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1部   高等教育の課題と展望
第2章  高等教育の現状と課題
第2節  拡大した高等教育の現状・課題と整備充実
6  高等教育基盤の整備充実



(1) 高等教育財政
1) 高等教育財政の状況
現況

高等教育機関の教育費は,授業料等の学生納付金,病院収入等の自己収入,寄附金等とともに国・地方の負担(公財政支出)によって構成されている。

公財政支出として,国立学校については,国立学校特別会計制度が設けられ,一般会計からの繰入れ(平成2年度予算1兆1,998億円,繰入率約60%)が行われている。公立学校については,地方支出金とともに地方交付税措置及び医科大学に対する助成措置(同37億6,400万円)が,また,私立学校については,経常費補助を基本に,特色ある教育プロジェクトに対する補助等の助成措置(同2,619億円―教育研究施設設備関係の補助を含む,経常費に占める補助割合16.0%―昭和63年度)が講じられている(国立学校特別会計については次項,私学助成については第I部第2章第5節を参照)。

このほか,高等教育に関する国の経費として,大学等の研究者の学術研究を推進するための科学研究費補助金(平成2年度予算558億円),日本育英会の育英奨学事業費(同政府貸付金額783億円,財政投融資金356億円)などが支出されている。

文部省予算に占める割合は 1-2-20 のとおりである。

また,高等教育機関の運営に要した総経費(高等教育費)についてみると,昭和61年度で,総額約4兆3,308億円(国公立学校1兆9,511億円,私立学校2兆3,797億円)で,うち国,地方の負担は約2兆557億円(国公立学校1兆7,820億円,私立学校2,737億円)である。

高等教育費に係る国・地方の負担の国民所得に対する比率は0.8%で,制度等が異なり,一概に比較することはできないが,欧米諸国に比べて低い状況となっている (表1-2-24)

さらに,高等教育費の費用負担の国際比較についてみると,我が国の高等教育費に占める学生納付金の割合は34%で,欧米に比べて受益者負担の割合は高く (図1-2-21) ,殊に,私立学校については,その最も大きな部分(53.7%)を学生納付金が占めている。


課題

高等教育機関が,今後,望ましい在り方を求めて改革を推進し,期待される機能を十分に発揮するためには,その基礎的条件として,財政基盤の充実の問題は極めて重要な課題である。

国の予算に関しては,昭和50年代後半以降,財政再建を図るため,厳しい抑制措置が取られてきている。また,我が国の高等教育は,私学に大きく依存しているが,私学財政においては,学生納付金等の受益者負担の比率が極めて大きい。

このような事情もあって,高等教育費に占める公財政支出の割合を欧米諸国と比較すると,先にみたとおり低い水準にある。また,全体としての高等教育費についてみても,その水準は,欧米諸国に比して低いことは否めず,施設設備,研究費等,我が国の高等教育の教育研究条件は危機的状況にあるとの指摘もなされている。

高等教育の質的向上を図るためには,大学設置基準等の高等教育の在り方の見直しとともに,高等教育に対する公財政支出の充実に配慮する必要がある。その際,公財政支出については,その配分の効率化,重点化が不可欠であり,その観点としては,教育機能の強化,世界的水準の教育研究の維持向上,生涯学習への対応等が,重視されるべきものと考えられる。

さらに,上記の観点から,高等教育の質的充実についての取組の状況等に応し,効率的・重点的な財政的支援措置を円滑に実現するためには,国立学校特別会計制度あるいは私学助成等の公私立大学等への助成制度において,柔軟かつ弾力的な支出の仕組みを幅広く導入することが重要な課題となる。

また,このような観点からは,科学研究費補助金が注目されよう。この補助金は,国公私立の高等教育機関を通じて,研究者の自由な発想に基づく研究の助成に資するところが大きいものとして,高い評価を得ており,その格段の充実が望まれる。

このような課題とあいまって,民間資金等の導入を促進することも重要である。各高等教育機関に対する民間資金の導入の促進は,教育研究活動や運営面における各高等教育機関の自己努力を促すものであり,ひいては,その自主的な財政基盤の強化と充実に資するものである。このような観点から,今後,民間資金を導入するための仕組みを拡充するとともに,一部の大学に取組の動きがみられる土地信託制度の活用,国公私協力方式の検討など,新しい方策についても検討する必要がある。

