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第5章
主要国の教育改革とわが国の教育
3 中等教育と青少年教育


わが国の中等教育の制度はアメリカ合衆国に似ているが,ヨーロッパ諸国とはかなり相違している。

第1に,ヨーロッパ諸国では,初等教育は同一コースで,同一の内容の,教育を同じように受けるのであるが,その段階を修了すると,同じ義務教育でありながら,その能力に応じて異なった形態の学校で,異なった内容の教育を受けることである。すなわち,中等教育は三つのコースに分かれる。上級学校進学者の教育を主とする学校,中級技術者の養成を目ざす学校,および義務教育修了後ただちに社会へ出る者に一般的な国民教養を授ける学校である。この三つの形態の学校は,それぞれ異なった性格をもっており,そこでは,そのコースの目的に応じた教育が行なわれている。

また,現行のイギリスの制度および改革後の西ドイツ・フランスの制度では,初等学校を終わったところで,児童が中辱教育のコース別を決定する際に,教育行政当局がすべての児童の進路を決定することになっている。すなわち,児童が将来どの方向に進むかのふり分けが,国・県・市等の行政機関の権限によって行なわれるわけである。このコースを決定するに先だって,イギリスでは全生徒に試験を課して適性と能力を見分けて,ふり分けを行なうが,西ドイツ・フランスでは個人の適性と能力をじゅうぶんに観察・検査して進路を選ばせるという綿密な適性指導が行なわれることになる。

ここで注目されるのは,フランス・西ドイツの例で見るように,この進学適性指導を行なう年齢を高めて高学年において行なうようにする傾向がみえることである。これは,中等学校生徒のコース別ふり分けを適切に実施する反面,なるべく長い期間,共通の教育を与えようとの要求に応ずるものである。

これに反してわが国は,9か年の義務教育の間を,小学校・中学校という同一形態の学校で,ほぼ同質の教育を受け,その後にはじめて生徒の志望にしたがって,高等学校の普通課程または職業課程を選んで進学するたてまえとなっている。この制度は中等教育の前期が同一学校であること,中等教育のコースを決定する時期が第10学年であること,またコース決定が生徒の志望にまかせられ,いわゆる厳格なふり分けがなく,普通課程に生徒の希望が集中しがちで,その割合が60%になるという事態を現出レていることなど,ヨーロッパの様子と異なったものになっている。

わが国の高等学校の普通課程では,その7,だけしか現実に大学へ進学できないのであるから,この課程は進学コースでもなく,就職コースでもないことになり,目的に応じた教育を行なうことがむずかしい。第80表はこれらの状況の比較を示すものであるが,わが国にまさるソ連の進学率は,前項で述べた教育制度の改革によって,この比率の多くの部分が労働を中心とした教育を行なう学校に改められるものと思われる。

第80表 主要国における中等学校進学者のコース別比率

科学技術の進歩に伴い,大学教育が高い水準を要求され,そこから,大学へ入学する高等学校卒業生の質の向上が強く要求されている一方,高等学校卒業程度の中級技術者に対する社会的要求が強く打ち出されている今日,わが国の高等学校のあり方,なかでも普通課程のあり方は,多くの問題をはらんでいる。

次に中学校を卒業して社会へ出て行く多数の青少年に対する教育の問題について考えてみよう。

中学校ばすでにみたように,生徒の志望と適性に応じた職業人としての教育なじゅうぶんには行なっていないから,これらの青少年は一応社会に適応できる一般的能力をそなえてはいても,特定の職業についての技術や技能をそなえるまでの教育は授けられていない。

これら青少年に対して社会へ出てから職業上の技能・技術を与える機会は,第1は職場の技能訓練計画であるが,多くの職場には組織的な計画がなく,青少年は多く見よう見まねで,みずからその機会を作り出さなければならないのが現状である。一方職場外に設けられた組織的な機関としては第81表のようなものがあるが,現在のところではこれを利用しうる者の数は限られている。

一方教育人口の将来については第1章で取り扱ったのであるが,15歳〜17歳の青少年人口は昭和38年以後増加して,昭和40年において最高となる。

第25図 は,高等学校の在学者総数,高等学校以外の教育機関における15歳〜17歳の生徒数が将来においても現在と同数のままであると仮定した場合に,職場外での教育を受けない青少年が何人になるかを推測したものである。また,それを指数で示せば 第82表 のとおりとなる。

第81表 職業教育訓練機関数と在籍者数 (15歳〜17歳)

第25図 15歳〜17歳の青少年の推計数

第82表 15歳〜17歳の實少年のうち,教育を受けない者の年次別指数

最近における科学技術の進歩は,産業に従事する人々の能力を質的に高めなければならなくした。技能をもつ労働者でなければ職業につく可能性が乏しくなったといってもよいであろう。

わが国の産業は最近著しい上昇を見せてはいるが,15歳〜17歳の青少年の就職の機会が無条件1こ増加するとは言いえない。

産業界の求めるものは中級技術者および技能者である一方,わが国の経済の半展は国民全体の家計の向上をもたらしているから,青少年の進学希望は上昇すると考えられるが,その志望が満されない場合,職を求めても必ずしも暖い手は伸べられていない。とすれば社会的にも種々の問題を引き起こすことも予想される。

したがって問題は,15歳〜17歳の青少年全体の教育の問題である。

すでにふれたように,15歳〜17歳の青少年の教育については,現状では高等学校の教育においても,高等学校へ進学しない青少年の技能教育においても,青少年の志望をかなえてやること,適性や能力を伸ばしてやること,中級技術者と技能者の養成という社会の要請にこたえること,中堅国民層の教育水準を高めようという要請にこたえることなどの点において,ふじゅうぶんなことが少なくない。それは,2,3年後これら青少年の数が急増する時にはいっそう大きな問題となるであろう。

ヨーロッパの主要国では,教育改革にあたって,完成普通教育の充実,中等教育の分化とともに,完成普通教育に続く継続教育について,その内容である技能・技術教育を高めるとともに普及を図っていることは,当面する問題の対策に対し,多くの示唆を与えるであろう。


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