体及び各中央競技団体が行う選手強化事業を始めとする競技スポーツの振興のための事業の充実を図るため,両団体に対して国庫補助を行っている。

 まず,(財)日本オリンピック委員会の行う,1)強化合宿などの選手強化事業,2)国際交流事業(平成4年度は,第25回オリンピック競技大会(スペイン・バルセロナ),1993年ユニバーシアード冬季大会(ポーランド・ザコパネ)への選手団派遣に対する補助),3)スポーツ指導者在外研修事業などの事業に対し国庫補助を行っている。

 一方,(財)日本体育協会が行う,1)競技力向上のための指導者を含む社会体育指導者の養成,2)ジュニア育成事業,3)スポーツ医・科学調査研究,4)アジア地区ジュニア交流事業,5)海外スポーツ技術協力事業(ODA),6)海外青少年スポーツ振興事業(ODA)などの事業に対して国庫補助を行っている。

 また,平成2年12月に創設されたスポーツ振興基金においても,各競技団体等やトップレベルの選手・指導者個人に対し,競技力の向上のための援助を行っている。同基金では,その運用益により,スポーツ団体が行う選手強化活動や国際的・全国的な規模の競技会等の開催,選手・指導者のスポーツ活動等に対する助成を行っており,国による援助と合わせて,我が国スポーツの振興のため大きな役割を果たしている (図1-1-12 ,表1-1-2)

 今後,(財)日本オリンピック委員会及び(財)日本体育協会が,我が国のスポーツの振興・普及に向け一層の連携・協力を図り,それぞれの責務を十分に果していくことが強く望まれており,文部省としても,適切な援助,指導・助言を行っていくこととしている。


(2) 都道府県における競技力向上施策に対する援助

 競技力の向上を図るためには,素質のある選手を早期に発掘し,一貫した中・長期的な視点に立った指導・養成を行うことが必要である。このため,各都道府県は,都道府県体育協会等の協力を得て,中・高校生を対象とする強化合宿やコーチの配置を行っているが,文部省は,これらの競技力向上ジュニア対策事業に対し補助を行っている。

 また,オリンピック競技大会において第3位以内に入賞した者や,国際競技大会において世界記録を更新した者などの優れた技術や貴重な体験を,都道府県における選手強化事業に生かすという観点から,これらの我が国のスポーツの向上と振興に特に顕著な功績のあった者をスポーツ功労特別指導委員として委嘱し,都道府県の主催するスポーツ事業における指導等に派遣している(平成4年度予定14競技24名)。


(3) 文部省スポーツアドバイザーの設置及び指導者の資質向上

 競技力向上施策の推進に当たっては,選手を始めとする現場の意見を反映させることが極めて重要である。このため,平成元年度がら,文部省スポーツアドバイザー委嘱事業を実施している。

 この事業は,現役時代に自らが選手としてオリンピック競技大会や世界選手権大会等で優秀な成績を収めるなど競技力の向上に貢献した者で,引退後は後進の指導に意欲的に取り組んでいる新進の指導者を,文部省スポーツアドバイザーとして委嘱し,定期的に各自の貴重な体験に基づく意見を聴き,その意見を我が国の国際競技力の向上施策の推進に反映していくものである。平成4年度現在,8名のアドバイザーが委嘱されており,貴重な意見が寄せられている。

 一方,競技力の向上を図るためには,資質の高い指導者の養成・確保も重要な課題である。文部省が昭和62年1月に創設した社会体育指導者の知識・技能審査事業の認定制度においても,競技選手の競技力の向上を図るための指導者(競技力向上指導者)の養成をその一分野としている。平成4年4月現在,陸上競技など27競技において,競技団体等が実施している競技力向上指導者(上級・中級・初級)の養成事業を文部省が認定している。

 また,文部省は,コーチが安んじて選手指導に当たることができるように,(財)日本オリンピック委員会や各競技団体が行う専任コーチの設置,講習会の開催等のコーチカ強化事業に対し補助を行っており,スポーツ振興基金においても,選手・指導者のスポーツ活動等に対する助成を行っている。

 さらに,選手の育成・強化に当たるコーチ,スポーツ医・科学の研究者及び都道府県の行政担当者等が,それぞれの分野における諸問題について研究協議や情報交換を行うとともに,相互の理解を深め,有機的な連携に基づく強化指導体制の確立を目指すため,平成2年度から,これらのコーチ,研究者等の参加を求め,スポーツコーチ国内サミットを開催している。


(4) スポーツ医・科学の研究体制と強化拠点となる施設の整備

 近年の世界の競技水準の著しい向上に対抗するためには,科学的・体系的・組織的な選手強化が必要であり,前述の総理府の1体力・スポーツに関する世論調査」の結果を見ても,日本選手が国際競技大会で活躍するための公的な援助として,「国による設備の充実した練習施設の設置が必要である」と考えている者が比較的多くなっている。

 このような観点を踏まえ,臨時教育審議会,スポーツの振興に関する懇談会(内閣総理大臣の懇談会)等においても,我が国におけるスポーツ医・科学の研究の遅れを指摘した上で,その推進により競技力の向上を図るため,スポーツ医・科学研究所とナショナルトレーニングセンターの設置が急務であると提言している。このような提言等を踏まえ,文部省では,現在,「国立スポーツ科学センター」(仮称)を設置するための準備を進めている (図1-1-26) 。このセンターは,我が国の競技力向上を図るため,スポーツ科学の研究や科学的トレーニングの場の提供等を行うことを目的とする施設であり,特殊法人日本体育・学校健康センターの機関として設置される予定である。