1-2-20  平成2年度予算額

1-2-24  各国の高等教育資と国・地方の負担の状況

1-2-21  高等教育の費用負担の国際比較


2) 国立学校特別会計制度の概要
制度の特色

国立学校特別会計は,昭和39年に,国立学校の充実に資するとともに,その経理を明確にするため,一般会計と区分して経理する特別会計として設置されたものである。

この特別会計においては,一般会計からの繰入金のほか,授業料,入学料,検定料,病院収入,積立金からの受入金,借入金,財産処分収入,寄附金,雑収入をもってその歳入とし,国立学校の運営費,施設費,奨学寄附金,借入金の償還金及び利子,一時借入金の利子その他の諸費の歳出に充てることとされ,次のような制度の特色が挙げられる。

1)予算額に比して収入が増加するときは,弾力条項により,その事業量の増加のために直接必要な経費に充てるようにし,病院等の円滑な運営を図ることができること。
2)長期借入金の制度を設け,附属病院施設の整備,国立学校の移転整備の促進を図ることができるようにしていること。
3)決算上の剰余金の一部(歳入予算超過分)を積立金として積み立てこれを一般の歳出財源と区分し,施設整備に充当できるようにしていること。
4)国立学校所属の不用となった財産があるときは,これを処分し,処分収入は本特別会計の施設整備等の財源に充当することができるようにしていること。
5)委任経理金の制度を設け,寄附金を各大学長の管理の下に,費目の制限,会計年度の制約なしに使用できるようにしていること。
6)運営費については,教官当積算校費のような包括的な経費措置により実情に即した弾力的執行が可能なこと。

予算の現況

平成2年度国立学校特別会計予算の内容は,現下の行財政事情,大学審議会の審議状況等を踏まえ,1)大学院の充実と改革,2)社会的要請の強い分野に係る人材養成の充実,3)留学生受入体制の整備,4)学術研究の推進など教育研究上の緊急な課題を中心として,転換・再編成等の工夫を折り込みながら精選したものとなっている。その全体構成は 1-2-22 のとおりであり,歳入・歳出の総額は1兆9,888億円となっている。

歳入の内訳についてみると,一般会計からの繰入れが1兆1,998億円で繰入率は60.3%となっており,附属病院収入が20.8%,授業料等収入が10.1%,借入金が2.7%,外部資金収入が2.5%,学校財産処分収入が2.2%を占める状況となっている。

一般会計からの繰入率は特別会計創設時には82.1%(ピークは,昭和46年度の83.5%)であったが,その割合は漸減傾向を示している。―方において,附属病院収入,授業料等収入,学校財産処分収入,外部資金収入等の自己収入の占める割合は漸増傾向を示している。外部資金収入の増加傾向は,奨学寄附金の受入れ,民間等との共同研究制度,受託研究制度など,大学と社会の連携協力の仕組みにより,各大学がその主体性の下に社会の諸要請に積極的に対応してきていることを表している (図1-2-23)

また,歳出の内訳についてみると,人件費が55.6%,物件費が44.4%という割合になっており,物件費の内訳は,教育研究経費17.7%,病院診療経費12.9%,文教施設費4.3%という状況となっている。人件費と物件費の割合をみれば,物件費の割合が減少傾向にあり,特に,文教施設費等の投資的経費についてみると,昭和56年度には,13.9%の割合を占めていたが,漸減し,平成2年度には,7.3%となっている (図1-2-24)

また,基幹的な教育研究経費である教官当積算校費,学生当積算校費及び教官研究旅費についてみると,これら経費の積算の基礎となる予算単価については,近年,据え置かれてきたが,平成2年度においては,教官当積算校費及び学生当積算校費について単価改定を含めて増額を図るとともに,教官研究旅費については旅費法の改正に伴う所要額を計上している。

今後とも,国立学校特別会計の運営についても改善や工夫を重ね,教育研究条件の維持向上に努める必要がある。

1-2-22 平成2年度国立学校特別会計予算構成

1-2-23  国立学校特別会計 歳入の推移

1-2-24  国立学校特別会計 歳出の推移


(2) 施設の整備充実

今日,我が国の社会は,情報化・国際化・科学技術の高度化が急速に進展し,高等教育機関における教育や学術研究も多様化・高度化している。文部省では,従来から教育研究の進展に対応した施設の整備に努めているが,更に時代の変化に対応した高等教育施設の新たな在り方が求められている。

