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1部   初等中等教育の課題と展望
第3章  諸外国における初等中等教育の動向
第2節  アメリカ合衆国
3  教員の資質向上


1980年代には,教員の資格に関する諸要件を中心に,教員の質の向上に関して各州の政策に大きな変化が生じた。教員の質に対する市民の関心の高まりにこたえて,教員養成及び免許に関し,多くの州は議会あるいは教育委員会を通して改善策の実施を義務づけた。また,給与水準の引上げ等の人材確保のための待遇改善も行われた。それらには,下記のような措置が含まれている。

1) 優秀な進学者を確保するため,教員養成課程への進学要件を新規に定めた州が多い。教員養成課程進学者の水準の低下は1970年代から指摘されており,また教員免許の交付の際に行われるテストの不合格者が増加したことから,より早い時期に不適格者を見分ける目的で導入されるようになったものである。何らかの形で一定水準以上の学力の証明を要求する政策を実施している州は,1986年現在27州で,残りの23州では個々の大学が要件を設定している。
2) 養成課程の教育内容に関する要件を設定した州の数は,1986年までに全体の3分の2に達した。一般教育,教職に関する専門教育及び担当する教科の教育について一定の履修量を定めるほか,更に特定コース(科目の履修を義務づける州も現れている。例えば,複数の人種・民族で構成されている合衆国の社会のよりよい理解のためにウエスト・バージニア州では多文化教育を,またイリノイ及びウィスコンシンの両州では通常の子どもとは異なるニーズを持つ児童・生徒への理解を深めるためのコース履修を要求している。
3) 教員養成課程の教育内容をより適切にするため,担当する教科別及び学年別に教員資格を細分化し特定する州が増加した。例えば,マサチューセッツ州は52種類の資格(免許)を設けた。
4) 伝統的な免許制度のほかに,有能な社会人等の登用を容易にする目的で,新しい養成及び免許の制度を導入する州が1984年の8州から1986年の23州へと急増している。
1-3-4  教員能力テストのタイプ別実施状況(1980〜1986年)

5) 教員が知識及び技能に関し,適切な教育・訓練を受け,満足すべき水準に達しているかを測定・評価することが多くの州で行われるようになった。このような目的で養成課程への進学時,修了時及び免許交付時のいずれかの時期に能力テストを義務づけているのは,1986年現在,46州である。 1-3-4 は,1980年から1986年までの義務化の推移を能力テストのタイプ別に示したものである。
6) 新卒者のための教育・訓練プログラムを研究または立案中の州(18),試行または実施中の州(19)及びそのための立法化が終了した段階の州(1)を合計すると,初任者への特別指導を重視している州は過半数を占めている。
7) 一定期間(一般に,5ないし6年)ごとに免許の更新を義務づける州が増加し,1986年現在32州を数えている。更新の要件は近年厳しさを増しつつあり,例えばカリフォルニア州では,5年ごとの更新に際して150時間の研修を受けなければならない。
8) 改革以前は教員給与の水準は他職種に比べ低かったが,各州では,これを引き上げることで優れた人材の確保を図る政策がとられた。給与水準は1980年から1987年までに全国平均で実質18%,名目では50%強の上昇をみた。
9) 多様な方法を用いて教員の知識及び技能を評価し,その結果を給与水準に反映させる能力別給与制度(メリットペイ・システム)を検討・導入する州が増加した。1986年現在,州が予算措置をとり全州的に実施に踏み切ったのは13州であるが,試行中や学区レベルでの採用等を加えると,ほとんどの州が何らかの形で導入しているといえる。

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