 なお,運動場,コート,体育館,水泳プールなどの各種のスポーツ施設及び宿泊施設を配置した各競技用のトレーニング施設を備えた総合的なナショナルトレーニングセンターの構想については,長期的な目標として検討を進めることとしている。

1-1-26


(5) 国民体育大会の開催

 国民体育大会(国体)は,各都道府県対抗による我が国の総合的な競技大会であり,昭和21年に開始されて以来,毎年開催されており,「国民スポーツの祭典」として,我が国におけるスポーツの振興に大きな役割を果たしている。

 国民体育大会は,昭和30年の第10回大会から,(財)日本体育協会,国及び開催地の都道府県の三者によって開催される現在の形となっており,62年の第42回大会(冬季=長野,夏・秋季=沖縄)をもって全国都道府県を一巡し,翌年の第43回大会(冬季=群馬・岩手,夏・秋季=京都)から二巡目に入った。

 二巡目以降の国民体育大会の在り方については,(財)日本体育協会を中心に検討され,広く国民各層を対象とした国民体育大会を目指す方針が打ち出され,準備・運営の簡素・合理化,成年二部制の創設,中学生の参加,総合成績採点方法の簡略化等の変更が行われた。

 文部省としては,更に国民体育大会がその目的を達し,適切な運営が行われるよう,平成2年6月に(財)日本体育協会及び関係都道府県の代表と協議する場を設け,相互の連絡を一層密にしている。


3 プロスポーツの振興
(1) プロスポーツの意義

 プロ野球,大相撲,プロゴルフ等のプロスポーツは,「見るスポーツ」として国民各層に広く支持されており,特に,青少年に対してスポーツへの興味,関心を深め,スポーツの裾野を広げる役割を果たしている。また,プロスポーツ選手の高度な技術は,競技力の向上にも貢献するなど,プロスポーツの持つ社会的意義は極めて大きい。

 スポーツアンケートによると,プロスポーツに関心がある者は,72.9%となっており,一般国民の高い関心がうかがわれる (図1-1-27) 。また,プロスポーツがマスコミの話題になったり,プロ選手が活躍することが,一般国民のスポーツ活動の振興に与える効果については,「スポーツに親しみ,スポーツ活動に参加するきっかけ」となっていると回答した者が29.6%,「国民全体のスポーツ技能の水準を上げている」効果を認めている (図1-1-28)

1-1-27  プロスポーツへの関心(一般社会人)

1-1-28  プロスポーツのスポーツ活動振興への効果(一般社会人)


(2) スポーツをめぐる状況の変容とプロスポーツ

 近年,オリンピック競技大会等の国際競技大会においても,一部の競技でプロスポーツ選手の参加が認められるようになった。国際オリンピック委員会(IOC)の憲章において,オリンピック競技大会への参加資格については,プロ選手の参加を禁止する規定が削除され,各競技を統括する国際競技連盟(IF)の判断によりプロ選手もオリンピック競技大会に参加できるようになった。

 このため,平成4年にスペインのバルセロナで開催された第25回オリンピック競技大会では,サッカー,バスケットボール及びテニスにおいてプロ選手の参加が認められていたほが,冬季競技でも,アイスホッケーで参加が認められている。

 このように,スポーツをめぐる状況は大きく変容してきており,プロスポーツとアマチュアスポーツの連携,協力を推進する必要性が高まっている。


(3) プロスポーツの振興方策

 平成元年11月の保健体育審議会答申において,プロスポーツの健全な発展の助長のため,1)プロスポーツ全体の健全な発展に資するための組織の在り方についての検討,2)プロスポーツに対する社会的評価の一層の向上を図る方策の推進,3)プロスポーツの指導者とアマチュアスポーツの指導者,スポーツ科学研究者等の情報交換,研究協議等を通じた一体的な選手強化を進める必要があると指摘されている。

文部省としても,この答申を踏まえ,プロスポーツの健全な発展を支援するための施策に積極的に取り組んでいる。

 第一に,平成2年12月,プロスポーツの統轄団体として,(財)日本プロスポーツ協会の設立許可を行った。同協会には,各競技ごとのプロスポーツ関係団体が加盟しており,これらの加盟団体相互の連携・協力を図り,プロスポーツ全体の発展を図ることにより,我が国のスポーツの発展を目指すことを目的とし,諸事業を行っている。

 表彰制度をプロスポーツにも広げ,平成2年度から,プロスポーツの発展に顕著な功績のあった者をスポーツ功労者として,文部大臣が表彰を行っている。平成4年1月には,プロスポーツ関係者10名に対して表彰を行っている。

 また,平成3年度から,プロゴルフのトーナメントに対して,文部省が後援するとともに,優勝者に対し文部大臣杯の授与などを行っている。

 さらに,今後,平成5年には,プロサッカーリーグが発足する予定である。プロサッカーリーグでは,プロ化による競技水準の向上とともに,西欧諸国のような地域クラブチーム組織を育成し,地域レベルからプロまで幅広くサッカーの普及・振興を図ることを目的としている。文部省は,平成3年11月,プロサッカーリーグの運営主体を社団法人として国民の間に定着するよう,必要な指導・助言を行っている。

 文部省としては,このようにスポーツ全体の振興を図る上で意義の大きいプロスポーツについて,今後とも,その健全な発展が図られるよう支援していくこととしている。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