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第2章
教育の普及と社会.経済の発展
4 わが国の教育普及の水準
(1) 各段階別の教育の普及率


これまで,わが国における教育の量的発展とさまざまな社会・経済的要因との間の関係について,歴史的考察を加えてきた。ここではわが国の教育の発達度が,世界の各国と比較した場合,どのような位置を占めているかについて検討してみたい。

義務教育の就学率   まず,義務教育の就学率について各国比較を試みる。義務教育年限は,国によってさまざまであるが,主要国における義務教育の就学率を示したのが次表である。わが国の義務教育は,アメリカ合衆国・イギリス・西ドイツ・フランスなどの欧米諸国とともに,前期中等教育に及び,その就学率は100%に近い数字を示しており,これらの国々では義務教育の普及はすでに完成していることがわかる。

表14  各国における義務教育の就学率

これに対して,インド・ビルマ・インドネシアなど東南アジアの国々およびアフリカの新興諸国では,まだ義務教育は初等教育の段階であり,しかもその就学率はまだ低い。

義務教育後の進学率   わが国の昭和36年3月の中学校卒業者のうち62%は高等学校へ進学している。義務教育終了後,中等教育へ進学した者の比率を,諸外国と比較してみると,次のようになる。

表15  主要国の義務教育後の進学率

わが国の進学率は,アメリカ合衆国・フランスより低いが,イギリス・西ドイツより高い。この進学率には,わが国の場合は定時制高等学校の生徒数を含み,その他の国は定時制を含めていない。イギリス・西ドイツ・フランスなどでは義務教育終了後の定時制の継続教育は盛んであるが,これらの生徒数を省いた理由は,週間授業時数も少なく,全日制課程卒業と同じ資格も与えられないからである。

中等教育の普及率を考える場合に,入学した者がどのくらい卒業するかということも考慮に入れなければならない。わが国の場合は,学校の卒業証書が就職その他に強く影響することもあり,中途で学業を放棄することは大きな損失となるので,よほどの理由がない限り退学するものは少ない。これに反して,イギリス・西ドイツ・フランスなどでは,職業人として,一定の資格免状をもっていることが就職に強く影響し,その資格は継続教育機関で取得することができることが,全日制学校の中途退学者の多い理由であろう。

高等教育の普及   主要国における高等教育の普及度を,該当年齢人口に対する在学者の比率によって比較してみると,図のとおりである。

わが国の普及度は,男女の合計ではアメリカ合衆国・ソ連に次いでおり,イギリス・西独・フランスなどヨーロッパ諸国のそれをしのいでいる。

このように,ヨーロッパ諸国とアメリカ合衆国との普及率の間に大きな開きのみられる理由は,経済的要因にもよるのであろうが,高等教育機関の性格そのものに伝統的な相違があることに注意しなくてはならない。すなわち,ヨーロッパ諸国の高等教育機関が比較的限られたもののための学問・教養の場として発達してきたのに対して,アメリカ合衆国のそれは教育の機会均等の理念に基づいて,広く門戸を開放し近代社会の職業人と市民の育成を目的として,発達してきたためである。戦後のわが国の高等教育制度は,このアメリカ的な理念と制度によって拡大発展してきたことが,今日の比較的高い普及率をもたらした一つの理由と考えられる。ソ連の場合は元来産業人の養成を目的としているので,最近の科学・技術の進歩の成果が示しているように高等・専門教育に非常な努力をはらってきたことがその普及を進めた理由である。

図17 主要国における高等教育機関在学者数の該当年齢人口に対する比率

次に,高等教育の普及の程度を,世界各国について比較するために,人口1万人当たり高等教育機関在学者数の比較を,次表に掲げる。ソ連については,通信教育の学生数を含めているが,これは通信教育によって全日制教育と同じ卒業資格が与えられるからである。しかし,通信教育を除くと,人口1万人当たり学生数は64人となる。

わが国の人口1万人当たり学生数は,アメリカ合衆国に次いで,ソ連とともに高い数字を示している。

表16  各国における人口1万人当たり高等教育機関在学者数(1958年度)

現在の諸外国における高等教育機関卒業者の学部別の割合をみてみよう。理工系,法文系,その他の比率をその卒業者数で比較すると,右図のとおりである。図で見るように,わが国の理工系の学生の比率は,諸外国と比較して低い。

最近各国はいずれも科学・技術の発達に応じて学術研究と人材養成の面に新しい施策を打ち出している。そして大学へ優秀な人材を集めて高度な研究を行ない,また大量の科学者・技術者を養成しようとしている。イギリスは1945年から科学者・技術者の不足に対処する方策を打ち出しており,アメリカ合衆国は1958年の防衛教育法により優秀な人材を高等教育に集める方策を講じており,ソ連は,1959年からの7か年計画で大量の科学者・技術者の養成を計画している。このようにいずれの国でも高等教育機関の卒業者が増加し,しかも理工系の割合が増大しつつある。わが国でも近年理工系学生の増員計画がたてられているが諸外国に比べてその割合はまだかなり低い。

図18 主要国における高等教育機関卒業者の学部別構成比


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