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2部   文教施策の動向と展開
第3章  初等中等教育の改善・充実
第5節  高等学校教育の改革
1  高等学校教育の改革の動向



(1) 高等学校教育の改革の背景

高等学校における教育は,昭和23年の新制度発足以降,教育の機会均等の理念や国民の強い熱意を背景として,高度成長期を通じ急速に拡大を続け,進学率も制度発足当初40%台であったものが,昭和30年代には50%,40年代には70%を突破し,50年代以降は90%台で推移している。

高等学校教育の急速な量的拡大とともに,高等学校に在学する生徒の能力・適性等の多様化は極めて著しいものとなっている。このような状況を踏まえて,生徒の多様なニーズに適切に対応できるよう,国においては教育課程の基準等を適時弾力化するなど,種々の措置を講じてきている。

しかしながら,個々の学校で実際に行われている教育には,なお生徒の選択の余地の少ない画―的な運用が少なからずみられるのが現状である。今後の高等学校教育の課題は,このような現状を改め,個々の生徒の能力・適性,進路等に応じた多様な教育の機会を確保することにある。

現在,中央教育審議会においても,このような観点から後期中等教育の改革方策について検討が進められており,その結果をも踏まえ,今後とも適切に施策を進めていく必要がある。


(2) 高等学校教育の多様化,弾力化のための施策

高等学校教育の多様化,弾力化のため,文部省では,高等学校における教育内容と制度の両面から,種々の改革のための施策を講じてきているが,最近講じた主な施策を挙げれば,以下のとおりである。


1) 高等学校における教育課程の基準の多様化・弾力化

平成元年3月に告示された新高等学校学習指導要領においては,生徒の能力,適性等に応じた多様な教育を行うことを―層可能にするとの観点に立って,教科・科目開設の弾力化や生徒の選択の機会の拡大など,必要な改善を行った。

例えば,多様な科目を設けて生徒が自由に選択履修することができるよう配慮することとしたこと,普通科や普通教科においても学習指導要領に示す以外の教科や科目を設置者の判断により設けることができるようにしたこと,必修教科について複数の科目の中から選択できるいわゆる選択必修制を拡大したこと,各学年の課程の修了の認定については,単位制が併用されていることを踏まえ弾力的に行うよう配慮することとしたことなど,教育課程の基準の弾力化の観点からの改善を行った。新学習指導要領については,平成6年度からの全面実施に向けて,平成2年度からは移行措置を実施している。


2) 高等学校に関する制度の多様化,弾力化

制度面における多様化・弾力化のために最近講じた施策としては,単位制高等学校制度の創設や定時制・通信制課程の修業年限の弾力化等が挙げられる。

単位制高等学校は,臨時教育審議会の答申を受け,生涯学習の観点から,誰でもいつでも必要に応じて高等学校教育が受けられるよう,定時制・通信制課程の特別の形態のものとして,昭和63年度から発足した新しいタイプの高等学校である。単位制高等学校については,学年制の枠をはずすとともに,単位の累積加算による全課程修了の認定,設置者の判断による多様な入学者選抜,学期ごとの入学・卒業の認定,多様な科目の開設,昼夜開講制や土日コースの実施,定時制課程との併修,科目履修生の受入れなど,弾力的な学習が可能となるよう種々工夫がこらされており,学習歴や生活環境などが多様な生徒に対し,広く高等学校教育の機会を確保し得る点で,今後更に大きな役割を果たすものと期待される。

高等学校の定時制・通信制課程については,生徒の勤務形態の多様化や技能連携制度の定着など履修形態の弾力化が進んでいることを踏まえ,昭和63年,学校教育法を改正して修業年限を弾力化し「4年以上」から「3年以上」に改めた。そのほかにも,臨時教育審議会答申において,後期中等教育の活性化のため高等教育への多様な道が開かれるべきであるなどの提言を受けたことを踏まえ,昭和60年,―定要件を備えた修業年限3年以上の高等専修学校卒業者に対し大学入学資格を付与した。なお,臨時教育審議会答申で提言された六年制中等学校については,文部省内に設けられた「中等教育改革の推進に関する調査研究協力者会議」から昭和63年に報告が出されたが,なお検討すべき課題が指摘されており,更に文部省内において検討することとしている。


