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2部   文教施策の動向と展開
第8章  文化の振興
第3節  国語施策,著作権施策及び宗務行政の推進
2  著作権制度の整備



(1) 著作権思想の普及

著作権制度は,小説,絵画,音楽などの著作物の創作者である著作者の権利(著作権)や,著作物を公衆に伝達している実演家,レコード製作者,放送事業者等についての権利(著作隣接権)を定め,国民が著作物等を享受する際の公正な利用にも留意しつつ,著作者等の権利を保護することにより,我が国の文化発展に寄与することを目的とするものである。

著作権思想や制度は,しだいに社会の各方面に定着しつつあると考えられる。著作権制度は,文化創造の基盤として重要な役割を果たすものであることから,文化行政を進める上において,著作権制度についての国民の理解をより一層深めていく必要がある。このため,文化庁では,地区別著作権講習会,著作権審議会報告等説明会など,各種の講習会を開催しているほか,(社)著作権資料協会(著作権関係法令等の研究,資料の収集整備を目的とする公益法人)とも協力しつつ,著作権に関する資はん料(著作権法ハンドブック,まんが著作権入門)等の作成・頒布を行うなど,著作権思想の普及に努めている。


(2) 著作権制度の改善

我が国は,昭和45年の現行著作権法制定の際,「実演家,レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約(実演家等保護条約)」を参考として,実演家等を保護する著作隣接権制度を導入したが,同条約への加入については,著作隣接権制度の運用の実態や,諸外国の動向を見極める必要等から見送った。

しかし,現行著作権法施行後18年を経過し,例えば,放送事業者が商業用レコードを用いて放送を行った際に,そのレコードに係る実演家及びレコード製作者に一定の報酬(二次使用料)を支払うことになっているが,その額の決定及び支払いが,権利者団体と放送事業者との間の協議によって円満に行われるなど,実演やレコード等の利用についての手続が関係者の間で円滑に行われてきており,この制度は我が国において定着してきた。また,現行著作権法制定時には,同条約締約国は11か国にとどまっていたが,現在では32か国に上り,イギリス,西ドイツ,フランスなど主要先進国の多くが加入するなど,国際的にも定着しつつある。

これらの状況を踏まえ,同条約への加入問題について,著作権審議会は,第1小委員会において昭和59年5月より検討を行い,昭和63年1月,「著作隣接権制度の国内的・国際的定着状況及び近年における我が国の国際的地位の変化を考慮すると,我が国が同条約に加入し,著作隣接権の国際的な保護の充実を図る時期に至っている」とする審議結果を公表した。

同小委員会審議結果においては,「同条約加入に当たっては,加入に伴って新たに保護されることとなる外国の実演・レコードなどの我が国における利用について,円満な秩序が形成されるよう,あらかじめ条件を整備しておくことが必要」とされていたが,我が国の権利者団体と外国の権利者団体の間等において,二次使用料等に関する協定が結ばれていることなどにより,同条約加入に当たっての条件整備の見通しは得られたと言うことができる。

このため,平成元年3月,実演家等保護条約締結案件と,同条約により我が国が保護の義務を負うこととなる実演等を著作権法上保護される実演等に加えることなどを内容とする「著作権法の一部を改正する法律案」が国会に提出され,第114回国会において同条約の締結が承認されるとともに,同法律案は可決成立し,6月28 B!こ法律第43号として公布された。


(3) 今後の課題

現行著作権法施行後における複製技術,情報処理技術,電気通信技術などの発達は目覚ましく,これに伴い著作物の新しい利用手段や伝達手段等の開発・普及が急速に進んでいる。このため,著作権制度は新たな対応策を講じる必要に迫られている。現行著作権法制定以後生起したいくつかの著作権問題に対しては,著作権審議会の審議の成果に基づき,法改正を行うなどの対応に努めてきたが,今後とも次のような問題に対して的確に対応していく必要がある。

1) 出版者の保護関係

複写機器の発達・普及に伴い,出版物からの複写・複製が頻繁に行われ,出版者の出版活動に影響を与えているが,出版物の複写利用に関し,現行著作権法上,出版者は独自の権利を認められていない。このため,著作権審議会は,出版者の法的保護の問題について,第8小委員会において昭和60年9月より検討を行っていたが,昭和63年10月,出版者に複写を中心とした出版物の複製について一定の権利を認めることが適当であるとする中間報告書を公表した。同小委員会は,中間報告書に対する関係団体から寄せられた意見を踏まえ,最終報告を取りまとめるための検討を行っている。

2) コンピュータ創作物関係

著作物等の作成過程において,コンピュータが利用されることが多くなってきており,造形美術や設計図の作成等,多様な分野において利用されている。このため,コンピュータを用いて作成される「コンピュータ創作物」に関する著作権問題について,著作権審議会は,コンピュータ創作物の現状及び今後の発展動向を把握するとともに,コンピュータ創作物の著作物性,コンピュータ創作物の著作者,そのほかコンピュータ創作物の作成・利用に関する問題など,コンピュータ創作物に関する著作権問題全般について,第9小委員会において昭和61年3月より検討を行っている。

3) 私的録音・録画関係

個人的に又は家庭内で使用することを目的として行われる著作物の録音・録画については,私的使用のための複製として,著作権者等の許諾を得る必要はないこととされている(著作権法第30条)。しかし,録音・録画機器の著しい発達・普及に伴い,私的録音・録画が容易にかつ頻繁に行われるようになり,著作権者等の経済的利益が脅かされているという事態が生じている。この問題については,著作権審議会第5小委員会(昭和52年10月〜56年6月)等において検討が行われたが,結論としては,直ちに特定の対応策を採用することは困難であるとされた。このため,著作権審議会は,改めてこの問題を検討するため,第10小委員会を設置し,問題解決のための具体的な方策について,昭和62年9月より検討を行っている。

4) コンピュータ・プログラムに係る著作権問題

コンピュータ・プログラムの開発には多大の知的労力と経費を必要とする一方,それを複製することは比較的簡単であるため,コンピュータの急速な普及に伴い,コンピュータ・プログラムの無断複製等の紛争が多発し,プログラムの適切な法的保護の確立が重要な課題になった。

そのため,昭和60年の著作権法の一部改正により,コンピュータ・プログラムの著作権法上の保護の明確化を図ったところであるが,プログラム関連の産業は近年急速に発展したものであり,プログラムの著作権に関する判例も少なく,また,プログラムの作成,利用にかかわる関係者の著作権に対する意識も高いとは言い難い。そのため,著作権法を現実に適用する場合,保護されるプログラムの範囲,プログラムの委託開発等における権利関係などのプログラムの保護をめぐる問題が予想される。

このため,文化庁では,学識経験者や実務家の協力を得て,昭和62年12月より,プログラムの著作権の保護に関する諸問題の調査研究を行い,その解釈・運用について一層の明確化が図られるよう努めている。


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