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第3章
教育の目標・内容と社会・済の発展
1 類型と新しい傾向
(2) 教育制度


主要国の学校教育制度を簡単に比較するために学校系統図によって,各国の学校段階,修業年限,教育の専門別分化の段階等を考察してみよう。

アメリカは,初等教育から高等教育まで一貫した単線型である。わが国もほぼこれと同じ形態をとっている。これら以外の国は初等教育の後期または中等教育段階から教育が専門別に分化する複線型の系統をとっている。

教育の分化がもつとも早期に行なわれるのは西ドイツである。初等学校第4学年終了時の10歳で,初等学校へ残留するものと中等学校へ進学するものとに振り分けられる。中等学校への進学者は,試験または観察授業によって決定される。1959年の教育改革案によれば,中等学校の最初の2年を適性観察コースとして,この間に生徒の能力・適性を見分け,それ以後のコースを決定することが提案されている。

フランスは,初等学校第5学年終了時の11歳で,中等学校進学者と初等学校残留者とに分けられる。中等学校進学者は進学希望者のうちから試験によって選定される。西ドイツの教育改革案にみられたような中等学校の初めの2年間を適性観察課程とする制度は,フランスではすでに実施されている。すなわち,この2年間をへて,生徒の能力・適性に基づいて,高等教育へ進学するコースと,そうでないコースへ進むための適切な進路指導がなされている。

イギリスでは,6年の初等学校卒業者全員に試験を行ない,生徒の能力・適性によって古典中等学校(高等教育進学のための学校),技術中等学校,近代中等学校(普通完成教育)のいずれのコースへ進むかが決定される。

ソ連では,上記各国に比べて分化の時期は遅れており,前期中等教育にあたる8年制学校卒業までは,すべてのものが同じ教育を受けている。8年制学校卒業試験に合格したもののうち進学希望者は,高等教育へ進むための全日制の中等学校か,工場や農場で働くものに普通教育を与える夜間・通信を主とする中等学校か,あるいは中等専門学校に進むことになる。このうち,中等専門学校への進学者は入学試験によって決定される。

アメリカ合衆国では,後期中等教育の段階で分化される。アメリカ合衆国の後期中等学校は,いわゆる総合制のものが多く,進学課程だけをおく学校や職業課程だけをおく学校は少ない。総合制の学校にはいろいろなプロダラムが用意され,生徒の選択に応じて進学基礎教育,職業教育,普通完成教育が与えられる。生徒がどのプログラムを選ぶかは,生徒の希望に基づくので,この場合,適切なガイダンスが必要となっている。

インドの制度は州によって差異があるので,比較的大きなマハラシトラ州のそれを掲げたが,教育が未発達なためか,中等教育における分化の問題は明確には現われていない。

わが国の高等学校はアメリカ合衆国と類似しているが,アメリカ合衆国に比べて,進学基礎教育だけの学校,職業教育だけの学校が多くなっている。高等学校への入学者は公立の場合,県単位の学力検査によって選定される。また,昭和37年度から,科学技術教育を推進する方策の一環として,5年制の工業高等専門学校が新設された。

次に各国の義務教育年限と初等学校の修業年限を掲げ,教育年限の国際的比較を試みてみよう。

初等学校の修業年限および義務教育年限は,国によって差異があるが,特に義務教育年限の開きが大きい。社会・経済の進んだ国は義務教育年限が長く,それが中等教育段階の一部にまで及んでいる。アジア,アフリカ,南アメリカの低開発国では,義務教育年限は短くて,前章でみたように就学率が低いばかりでなく,国民大衆が身につける教育内容も乏しいことを示している。

図20 各国の

学校制度

わが国の義務教育年限は比較的長いほうに属しており,国民の教育水準はかなり高いことがわかる。

表17 各国における義務教育年限と初等学校の修業年限

次に,中等教育の修業年限を,初等学校からの通算修業年限によって,進学課程・職業課程・普通完成課程別にみることにする。

3種類の課程間では概して進学課程が最も長く,次いで職業課程,普通完成課程となっている。

進学課程によって,各国の中等学校の水準を比較すると,先進国と後進国との間に義務教育年限でみたほどの大きな差がないことがわかる。これは,後進国においては,初等教育がまだじゅうぶん普及発達していない段階でも,選ばれた一部のもののための中等教育については一段と努力がはらわれ,先進国に匹敵するような水準の高い制度を採用していることを示している。

表18  各国における中等学校の修業年限

高等教育機関の修業年限についてみると,国によって,大学の目的や性格に若干の違いがあるとはいえ,修業年限にはほとんど差異が現われていない。

表19  各国における高等教育機関の修業年限

以上各国の教育制度を,修業年限と教育の専門別の分化の問題を中心として概観したが,これを要するに,修業年限,特に義務教育の修業年限は,社会が高度に進むに従って長く,逆に社会の発達が遅れている国では短くなっており,社会の発展段階と深い関連があることがみられる。

教育のコース分化の時期については,発展した社会にあっては,早期から分化することなく,ある程度以上年齢い進んだ時期に達してから分化が始まる傾向がみられる。他面,社会的要請に基づいて,中等段階の諸学校を目的的に再編成することが,新しい教育上の課題となってきていることを考えると,分化の時期はおそければおそいほどよいとも一概に断定できない。むしろコース分化に応ずる能力・適性を識別するための適正な方法,および時期,あるいはその後の学習過程における調整などが,検討されるべき中心課題となってきている。


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