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2部   文教施策の動向と展開
第5章  学術研究の振興
第1節  施策の概要


学術研究は,本来,真理の探求を目指して行われる普遍的な知的活動であり,それは,未知なるものを探求するという人間の基本的な知的欲求に根ざすものである。そして,その成果は人類の知的共有財産としてそれ自体優れた文化的価値を有するが,その応用や実用化を通じ,社会的諸課題を解決し,国民の日常生活を支え,これを豊かにする役割を果たすなど,国家・社会のあらゆる分野の発展の原動力となっている。

近年,社会・経済の急激な変化・発展や世界的な科学技術重視の傾向など,学術研究をめぐる諸情勢の進展は誠に目覚ましいものがある。こうした中にあって,我が国はもとより広く人類社会の発展を図るため,学術研究の重要性が改めて強く認識され,その一層の振興を図るべきであるとの社会的要請が高まってきている。

我が国は,明治以来,欧米先進諸国の優れた研究成果の積極的な吸収に努め,これを基盤として学術研究の発展に努力してきた。その結果,今日では,世界の第一線級と認められる優れた研究も増加しており,我が国の学術研究水準は急速に向上している。今後は,国際的に高い評価を受けるような独創的・先端的な学術研究をより一層推進し,世界の学術の進展に積極的に貢献していくことが強く求められている。

例えば,今日,フロンガスによるオゾン層の破壊,地球温暖化,砂漠化など地球環境をめぐる問題が,一国民生活を脅かす深刻な問題となってきており,その解決は人類の将来にとって重要な課題となっている。これらの解決のため,科学的調査研究による因果関係の究明,将来予測及びその対策などについて,研究体制の整備,国際共同研究の推進,人材養成等が強く求められている。

また,人間を始めとする主要生物のゲノム(個々の生物の全遺伝情報を担う染色体)の全遺伝情報を解読することを目的とするヒト・ゲノムプログラムの推進は,生物の発生・分化の解明や脳・神経等の高次機能を含めた生物の機能解析などバイオサイエンスの飛躍的発展をもたらすとともに,遺伝子に原因があると考えられる疾病の診断,治療法の開発等に大きな成果をもたらすものと期待されている。

文部省では,これらの状況に対応し,基礎研究の中心的担い手である大学等における学術研究を一層振興していくため,従来から学術審議会や臨時教育審議会の答申等を踏まえつつ,学問の全分野にわたる基盤の形成,研究者の自主性の尊重,研究と教育の一体的推進の三点を基本的考え方として,次の諸点に重点を置いて積極的に諸施策を推進している。

第一は,研究費,研究者,研究組織等の学術研究基盤の整備充実である。このため,独創的・先端的な学術研究を推進するための基幹的研究費である科学研究費補助金の拡充,創造性豊かな優れた若手研究者育成のだめのフェローシップ制度である特別研究員制度の充実,共同利用体制の推進に重点を置いた研究所等の整備,学術情報センターを中心とした学術情報システムの整備等の諸施策を長期的・総合的観点に立って推進している。

第二は,重要基礎研究の積極的な推進である。学問上重要な意義を有し,また,社会的要請の極めて強い重要な研究分野,例えば,加速器科学,宇宙科学,核融合研究,がん研究等の生命科学などについては,その重要性が高いことから,世界的な研究動向や我が国の現状を踏まえつつ,その積極的な推進を図っている。

第二は,大学と産業界等との研究協力の推進である。産業界を始めとする社会の各方面からの大学の学術研究に対する多様な要請に対し,大学が本来の使命を踏まえながら,大学等の主体性の下に,可能な限り社会の諸要請に適切に対応し協力していくことは,大学が社会に貢献するという観点からも,また,大学の学術研究に有益な刺激を与えるという観点からも,有意義なことであると考える。このような見地に立って,民間等との共同研究や共同研究センターの整備等を推進している。

第四は,学術の国際交流・協力の推進である。学術の国際交流・協力は,本来,普遍的な知的活動である学術研究活動の内在的要請であり,その発展のためには,国境を越えた研究者の自由な交流・協力が必要不可欠である。また,近年の地球環境問題のように一国では対応し難い問題が増加しており,このような観点からも国際交流・協力の重要性が高まっている。学術の国際交流・協力は,我が国の学術水準の向上に資することはもとより,世界の学術の進展にも寄与するものである。このため,国際共同研究,研究者交流,国際研究集会,学術情報の流通等を積極的に推進している。

なお,最近の学術研究をめぐる動向等に的確に対応して,推進すべき研究分野等を機動的,弾力的に定め,重点的に研究者及び研究費等の整備充実を進めることにより,積極的に学術研究の振興を図るための新たな方策について,平成元年7月に学術審議会から文部大臣に対して建議がなされたところである。


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