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1部   初等中等教育の課題と展望
第3章  諸外国における初等中等教育の動向
第6節  ソ連
2  教育内容・方法の改善



(1) 初等中等教育機関の多様化・充実

1984年の「普通教育学校と職業学校の改革の基本方針」を受け,1986年より義務教育段階の教育を充実させるための具体的措置として,6歳児就学への移行が行われ,義務教育年限が1年延長された(10年制から11年制へ,7歳から18歳までの11年制をとっていた一部の共和国では12年制へ)。また,従来は普通教育を行っていなかった2年制の職業技術学これにより後期中等教育は,中等普通教育学校第10・11学年,中等職業技術学校,中等専門学校(3〜4年制の専門家養成機関)の三つのコースにおいて中等普通教育を履修し,職業資格を取得することが義務づけられた。

しかしながら,6歳児就学については,グルジア,キルギスなど既に6歳児就学を完全実施している共和国を除いては,設備や教員の不足から実施が困難であり,2期制,3期制をとっている学校や幼稚園を利用して6歳児の教育を行う地域が多く,1987年度にソ連全土の6歳児のうち第1学年の教授要目に基づく教育を受けた子どもは42%であった。後期中等教育段階においては,普通教育と職業教育の導入をめぐり混乱が生じ,中退者が増加し,その数は,全日制中等普通教育学校では年間約30万人(在籍総数の約6%),中等専門学校では約25万人(約9%),中等職業技術学校では約20万人(約5%)にのぼっている。(1989年8月1日付「教員新聞」)。

このため,ソ連邦国民教育国家委員会と臨時調査研究会は学校制度の見直しを行い,1989年度からは,5歳と6歳の時点における医学・心理学的診断の結果に基づき就学の年齢を判定し,初等教育段階は3年又は4年間と弾力的にすることとなった。続く前期中等教育段階は基礎学校段階と名付け,一律に5年間とする。

後期中等教育段階は,2年又は3年とし,中等普通教育学校への入学者を増やし,第11学年修了後に2〜3年制の中等専門学校及び1年制のおける職業資格取得の義務化は廃止された。今後は,人文,物理-数学,別学校及び特別クラスの増設が図られ,学期中の転校も認められるようになるなど学校選択の自由が拡大され,生徒一人一人の個性に対応した教育が提供されるようになる。

1-3-13  後期中等教育在学者数の変遷


(2) 教育課程の改善

1984年の改革においては,教育内容を精選し,生徒の負担を軽減することに重点を置いた教育課程,教科書,教材の改訂を行い,体育,芸術教育,労働教育の時間数を増やし,知育偏重の傾向を是正する一方,新しい教科が設けられた。1986年度より導入された新教育課程においては,第1〜2学年に,教科学習の基礎として必要な生活体験を豊かにするために合科的性格の科目「身近な自然と社会」(1989年度より科目名は「人間と世界」となる)が導入された。上級学年では,科学技術の発展や離婚家庭の増加などの社会問題に対応するために「情報処理とコンピュータの基礎」(10・11学年)と「家庭生活の倫理と心理」(9又は10学年)が新設された。

また,政治・社会・経済のペレストロイカの過程における社会の民主化の動きに対応するため,1988年度より次のような教育内容の改善策もとられている。

その第一は,第10・11学年の「歴史」及び「一般社会」の教育課程を改訂し,1930年代のスターリンによる粛正などこれまで歪曲されていた歴史上の事実が解明され,新しい歴史評価に関する議論が盛り込まれた。

第二は,構成共和国の自主性の拡大の要求や,民族間の対立など深刻化する民族問題に対応すべく,自民族の文化に関する教育と他民族の文化を理解するための族際教育の強化が図られている。具体的には文学,歴史,芸術の教育内容に関し,各地域・学校の裁量の幅を拡大し,民族語とロシア語のバイリンガル教育を振興している。

第三は,自主的かつ創造的な思考力を有する人間の育成を目的とし,生徒一人一人の個性を伸ばす教育を施すための教育課程改革が進められている。選択科目は,初等教育段階から体育,美術,労働教育などに関し一部導入し,前期中等教育段階では,必修教科を全体の75〜80%とし,残りの時間を選択科目や課外活動にあてる。後期中等教育段階では,教科の統合により必修の教科数を従来の11教科から5教科程度に減らし,選択科目を大幅に導入するとともに,学校や学習形態を生徒が選択できるようにする。

教育方法については,受験を過度に意識し知識の記憶に重点を置いた従来の方法を改め,子どもの認識力や創造力の発達を促進するために,教師の個性を生かした教材や教授法を開発し,ゼミナール,討議,実習など教師と生徒の対話を重視した多様な授業形態を取り入れ,創意工夫にあふれた授業を行うことが奨励されている。

教育条件の改善のために,学級編制の基準については,第1〜9学年では40人から30人へ,第10・11学年では35人から25人へと10人減らし(1986年度入学の第1学年から適用し,向こう1997年までに完全実施の予人を超える場合,2グループに分けて行う措置も講じられている。

い科目が3科目以上ある場合は原級留置きとする制度が教師と生徒双方の心理的負担となっていたことから,1988年度末よりこの進級方式を弾力化し,3科目に落第点がある場合でも,それらの科目については成績表に「履修済み」と記載し,進級・卒業を認めることになった。


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