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1部   初等中等教育の課題と展望
第3章  諸外国における初等中等教育の動向
第2節  アメリカ合衆国
2  教育内容・方法の改善


カリキュラムの改善は,1980年代教育改革の優先課題の一つとなっている。各州とも学力の向上を目指す施策を実施しつつある。多くの州でみられるカリキュラム改善策は,ある程度の全州的・全国的共通性や学問的系統性の確保である。そのための具体的方策として,州が採った最も顕著な措置は,共通必修教科及び履修量の設定及び教育内容の学問的水準の引上げ等からなるハイスクール卒業要件の厳格化である。従来は学区の裁量にまかされていた卒業要件を新たに設定,または既に定めていた最低基準の引上げを実施した州は,1988年までに45州に達した。

それらの州では,国語,数学,理科及び社会科等の主要教科について履修するべき単位数の最低基準が引き上げられた。その他,コンピュータ教育を必修とする州が増加している。

州のこのような施策は,カリキュラムの基準化を促進し,達成度が平均より低い水準にある生徒達に従来よりも多くの基礎教科のコースを履修させるのに成功したと報告されている。しかし,それらのコースは,低学力の生徒向けのものに限られており,知的水準に関しては不満足な状態にとどまっているため,カリキュラムの質の向上には寄与していないとの批判もある。卒業要件の厳格化は,基礎教科の共通必修化を促進したが,さらに,履修内容の水準向上及びその完全習得も今後に残された問題点と認識されている。その場合,知識量の増大にとどまらず,創造的及び批判的思考力のような高次の能力の開発が重要視されている。これに関連して,教科書一般の水準向上も課題とされている。

知育と並んで,生徒の公民的資質の育成・向上が重視されている。そのための方策として,公共への奉仕活動参加,民主主義的諸制度の理解及び尊重を実践させるようなカリキュラム及び指導方法の開発に関心が高まりつつある。

改革の進展に伴って新しい動きが現れてきた。その一つとして,内容及び水準に関し多様で特色あるコースを提供し,場合によっては学区の境界を越えた通学を認める「学校選択」への関心の高まりが挙げられる。近年注目され始めている「マグネット・スクール」はその一形態である。1988年現在,少なくとも23州が学区制の廃止または同一学区内での選択の自由を実施あるいはそれについての検討を開始している。また,地方教育委員会の活性化,校長のリーダーシップの強化,校長及び教員の機能と責任を含めた学校のシステム全体の抜本的立て直し(リストラクチャリング)等が新しく改革運動の争点としてあげられるようになった。このような動きの基底にあるのは,卓越性の追求のために多様性を尊重する考え方である。また,学校及び教員に関しその裁量権を従来よりも拡充する一方で,生徒及び学校の所産について各関係者の自己責任をより厳しく求める点で共通している。


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