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1部   高等教育の課題と展望
第2章  高等教育の現状と課題
第4節  学生生活
1  学生生活の現状


平成2年5月1日現在,大学生(短期大学生を含む)及び大学院生の総数は255万2,000人に及び,近年の社会変化に伴う生活の変化ともあいまって,学生生活の内容も従前とは大きく様変わりをしてきたといわれている。

文部省では,学生に対する奨学援助事業の改善充実を図るための基礎資料を得る目的で,昭和43年度から隔年ごとに大学,短期大学,大学院の学生を対象として「学生生活調査」を実施し,経済状況を中心とした学生生活の実態の把握に努めてきた。また,平成2年には,民間の調査機関に委託し,大学2年生及び4年生を対象として「学生の生活等の実態に関する調査」を実施し,現代の学生の生活や意識等の実態についても調べた。

以下,これらの調査からうかがえる,現代大学生の平均的な日常生活と意識,学生生活の経済状況の一端について紹介したい(なお,以下特に断らない限り,百分率は回答者数に対する割合である)。


(1) 現代学生の日常生活と意識
1) 大学生の大学に対する意識

学生が,大学をどのように考えているかについて複数回答で尋ねたところ,「将来社会で生かすことのできる専門的な知識を身に付けるところ」(38.8%),「学問をするところ」(25.8%),「社会人として―般的な教養を身に付けるところ」(24.0%)という回答が多い。―方,大学を,「友人を得るところ」(40.0%),「自分のやりたいことができるところ」(35.9%)と考えている者も多くみられる。大学に対する意識は,学生生活の中心が何であるかという点に影響しており,大学に対する意識が「学問をするところ」,「専門知識を身に付けるところ」である学生の場合,自己の学生生活の中心は「学業」と答える者が多く (それぞれ49.5%,42.2%),「友人を得るところ」と考えている学生の場合,生活の中心は「交友関係」と答える者が多くなっている(30.2%)。なお,「学歴を得るところ」と受けとめている者は14.1%にとどまっている( 1-2-28 , 1-2-25 )。


2) 学習の状況

授業への出席率は,学年,男女,専攻等によりばらつきがあり,7割以上出席している者についてみると,4年生男子(60.5%),文科系男子(55.1%),生活の中心が仕事・アルバイトであると考えている者(56.6%)で若干低いが,全学生の72.7%は7割以上出席している(ほとんど全ての授業に出席する者は45.1%)。―方,ほとんど出席しない者は5.4%にすぎず,授業への出席状況はおおむね良好である。

ただ,授業以外の図書館や自宅等での勉強時間は,1週間当たり8.2時間となっており,特に文科系男子は6.3時間にすぎない(文科系女子は8.3時間,理科系男子は9.2時間,理科系女子は9.3時間)。また,1か月間の平均読書冊数(専門書,―般教養に関する本,文芸書を指し,マンガ,雑誌類,教科書及び教科書に準ずるものを除く)は,2.6冊となっている。

このように,現在の大学生は,授業への出席率は比較的高いものの,自習にはあまり多くの時間を割いていないといえよう。男女の別,学年の別,文科系・科系の別では,概して,4年生より2年生の方が,文科系より理科系の方が,そして学年・文理の別にかかわらず,男子より女子の方が勉強熱心である (表1-2-26)

比較的高い授業への出席率にもかかわらず,授業の理解度については,「半分ほど理解できる」(42.8%),「7割程度が理解できる」(28.4%)とする者が多く,「ほぼ理解できる」とする者は11.2%と必ずしも多くない。授業の理解度は,授業への出席率より専攻に関係しており,理科系( 7割以上理解できる者は男子26.6%女子38.3%)よりも文科系(同じく男子34.4%,女子59.7%)の方が高い数値を示している。また2年生と4年生とでは,4年生の方が授業をよく理解できると答えている(ほぼ理解できる者についてみると,2年生男子7.1%,2年生女子12.2%,4年生男子9.5%,4年生女子23.1%)。

大学の授業の印象に関しては,一般教育科目については,「退屈である」(48.6%),「役に立ちそうにない感じがする」(42.5%)との回答が多くみられる。専門教育科目については,「役に立ちそうな感じがする」(50.5%)と回答する者が多くみられるものの,「退屈である」(47.4%)とする者も多い。

