ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
1部   初等中等教育の課題と展望
第3章  諸外国における初等中等教育の動向
第4節  フランス
1  初等中等教育改善の背景・方向


「1986年にフランスで支出された総教育費3,060億フランのうち,実に3分の1の1,000億フランが,学校教育の不首尾の後始末のために使われている」-政府の諮問機関「経済社会評議会」のアンドリュー委員会が,このようなデ-夕を挙げて今のフランス公教育の問題状況を指摘したのは,第1期ミッテラン政権の終わりに近い1987年11月のことであった。

フランスでは,1980年代に入って社会党主導のミッテラン政権により,様々な教育分野の改革・改善が推進された。特に,1970年代に行われた「アビ改革」等の一連の保守政権下での教育改革が結果的に基礎学カの向上に失敗したとの認識から,ミッテラン政権下では,合科授業「めざまし活動」の解体やテクノロジー教科の拡充等を中心とする小中学校の力リキュラム刷新に力が入れられた。

しかし,経済再建や通貨安定に所期の目標を達成できず教育改革への財政措置が思うように進まなかったことに加えて,政権の最後の2年間は社会党の大統領とシラク保守内閣とのいわゆる「コアビタシオン(保革共存)体制」となったため,教育政策が一貫性を欠き,教育改革は右に左に揺れ動いて十分な効果を上げ得なかったとされる。

冒頭に引用した諮問委員会の分析も,そうした状況の中で行われたもので,「青少年の大量の失業が,その労働力人口の10分の1以上を長期の社会疎外に追いやっている」現実とも併せて今や学校教育の根本的な革新が急務であり,それなしにはフランスの経済・社会が危機に瀕しかねないのみならず,エレクトロニクス・コンピュータ・ハイテクによる世界的な「第三の産業革命」(アンドリュー委員長)を乗り切れないだろうとの懸念も表明された。

問題となった学校教育の不首尾による年間1,000億フラン(約2兆1千中等学校中退者の救済措置(600億フラン)のほか,伝統的な国語・数学中心の硬直的な系統学習の結果等による小学校から高校までを通じての他国に類をみない極めて多い原級留置き(落第)への対処によるもの(250億フラン)等であり,こうしたことから,先決すべきは何よりも初等中等教育の改革であるとの認識が,教育当局者にも学校関係者にも広く行きわたったのである。

このような状況の下で,1988年5月,大統領の再選により発足した第2期ミッテラン政権(任期は1995年まで)は,「教育最優先」路線を掲げ,ロカール社党・中道連合新内閣においてジョスパン文相に首相に次ぐ第2位の国務大臣の地位を与えて「21世紀の学校像」を志向する教育改革の準備に着手させた。

同文相は直ちに実行可能ないくつかの短期的施策を決定する一方,中長期的な教育計画の策定を進め,1989年7月,36か条の条文からなる「教育に関する基本法」(ジョスパン法)を制定,公布した。

この法律やその他の改善施策をみると,いわゆるジョスパン改革の骨子は,大統領選でミッテラン陣営が掲げた「学校における学習成果の向上」や「1992年の欧州統合市場形成への学校教育の対応」等を大きな目標としつつ当面の課題として,1)現在32%であるバカ口レア取得率(取得者の対18歳人口比)を65〜80%にまで高めること,2)科学技術革新に対応した教育内容・方法の刷新,3)都市圏高校の学級過密,高い小学校落第率・中等学校中退率など目下の学校教育の緊急課題の解決,等にあるとみられる。

なおジョスパン文相は,これらと並行して久しく懸案となっていた教を続けてきたが,同4月,初等中等学校教貝の給与・手当を3〜4割増とする等の大幅な改善案を提示した。文相は,これにより教育改革推進への教員側の全面的な参加・協力を取りつけられることを期待している。

1-3-7  フランスの学校系統図

1-3-8  小・中学校の落第(原級留置)率


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