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1部   初等中等教育の課題と展望
第3章  諸外国における初等中等教育の動向
第5節  西ドイツ
2  教育内容・方法の改善



(1) 基礎学力の確保

初等教育については,1970年7月に各州文部大臣会議が初等教育における教育方法等の改善について「基礎学校の活動に関する勧告」を決議した後,1970年代を通して科学性を重視した教育が進められてきた。この立場は全面的に撤回されたわけではないが,教育内容が高度になったことや知識面の教育が過度になったことが問題とされた。現在では,多くの州は読・書・算の基礎的学力の向上を図るとともに訓育的な側面を重視し,知的・情緒的側面や社会性などバランスのとれた教育を行うことを強調している。情緒的側面の教育の充実について,各州文部大臣会議は1985年11月,文化の伝達に果たす学校の役割の重要性について述べた「文化と学校」と題する勧告を決議しているが,その中で芸術教育の重要性を強調している。また,1988年,教育計画と研究助成に関する連邦・各州委員会(BLK)は芸術教育をモデル実験の重点領域とした。

ギムナジウム上級段階については,1970年代に,生徒に共通の基礎教育を確保するとともに能力・適性を考慮した教育を行うことをねらいとして,各教科ごとに基礎的知識を習得する基礎コースと広く深い知識を習得する重点コースが設けられ,生徒はいくつかの基礎コース(基礎教科)と二つの重点コース(重点教科,そのうち一つは外国語か数学か自こうした選択制の拡大は基礎学力の不足を招き,1987年12月の各州文まで履修する,2)歴史,または歴史をその部分として含む社会科学科目を第12・13学年の4学期間(2年間)履修する,あるいは歴史をその部分として含まない社会科学科目を選択した場合には歴史を少なくとも2学期間(1年間)履修する,3)自然科学科目1科目を最終学年まで履修する,など主要教科について必修を増やすことが決定された。

また,ギムナジウム上級段階においても職業・技術教育を重視すべきであるとの立場から一部の州で設置されている大学入学資格(アビトゥア)と職業資格の両方を同時に取得できる課程については,その修業年限を通常のギムナジウム上級段階よりも1年長い4年間とすることが決定された。これらの改革は,1989年度にギムナジウム上級段階に入学(進級)する生徒から適用される。

さらにギムナジウムの修了時に各州ごとに行われている大学入学資格取得試験の要求水準の統一を図るために,教科ごとに出題や採点等の基準を定めた現行の統一的試験基準を改訂することも決定されている。

なお,初等中等学校では6段階の絶対評価による成績評価が行われており,成績により落第などの措置が講じられている。落第する者の割合は,連邦統計局によれば,学校種類・学年により違いはあるが,実科学校第9学年では7.8%,ギムナジウム第9学年では7.2%(連邦平均,1984学年度)に達している。


(2) 情報技術教育と環境教育の推進

社会の進展に対応して導入された新しい教育内容として,情報技術教育と環境教育を挙げることができる。

教育計画と研究助成に関する連邦・各州委員会は,1984年12月,情報技術教育に関する大綱構想(「学校及び職業教育における情報技術教育に関する大綱構想」)を決定し,前期中等段階において情報技術に関する基礎教育を,後期中等段階において専門教育を行うことを提言している。

多くの州は後期中等段階において「情報学」という名称の独立した教科を設けており,また前期中等段階では一部の州が独立した教科を設けているほか,数学などの授業において情報技術に関する教育を行っている。

各州文部大臣会議の報告(1986年2月)によれば,コンピュータの設置が最も進んでいるのはギムナジウムであり,85%の学校に設置されている。

また,1980年10月,各州文部大臣会議は「環境と教育」に関する指針を決議し,1986年9月には教育計画と研究助成に関する連邦・各州委員会により,環境教育に関するモデル実験に対し連邦と各州から助成金が交付されることとなった。現在,環境教育について独立した教科は設けられていないが,すべての教科に関わる学習領域とされ,初等段階から後期中等段階まですべての学校において環境保全等に関する教育が行われている。


(3) 職業教育・訓練の充実

義務教育修了後およそ4割の生徒は就職して,企業と定時制職業学校(週に1〜2日)における二本立て制(DualesSystem)の職業訓練を受けている。職業訓練の期間は分野により異なるが通常は3年であり,試験によって修了する。普通教育学校あるいは他の職業教育学校に就学していない者には,定時制職業学校への就学は義務となっている。徒弟制の伝統に立つこの職業訓練制度の基本構造を変える必要はないとされているが,その内容を技術の急速な進展に対応させていくことが課題とされ,工業関係の職種等の教育・訓練内容の改訂が行われている。

また,全日制の職業教育学校として,在学者が1987年現在で30万人を超える職業専門学校,5万人強の上級専門学校などがあるが,そのほかに職業教育の基礎となる理論と実践の学習を行う「職業基礎教育年」と設けられている。職業学校などを利用して行われるこの教育を受けると,準備学年」という名称の全日制の職業準備教育も行われており,両者を合わせるとおよそ8万人の生徒が在籍している。20歳以下の失業率は6.6%(12万8千人,1987年)と他の欧州諸国に比べて良い状況にあるが,これらの機関は,若年失業者を吸収しその教育を行うという役割も果たしている。


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