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2部   文教施策の動向と展開
第5章  学術研究の振興
第7節  大学と産業界等との研究協力の推進
1  社会的協力・連携のための諸制度


大学の学術研究は,人文・社会科学,自然科学のあらゆる分野にわたって研究者の自由な発想による創造的な研究を展開し,併せて,優れた人材を養成することを基本的使命としている。しかし,近年,社会の各方面から大学の学術研究に対して,具体的な諸課題の解決等のため多様な期待と要請が寄せられている。

我が国の大学がその本来の使命を踏まえながら,大学の主体性の下に,可能な限り社会の諸要請に適切に対応し協力していくことは,大学が社会に貢献するという観点からも,また,大学の学術研究に有益な刺激を与えるという観点からも,有意義なことである。

このため,今後とも社会との協力・連携を積極的に推進していく必要がある。


(1) 民間等との共同研究制度

国立大学では,民間等外部からの研究上の諸要請に応じる方途として,従来の,受託研究と受託研究員受入れの制度に加え,新たに昭和58年度から民間等と共同研究を行う制度を発足させた。

民間等との共同研究については私立大学等でもその例がみられるが,国立大学では,民間等から研究者や研究経費等を受け入れ,受入れ大学の教官と相手方研究者とが共通の課題について共同して研究を行うものである。

本制度に対する国立大学と,民間の双方の関心は年を追うごとに高まってきている。初年度(昭和58年度)には21大学が56件の共同研究を実施し,66人の共同研究貝を受け入れたが,5年後の63年度には大学数で3.6倍,件数で10.4倍,人数で10.6倍に増加した。また,平成元年度予算額は33億7,000万円を計上しており,480件の実施を見込んでいる( 2-5-6 )。

昭和63年度に実施した共同研究の分野別の内訳をみると,583件のうちセラミックス等の材料開発関係184件(32%-全体に占める割合。以下同じ),電子顕微鏡等の機器開発関係141件(24%),ソフトウェア関係80件(14%),バイオテクノロジー関係等178件(30%)となり,先端科学技術に係る広い分野にわたっている( 2-5-7 )。


(2) 受託研究制度

受託研究制度は,国立大学の教育研究上有意義である場合に民間等から委託を受け,大学等の教員が公務として研究を進めるものであり,これに要する経費は委託者の負担となる。

昭和63年度の受託状況は,件数で1,919件,金額で41億1,000万円である。受入金額,受入件数とも年々増加しており,これを昭和54年度当時と比較すると件数で1.7倍,金額で2.1倍になっている( 2-5-8 )。

平成元年度は,更に受入額の拡大に努めている。

2-5-12  民間等との共同研究の実施機関数

2-5-6  民間等との共同研究の実施状況

2-5-7  民間等との共同研究(分野別)


(3) 受託研究員制度

受託研究貝制度は,民間企業等から派遣される主として理工系の現職技術者や研究者に対し,大学院レベルの研究の指導を行い,その資質能力の向上を図るものである。昭和63年度には,理工系の大学院又は附置研究所を置く国立大学や理工系の大学共同利用機関の約60機関に,合計1,025名の研究員を受け入れており,これを昭和54年度実績と比較すると1.4倍に増加している( 2-5-9 )。

なお,平成元年度以降は,従来理工系のみに受入れが限られていたものを,人文・社会系を含めたあらゆる分野に拡大した。これは,近年の社会の各分野における学際的研究,技術革新の進展に伴うものであり,社会の多様な要請にこたえようとするものである。


(4) 奨学寄附金

奨学寄附金は,国立大学等が学術研究や学資等の助成を目的として民間等から受け入れるもので,学術研究の振興・活性化に重要な役割を果たしている。

近年,制度の趣旨に則して,受入れ手続きや支払方法等の改善に努めたことともあいまって,受入実績も順調に増加している(2-5-10 )。

昭和63年度の受入金額は,352億円となっており,これを54年度実績と比較すると4.3倍に増加している。

奨学寄附金については,一層有効適切な使用を実現するため,これまで,寄附者の意思に反しない範囲内で基金的に運用したり,さらには,寄附者の寄附意欲を高めるために,寄附者の姓名等を付すること等を行ってきたが,昭和62年度には,奨学寄附金を財源とする講座や研究部門の設置・運営を可能にするため文部省令が改正された。この結果,平成元年4月現在,6大学で15の寄附講座又は寄附研究部門が開設されている。

奨学寄附金は個人,法人を問わず広く受け入れている。法人が寄附する場合は一般の寄附金に係る損金算入限度額とは別枠で寄附金の全額が損金に算入されることとなっている。また,個人が寄附する場合は総所得金額の100分の25から1万円を引いた範囲内で寄附金の額を総所得金額から控除できる優遇措置がある。

2-5-8  受託研究受入状況

2-5-9  受託研究員の受入状況

2-5-10  奨学寄附金の受入実績


(5) 日本学術振興会の産学協力

日本学術振興会は,その創設以来,学界と産業界の第一線研究者により,主題別の「産学協力研究委員会」を設け,将来の技術開発を目,指す上で重要となる主題を選定し,研究協議,情報交換等を重ねている。

その結果,非破壊検査の基幹的手法である「超音波探傷法」の理論面の取りまとめと,日本工業規格となった探傷器の「感度標準試験片」の開発(製鋼第19委員会)にみられるように,多くの新しい技術の開発や技術の改良を基礎づける知見を得ている。

昭和57年度からは産学協力諸事業を長期的展望の下に全体として総合的,組織的に推進するため,「総合研究連絡会議」を設け,産学協力の新しい分野を開拓する場として活用している。本連絡会議の方針に基づき,取り上げるべき研究分野,課題ごとに「研究開発専門委員会」を新たに設け,学術の社会的協力・連携の推進を図っている。現在活動中の委員会として,ヒト・ゲノムに関する委員会と生物-電子工学インターフェースに関する委員会がある。


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