1-2-25  大学,短大,高等専門学校の建物面積の推移


1) 高等教育施設の現況

我が国の高等教育施設は,昭和30年代前半ごろまでは,戦災復徊と新制大学の発足に伴う木造の応急的な整備が中心であったが,昭和30年代後半になると,建物の防災・不燃化に対応するため鉄筋コンクリート造への改築,理工系を始めとする学生の増募や工業高等専門学校の創設等に伴う施設整備等が行われるようになり,高等教育施設け急激に量的拡大をみるに至った (図1-2-25) 。その後更に,昭和40年代には,社会の進展に伴い大学に対する新たな要求が高まり,国立大学においては無医大県解消計画による新設医科大学の創設,筑波大学,技術科学大学,新教育大学等の新構想大学の創設,国立大学共同利用機関の創設等に伴う施設整備が進められ,また公私立大学においても大学の新設,学部・学科増等に伴う施設整備が進められ,高等教育施設は,より一層の拡大をみることになった。

このように,我が国の高等教育施設は,着実に整備が進められ,平成元年5月現在,約4,513万1,000m2 を保有するに至っている。

しかしながら,現在,大学キャンパス内では,昭和30年代後半の量的拡大の時期に建てられた老朽建物の改修・改築が必要になっている。また,国立の高等教育施設については,昭和50年代後半以降の国の予算の厳しい抑制のため,施設整備費が一時期に比べ半減しており,教育・研究における多様化・高度化する要請への十分な対応が困難になっている。

特に建物保有面積約1,689万7,000m2約4割(平成元年5月現在)が,建築後20年以上を経過し,その改修・改築が大きな課題となっている。


2) 教育研究の多様化・高度化に対応した施設整備

文部省では,多様化・高度化・情報化する教育・研究の要請にこたえ得る機能とゆとりと潤いを備えた人間的な大学キャンパスづくりを目指して「インテリジェントキャンパス」の整備を推進している。国立大学においでも,その観点から,インテリジェント機能を有する教育・研究施設の整備を進めるとともに,国際化に対応する外国人研究者や留学生のための居住施設である国際交流会館等の建設,情報化に対応するキャンパス情報ネットワークシステムの整備,社会的要請の極めて強い重要研究を積極的に推進する最先端の研究施設の建設,高等教育機関と産業界との共同研究を推進するための共同研究センターの建設等を推進している。公私立大学においても,多様化・高度化する教育・研究のニーズに対応するとともに,魅力ある大学づくりを推進するため,質が高く特色ある施設設備の整備充実に努める事例が増加してきている。

なお,高等教育施設の情報化を適切に推進するため,文部省では,大学施設の情報化に関する計画・設計方法等について調査研究を実施し,情報化の基本的な考え方や事例研究を平成元年度にまとめた。



3) キャンパスの再開発

大学の中には,施設の老朽化や過密化が進み,21世紀を展望した教育・研究・医療等に対応することが困難になっているものが多くなってきている。

このため,豊かで機能的なキャンパス環境に再生するとともに,将来の大学機能の変化にも対応できるようキャンパス全体の再開発を推進している大学が増えてきている。

現在,国立大学においては,電気通信大学,東京医科歯科大学医学部附属病院等多くの大学について再開発整備を進めているところであり,また,公私立大学においても,例えば,既存の大学校舎を新たに個性的で機能性の高いインテリジェントビルに建て替えた工学院大学等,立地の多角的有効利用を図っている例がみられる。


4) キャンパスの移転,統合

既存の大学の中には,キャンパスが市街地にあって狭隘なため,十分な教育・研究活動及び将来の発展に対応できない大学や,キャンパスが分散しているために教育・研究,管理運営上支障を生じている大学がある。国立大学においても,キャンパスを郊外に移転あるいは統合して,ゆとりと潤いのある良好な教育・研究環境を確保するよう,キャンパスの移転統合整備を推進しており,現在は,大阪教育大学,広島大学,金沢大学等について移転統合整備を進めている。また,公私立大学においても,学部・学科増設等に伴い,都市部から近郊地域に全面移転又は一部学部等の移転を行い,よりよい教育・研究条件の充実を図る同志社大学や東京都立大学等の事例が多くみられるようになってきている。なお,首都圏・近畿圏の工業(場)等制限区域内等に所在する私立大学が,学部・学科増設を伴わずに区域外に移転する場合には,日本私学振興財団から,通常の融資よりも低利の融資が受けられることになっている。


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