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1部   高等教育の課題と展望
第2章  高等教育の現状と課題
第2節  拡大した高等教育の現状・課題と整備充実
2  大学院



(1) 大学院の役割と現状
1) 新制大学院制度の特色

昭和22年の学校教育法の制定により発足した大学院制度は,旧制の大学院に比べ,次の二つの基本的特色を有している。

第一は,学部からの独立である。旧制の大学においては,各学部に研究科が設置され,その連合体が大学院とされていたが,新制の大学院は,制度的には,学部から独立した教育研究組織とされた。第二は,課程制大学院への移行である。旧制の大学院は,1)「学術技芸の薩奥を孜究」する場であり,2)学位(博士)は,研究科において研究に従事し,学位論文を完成した者に与えられることとなっていた。これに対し,新制の大学院は,1)「学術の理論及び応用を教授研究」する場であり,2)学部とは独立した一定の教育課程をもつ課程制大学院として確立され,3)学位は,これらの課程の修了者に授与される課程修了の証明の性格のものとして制度的に位置付けられている。


2) 大学院の役割

大学院は,あらゆる学問分野にわたり,基礎研究の推進を通じで学術研究の基盤を培うとともに,高度の研究者及び専門的職業人の養成という役割を担っている。

技術革新と情報化が急速に進展する今日の国際社会においては,高度の創造的な基礎研究の推進と,これを可能にする優れた人材の養成が各国の重要な課題となってきている。我が国においても,独創的な基礎研究の推進を通じての国際的な貢献と,これを支える高度の研究者や専門的職業人の養成,現職の技術者等に対する再教育等の社会的な需要に適切に対応していくととか,ますます重要となってきている。


3) 規模

大学院を置く大学数は,平成2年度で508大学中313大学となっている。

また,在学者数も一貫して増加してきており,平成2年度には9万238人を数えるに至っている( 1-2-7 , 8 )。しかしながら,国際的にみると,我が国の大学院の規模は,相対的に極めて小規模であるというこ

1-2-7  大学院を設置する大学数(平成2年5月1日現在)

1-2-8  大学院在学者の状況(平成2年5月1日現在)

とができる( 1-2-9 )。なお,大学院を担当する教員数は,国公私立全体で5万1,587人(平成元年度)となっている。


4) 入学定員充足状況

昭和50年度後半以降,入学定員充足状況は徐々に改善してきているが,平成元年度においても,修士課程で87%,博士課程で60%となっている。

これを分野別にみると,工学の修士課程のように,入学定員を超えて学生を受け入れている分野もあるが,社会科学系の博士課程のように,入学志願者がそもそも入学定員に満たない分野もある( 1-2-10 )。また,同じ分野でも,大学院によって大きな開きがみられる。大学院の入

1-2-9 学部学生に対する大学院学生の比率等(国際比較)

1-2-10 分野別入学定員充足率(平成2年5月1日現在)

学者数が入学定員を下回っていることについては,我が国の雇用の現況が,―部の分野を除いて学部卒業を中心としている状況であることのほか,高度の専門的職業人又は研究者の養成機関としての課程制大学院の位置付けが必ずしも定着していないこと,またその役割に応じた教育内容・方法等が十分に発達しているとは言い難いことなどの問題点を反映しているものと思われる。


5) 留学生の受入れ状況

我が国の大学院レベルで学ぶ外国人留学生は,近年,大幅に増加しており,平成元年5月1日現在でその数は全留学生数の33.8%に当たる1万568人に上っている( 1-2-11 )。これを専攻分野別にみると,工学(3,231人)が最も多く,次いで社会科学(2,238人),人文科学(1,383人),農学(1,059人)となっている。また,全大学院学生に占める留学生の割合は11%であり,学部に比べ,大学院の留学生比率は高くなっている。


6) 学位授与状況

学位の授与数は,修士,博士とも,自然科学系が圧倒的に多い( 1-2-12 )。これに対し,特に人文・社会科学系の博士の学位の授与が円滑に行われていないことが,留学生に対する学位授与の問題との関連で指摘されている。


7) 大学院修了者の進路状況

修士課程の修了者の進路は,就職者72%,進学者15%となっている。

就職者の産業別内訳をみると,製造業が56%と最も多く,次いで,サービス業22%,公務7%,運輸・通信業4%の順となっている。

博士課程の修了者の進路は,就職者64%,無業者24%となっている。

就職者の産業別内訳をみると,サービス業が80%と最も多く,次いで製造業12%,公務4%となっている。サービス業のうち,教育だけを取り出すと,全就職者の46%を占めている。なお,いわゆるオーバードクター(博士の学位取得後,あるいは博士の学位取得に至らないが,博士課程の所要の修業年限修了後,定職に就かず引き続き研究室において研究を継続している者)は,平成元年度で,約1,600人となっている。これらの者が学内にとどまっている事情は―様ではないと思われるが,研究を

