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1部   初等中等教育の課題と展望
第3章  諸外国における初等中等教育の動向
第4節  フランス
2  教育内容・方法等の改善



(1) 教科カリキュラム等の再検討

今日の児童生徒の学習意欲を阻害しその学習効果の向上を妨げている大きな要因として,初等中等学校のカリキュラムが過密・過重であることが近年しばしば指摘されており,一方,現在の教育内容・方法が科学技術革新の時代にそぐわないとの批判も少なくない。

こうした専門家の声にジョスパン文相は,1988年12月,教育内容・方法の根本的再検討の意向を表明し,10の教科領域等について教育内容・方法検討委員会を設置した。

高名な社会学者P.ブールデューと生物学者F.グロ(ともにコレージュ・ド・フランス教授)を全体の審議プロジェクトの指導・調整役とする監督委員会の下に,大学教貝・研究者,初等・中等学校教員,中央総視学官,その他の専門家たちを委員とする九つの教科領域別の委員会(数学,生物,化学,地球・宇宙物理,物理,経済,哲学・認識論,歴史・社会学・社会史・地理,言語・文学)が設置され,「教育内容の見直しとその軽減」,「各教科間のより適正な配分」,「知の内容及び方法の進展を果は1989年半ば以降にまとめられる予定である。

る上,中等学校においては中学校3年で15%,高等学校1年で17%等,近年かえって増加の傾向すらみられる原級留置き問題については,もはやこれを学力水準を保つフランス固有の修学慣行とは見なさず,むしろ「その教育効果は疑問」とする見方が強く採り入れられている。特に小学校では現在の学年ごとの厳しい進級認定をやめて5年間を二つの「課程級」(cycle)編成とし,原則として各課程級内では落第させないという新しい進級システムを導入することとなった。

さらに,小学校から高校まで学習困難者を対象とする「指導学習」(教師がつく無料の補修授業)を実施するほか,中等学校については生徒の進路指導を一層きめ細かく行い,個々の生徒が学習意欲を失わず,かつ自分の資質・適性に最もよく合致している課程・コースに入れるような柔軟な進路選択システムを採り入れるという。このほか,ヨーロッパ諸国で最も少ない部類に入るという年間授業日数(約180日。毎年省令で定める)についても,年間・週間・1日の学業時間と休業時間との適正な配分(「学習リズム」)の観点から再検討される予定である。

総じてジョスパン改革は,「児童生徒を教育システムの核心に」位置付け,「教育という公役務が児童・生徒・学生を起点として発想され組織される」という児童生徒中心原理(及び親の学校教育への参加)の観点を法制上かつてなく強く打ち出した改革として注目されているが,その実行可能性については厳しい見方も出ている。


(2) 高校の条件整備と拡充

国民の在学年数が大幅に伸び,高校または大学に在学する18〜20歳の若者の数は過去4年間に30万人も増加した。そのことは国民の教育水準の向上をもたらした反面,学校特にリセ(普通高校)の学級規模の膨脹とその結果としての学習条件の悪化を招いたため,政府は,とりあえずリセについて今後5年間で35人以上の学級を解消することとした。ちなみに,現行のリセの学級編制基準は第1〜2学年が40人,第3学年が35人とされている。全国の平均学級規模は29.9人(公立リセ。1985年)であるが,大都市圏では40人を相当上回っているところも多く,近年しばしば社会問題化していた。

なお,それについては「地方分権法」により1986年からリセの設置者が従来の国から「州」(regions)へ移ったため,政府はリセ新増設のための州への国庫補助を強化する方針を打ち出している。

こうした措置により政府は,西暦2000年を目途に,中等学校生徒で最低限の資格(職業適性証書,職業教育修了免状等)も取れずに中退する者の比率を現在の半分に減らし(現在約11%),同時に,18歳人口の65〜80%をバカ口レア(高校卒業資格,兼,大学入学資格)取得にまで至らせるという。

バカ口レアには従来からの「普通バカロレア」,「技術バカロレア」のほか,1985年に新設された「職業バカロレア」(2年制の職業リセ修了者に更に2年の修学で受験資格を与え,彼らに大学進学の道を開いた)がある。現在その3種の合計で18歳人口の32%前後が取得しているが,今後は特に職業バカロレア取得課程を充実させ,これまで様々の事情で後期中等教育の「外」にいた約30%の若者を学校教育に吸収ないしは呼び戻すとしている。


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