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1部   高等教育の課題と展望
第4章  諸外国の高等教育
第2節  アメリカ合衆国
4  学生生活


少なくとも学部段階までは,全寮制の学寮生活を送るのを伝統としているアメリカのキャンパスライフは,1960年代の大学紛争以後,急速な変化を遂げた。最も顕著でかつ典型的な変化は,大学当局が学生個々人の学生生活を「親に代わって」監督するやり方が廃れたことである。

「親代わり」政策の後退は,学生集団の自治機能の尊重という意味で,学生参加の拡大を伴った。しかしながら,若者を含めアメリカの社会全体に大規模な価値観の変動がもたらされた1970年代には,学生の共同体構成員としての意識の衰えが目立ち,新たな問題点として憂慮されるようになった。アメリカ教育審議会とカリフォルニア大学の高等教育調査研究所が毎年実施している大学生の意識調査の結果は,この期間に生じた大学新入生の意識の変化を浮彫りにしている。最も注目されるのは,学生が物質主義的傾向を強めたこと,反面,社会的関心や人生観を深めるあるいは教養を高めるなどについての関心は低下した点である。

同審議会は,1990年の初めに,「親代わり政策」に替わる学園生活の新しい価値基準がいまだ形成されていない現状を批判し,活力ある学習共同体としての学園の再生に向けて,公正,規律,誠実,相互援助,公共奉仕等の気風を大学教育の目的性とともに確立するよう勧告しな。しかし他方,アメリカの学生が勉学に集中する伝統を堅持しており,総体として大学教育の質は他国に比べて遜色のない点にも言及している。

学部学生に対する財政的補助事業(奨学金)は連邦及び州政府が実施するもののほかに,大学独自のものもあり,比較的充実している。

学部在学者は,1986年現在約1,121万人であるが,上記のアメリカ教育審議会の報告によると,そのうち何らかの奨学金を受給している者の割合は45.5%で,連邦奨学金の受給者は34.9%である。連邦奨学金は,大別すると給与,貸与(ローン)及び勤労修学(在籍する大学や公共事業体等での労働に対して支払われる)の3種類がある。フルタイム学生の受給者について,1986年度における連邦奨学金の一人当たり年間受給額の平均を種類別に比較すると,給与は1,598ドル(約29万円),貸与は2,425ドル(約44万円),勤労修学は1,002ドル(約18万円)である。

連邦政府は戦後,大学生に対する奨学金事業を種類及び予算額について拡充する政策をとってきた。しかし,1980年代に入ってからは財政赤字や貸与奨学金の返還率の悪化等の理由もあって,学生及びその家庭の自助努力を求める一方,奨学金予算の大幅削減を提案するようになった。


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