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1部   初等中等教育の課題と展望
第2章  初等中等教育充実のための施策の展開
第2節  教育内容・方法の改善
1  学習指導要領の改訂


言うまでもなく,初等中等教育は,幼児児童生徒の人間として調和のとれた育成を目指し,次代を担う心身ともに健全な国民の育成を期するということを基本的な使命としている。学習指導要領については,このような基本的な観点を踏まえ,時代の進展に応じて,戦後数次の改訂を行ってきたが,現在は,昭和52年に改訂された学習指導要領に基づき教育課程が編成,実施されている。

ところで,近年における社会の変化には著しいものがあり,これに対応して教育内容の改善を図ることが課題となっていた。すなわち,今日の科学技術の進歩と経済の発展は,物質的な豊かさを生むとともに,情報化,国際化,価値観の多様化,核家族化,高齢化など,社会の各方面に大きな変化をもたらすに至った。しかも,これらの変化は,今後ますます拡大し,加速化することが予想されている。このような社会の変化に対応して,幼児児童生徒が生きていくために必要な資質を養う観点から,教育内容の改善が求められていた。

そこで,昭和62年12月の教育課程審議会の答申に基づき,平成元年3月15日に,幼稚園教育要領及び小・中・高等学校の学習指導要領の全面的な改訂を行った。


(1) 改訂の基本方針

今回の改訂においては,生涯学習の基盤を培うという観点に立ち,21世紀を目指し社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を図ることを基本的なねらいとし,次の方針に基づき各教科等の内容や授業時数等の改善を行った。

1) 心豊かな人間の育成

教育活動全体を通じて,幼児児童生徒の発達段階や各教科等の特性に応し,豊かな心を持ち,たくましく生きる人間の育成を図ること。

2) 自己教育力の育成

社会の変化に主体的に対応できる能力の育成や創造性の基礎を培うことを重視するとともに,自ら学ぶ意欲を高めるようにすること。

3) 基礎・基本の重視と個性教育の推進

国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視し,個性を生かす教育を充実するとともに,幼稚園から高等学校までの各教科等の内容の一貫性を図ること。

1-2-1  教育課程改訂スケジュール

4) 文化と伝統の尊重と国際理解の推進

我が国の文化と伝統を尊重する態度の育成を重視するとともに,世界の文化や歴史についての理解を深め,国際社会に生きる日本人としての資質を養うこと。

今回の改訂は,激しい変化が予想されるこれからの社会において自主的,主体的に生きていくために必要な資質を養うことを目指している。

そのためには,学校教育の現状が知識の伝達に偏っているとの指摘があるが,このような現状を改め,幼児児童生徒が自ら考え,自ら学ぶ教育への質的な転換を図る必要がある。

新しい幼稚園教育要領及び小・中・高等学校の学習指導要領は,幼稚園については平成2年度,小学校については平成4年度,中学校については平成5年度がらそれぞれ全面実施し,高等学校については平成6年度から学年進行により実施することとしている。


(2) 改訂の具体的方針

各学校段階の教育内容は,幼児児童生徒の発達段階に応じて,その成長を保障しうるように構成するよう配慮し,幼稚園から高等学校までの教育を一貫したものととらえ,各教科・科目の編成や授業時数の改善を行った。すなわち,幼稚園教育と小学校教育との関連を一層緊密にするとともに,中学校の段階までは,基礎的・基本的な内容を共通に履修させるようにしながら,おおむね中学校高学年の段階から生徒の能力,適性等に応じることができるように多様な内容を用意して,漸次選択履修の幅を拡大することとした。

各学校段階の主な改善内容は,次のとおりである。

1) 幼稚園

幼稚園教育については,幼児の生活全体を通して総合的な指導を行うという基本的な考え方は維持しながら,その指導が一層充実するよう改善を行った。すなわち,幼稚園教育において,総合的に指導を行うための視点が明確になるようにする観点から,「健康」,「人間関係」,「環境」,「言葉」及び「表現」の五つの領域に分けて教育内容を再整理した。また,幼稚園におけるより適切な教育が行われるようにする観点から,各領域における教育内容を「ねらい」と「内容」に分けて示した。

年間の教育日数については,従前の教育要領では220日以上としていたが,幼稚園の実情や社会情勢に弾力的に対応できるようにする観点から教育週数で示すこととし,年間39週以上とした。さらに,1日の教育時間については,幼児の幼稚園における教育時間の妥当性及び家庭や地域における生活の重要性を考慮して,現行どおり4時間を標準としつつ,幼稚園の実情に弾力的に対応できるように改善を加えた。

