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1部   初等中等教育の課題と展望
第2章  初等中等教育充実のための施策の展開
第1節  施策の概要



従来から我が国の初等中等教育は,前章第1節で触れたように,教育の機会均等の確保と教育水準の維持向上を目指して,学校の教育内容や教職貝,施設整備などの全般にわたって必要な制度を設けるとともに,各般の施策を講じてきた。

しかし,従来の制度や施策は,教育の量的な拡大や平均的な教育水準の維持向上のためにはかなりの効果があったが,今日の急激に変化する社会経済状況への対応や将来の発展を展望した場合,ともすれば制度やその運用が画一的・硬直的になっている面があるとの指摘があることをも踏まえ,現状の制度等に工夫・改善を加える必要が生じている。

前章第3節で触れたように,今後は,我が国の初等中等教育は生涯学習の基盤を培うとの観点に立って,幼児児童生徒一人一人の個性をより一層重視するとともに,その個性の伸長を図り,多彩な才能をはぐくむことを目指し,教育内容の改善充実,後期中等教育を中心とした制度の多様化・弾力化,教員の資質能力の向上,教育条件の改善充実等の諸課題に積極的に取り組んでいく必要があると考えられる。

以下,そのような観点から初等中等教育の重要課題について紹介する。

第一は,教育内容・方法の改善である。幼稚園教育要領及び小・中・高等学校の学習指導要領は,昭和62年12月の教育課程審議会答申を受けて,平成元年3月に全面的な改訂を行い,平成2年度から逐次実施に移すことにしている。

今回の改訂では,21世紀に向かって,国際社会に生きる日本人を育成するという観点に立ち,国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視し,個性を生かす教育の充実を図るとともに,自ら学ぶ意欲をもち社会の変化に主体的に対応できる豊かな心を持ちたくましく生きる人間の育成を図ることを基本的なねらいとし,各教科等の内容や授業時数等の改善を行った。また,教育方法も,今回の改訂の趣旨を達成する観点から改善を図る必要がある。

第二は,徳育の充実である。道徳教育は,豊かな心を持ちたくましく生きる人間を形成する上で極めて重要な役割を担っており,今日、道徳教育に寄せる国民の期待も大きなものがある。激しい変化が予想される今後の社会において,自分の生き方を持った人間の育成を図るとともに望ましい人間関係の育成や基本的な生活習慣の育成など社会生活をしていく上において必要な道徳性を身に付けるようにすることが求められている。そのため,道徳教育の内容の改善を図るとともに,その振興方策の一層の充実を図る必要がある。

第三は,生徒指導・進路指導の充実である。児童生徒の問題行動や学校不適応の問題は,今日解決すべき緊要の課題となっている。生徒指導の充実については,個別の問題行動への対応とともに,児童生徒の生活体験,人間関係を豊かなものとするなど学校教育全体を通した指導の充実に努める必要がある。また,進路指導については,単に学校卒業時の就職,進学の指導のみでなく,個々の生徒の生き方とのかかわりの中で,自ら進路を選択し得る能力・態度の育成を重視した指導をしていく必要がある。

第四は,体育の充実である。今日,余暇時間の増大と高齢化の進む中で人々のスポーツ活動に対する欲求はますます多様化・高度化しており,健康に対する関心も大きくなっている。このため,国民一人一人が生涯を通じて自己の体力や能力に合った運動やスポーツに親しむことができ,心身ともに健康で活力のある充実した生活が送れるよう,学校教育の場にあっては,生涯体育・スポーツと体力の向上を重視する観点から,体育の一層の充実を図り,児童生徒の知・徳・体の調和のとれた発達を促す指導が求められている。

第五は,健康教育の充実である。近年の社会環境の急激な変化は,児童生徒の日常生活における身体的活動の減少,精神的負担の増大等,心身の健全な発達に著しい影響を与えるとともに,国民の健康の保持増進の重要性を高めている。こうした状況にかんがみ,心の健康を含め生涯にわたり健康で充実した生活を送るための基礎を培うという観点から,家庭や地域との連携を図りながら,学校の教育活動全体を通じて,健康教育の一層の充実を図ることが求められている。

第六は,国際化・情報化への対応である。国際化については,世界の中の日本人として国際的にも信頼される人間を育てることが重要であり学校や社会における教育・文化活動の中で,世界の国々のそれぞれの固有の歴史,文化,風俗,習慣等に対する理解を深める学習や外国語教育の充実に努めるとともに,日本人としての自覚を深め,我が国の文化や歴史に関する理解の向上を図ることが必要である。

また,情報化については,膨大な情報の中から必要とする情報を入手し,効率的に利用するための情報活用能力の育成を図るとともに教育機器の適切な活用を図ることに努めている。

第七は,後期中等教育の多様化・弾力化である。高等学校への進学率の著しい上昇に伴い,生徒の能力・個性・興味・関心等もまた,極めて多様化しており,今後は,この4月に発足した第14期中央教育審議会における審議等を踏まえつつ,より一層生徒の個性等に応じた多様化・弾力化のための総合的な施策を展開していくことが必要である。

第八は,幼稚園教育の振興である。現在,全国の約3分の1程度の市町村には幼稚園が未設置であるなど,幼稚園教育の普及には地域間格差がある。そのような地域間格差や保護者の経済的負担などの問題を勘案しつつ,幼稚園教育の振興を図っていく必要がある。

第九は,特殊教育の振興である。心身障害児に対する教育については,一人一人の障害の状態等に応じた適切な教育を行うことや小・中学校の児童生徒や教員及び社会一般の人々の理解認識を深めること等が重要な課題となっている。

第十は,同和教育の振興である。同和問題は,日本国憲法に保障された基本的人権にかかわる問題であり,その解決にとって教育の果たす役割は極めて重要である。文部省としては,従来より,国民の基本的人権尊重の精神を高めることをねらいとして同和教育の推進を図るとともに,各般の施策を講じてきており,今後ともその一層の推進に努めることが必要である。

第十一は,教科書制度の改善・充実である。教科書は,小・中・高等学校等において,主たる教材として重要な役割を果たすものであるため,教科書検定制度によって適切な内容を確保する一方,義務教育諸学校の児童生徒には国が無償で給与している。なお,検定制度については臨時教育審議会の提言を踏まえ,平成元年4月に簡明で分かり易い検定制度の実現を目指して教科用図書検定規則等の全面改正を行った。

第十二は,40人学級の推進等教育条件の整備である。学校の規模の適正化を図り,必要な教職員を確保することは教育条件整備上極めて重要な課題であり,教職員定数については,公立義務教育諸学校の第5次改善計画,公立高等学校の第4次改善計画により,所要の改善を行っている。

第十三は,教員の資質能力の向上である。学校教育の成果が究極において教員の力量に負うところが極めて大きいことは,つとに指摘されている。今後社会の変化や幼児児童生徒の能力・適性の多様化などに対応した学校教育を展開していく上で,教員に期待される役割は大きいことから,養成・採用・研修を通じ,その資質能力の向上を図る必要がある。

特に,教員の研修に関しては,新任教員の時期に組織的・計画的な研修を受けることが極めて効果が大きいことから,昭和63年5月に成立した「教育公務員特例法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」に基づき,平成元年度から初任者研修制度を小学校から逐次実施している。


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