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1部   高等教育の課題と展望
第2章  高等教育の現状と課題
第2節  拡大した高等教育の現状・課題と整備充実
5)  国際化の進展


社会全体の急速な国際化に伴い,人的交流や情報交換に関する国際的な展開が,医学・医療の分野においても活発になっている。

このような,医学・医療を取り巻く環境の大きな変化の中で,人間性が豊かで,生命に対して深い畏敬の念を持ち,患者や家族の心を理解し,患者の立場に立って診療を行うことのできる「良き医師」「良き歯科医師」の養成が強く期待されている。


医学部・歯学部の整備充実

以上のような医学・医療を取り巻く環境の変化を踏まえつつ,文部省においては,昭和62年に医学教育及び歯学教育の改善に関する調査研究協力者会議による提言を取りまとめた。その内容は,「良き医師」「良き歯科医師」の養成という観点から,次の各項目について改善を図るというものである。

○医学(歯学)教育目標の明確化
○入学者選抜の改善
○カリキュラムの改善
○基礎医(歯)学・社会医学の充実振興
○大学院の在り方
○国際化への対応
○学生数の在り方
○医学教育態勢の改善

このうち,例えばカリキュラムの改善においては,将来の医学,医療の様々な分野に共通して必要な,基本的知識,技術及び態度,習慣を体得し,生涯にわたる学習の基礎をつくることを目標とすべきであるという立場から,教育内容の精選と学生の自主性への配慮,臨床実習を始めとする実習の重視,医師・歯科医師としての倫理や人間関係に関する教育の展開等について提言を行っている。また,疾病構造の変化,総合的・継続的医療の重要性の高まりなどに対応した教育の実施を求めている。

これらの提言を踏まえ,文部省においては,医学・歯学教育の改善策についてさらに検討を進める―方,各医学部・歯学部における改善努力を促しており,多くの大学でカリキュラム改善の検討,新たなカリキュラムの実施等,提言に沿った取組が行われつつある。また,入学者選抜の改善については,推薦入試,面接,小論文などの実施方法に加え,医学教育振興財団と文部省科学研究費補助金による研究班がアメリカの医科大学の入試における適性検査(MCAT)の―部を参考にして,新たな構想の適性検査について研究を行っている。

さらに,医師・歯科医師の養成の上では,卒業後に行われる臨床研修の果たしている役割も大きく,その充実については,厚生省等のほか,大学の医学・歯学教育関係者の間で検討が行われており,各大学附属病院においても研修カリキュラムの作成,改善などの試みが行われている。

なお,国立大学医学部・歯学部については,社会的及び研究上の要請に配慮しつつ,講座の増設,教育実習施設の設置等の整備を行っているほか,平成2年度には,鳥取大学医学部に,医学の基礎的知識とともにバイオサイエンスについての教育を行う新しい学科を新設した。

また,公立医科大学(医学部)に対しては,医師養成の重要性にかんがみ,当該大学における教育研究の充実を図るため,経常的経費の―部を補助している。


医療技術者の養成

看護婦,臨床検査技師,診療放射線技師等医療技術者の養成については,近年の医学・医療の急速な進歩発展に対応するため,従来から幅広い知識と高度の技術を有する人材の養成とともに,需要の大きい分野における養成数の増員を図るという観点から,専修学校の短期大学への改組転換等を図ってきている。

国立については,昭和42年度以来,既設の専修学校の改組転換等により22の医療技術短期大学部を設置してきており,また,公私立についても,昭和40年度においては,医療技術系の学科をもつ短期大学が,合わせて8校であったのが,平成2年度においては,51校に増加してきている( 1-2-7 )。

以上のように,医療技術者の養成については,これまで主として短期大学の整備により対応してきているが,今後は社会的要請も踏まえながら,例えば看護教育・看護研究において指導的役割をも果たすことのできる人材の養成を図っていくことも重要であり,このための大学・大学院の整備・充実についても適切に対応していく必要がある。


大学附属病院

大学附属病院は,医学部,歯学部の教育研究に必要な施設として置かれるものであるが,教育,研究及び診療の場として効果的に機能を発揮するため,所定の診療科,施設,病床,外来患者等が必要とされるもの