上記のような授業に対する理解度,印象を反映してか,大学の授業に対する要望・意見としては,「役に立つような内容の授業にしてほしい」(48.9%),「分かりやすく教えてほしい」(48.5%)という回答が約半数を占めるほか,「資料を配布するなど授業の方法を工夫してほしい」(25.7%),「少人数で学生個々に目の届くような指導をしてほしい」(25.0%)という要望がみられる (図1-2-29) 。大学の授業に対する要望・意見については,特に理科系は,「分かりやすく教えてほしい」という回答が目立つ(文科系男子46.1%・文科系女子38.8%,理科系男子59.4%,理科系女子59.2%)。

1-2-28  自分にとっての大学の意味(複数回答二つまで)

1-2-25  学生生活の中心と大学の意義の相関

1-2-26 学習の状況


3) 課外活動

課外活動の参加状況については,63.3%が何らかの活動に参加しており,学生生活の中で大きい比重を占めていることがうかがえるが,その内容は,「スポーツ関係」が61.1%,「文化関係」が28.2%,「社会奉仕などの社会活動関係」が6.4%となっており,その参加時間は1週間のうち8.3時間程度である。参加分野には男女差がみられ,男子学生の場合には「スポーツ関係」63.7%,「文化関係」24.9%というように「スポーツ関係」の割合が高いが,女子学生は「スポーツ関係」56.1%,「文化関係」34.5%となっている。また,参加時間も,男子は週9.0時間であるのに対し,女子は週6.7時間となっている。なお,活動に参加しない理由としては,「ほかのことに忙しい」(40.2%),「参加したいと思うものがない」(29.7%)などを挙げる者が多い。


4) 大学への要望

大学に対する要望としては,「カリキュラムを改善・充実してほしい」(43.8%),「授業や実験・実習などの正課の施設・設備を充実してほしい」(35.5%),「クラブやサークルなどの課外活動関係の施設・設備を充実してほしい」(34.0%),「福利・厚生関係の施設・設備を充実してほしい」(29.1%),「教授陣を充実してほしい」(25.8%),「就職など学生指導の面を充実してほしい」(23.6%)とする声が多い (図1-2-30) 。「カリキュラムの改善・充実」や「正課の施設・設備の充実」を求める声は,授業の出席率の高い者ほど多く,「ほぼすべての授業に出席している」者のうち,「カリキュラムの改善・充実」を求める者は45.8%,「正課の施設・設備の充実」を求める者は39.1%であるのに対し,「ほとんど出席しない」者では,前者につき37.8%,後者につき26.3%である。また,「クラブやサークルなどの課外活動関係の施設・設備の充実」を求める声は,課外活動参加者ほど多く,在学大学で課外活動に参加する者のうち49.4%が充実を求めている。

1-2-29 授業に対する要望・意見(複数回答三つまで)

1-2-30  大学への要望(複数回答三つまで)


5) 悩み,進路,職業観など

授業への出席率,課外活動への参加率の高さは,現在の生活で何が中心となっているかの設問にも反映され,その回答に「学業」(32.2%),「交友関係」(20.9%),「課外活動」(17.6%)を挙げる者が多く,「レジャー」(2.5%),「特に中心となるものはなく,ただ何となく過ごしている」(9.0%)を挙げる者は少ない。

このためか,現在の生活を「充実している」と考えている者は62.2%と多く (「かなり充実している」(18.3%),「どちらかといえば充実している」(43.9%)),「ぜんぜん充実していない」(4.4%),「どちらかといえば充実していない」(11.9%)と答える者もいるものの,学業や課外活動等に充実した生活を送る学生像をおおむね浮がべることかできよう (図1-2-31)

このように,現代の学生像は,おおむね学業や課外活動に充実した生活を送る健全なものと考え得るが,その反面,「特に悩みなし」と回答する者は10.4%で,かなり多くの学生は悩みを持っており,その内容は「就職など将来の進路のこと」(60.9%),「勉学上のこと」(38.1%),「自分の性格や能力のこと」(27.8%)が挙げられている (図1-2-32) 。調査対象が2年生,4年生であって,それぞれ専門課程への進級や就職を目前に控えていることが影響していると思われる。特に,4年生の女子で「就職など将来の進路」を挙げる者(82.7%)が多い(4年生男子は72.1%)。

卒業後の職業観は,「民間会社」(62.8%),「公務員」(11.1%),「教員」(10.9%)への就職を希望する者が大多数であり,最近話題となっているいわゆる「フリーター-」になろうと考えている者は0.6%にすぎない。