3) 高校生留学の制度の創設,帰国子女の入学・編入学機会の拡大

国際化の進展に対応するという観点からも,高等学校教育に関する制度の多様化,弾力化を行ってきている。

一つは,近年の国際交流の活発化に伴い,高校生レベルにおいても外国の高等学校での学習を希望する者が増加しているため,昭和63年,学校教育法施行規則を改正し,高等学校における留学の制度(休学又は退学することなく外国の高等学校において教育を受け,国内の高等学校の単位として修得できる制度)を創設した。なお,このことに関連し,高等学校における留学等の円滑な実施を図るため,平成元年8月に文部省に協力者会議が設けられ,平成2年6月に報告が出された。

また,帰国子女の増加に対応し,昭和63年,学校教育法施行規則を改正し,4月以外の時期にも我が国の高等学校への入学を許可することや各学年を通じ,随時,編入学を行うことを可能とするなど,帰国後の生徒に対する高等学校への入学,編入学機会の拡大を図る措置を講じた。


(3) 高等学校教育の改革の実態

各都道府県においては,生徒の減少期を迎え,今後の高等学校教育の整備についての計画などを策定しているところも多い。そのようなビジョンの中で,以上のような弾力化された制度を活用し,各高等学校において特色ある教育活動を展開していこうとする取組が行われるようになってきている。

文部省が全国のすべての全日制公立高等学校について行った昭和63年度における教育課程編成状況調査の結果においては,週当たり授業時数や卒業までに履修・修得させる単位数,自由選択単位数などの点において,全体の平均としては,必ずしも現行学習指導要領における高等学校教育の多様化を図るという趣旨が十分生かされていない面もみられた。

しかし,個々の学校をみた場合には,選択履修の拡大を図っている学校や選択科目に特色をもつ学校,国際化や情報化,芸術や体育の分野で特色ある教育課程を編成している学校などが多数見られるようになってきている。

また,これらの取組を―層おし進めた学校として,多様化・弾力化された制度を最大限に利用することにより,生徒の多様なニーズにこたえることを目的とする新しいタイプの高等学校も設置されてきており,高い評価を得ている。その代表的な例を挙げると, 2-3-3 のとおりである。

これらの高等学校には,前述の単位制高等学校のほか,国際化や情報化への積極的な対応を図っている高等学校や,大規模校の長所を生かして多様な科目を用意したり,学科間,学校間の連携,コース制の導入等により幅広い選択を可能としている高等学校など様々なタイプのものがある。

このうち,単位制高等学校は,平成2年度において,石川県立金沢中央高校を始め,岩手,宮城,埼玉,長野,愛知,鳥取,宮崎,沖縄の合わせて9県において13校(公立)設置されており,今後の設置が検討されているところもある。新しいタイプの高等学校は,今後の高等学校教育の改革に向けての積極的な取組を促すとともに,各学校がその個性や特色を発揮し,活性化を図っていく上で大きな意義を有する。

そのほか,定時制・通信制課程の修業年限の弾力化を受け,平成2年度においては,3年制の課程を置く定時制課程が31校,通信制課程が25校となっている。また,高等専修学校卒業者に大学入学資格を付与する措置を講じたことにより,大学・短期大学に入学した高等専修学校卒業者は,平成2年4月には637人に上っている。

また,国際化への対応の面では,文部省が行った昭和63年度高等学校における国際交流等の状況調査の結果によると,昭和63年度に学年をまたがって留学した者は3,297人となっているが,このうち高等学校における留学の制度を利用し,退学や休学をすることなく留学した者は1,353人となっており,また,帰国後もとの学年に戻らず進級した者は1,216人となっている。

このように,高等学校教育の多様化・弾力化のための措置を積極的に活用し,生徒の多様なニーズに応じた魅力ある高等学校教育の機会を提供しようとする取組が各地域・学校において進められてきている。文部省としては,このような取組が―層展開されるよう,今後とも様々な奨励策を検討し,施策に反映させていくこととしている。

2-3-3  新しいタイプの高等学校の例


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