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1部   初等中等教育の課題と展望
第1章  時代の進展と教育の質の向上
第2節  学校教育をめぐる諸問題
1  学校教育の諸問題



(1) 学校教育の画一性の問題

国民として必要な知識を共通に習得させ,国民全体の基礎的な能力の向上を図る観点から,我が国の初等中等教育については,これまで種々の施策が講じられ,その充実が図られてきた。その結果,我が国の初等中等教育は,その水準の維持向上の点で,国際的にみても成功を収めている例として注目されており,戦後の我が国の教育施策が量的規模の面のみならず,質的な面においても成果を上げているものと評価できる。

しかしながら,その一方で,我が国の学校教育は制度やその運営が硬直的に過ぎ,また,指導法も画一的であり,どちらかといえば記憶力中心の詰込み教育という傾向が強く,社会の変化や多様化している子どもの実態に十分に対応することができなくなっているとの指摘もしばしばなされる。

社会の変化が更に加速化することが予想される中で,今後は特に自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力や思考力,判断力,表現力などの育成を重視していかなければならない。また,国民の意識や価値観が極めて多様化している今日,子どもの能力・適性や興味・関心を一層重視するとともに,児童生徒の多様な個性が生かされ,創造性が伸長されるよう特に配慮し,学校教育の多様化,弾力化を推進していく必要がある。

一例であるが,文部省が小学生を対象に実施した学習の達成度に関する調査においては,例えば,国語では, 「理解」領域中の「説明的な文章」や「表現」領域の成績が低く,文章構成の工夫,書き手の考えを理解しながら理論的に思考する力や自分の考えを文章に表現する力が弱いという結果が出ている。また,算数でも,「知識・理解」や「技能」の領域に比べ,「数学的な考え方」の領域の成績が低く,記憶再生型の問題の達成状況は良好であるが,文章題で式を立てたり既習のことを応用するなど判断を必要とする領域が弱いという結果になっている。さらに,社会科や理科においても国語や算数と同様に自ら考え問題を解決する力が弱いということも明らかになった。

また,近年我が国の中学校,高等学校で英語を母国語とする青年を多数英語指導助手として採用しているが,彼らは日本の教育の問題点として,生徒が自分自身の意見を持ち,発表しようとする意欲が低い,個性が感じられないこと,授業の中で教師と子どもの対話が少なく,教師の一方的な授業に偏りがちであることなどを挙げることが多い。

さまつさらに校則等の問題についても,あまりに瑣末なことにまで及んで規定しており,生徒の自主性や個性の尊重という観点から問題であるとの指摘があり,また,その硬直的・画一的な内容や運用がしばしば論議の対象となる。

これらの問題は,今後の学校教育の在り方を考える上で極めて重大な問題であり,このような状況を改革していくため,教育関係者の格段の努力が求められている。

1-1-4  達成度調査(ペーパーテスト)結果


(2) 過度の受験競争の問題

受験戦争の過熱化のため,特に中学校や高等学校においては,受験を念頭に置いた教育を余儀なくされており,教師,生徒,保護者のいずれもが,受験戦争に駆り立てられ,精神的にゆとりのない状況に追い込まれている。このような中では,基礎的・基本的な内容をしっかり身に付けさせ,生徒一人一人の個性を生かす教育や将来を十分に見通した進路指導を行うことは極めて困難になっている。

1-1-5  学習塾に通う者の数

このことは,現象面からみると学習塾通いの増加となって表れており,昭和60年度の文部省の調査によれば,学習塾に通ったことのある者は小学生で約180万人,中学生で約270万人と推定され,前回の調査と比べ大幅に増加している (表1-1-5) 。過度の学習塾通いは,子どもたちがその発達段階にふさわしい豊かな生活体験を得ることを困難にし,人間形成に重大な悪影響を及ぼしている。

我が国の社会においては,どの学校段階までの教育を受けたか,同じ学校段階でも「有名校」と呼ばれる学校で教育を受けたか否か,といったことが人生の様々な場面で重視される傾向があり,成人する前の人生の初期の段階において,形式的な学歴を獲得するための過度の競争が行われている実態がある。必然的に各学校に対する評価は学力面に偏って行われる傾向にあり,その結果,特色ある教育を行う学校が必ずしも適切に評価されず,生徒の能力,適性などについての多面的な評価もなされにくい状況にある。

