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第4章
教育投資の配分
1 国民所得のうちの教育投資
(2) わが国の史的考察


明治以降におけるわが国の国民所得と公教育費の実額の推移をみると,次ページの図のようになる。

国民所得は,昭和15年まではほとんど一貫して順調に増加している。第二次世界大戦は,わが国の経済に深刻な影響を与えたため,昭和21年の国民所得は,大正14年のそれを下回る結果となった。しかし,その後,国民所得は急速に上昇を続けている。

一方,教育費の伸びをみると,明治38年と大正4年にやや減少しているが,これはそれぞれ日露戦争と第一次世界大戦中の軍事費支出の影響によるものである。さらに,昭和10年以降,昭和21年までのいちじるしい減少は,日華事変から第二次世界大戦にかけての軍事費支出により,教育費が大きく圧迫されたことによるものである。第二次世界大戦後は,国民所得の伸びとほぼ併行して教育費も著しい伸びを示している。

図22 国民所得と公教育費の伸び

次に,国民所得に対する公教育費の比率がどのように変化してきたかをみると,次ページの図のとおりである。

公教育費の比率は,明治18年の1.8%から明治33年には2.1%,さらに明治43年には2.9%に上昇しているが,大正の初めにやや低下し,大正の末期から昭和の初期にかけて再び増加し,昭和5年には4%に達してぃた。しかし,その後は,満州事変から日華事変,第二次世界大戦にかけてしだいに低下し,昭和15年には,明治33年当時とほぼ同じ比率に落ちている。しかし,第二次世界大戦終了後は著しく上昇し,昭和25年には,戦前の水準を越えて4.8%に達し,昭和30年にはなおも増加して5.5%となつた。このように国民所得に対する公教育費の比率は,数十年のうちに約2%から5%以上へと急速に増加してきたのであるが,このことはわが国の教育を急速に整備するのに効果的な役割を果たしたといえる。ヨーロッパの多くの国々が,公教育への投資を緩慢な歩みで行なってきたのと対照される。しかし,わが国の場合,見落とすことのできないのは,昭和31年以降この公教育費の占める比率が停滞もしくは低下の動きをみせていることである。すなわち,国民所得は近年著しく上昇しているにもかかわらず,公教育費の占める比率は伸びていない。

図23  国民所得に対する公教育費の比率の推移

アメリカ合衆国における国民所得に対する教育費(私立学校費を含む)の比率の動きをみても,次の図にみるように,近年,比率がいちじるしく上昇していることがわかる。

図24  日本とアメリカ合衆国の国民所得に対する公私教育費の比率

わが国の場合もアメリカ合衆国の場合も,比率は第二次世界大戦後著しく伸びているが,わが国の比率は,昭和30年以後低下もしくは停滞しているのに対し,アメリカ合衆国の比率は従来どおりかなりの伸びを続けた結果,昭和32年には,日本の6.2%に対し,アメリカ合衆国は5.8%となってしだいに近づき,昭和34年には,わが国の6.1%に対し,アメリカ合衆国は6.2%となり,従来とは逆に日本の比率を上回っているのである。

近年におけるアメリカ合衆国の教育費の著しい伸びは,ソ連との競争の激化する時代に,アメリカ合衆国の発展を持続する手段として教育が重要な役割を果たすことが深く認識され,教育の拡充。強化に大きな努力が払われてきたことを裏書きするものである。

お,ヨーロッパ諸国においても国民所得に対する公教育費の比率は,次の表のように年々増加する傾向にある。特に,その傾向はイギリスにおいて著しく,1959年にはわが国をしのいで5.3%に達している。

表31  イギリス,西ドイツ,ソ連の国民所得に対する公教育費の比率

このように欧米各国においては国民所得に対する教育費の比率がしだいに上昇しているのに対し,わが国における比率が停滞していることは,わが国の経済成長の見地から,憂慮されることである。

次に,わが国の国・地方の行政費に対する教育費の比率がどのように動いてきたかをみると, 図25 に示すとおりである。行政費に対する教育費の比率は,明治から大正の初期にかけては10%を前後しているが,大正9年には12.3%に上昇し,大正14年にはさらに増加して15.7%に達している。その後,昭和の初めから第2次世界大戦中までは,行政費のうち軍事費の占める比率が著しく増大したため,教育費の占める比率は徐々に低下し,昭和15年には4.9%となっている。第2次世界大戦終了後,軍事費の消滅と新しい教育制度の発足によって教育費の比重は著しく増大し,今日では行政費の21〜22%が教育費で占められている。しかし,国民所得と教育費との関係でみた場合と同じように,行政費に対する教育費の比率も,昭和31年以降は停滞ぎみであることを見落としてはならない。

図25 行政費に対する公教育費の比率の推移


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