2) 小学校

小学校教育については,基礎教育の一層の充実を図る観点から各教科等の内容の改善を行った。特に,小学校低学年については,児童が自主的、主体的に学習や生活をする基礎的な能力や態度の育成を図ることを重視し,児童の直接体験を学習活動の基本に据え,自立への基礎を培うことをねらいとする生活科を新設することとした。これに伴い,低学年の社会科及び理科は廃止することとした。生活科は,学校教育の初期の段階において学習や生活の基本姿勢を形成することを意図したものであるが,これまでの社会科や理科の学習が知識の伝達に偏る傾向がみられるのでこれを是正するとともに,幼稚園教育との関連を一層緊密にすることにも配慮することとしている。

各教科等の授業時数については,中学年及び高学年は従前どおりとしたが,低学年については,新たに設けた生活科に第1学年102単位時間,第2学年105単位時間を充てるとともに,国語の力の充実に配慮し,国語科の授業時数を第1学年34単位時間,第2学年35単位時間増加した (表1-2-1)

1-2-1  学習指導要領改訂後の小学校の授業時数

3) 中学校

中学校については,中学校教育を中等教育の前期としてとらえ直す視点をこれまで以上に重視するとともに,生徒の個性を生かす教育の一層の充実を図る観点から,選択履修の幅を拡大することとした。すなわち,選択教科の種類については,第2学年においては,従前の選択教科(外国語,その他特に必要な教科)に音楽,美術,保健体育及び技術・家庭を加え,第3学年においては,従前の選択教科(音楽,美術,保健体育,技術・家庭,外国語,その他特に必要な教科)に国語,社会,数学及び理科を加えた。また,選択教科の内容についても,一律に定めることはせず,生徒の特性等に応じ多様な学習活動が展開できるよう,学習指導要領で示す内容について,各学校が適切に工夫するものとした。

各教科等の授業時数については,これまで固定的に定められていたものを,今回,教科によって,上限及び下限の幅をもった示し方とすることとし, 1-2-2 のとおり改めた。これは,各学校において,地域,学校や生徒の実態に合わせて授業時数を定めることができるようにするとともに,教育課程の編成の仕方によって選択教科に充てる時数の増加を図ることを可能にするため新たに取り入れられた仕組みである。

1-2-2  学習指導要領改訂後の中学校の授業時数

4) 高等学校

高等学校については,生徒の能力・適性等の多様な実態に応じて多様な教育が展開できるようにするとともに,社会的要請に対応するよう配慮して次のような改善を行った。

第一は,社会科を再編成して地理歴史科及び公民科を新設した。これは,国際的資質や公民的資質の一層の重視,小・中・高等学校教育の一貫性を図ること,教員の専門性の向上による教育の充実などの諸要請に十分こたえるために,時代の要請を踏まえ,中学校までの総合的な社会科学習の上に,高等学校教育における生徒の発達段階や専門性,系統性に即し,地理歴史科,公民科それぞれの教育内容の充実を図ることを目的としたものである。

地理歴史科は,日本及び世界の形成の歴史的過程や世界の風土,人々の生活・文化の地域的特色などについての理解と認識を深め,国際社会に主体的に生きる日本人として必要な,世界的視野の下に日本を比較文化的視点から相対化してみることのできる国際的資質を育成することをねらいとしている。公民科においては,青少年の社会的連帯感や責任意識の低下がみられる中で,民主的,平和的な国家・社会の進展に主体的に寄与しようとする態度の育成を一層重視することとしている。

第二は,生徒の能力・適性,進路等の多様化の実態に配慮し,多様な科目選択ができるようにした。すなわち,普通科目で17科目,職業科目で27科目を増加するとともに,学習指導要領に示す教科,科目以外の教科,科目を普通科や普通教科においても設置することができることとし,多様な教科,科目を設けることができるようにした。

第三は,社会的な要請等を考慮し,必修科目等の改善を行った。すなわち,各教科における必修科目については,社会の変化に伴って高等学校段階の生徒に必要とされる資質を養うという観点などに配慮し,例えば,地理歴史科の世界史を新たに必修科目として位置付けたこと,家庭について男子も必修とすることなどの改善を行った。また,職業教育について,産業の各分野における急速な技術革新の進展や産業構造・就業構造の変化等に適切に対応する観点から,科目の構成の改善などを行った。

各教科・科目の必修単位数については,社会の変化に対応して高等学校段階の生徒に必要とされる資質を養うという考え方に立ち,従前に比べて若干増やすこととし,例えば,全日制普通科男子の場合,必修教科・科目及びその単位数は,7科目32単位から11〜12科目38単位へと増やした。その一方で,地理歴史,公民,理科,家庭の各教科に選択必修制を取り入れ,生徒の興味・関心等の実態に応じることができるよう配慮した。

また,特別活動のうち,ホームルーム活動の充実を図るため,授業時数の示し方を工夫した (表1-2-3)

1-2-3  高等学校の教科・科目新旧対照表(普通教科・科目)


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