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1部   高等教育の課題と展望
第2章  高等教育の現状と課題
第4節  学生生活
2  学生生活に対する指導と援助



(1) 厚生補導の充実

大学においては,学生の人間形成を図るため,正課の教育における指導のみならず,正課外の諸活動についても様々な形で援助・助言・指導を行っている。これは,戦後,新制大学の発足に伴い,アメリカの大学で行われていた学生に対するサービス(StudentPer「sonnelServices)の考え方が導入されたものである。この学生サービスは,「厚生(Wel‐fare)・・・物的・間接的な援助」と「補導(Guidance)・・・・人的・直接的指導」の二つの面から成っており,このため我が国では,これを「厚生補導」と称している。

厚生補導については,既に昭和33年の学徒厚生審議会の答申や昭和38年の中央教育審議会の答申においてその重要性が指摘されているところであるが,近年,高等教育の量的拡大に伴い学生数の増加とともに,能力・適性・興味・関心の面でも多様な学生が大学に入学してくるようになってきたため,このような学生の変化に対応して,厚生補導もますます多様化するとともに,その役割も重くなってきており,なお―層の充実が求められている。


1) 学生相談

大学生活においては,勉学を始めとして生活全般にわたり,学生自身の自主性・自発性が求められる。初めて親元を離れて生活する者がいたり,生活スタイルも高等学校段階までとは大きく変化するため,環境の変化にうまく適応できずに悩みを持つ学生も出てきている。また,高等教育の量的拡大,価値観の多様化等に伴い,悩みの内容も様々となっている。

学生相談は,こうした悩みの解消の手助けを行い,学生が大学生活に適応できるようにし,大学における修学効果を高めるために行われる活動である。各大学においては,学生相談室やカウンセリング・センター,保健管理センターなどを設置して,学生相談を行っている。

学生相談は,精神疾患的なもののみではなく,修学に関する悩み,スチューデント・アパシー(無気力学生)などの不適応,友人との対人関係など,その対象は極めて広範にわたっている。

このように,学生相談は,厚生補導の中の人的指導の面において,中心的な役割を担っており,学生相談の関係者だけでなく,すべての教員が,カウンセリング・マインド(親身になって相談を聴く心構え)を持って学生に接することが強く期待されている。


2) 就職指導

就職は,学生にとって社会の入り口における選択として極めて重要であるのみならず,大学にとっても,教育の成果を社会へ還元するものとして大きな意義を持っている。

大学においては,職業安定法に基づき,卒業予定者の就職について,独自こあっせんを行っている。これは,大学の場合,就職者が多く,組織的にも安定しており,また,学生の持つ専門知識を考慮した職業あっせんが必要とされていることによる。

各大学においては,学生に対して単に職業をあっせんするだけでなく,就職に関する様々な指導を行っている。就職指導としては,就職について正しい理解を与えるための各種のガイダンス,各学生の適性を知るための検査,就職に関する相談や資料の提供などがある。

就職をめぐっては,先の臨時教育審議会第―次答申において,学歴社会の弊害を是正する立場から「有名校の重視につながる就職協定違反の採用(青田買い)を改めること」が提案されている。このため,好景気に支えられた「超売手市場」ともいわれる就職状況の下,学生の最終学年の学習が支障なく秩序ある形で行われ,かつ,学生に職業選択の機会を公平に与えるために重要な役割を果たしているとの観点から,全大学と主な企業との間で締結されてる「就職協定」の遵守が強く望まれているところである。

また,近年の社会的・経済的状況の変化に伴い理工系学生の製造業離れ,就職後のミスマッチによる早期の転職などが指摘されてきている。

このような従前にみられなかった新しい状況に対応するため,各大学がそれぞれの大学の実情により,学生からの多様な要望に応じられるようきめ細かい就職指導を行うことが期待されている。


3) 学生のための福利厚生施設

学生が,勉学,課外活動等において充実した学生生活を送るためには,学生を取り巻く環境の整備が重要である。このため,各大学においては,その中心となる学生のための福利厚生施設の整備を進めている。こうした学生関係の施設のうち主要なものは次のとおりである。


大学会館

大学会館は,教室外における学園生活の中心的施設であり,研修,会議等のためのホール,会議室,談話室のほか,食堂,喫茶,売店等が設けられている。また,各種の事業を実施するなど,学生,教職員の交流,生活の場として重要な役割を果たしている。国立大学の場合,82大学に設置されており,逐次整備が図られているところである。


学生寄宿舎

学生が充実した学園生活を送れるようにするための施設の―環として,学生寄宿舎が設けられており,昭和63年度の「学生生活調査」によれば,全学生の約6%の者が学生寄宿舎に入居している。

最近の学生の志向に合わせ,国立大学の場合,近年設置される学生寄宿舎(新規格寮)は個室となっており,かつての二人部屋や四人部屋のものは,次第に減少している。このため,昭和55年度における個室の学生寄宿舎(新規格寮)入居者数は8,002人であったが,63年度には1万4,495人となっている(複数人数部屋については,2万1,091人から,1万6,862人に減少)。また,最近の留学生の増加に伴い,既設の学生寄宿舎に留学生が入居することや,当初から留学生を入居させることを前提に建設されることも多くなってきている。


課外活動施設

学生のクラブ活動,サークル活動に供するために,大学会館とは別に課外活動施設が設けられている。国立大学の場合,限られた施設を有効に活用するため,練習室,ミーティングルームなどを備え,複数のサークルが共同で使用するサークル共用施設として整備が進められている。