このように,学歴が過度に重視される直接的な原因としては,企業等の採用人事で依然有名校重視の風潮が残っていることなどがよく挙げられる。また,このことには,比較的同質性の高い社会にあって,ペーパーによる客観テストの結果としての点数以外の要素による評価に対して抵抗感が強いという我が国国民の意識も関連している。

1-1-10  学習塾に通わせている理由

いずれにしても,受験中心の詰込み型の教育は創造性に富んだ個性的な人材の育成を図る観点から極めて大きな問題であり,学歴偏重の風潮の是正や入学者選抜制度の改善等その解決に向けて関係者の一層の真剣な取組が期待される。


(3) 児童生徒の問題行動等

非行等の問題行動は,形態を変えながらも依然として衰えをみせていない。

少年非行は,昭和26年,39年に続き58年に戦後最高を記録した第三のピークを迎えた後,やや減少傾向がみられるものの今なお高水準で推移している。今日の少年非行には,万引き等の初発型非行の増加,低年齢化,一般化等の特徴がみられ,その解決は緊要の課題となっている。

学校内においては,昭和50年代後半に校内暴力が多発し,続いていじめが深刻な社会問題となったが,学校,家庭,地域社会が一体となった取組の結果,現在これらは一応の鎮静をみるに至っている。

しかし,新たに,登校拒否の問題が深刻化している。昭和63年度間の登校拒否児童生徒数は,小学生約6千人,中学生約3万6千人に上っており,この数は昭和41年の調査開始以来最多である。

登校拒否は,学校という集団生活の場になじめず登校できないケース,いやがらせにあったことなどから登校しなくなったケース,遊んだり非行グループに入っていたりして登校しないケースなどその態様は区区であり,登校拒否に陥るきっかけも明確に特定できないケースが多く,その原因の究明が困難なものが多い。この問題の解決のためには,学校,家庭,関係機関が一体となって取組を進めることが不可欠となっている。

これらの問題行動等の原因・背景は,学校,家庭,社会のそれぞれの要因が複雑に絡み合っていると考えられるが,

1)学歴偏重の社会的風潮の中で学校での評価も単一の尺度で行われる傾向があること。一人一人の個性,特性を伸長し,豊かな心や情操を育てる心の教育,知・徳・体の調和のとれた教育が十分行われていないこと,
2)家庭において基本的なしつけや生活習慣を身に付けさせることが十分でないこと,
3)都市化の進行などにより,自然との触合いや幅広い生活体験の機会が失われ,集団生活を通して主体性をかん養したり,他への思いやりの心をはぐくんだりする場が失われてきていること,

等の問題が指摘できよう。

したがって,児童生徒の問題行動等の解決に当たっては,子どもを取り巻く幼少年期からの教育環境全体の改善充実を図っていくことが必要であるが,教育の専門機関として学校の役割は大きく,学校は一人一人の児童生徒に応じた学習指導の充実,十分な生徒理解に基づく生徒指導の充実等に一層努めていく必要がある。

また,小・中学校の登校拒否と並んで高校中退も大きな問題となっている。

昭和62年度の高校中退者数は約11万人に達しており,この数は,昭和57年の調査開始以来ほぼ横ばいで推移している。その事由としては,進路変更,学校生活・学業不適応,学業不振が多く,原因・背景としては上記の問題行動と同様の事情もあるが,最近の中退後の進路状況等の調査によれば,中退者のうち再び学校に通い始めたり,将来就学することを希望している者が約半数にも及んでいることもあり,進路指導の改善充実,学習内容の定着のための学習指導の充実など,学校における指導の一層の充実が強く求められる。

1-1-11  主要刑法犯少年の人員及び人口比の推移

1-1-12  校内暴力の発生状況

1-1-6  いじめの発生学校数・発生件数(昭和62年度)

1-1-13  登校拒否児童生徒数の推移

1-1-7  高校中退者数の推移(公・私立)


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