しかし,「積極的に転退職してかまわない」と考えている者(27.2%)と「定年まで同じ仕事を継続した方がよい」と考えている者(30.9%)の比率はほぼ同じであり,いわゆる終身雇用に対する考え方が変化してきているものと思われる。もっとも4年生の男子についていえば,「積極的に転退職してかまわない」とする者(24.4%)よりも,「定年まで同じ仕事を継続した方がよい」とする者(37.4%)の方が多い。なお,職業職場の選択に当たって,「仕事の内容に興味がある」(63.8%),「自分の能力・専門知識が生かせる」(40.0%),「職場の雰囲気がよい」(36.0%)ことを重視する者が多いが,「収入が多い」(25.0%),「休みが多い」(22.3%)ことに重点を置く者も多い。―方,就職の際の選考に当たって企業等が何を重視すると思うかという質問に対しては,「積極性,協調性などの人間性」(57.1%),「創造力,企画力,判断力,実行力などの実力」(53.6%)を挙げる者が多く,これらに比べると「大学の名前」(21.4%)や「縁故」(3.7%)を指摘する者は少なくなっていることは注目される (図1-2-33)

1-2-31  現在の生活の充実状況

1-2-32  現在の不安及び悩み(複数回答三つまで)


6) 日常生活の姿

まず,住居については,50.1%の者が「自宅外がら通学している」が,自宅外に住んでいる者のうち72.1%の者が「アパート・マンションなど」に住んでいる。これらのうち「6畳程度」に住む者は47.8%,「8畳程度」に住む者は23.2%となっており,また「風呂,トイレともある」とする者は,84.4%にのぼるなど,4畳半―間のイメージではなくなってきている。なお,男子の54.1%が,女子の41.7%が,「自宅外から通学」している。こうしたなかで,「大学の寮」に入っている者は,4.1%(男子3.7%,女子4.9%)と少数派になっているが,寮に入らない理由としては,「独立して生活がしたい」(33.0%),「集団生活がわずらわしい」(23.3%),「個室でない」(20.7%)などが挙げられている。

次に,消費生活の水準を示す指標として,個人専用の持ち物を尋ねたところ,CDプレーヤー(67.5%),テレビ(65.9%)(アパート・マンション居住者では93.5%),電話(44.1%)(アパート・マンション居住者では85.6%),炊飯器(40.6%)(アパート・マンション居住者では90.8%)については比較的高い普及率を示しているものの,パソコン(12.0%),電子レンジ(11.9%),ワープロ(19.7%)については必ずしも普及率は高くはない。なお,自動車については27.4%,オートバイ・バイクについては30.4%の者が所有している。

近年話題にのぼることの多い,テレビゲーム,パソコン通信,衛星放送受信,ビデオレンタル,タウン誌・イベント誌の利用状況については,46.8%の者がタウン誌・イベント誌を購読し,45.9%の者がビデオレンタルを利用していると答えているものの,パソコン通信利用者は5.4%,衛星放送受信者は6.9%にとどまっている。なお,テレビゲームを自宅で楽しむ者は21.2%である(「よくする」及び「時々する」の計)。

なお,我が国の経済の発展に伴う国際化の進展は目覚ましいが,「海外渡航経験」のある者は22.8%,「外国人の友人を持っている」者は27.1%であった。特に女子は積極的で海外渡航経験のある女子は33.7%(男子17.6%),外国人の友人を持っている女子は34.4%(男子23.8%)となっている。また,留学に対する憧れも大きく69.4%の者が留学を希望しており(語学目的43.7%,専門分野の研究25.7%),社会に出てから「海外勤務や海外出張をしてみたい」と答えた者は63.1%にのぼっている。「遊びでも仕事でも海外に行きたくない」とする者はわずか3.3%にすぎず,学生の外国に対する関心はかなり高いものがあるといえよう。

アルバイトについては,59.2%の学生が「している」と答え,その時間は1週間のうち15.6時間となっている。アルバイト時間はばらつきが目立ち,男子学生は週21時間以上の者が計30.3%であるのに対して,女子学生の場合は10時間以下が過半数であり,21時間以上の者は12.6%と男女差が大きい。なお,昭和63年度の「学生生活調査」によると,過去1年間に85.7%の学生がアルバイトに従事した経験を有し,従事した職種別にみると,「軽労働」55.9%,「家庭教師」25.1%,「事務」6.9%となっており,また,学生の50.7%が授業期間中や長期休暇中に関係なく恒常的にアルバイトに従事しているという結果が出ている。

1-2-33  就職の際に重視されると考える事項(複数回答二つまで)


