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第5章
主要国の教育改革とわが国の教育
4 大学教育に対する社会的要請


教育改革を行なった諸国においても,大学に関しては,大きな制度的な改革はみられないが,最近の科学技術の発達に応じて学術研究と人材養成の面に,新しい施策を打ち出している。すなわち,(1)大学へ優秀人材を集めて,高度な研究を行なうことと,(2)大量の科学技術者を養成することがあげられる。

アメリカ合衆国では「アメリカ合衆国防衛教育法」を制定し,優秀な学生を集めるために多額の経費を支出する措置をとり,イギリス・フランスなどでは,有能な学生に対して,国が行なう奨学制展を積極的に拡充してきたし,また,大学の役割を重視して国家試験によって,ある程度以上の能力がなければ,大学に入学することができないやりかたをとっていろ。

大量の科学技術者の養成のために,ソ連は1959年〜1965年の7か年計画において,工業・建設・運輸・通信関係部門の大学卒業者を1952年〜1958年の卒業者の2倍に,農業部門を1.5倍に増加するほか,化学技術・オートメーション・計算工学等の新しい工学部門を重点的に増加しようとしている。

アメリカ合衆国では,すでに述べたように科学技術者の不足を解消する方策を講じ,イギリスでは,すでに,1945年から科学技術者養成問題を取り上げ,漸次人員の増加を図ってきているが,最近では総合大学の増設,既存総合大学の理工学部の拡充のほか,工業専門学校の増設を行なっている。また,西ドイツは,今までは,理工系学生を徐々に増加してきたにすぎないが,最近科学技術者の需要の測定を行なったので,今後の方向は注目に値するであろう。

わが国の高等教育機関の卒業者は, 第83表 で見るように,数においてはアメリカ合衆国・ソ連に次いで多いが,その学部別構戒を 第26図 によって国別に比較すれば,わが国の理工系の比率が小さく,逆に法文系の比率が大きいことが見られる。

第83表 主要国の高等教育機関の卒業者数

第26図 主要国における高等教育機関の卒業者の学部別構成

その上, 第27図 によって,毎年の学部別の卒業者数の増減傾向を見ると,わが国の理工系の卒業者数の伸びは緩慢であるばかりでなく,他の学部の伸びの大きいのに比べて,いかにも伸び悩んでいる姿を見ることができる。

しかし,数年前から,将来の需要の測定に関する調査が行なわれ,昭和33年展に始まる理工系学生8,000人増員の3年計画が立てられ,一応の対策は成ったが,しかしなお今後増加する需要とその供給との時期的ずれに対処するように,常に調査と新計画とを行なうことが必要であろう。

第27図 主要国における高等教育機関の学部別卒業者数の年次別指数

人材の養成には,量の問題だけでなく質の問題のあることも忘れてはならない。前述のように,主要国では,国家試験・奨学金制度等によって,能力ある適材を大学に学ばせる方途が考えられるとともに,学術研究の大学と職業教育を主とする大学とが原則メして分かれており,大学はそれぞれの目的に即して教育を行なっでいる。

これに対して,わが国では,入学者選抜は各大学にまかせられ,国家試験によるわくは設けられていない。全国には多数の大学が設置されているが,人的・物的条件では,大学間に相当大きなひらきがあるにもかかわらず,すべての大学が,学術研究と職業教育の二面的性格をもってほぼ同じような行き方をしている。これらの点については,なお検討の余地があるであろう。


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