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1部   高等教育の課題と展望
第2章  高等教育の現状と課題
第5節  私立学校の現状と振興助成
5  私学振興助成の現状と課題



(1) 私学助成
1) 私学助成の現状
経常費に対する補助

私立の大学,短期大学,高等専門学校が我が国の高等教育において果たしている役割の重要性を踏まえ,国としては,私立大学等の教育研究のための経常的経費(教員・職員の人件費,学生の教育,教員の研究に必要な物件費等)について,日本私学振興財団を通じて学校法人に補助している。

経常費の配分に当たっては,「―般補助」と「特別補助」に区分し,合計額を補助金額としている。

「―般補助」は,教職員数,学生数を基に補助単価を乗じた上,教育研究条件の整備状況に応じた傾斜配分を行って,補助金額を算出している。

傾斜配分は,1)学生定員の超過や欠員が少ない場合(A配点),2)専任教員一人当たりの学生数が少ない場合(B配点),3)学生納付金(授業料など)収入を教育研究経費(学生の教育,教員の研究のための経費)支出等に還元している比率が高い場合(C配点)にそれぞれ増額配分を行うものである(最高は3割増,最低は7割減としている)。

「特別補助」は,特色のある教育研究(大学院教育,研究所における研究,留学生受入れなどの国際交流,地方における高等教育機関の整備など)に要する経常的経費について,補助金額を算出し,―般補助に上乗せして補助している。

文部省としては,近年における国の厳しい財政事情の下ではあるが,私立大学等経常費補助の確保・充実に努めてきており,平成2年度においては前年度の伸びを上回る額を確保したところであり,年度に比べ34億円増の2,520億5,000万円を措置している。特に,その中でも,特別補助の充実を年々図ってきており,平成2年度においては,私立大学等経常費補助金に占める特別補助の割合は10.4%に達している (表1-2-33)


教育研究装置整備費等に対する補助

私立大学等の学術研究及び情報処理教育等の振興を図り,高等教育の活性化に資するため,国は,私立の大学,大学院の大型の「研究装置」(4,000万円以上)及び私立の大学・短期大学,高等専門学校,専修学校(専門課程)の大型の「教育装置」(大学は4,000万円以上,短期大学・高等専門学校は3,000万円以上,専修学校は2,000万円以上)の整備に必要な経費について昭和58年度から補助している。

この「私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費補助金」は,「適切な教育研究プロジェクトについての助成を重視すべき」旨の臨時行政調査会の提言等を踏まえ,昭和58年度に創設されたもので,近年の厳しい財政事情にもかかわらず,その充実を図ってきている。平成2年度においては,引き続き,社会的要請の高い特色ある研究のための「大学院最先端装置」や「情報処理教育装置」等の整備を図るため,80億5,000万円を措置している。補助率は,2分の1である。

また,私立大学における学術研究等を促進するため,「私立大学の研究設備に対する国の補助に関する法律」(昭和32年施行)に基づき,「私立大学研究設備整備費等補助金」により学術の基礎的な研究に必要な機械・器具である「研究設備」(500万円以上4,000万円未満)について昭和28年度から補助しており,また,昭和49年度からは,「情報処理関係設備」の整備に必要な経費についても補助しており,平成2年度においては,双方合わせて17億5,336万円を措置している。補助率は,研究設備については3分の2,情報処理関係設備については2分の1となっている (図1-2-43)

1-2-42  私立大学等の経常的経費と補助金額の推移

1-2-33  私立大学等経常費補助金に占める特別補助の割合


2) 私学助成の課題

私立大学等に経常費補助金が交付されるようになってから20年が経過したが,その結果,教員組織の充実や定員超過率の改善等による専任教員一人当たりの学生数の減少,学生一人当たり経費の増加,また,授業料等学生納付金の負担面における公私間格差の縮小などの教育研究条件の改善,そして,学校法人の経営の安定が図られてきたこと等の成果が上がっている。