1-2-7 看護婦養成学校養成所の入学定員の変化

1-2-8 病院数(昭和63年10月1日現在)

1-2-9 病院の病床数(昭和63年10月1日現在)

である。なお,医学部では,附属病院のほかに学生の臨床教育に当たる関連教育病院を置くことができるものとされている。

大学附属病院は,学生の臨床教育,医師の研究活動及び卒後研修の場として機能するとともに,一般に地域における中核的な医療機関としての役割を果たしている。このため,学生の教育の観点からは重度に限らず幅広い症例を扱うことが求められる一方,医学・医療の発展に対応し得る診療水準を維持し,一般の医療機関では診断・治療が困難な重症,難症の患者を多く受け入れている。また近年は,開業医等の生涯学習の場としても大きな期待がよせられている。

なお,国立大学附属病院においては,教育,研究上の要請に加えて,一般に地域の中核的医療機関としての役割を果たしている大学病院に対する社会的要請を勘案しつつ,所要の診療科及び救急部等の特殊診療施設の整備を進めている。また,プライマリ・ケアに対応することのできる医師の養成に資するための組織としての総合診療部を平成2年度までに5大学に設置している。


4) 教員養成系
教員養成大学・学部の現状

現行の教員養成制度においては,幅広い教養と高度の専門知識を備えた人材を求めるため,広く大学教育に期待し,国公私立の大学・短期大学で,所要の単位を修得したものに教員の免許状を授与するといういわゆる開放制がとられ,教員養成を目的とする大学(教員養成大学・学部)と―般の大学とがそれぞれ特色を発揮しつつ,教員養成を行っている。

なお,教員養成大学・学部のほとんどは,国立大学であり,主として義務教育諸学校教員の養成確保を図っている。

国立の教員養成大学・学部は,明治以来の師範学校等を母体とするものが46大学46学部であり,このほかに,主として現職教貝の大学院における研究・研さんの機会を確保することを目的とする新しい構想による大学が3大学3学部設置されている。国立の教員養成大学・学部の入学定員の合計は,1万9,930人となっている。

新しい構想による大学(新教育大学)は,昭和53年10月に兵庫教育大学及び上越教育大学が,昭和56年10月に鳴門教育大学が設置きれ,主として現職教貝の研究・研さんの機会を確保するための大学院と初等教育教員を養成するための学部を有し,学校教育に関する実践的な教育研究を推進している。


教貝養成大学・学部の課題と整備充実

近年の児童生徒数の減少とそれに伴う教員採用数の減少により,国立の教員養成大学・学部卒業者の教員就職率は昭和54年度の78%をピークに低下し,平成元年度では60%となっており,この傾向は今後相当長期間続くものと予測される。

このような教員の需給状況等を踏まえ,文部省においては,有識者の協力を得て,長期的′な教員の需給関係を見通した教員養成大学・学部の今後の在り方について調査研究を行った。その結果,地域の実状に応じて,1)他学部等に入学定員を振り替える,2)教員以外の職業分野への進出を想定した課程等を設置するなどの方策をとることとし,昭和62年度から平成2年度までの4年間に教員養成課程の学生入学定員を振り替えて教員免許状の取得を卒業要件としない新しい課程(総合科学課程,文化社会課程等)を28大学に40課程(入学定員2,955人)設置した。なお,これらの課程は,社会的要請の強い国際化,情報化等に対応した専攻・コースを有しており,志願者も多い。

―方,学部の中核となる教員養成の課程については,実践的指導力を有する資質の高い教員を養成する観点から,各大学が創意工夫をこらし,教育内容・方法の―層の改善充実を図ることが重要な課題である。このため,教育実習の企画と事前・事後指導の充実や教育工学に関する教育研究を実施する教育実践研究指導センターの設置等を推進している。

また,現職教員の再教育と教員養成大学・学部の教育研究水準の向上を図るため,大学院教育学研究科(修士課程)を逐次設置してきており,平成2年度までに,教員養成大学(49大学)のうち,27大学に27研究科169専攻(入学定員2,243人)が設置されている。これらの教員養成系大学院においては,免許制度の改善の趣旨に沿い,昼夜開講制の実施等の工夫を加え,教員の資質能力の向上という社会的要請にこたえていくことが期待される。


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