1-2-11 大学院レベルの留学生数の推移(各年5月1日現在)

1-2-12 修士,博士号の学位授与状況(昭和63年度末現在)

1-2-13 修士・博士の学位取得状况(留学生も含む全学生)(昭和62年度)

1-2-14 留学生の学位取得状況(昭和63年度)

継続しつつ適切な就職の機会を待っていることや,学位論文を準備していることなど種々の理由が考えられる。しかし,近年,科学技術の進展に伴い博士課程修了者を採用する企業が増えてきたことや,高等教育の規模の拡大に伴い大学等の教員として採用される数も増えてきたこと等により,オーバードクターの数は,昭和60年度をピークに漸減傾向にある。


(2) 大学院の課題
1) 教育研究機能の強化
課程の目的

大学院には,修士課程又は博士課程を置くこととされているが,これらの課程の目的については,これまで,昭和49年及び平成元年の二度にわたり,改正が行われた。

従来の大学院は,特に博士課程においては,大学等の教員や狭い意味での研究後継者の養成機関という性格が強かったが,近年は,高度の専門的職業人の養成や,現職の技術者等の再教育を積極的に実施する大学院も増加してきている。これらの大学院においては,実務に関連した実践的な教育研究が実施されており,入学志願者も極めて多い。今後は,このような大学院を含めた大学院の多様な発展が期待される。


カリキュラムの充実

従来,大学院における教育は,個々の指導教員が,それぞれの受持ちの学生について,学位論文作成等に対する指導を行う,いわゆる研究指導が中心であり,明確なカリキュラム編成は行われないことが多かった。

これに対し,課程制大学院の趣旨を踏まえ,広い視野と豊かな学識を身に付けさせることに配慮したカリキュラムの充実が必要である。

特に,直接の専門分野の学部教育を受けていないものや,社会人,留学生など,多様な背景を持つ学生を受入れ,教育していくためには,適切なカリキュラムの在り方に関する十分な検討が行われることが必要である。


教育方法等の工夫

教育研究の内容や方法を豊富化していくため,単位互換や,研究指導委託等の制度が適切に活用されることが望ましい。これまでも,一部の研究科において,活用が図られているが,その一層の活用が望まれる。

また,柔軟な入学許可や,修士論文免除,短期修了の認定など,大学院制度の弾力化を十分に活用した入学・修了の在り方の工夫が必要である。


夜間等における教育研究の実施
1-2-15  夜間等における教育研究の実施状況

大学院には,専ら夜間において教育を行う修士課程を置くことができる(大学院設置基準第2条の2)。また,通常の修士課程においても,夜間や週末等特定の時間又は時期に授業又は研究指導を実施することができることとされている(同14条)。社会人を始めとする学生の多様なニーズに適切に対応していくためには,これらの教育方法の工夫を行うことも重要である。


施設設備等の教育研究条件の充実

大学院が,研究者や高度の専門的職業人あるいはこれらを目指す優秀な学生にとって真に魅力のある我が国のセンター・オブ・エクセレンスとして,その社会的使命を十分に発揮していくためには,研究費や施設設備その他の教育研究条件の充実が必要である。このため,文部省においては,優れた教育研究業績を上げている国公私立大学院に対する最先端設備の整備等を推進してきているが,今後とも,大学院の基盤的な整備とともに,教育研究活動の活発な大学院に対して,重点的な整備を行っていく必要がある。


大学院学生の処遇等

多くの優秀な大学院学生を確保するためには,奨学金等の経済的支援の一層の充実を図るほか,特に博士後期課程の学生については,若手研究者として位置付け,それにふさわしい処遇を与えていくことが課題となっている。このため,文部省では,大学院学生に対する日本育英会の奨学事業を拡充するとともに,昭和60年度に後述のように(第2部第4章)特別研究員制度を発足させ,博士後期課程在学者及び修了者について若手研究者としての助成を行っているが,今後ともその充実に努める必要がある。


2) 独立した教育研究組織としての整備

大学院の組織編制については,旧制度のもとでは学部に研究科を置くこととされていた経緯もあり,研究科は,学部ごとに,学部の教員組織によって編制されているのが一般的である。また,施設設備も学部との共用がほとんどである。