経常費補助金の額は,昭和57年度までは順調に増加し,私立大学等の経常的経費に占める補助金の額の割合も,昭和55年度には29.5%にまで達した。ところが,その後,臨時行政調査会の答申において,私学助成については,当面総額を抑制し,適切な教育・研究プロジェクトについての助成の重視などの指摘がなされたこと,また,国の厳しい財政事情,そして,一部の私立大学等の不祥事等を背景に,補助金の総額が抑制されたことから,補助割合は低下しており,平成元年度には15.0%となっている。今後とも,補助金の総額の確保に努めていくことが肝要である。

しかしながら,その一方で,授業料等の学生納付金収入が十分に教育研究経費に還元されていない私立大学等や,経営状態が良い私立大学等にまで補助金を交付する必要があるのかという指摘などがなされている。そこで,私立大学等経常費補助金の配分に当たっては,昭和57年度以降,臨時行政調査会及び臨時教育審議会の答申の趣旨等も踏まえ,補助金の効率的運用等の観点から,配分方法の改善を逐次行い,私立大学等が自主的に教育研究条件を高めるよう誘導している。具体的には,一般補助については,前述した教育研究条件の整備状況の良い私立大学等には補助金が手厚く交付される傾斜配分の措置を強化したり,補助金総額に占める特別補助の割合を逐年高めるなどしている。特に,平成元年度においては,学校法人の経営努力との関連性も考慮しながら,経営状態の良い大学,教員給与の著しく高い大学には補助金が減額される傾斜配分の措置を強化するなど,配分方法の改善を図ったところであ一る。今後とも,配分方法の見直しを適切に行っていく必要がある。また,私学においても,社会的な批判を受けることのないよう,適切に対応していく努力が求められているところである。この点については,私学において,昨年,その社会的責務の重要性から,経営に関する倫理綱領をまとめるなど,自主的な取組が進められている。

なお,昭和58年度から,管理運営等が著しく適正を欠いている私立大学等で補助の目的を有効に達成することが困難であると認められるものについては,原則として5年間補助金を交付しない,いわゆる制裁措置を設け,私立大学等の健全な発達を促している。これまで5法人が適用を受けたが,その後の改善状況により,平成元年度までに4法人が補助金の復活を受けている。

今後,私学助成の中長期的な課題としては,教育研究の高度化,活性化,多様化等を奨励するための方策をいかに推進していくか,また,平成4年度以降の18歳人口の急減期に向けて,特に地方の高等教育機関をどのように振興していくかなどが挙げられる。

1-2-43  補助金額の推移


(2) 私立大学等に対する融資
1) 融資事業の現状

私立学校の振興のための公的な融資制度は,戦後,戦災復旧などの資金需要に応ずる目的で,私立学校振興会(昭和27年度設立)によって開始されたが,その後,日本私学振興財団(昭和45年設立。以下「財団」という。)に引き継がれ現在に至っている。財団の融資事業は,長期低利であり,私立大字等の安定的な資金として活用されてきている。毎年度の融資額は,約600億円,融資対象は,大学から幼稚園までの私立学校(専修学校,各種学校を含む。)が行う校地の取得,校舎の新増設や教育研究用施設設備の整備,災害復旧や公害対策のための施設設備の整備事業等である。貸付基準金利は年7.9%(固定金利。平成2年10月現在),貸付期間(基準)は20年であり,融資のための財源は,財政投融資資金,政府出資金(財団の資本金として国が出資したもの。平成元年度末393億円。)などである。

財団の融資残高は平成元年度末で6,406億円であり,このうち大学法人は4,127億円(297法人で全大学法人数の85.8%),短期大学法人は763億円(195法人で全短期大学法人数の72.8%)となっている。


2) 融資事業の課題

近年の超低金利状況を背景にした繰上げ償還(過去の高金利時代の融資金を期限前に繰り上げて償還すること。昭和60年度から平成元年度までの総額723億円。)の増大は,財団の事業運営を圧迫する要因の一つともなった。