(2) 学生生活の経済状況

隔年に実施している「学生生活調査」の結果(昭和63年度;63年11月現在)により,大学昼間部学生の経済状況概要を紹介する。


1) 学生生活費

食費等の生活費と授業料等の学費を合わせた学生生活費は,教育機関別,その設置者別,学生の居住形態等により異なっているが,その平均的な学生一人当たりの年間費用をみると 1-2-27 のとおり152万3,000円である。

昭和61年度から昭和63年度間の学生生活費の上昇率は7.0%(学費10.1%,生活費3.8%)である。


設置者別学生生活費

設置者別に学生生活費の状況をみると,国立118万6,000円,公立112万2,000円,私立164万4,000円となっモおり,国立に比べ私立が約46万円高くなっている。

食費,住居・光熱費,娯楽嗜好費等の生活費は,国公私立とも差異はそれほどみちれず,この差異は学費によるものである。


居住形態別学生生活費

居住形態別に学生生活費の状況をみると,国公私立の平均で自宅通学者127万5,000円,下宿・アパート等通学者182万9,000円となっており,両者における学生生活費の格差は約55万円である。


男女別学生生活費

男女別に学生生活費の状況をみると,国立ではいずれの居住形態でも男子が女子を上回っているが(自宅通学者3万6,000円,下宿・アパート等通学者3万9,000円,学寮通学者5万7,000円の差),私立ではいずれの居住形態でも女子が男子を上回っている(自宅通学者4万3,000円,下宿・アパート等通学者10万9,000円,学寮通学者19万6,000円の差) (図1-2-34)

1-2-27  学生生活費


地域別学生生活費

地域別に学生生活費の状況をみると,国公私立の平均で東京都が160万9,000円と最も高くなっている。学生生活費が最も高い東京都の私立の下宿・アパート等通学者(212万9,000円)と最も低い東京,京阪神以外のその他地域の国立の自宅通学者(85万8,000円)では,年間127万円の差がある (図1-2-35)


2) 学生の収入状況

これらの学生生活費は,家庭からの給付,奨学金及びアルバイト収入等で賄われているが,その平均的な学生一人当たりの年間収入は表1

1-2-34  男女別居住形態別学生生活費

1-2-35  地域別・居住形態別学生生活費

2-28のとおりである。


家庭からの給付

家庭からの給付額は,国公私立の平均で117万6,000円であり,学生生活費の収入全体に占める給付額の割合は73.5%となっている。最近の10年間におけるこの割合は,家庭から学生への給付額が年々増加しているものの,学生生活費の増加に伴いアルバイト等による学生生活費の収入額が増加しているため,昭和53年度の76.5%からわずかずつではあるが年々減少している。

1-2-28  学生生活費収入の状況


アルバイト収入

学生生活費収入の不足を補うためにアルバイトに従事する者も多く,昭和62年12月から昭和63年11月までの1年間にアルバイトに従事した経験を有する者の全学生に対する割合は85.7%であり,これらのアルバイトによる収入は,国公私立の平均で31万4,000円となっており,学生生活費収入全体に占めるアルバイト収入の割合は19.6%と家庭からの給付に次いで大きなウェイトを占めている。

アルバイト従事経験者の全学生に対する割合及び学生生活費収入に占めるアルバイト収入の割合の10年間の推移をみると,昭和53年度の前者81%,後者17.9%から,年度によってそれぞれ若干の増減はあるが,昭和63年度には前者85.7%,後者19.6%になり,ともに増加している。


3) 家庭の経済状況

―方,大学生を持つ家庭の経済状況をみると,家庭の年間平均収入は788万円(国立704万円,公立723万円,私立817万円)であり,家庭の年間収入に占める学生への給付額(平均的な学生―人当たりの年間給付額117万6,000円)の割合は,国公私立の平均で14.9%となっている。

また,学生の家庭の年間収入を,総務庁の「家計調査」(昭和63年)から全国全世帯の45〜54歳の世帯主(学生の家庭の世帯主年齢と想定)の年間収入五分位(1〜5)階層区分を推計したものに当てはめ,所得階層別の学生数をみた場合,国公立では第1分位への偏り(国立27.4%,公立26.3%)を除き各階層にほぼ均等に分布しているが,私立は逆に第V分位に高い分布(30.4%)がみられる。

なお,第1分位階層家庭の学生数の割合は,昭和53年度の国立22.0%,公立18.4%,私立11.1%から国公私立ともに高くなり,昭和63年度には国立27.4%,公立26.3%,私立18.6%で,特に国公立大学ではその割合も高く,教育の機会均等に寄与しているものといえよう。


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