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第2章
教育の普及と社会.経済の発展
1 類型別の国際比較


世界の国々を,教育と経済の発展の類型によっていくつかに分類して,それぞれの特色をさぐり,わが国がどの類型に属するかを検討することは,わが国の将来の教育発展を図るうえの示唆を得るのに役だつものである。

各国の教育制度発展の歴史をみると,必ずしも初等.中等.高等という順序で発展してきているとはいえない。そこにみられるのは,高等教育がまず発展し,ついで初等教育,中等教育の順に発展した型,または,これら3段階の教育が同時に平行して発展した型など,さまざまである。これはその国の近代化の初期において,社会的.文化的伝統が,新しい教育制度に影響を及ぼしたため,あるいはまた,近代化の発足が遅れたために,進んでいる国の経験を取り入れて,最初から意図的に教育制度を作ったためなどが,それぞれの型のできた原因となっている。

教育の量的発展の速度は,国によって異なる。発展の類型を考えるにあたっては,普及の速度も重要な要素として考慮に入れなくてはならない。

教育の量的発展は,それぞれの国の経済の成長と強い関連をもつている。そこで,世界の国々を分類するにあたっては,まず,近代社会の成立と発達の過程において,経済成長の速度の速かった国と,比較的おそかった国とに分類した。経済成長の速かった国を代表するものとして,日本,アメリカ合衆国,およびソ連をあげた。次に近代化の歴史が古く,経済は高い水準に達しているが,成長の速度が比較的おそい国を代表するものとして,イギリスとフランスをあげ,これをヨーロッパ類型とした。さらに,もう一つの型として,これから飛躍的な経済成長を遂げようとしている新興諸国の型をあげることができるが,この型の例として,ここではインドを取り上げた。

これらの各類型において,教育がどのような分野からどんな速度で発展してきたかを考察してみよう。

ヨーロッパ類型  イギリスやフランスのようなヨーロッパ類型に属する国々では,近代教育制度はすでに19世紀初頭に発足しているが,その普及が,比較的長期にわたつて緩慢に行なわれたのがその特徴となっている。

ヨーロッパの多くの国の初等教育は,19世紀後半には,ほぼ完全な形で普及していたが,それまでには70年〜80年間の長い期間が経過している。

中等教育は長い伝統に裏付けられた上層階級のための高等教育の準備教育機関として,徐々に発達し,た。そして,市民階層の勢力が増大するにつれて,国民一般のための教育機関としての性格をもつようになり,その数はかなり増加してきているが,なお中等教育を受ける生徒の該当年齢層に対する比率は,アメリカ合衆国などに比べると,はるかに低い。高等教育についても,中等教育の場合と同様,一般国民に広く門戸が開放されたのは,今世紀にはいってからであり,普及の伸びが早まってきたのは,科学者.技術者に対する要請が強くなってきた,ごく最近のことである。

図2 各国における教育段

階別在学者数の推移

アメリカ合衆国類型   アメリカ合衆国においては,近代学校教育制度が,最初から一般に広く門戸を開放していたこと,また,制度の整備と,量的普及が短期間に,各教育段階とも急速に行なわれたことに,その特徴がみられる 。

初等教育の普及は,近々30年〜40年のうちにほぼ完成の域に達した。

中等教育は,初等教育のあとを追って急速に発展し,わずか30年〜40年の間に,ヨーロッパ諸国をしのぎ,第2次世界大戦以前には,上級中等学校への進学率も80%を越え,ほぼ完成の段階に達している。高等教育は,前世紀の後半から今世紀の初期にかけての20年ほどの間は,中等教育の伸びに遅れていたが,その後は,中等教育の普及を基礎にして,急速な伸びを示している。特に,第2次世界大戦以後,アメリカ合衆国の経済の繁栄、と所得の増大とに相呼応して,高等教育はめざましい躍進を続け,今日では中等学校卒業者の50%以上が大学に進学している。

ソ連類型   ソ連における教育発展の特徴は,経済の要求を直接反映してきていることにある。すなわち,生産力の急激な上昇と相応して各段階の教育,特に中等教育と高等教育が短期間にめざましい発展をな,しとげた点が特徴である。

初等教育は,革命以前にすでにある程度の普及を示していたが,革命後は,数十年のうちに,―部の辺境地区を除いてほぼ完成の段階に達したといわれている。中等教育は革命後,技能者.熟練労働者の需要を満たすために,高等教育も革命直後から,技術者.科学者の大量養成の必要に応じて急激に伸びている。これは,5か年計画に次ぐ5か年計画によって,資本主義諸国の生産水準を追いこそうとした国家の方針と関連をもつものである。伸びの著しいこととともに,拡充の方向が技術者養成である点がソ連における教育発展の特徴である。

低開発国類型  現在,低開発国といわれている国々をみてみると,そこには比較的早く独立したラテンアメリカの国々,第2次世界大戦後,長い間の西欧諸国の支配から脱したアジア,アフリカの諸国,さらにその中でもインドのように古い文明をもつた国,またアフリカ諸国のように非常に低い段階から出発しようとしている国などさまざまであって,これを同じ型で規定することはできない。しかし,これらの国々について一様にいえることは,生産力の停滞と相まって,教育の普及度が,近年に至ってもなお低いということである。しかしながら,第2次世界大戦後における,これらの国々の経済発展の緊要性にともなって,最近は,教育の発展に対して多大の努力が払われるようになってきている。低開発国類型の中では比較的教育の発達しているインドについてみると,1950年の独立以来,それまで長い停滞を続けていた教育は,経済計画の展開と相まって,初等.中等.高等のいずれの段階においても,大きく伸びてきていることに注目しなければならない。

それでは,わが国の教育発展はどのような型を示しているであろうか。

初等教育がその発足以来30年〜40年の短期間にほぼ完全に普及し,続いて中等教育がきわめて急激な伸びを示し,高等教育は中等教育の伸びを基礎にして,これまた近年急速に発展しているという点では,アメリカ合衆国に最もよく似ているといえよう。わが国の教育は,女子教育の普及の速度が比較的遅れていた点を除いては,アメリカ合衆国およびソ連とともに,世界の諸国の中で最もめざましい速度で伸びた,最も普及度の高い類型に属しているものといえよう。


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