現在,金利は再び上昇基調にあるため,繰上げ償還自体は漸減するものと見込まれるが,財団の長期低利の安定した資金の積極的な活用が期待されているところである。

また,今後,私立大学等が18歳人口の急減期を迎えるに当たり,進学者数を確保していくためにも,生涯学習,国際化,情報化等国民の多様なニ-ズに積極的に対応しつつ一層特色ある教育研究を展開していくことが期待されており,そのための新たな施設設備の整備等は不可欠なものと考えられる。

財団としては,こうした新たな資金需要を開拓し,融資業務の適切な対応を進めるとともに,財団の融資制度の特質について私立大学等に対する趣旨の徹底を図り,私学振興の一環としでの融資事業を整備・拡充していく必要がある。


(3) 税制上の優遇措置
1) 現状

私立学校については,学校教育を行うという公共性を考慮して,種々の税制上の優遇措置が講じられている。現在,学校法人は,校舎や体育館などの教育用財産について固定資産税などが非課税とされているほか,収益事業を行う場合を除いては,法人税,事業税等において非課税とされており,収益事業による所得についても一般の法人に比べ,軽減した税率が適用されている。また,収益を学校法人会計に繰り入れる場合には,収益の50%までを損金算入扱いとすることが認められている。

また,学校法人に贈与,寄附を行った者についても,個人の場合,法人の場合それぞれについて非課税扱い,あるいは一定割合(額)の所得控除や損金算入等を認めることにより,納付税額の減免措置が講じられている。なお,このうち,特に法人が寄附する場合には,日本私学振興財団を通じた受配者指定寄附(学校法人の設置する学校の教育に必要な費用,基金等に充てるための寄附金で,受配者を指定して日本私学振興財団に対して寄附することができるもの)のように,大蔵省の指定した要件を満たすことにより,寄附金の全額を損金算入することが可能となっている。


2) 課題

私立学校の財源の主なものは,学生生徒納付金,補助金,資産運用収入,事業収入,寄附金,借入金等であるが,米国の私立大学等に比べ学生生徒納付金に依存する割合が高い実情にある。

近年における大学法人及び短期大学法人の一般収入に占める寄附金収入の割合は,おおよそ3%にとどまっている (表1-2-34)

学校法人における寄附金の受入れについては,従来から,1)民間の篤志家等が随時自発的な寄附が行えるよう,寄附金の募集期間の弾力化や寄附手続を簡素化すべきではないか,2)寄附者名等を冠した施設の建設や講座の開設等のための寄附も積極的に奨励すべきではないか,3)大学等の新増設のための寄附についても簡素な手続で税制上の優遇が受けられるようにすべきではないか等の指摘がなされている。

このような現状を踏まえ,臨時教育審議会においても寄附金受入れ促進のための諸条件の改善が提言されており,国としても,1)全額損金算入の扱いを受ける寄附対象の拡大,2)日本私学振興財団を通じた受配者指定寄附制度の手続の簡素化,要件の緩和,3)―定の税制優遇が受けられる特定公益増進法人として所轄庁が学校法人に交付する証明書の有効期間を2年から5年に延長する(特定公益増進法人の証明書の有効期間は原則2年間)などの措置を講じたところである。各私立学校においても,これらの制度を積極的に活用する取組が要請されている。

私立大学が,個性豊かな教育研究を推進し,現下の厳しい財政事情はよる私学助成の下で学生・生徒の負担を極力抑制しつつ私学の健全な経営基盤を維持確立するためには,上記のような寄附金の積極的受入れの促進はもとより,今後とも,保有資産の効率的運用,健全な収益事業からの事業収益の拡充等の経営努力が不可欠であり,そのためには,私立学校の自主的な努力を税制面から引き続き援助することが重要であると考える。

1-2-34  大学・短期大学法人の寄附金収入


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