これに対し,学術研究や社会の進展に即応し,新しい学問分野や学際的な分野における教育研究を適切に実施していくためには,学部の編制にとらわれない,大学院独自の編制を行うことが必要である。

このような観点から,学部や学科に基礎を置かない,いわゆる独立研究科あるいは独立専攻が設置され,大学院本務教員も増加してきている

1-2-10 独立大学院及び独立研究科の組織編制の種類

(図1-2-10) 。また,大学院専用の施設設備の整備も進められてきている。

さらに,昭和51年の学校教育法改正により,学部を置くことなく大学院のみを置くものを大学とすることができることとされたが,このような大学として,総合研究大学院大学,北陸先端科学技術大学院大学等が設置されている。

今後は,これを更に進め,大学院専任教員の充実を含め,大学院独自の組織編制及び施設設備整備を促進していくことが必要である。


3) 社会の需要に対応する人材養成

我が国の大学院は,諸外国に比べても,量的な整備が立ち遅れていると考えられる。我が国が,今後,独創的な基礎研究の展開を通じて国際的に貢献し,将来にわたって活力ある社会を維持発展させていくためには,大学院の量的な拡充とこれを通じての高度の人材の養成確保が不可欠である。また,各分野の調和のとれた整備を図るとともに,社会人の再教育を始めとする生涯学習需要にも配慮する必要がある。

一方,我が国においては,一般に,課程制大学院の趣旨が徹底しておらず,また,従来大学院が主として狭い意味での研究者養成の場であったこともあり,分野によっては,大学院修了者に対する社会的評価がいまだ確立していない面もみられる。したがって,今後の大学院の量的整備については,大学院の社会的な位置付けとその教育に対する評価の確立を図りつつ,社会的需要を見極めながら進めていく必要がある。


4) 学位制度とその運用

先に述べたように,我が国の学位は,大学院制度の改革に対応し,学校教育法の制定,昭和28年の学位規則の制定及び49年の学位規則の一部改正等を通じ,制度的には,その性格が大きく改められてきた。しかしながら,特に文学博士,法学博士などの博士の種類が戦前から基本的に引き継がれてきていることもあり,分野によっては,現在もなお,博士号は碩学泰斗に授与される栄誉であるという意識が払拭されていない。

このため,特に人文・社会系における博士の学位の授与が極めて低調である。

これに対し,近年の国際交流の活発化や留学生受入れの進展に伴い,学位授与の円滑化が大きな課題となってきている。このため,既に多くの大学においてその運用の改善が図られつつあるが,その一層の促進が望まれる。


(3) 大学院の整備充実
1) 独立大学院の創設

学部を置くことなく大学院のみを置く独立大学院は,平成元年度現在,2大学(国立1大学,私立1大学)が設置されている。

このうち,総合研究大学院大学は,大学共同利用機関の優れた研究機能を活用し,これらの機関を母体とする独立大学院として,昭和63年10月に創設され,平成元年4月から学生受入れを開始した。

また,平成2年度においては,近年の著しい科学技術の進展に対応し,情報科学,バイオサイエンス,材料科学に係る先端科学技術分野の基礎研究を推進するとともに,当該分野の高度の研究者,技術者の組織的養成・再教育を図るため,北陸先端科学技術大学院大学を創設するとともに(平成2年10月関学,平成4年4月学生受入れ開始),奈良先端科学技術大学院大学(仮称)について,創設準備を推進することとしている。


2) 研究科の設置等

教育研究の高度化や社会の要請に対応し,国公私立大学を通じて,大学院の設置や研究科の増設等,整備が図られてきており,その形態も多様化してきている。

近年,学術研究の学際化,総合化等の要請に応じて,独立研究科や独立専攻が増えてきており,平成2年度現在,34の独立研究科,31の独立専攻が設置されている。

1-2-16 大学院,研究科,課程・専攻等新増設の状況

また,社会人の再教育需要等にこたえるため,前述のように専ら夜間に教育を行う大学院の設置や昼夜開講制の実施に配慮する大学も増えてきている。


3) 最先端設備の整備

多数の優れた研究者及び高度の専門的職業人を養成し,学位取得者を輩出するなど,優れた教育研究実績を上げている国公私立の大学院研究科に対し,最先端の大学院教育研究用設備の整備を促進するため,昭和62年度から所要の経費を措置しており,平成2年度においても,その増額を図っている。


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