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第5章
主要国の教育改革とわが国の教育
2 教育水準の確保と向上


第2章で述べたように,わが国の学力水準はまだ期待された線にまで達しているとはいえないし,また,地域によって学力に相当大きなひらきがある。文部省が実施した全国学力調査において,学校全体の平均点がわずか10点の学校がある一方には,70点にも達する学校がある。また,地域類型別の成績を見れば大都市の住宅地域・商業地域では50点ないし60点という高い成績を示すのに対して,恵まれない地域といわれる山村・へき地では,それらよりも20癲も低いというありさまである。

この調査においては,学力と物的・人的条件等との間に関係のあることが明らかにされているが,これによれば,わが国の学力の水準は,個々の・学校の教育条件の影響を受けるものであり,学力の地域間のひらきは,教育条件の地域間のひらきがもたらしたものということができる。第76表はこの関係を示すものである。これらの条件の向上だけが学力向上をもたらすものではないにせよ,第3章および第4章でみたように,これらの条件において,わが国が主要国に比べ,なお努力を要する点が多いことを考えれば,学力の水準を向上させるためには,教育条件が全般的に問題となり,また教育条件の堆域間のびらきが問題になるべきである。

すべての国民が一定水準以上の条件のもとで等しく教育を受け,一定水準以上の学力を等しく身につけることは国が期待しているところであり,教育水準の低い地域のそれを向上させることによって地域間のひらきを解消するこ々は,全国の平均的水準を向上させることになる。

わが胴の環在の体制においては,教育条件を改善し,特に教育条件の地域間のひらきを解消させるためには,もちろん市町村教育委員今・都道府

県教育委員会等の施策と努力とにまたなければならないが,しかし,この問題は,単に地方自治体だけに解決を求めるべきものではなく,国の積極的な関与と援助とを必要とするものである。国民のだれもが受けるべき教育内容,到達すべき学力程度,整備されるべき設備等については,当然全国的な基準を設定すべきものであり,その実現には国の指導・助言が必要である。そのうえ全国的な基準を維持するためには,堆域間の財政力に差異が現に存する以上,財政的に貧弱な地域に,対する国の援助は避けることのできないことである。産業の発展,特に工業の飛躍的発展は,かえって地域間の財政力のひらきを相対的にひろげる結果を生じていることも注目を要する。実際国民の教育水準を維持したり,引き上げたりするために,国が積極的に財政援助を行なうことは,主要国においても近年顕著にみらる傾向であって,これは常も地方分権的伝統の強い国といわれているイギリス・アメリカ合衆国においても次の表が示すようにめいりようにあらわれている。

第76表 教育条件の地域別比較一昭和32年度中学校一

第77表 イギリスの地方教育費の国・地方の負担関係の推移

第78表 アメリカ合衆国の公立初等・中等学校教育費の 連邦・州・地方の負担関係の推移

わが国の実情においても 第79表 のとおり戦前に比べて,戦後は地方教育費のうち国庫補助の比率が非常に高いことが注同されるが,それは教育改革,特に中学校の義務制実施によって,国庫負担の比重が太きくなったためである。戦後,昭和26年度ごろからは,国庫補助金の比率は40%前後に固定し,主要国にみるような国費の年次的漸増傾向はあらわれていない。

国の財政援助が,教育の一定水準の確保に欠くことのできないものとなりつつある一方,教育内容面についても国が基準を設け,その基準の維持のため指導・助言あるいは監督を行なったり,教師の養成の面を充実したりすることは主要国に見られる傾向である。

第79表 地方教育費の国・地方の負担関係の比率

わが国は,教育の任にあたる教師の養成と教師に対する指導・助言を行なう機構について,かなり違った行き方をしている。すなわち,わが国は主要国に比べ,教師を専門的に養成するたてまえがふじゅうぶんであり:そのうえ教師の資格は容易に取得することができる。教師の水準向上のためには,まずこれらの点を検討する必要がある。また,教師・学校に対する指導・助言についてみると,わが国は,イギリス・西ドイツ・フランス・ソ連のような組織的な機構を欠いている。教育内容について国の巣準を定めていないイギリスにおいても,国の文部省に約500人の視学官(Inspec-tor)が配置され(児童数は日本の約である),地方の視学の活動とあいまって,教育の内容と方法に関じて教師の指導・助言を行ない,教育内容の一定水準を維持する機能を果たしている。


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