また,合宿所も設けられている。このほか,学外に地区の国立大学が共同で利用する共同利用合宿研修施設が全国で13か所設けられており,サークル活動ばかりでなく,ゼミやクラスの活動にも役立てられている。

また,東京地区,関西地区には,国公私立大学を問わず利用できる施設として,財団法人の設置する大学セミナーハウスがあり,主催事業を実施するなどして,国公私立大学の学生の交流が図られている。


(2) 育英奨学事業の充実
1) 育英奨学事業の概況

育英奨学事業は,経済的理由により修学に困難がある学生・生徒に対して,学資の給貸与を行うことにより,人材の育成に資するとともに,教育の機会均等に寄与する重要な教育施策であり,逐年充実に努めている。

我が国の育英奨学事業の概況を,文部省が4年ごとに行っている育英奨学事業の実態調査の結果(昭和62年度)でみると,

ア 事業を実施している団体等の数は,3,866団体
イ 奨学生数は72万7,000人で,そのうち「日本育英会」が44万2,000人(61%),「公益法人」,「地方公共団体」,「学校・その他」が28万5,000人(39%)
ウ 奨学金支給総額は2,041億円で,そのうち「日本育英会」が1,495億円(73%),「公益法人」,「地方公共団体」,「学校・その他」が546億円(27%)

となっている (表1-2-29)

文部省としては,昭和62年4月の臨時教育審議会答申等を踏まえ,日本育英会の育英奨学事業の改善・充実を図るとともに,公益法人,地方公共団体等により多面的に実施されている育英奨学事業の育成・発展を図るように努めているところである。


2) 日本育英会の育英奨学事業

日本育英会は,優れた学生及び生徒であって経済的理由により修学困難な者に対して学資の貸与事業を行っている。昭和18年の創立以来,平成元年度末までの47年間に,日本育英会を通じて奨学金の貸与を受けた学生・生徒の総数は約435万人,奨学金貸与総額は約1兆8,150億円に達している。この事業の原資には,国の資金と返還された奨学金が充てられている。

日本育英会の育英奨学事業については,社会経済情勢の変化に対応しつつ,その―層の充実を図るため,昭和59年度に,無利子の貸与制度の整備を行うとともに,高等教育の普及状況に対応し,事業の量的拡大を図るため,財政投融資資金を導入し,新たに有利子の貸与制度を創設した。有利子貸与制度は,大学学部・短大の学生を対象とするものであり,奨学生の負担をできるだけ軽減するため,長期低利の返還利率(在学中無利子,卒業後年3%)とし,資金の借入利率との差額は国の資金により利子補給を行っている。

平成2年度においては,臨時教育審議会答申等を踏まえ,前年度に引き続き,新規貸与人員について2,800人(内訳,大学院修士課程1,200人,博士課程1,000人,大学600人)の増員を行った。これにより,平成2年度の事業費総額は,前年度に比べ94億円増の1,750億円となり,貸与人員は45万人となった (表1-2-30)

また,全学生に対する奨学生の割合(貸与率)をみると,大学が12%,大学院は42%(修士課程33%,博士課程64%)となっている。

日本育英会の育英奨学事業については,逐年,授業料等の修学費や家計の経済状況等を勘案しながら,修学援助を必要とする学生及び生徒の実態に応じた充実に努めているところである。

1-2-29  育英奨学事業の現状(昭和63年3月現在)

1-2-30  日本育英会の奨学金貸与人員・事業費総額・貸与率(平成2年度)


3) 公益法人,地方公共団体,学校法人等の育英奨学事業

昭和62年度育英奨学事業に関する実態調査(昭和63年3月現在)によれば,公益法人,地方公共団体,学校法人等3,865の団体等によって育英奨学事業が実施されており,これらの団体等がら奨学金を支給されている奨学生数は,28万5,000人,奨学金支給総額546億円となっている。

これらの団体等による育英奨学事業について昭和58年度調査と比較すると,奨学生数で4万2,000人増(18%増),事業費では177億円増(48%増)の大きな伸びを示しており,日本育英会を含めた事業全体に対しておおむね奨学生数で4割,事業費で3割を占めている。

これらの団体等によって実施されている多様な育英奨学事業は,我が国の育英奨学事業の発展にとって極めて有益なものであり・―般的,包括的な援助措置を行う日本育英会の育英奨学事業とあいまって,各々が事業創設の目的に基づいて,特定の事由によって遺児となったもの,外国からの留学生や大学院生に重点をおくなどの特色ある事業を行っているところに大きな意義があり,今後ますます,人材の育成,教育の機会均等に寄与することが期待されている。

育英奨学事業の振興のため,これを行う公益法人等の受ける収入の多く (利子,寄附金等)は非課税となっており,また,個人や企業が拠出する特定公益増進法人の指定を受けた公益法人に対する寄附金や大蔵大臣の指定を受けた寄附金(指定寄附金)については,寄附金が―定の範囲で課税対象外となる等の税制上の優遇措置がとられている。

今後とも,育英奨学に理解のある篤志家の厚意,民間企業等の資金を積極的に導入していくためには,育英奨学事業の意義・役割についてで広報の充実に更に努める必要がある。

1-2-31 日本育英会の奨学金貨与月額(平成2年度)


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