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第4章
教育費の水準
5 父兄負担の教育費


最近,わが国において,各方面で父兄負担の教育費の増加の傾向が指摘されている。父兄負担の教育費とは,父兄が子弟の学校教育ならびに家庭教育のために負担する教育費であるが,昭和32年度における父兄負担の教育費の額は,生徒1人あたり年額,小学校では11,800円,中学秋では12,100円,高等学校(全日制)では32,500円となっている。

第24図 年間の生徒1人あたり父兄負担の教育費

第73表 昭和27〜32年度の5か年間における生徒 1人あたり父兄負担教育費の増加率

表に見るように,昭和27年以降5年間(高等学校については昭和28〜32年の4年間)の増加の割合は,それぞれ60%,40%,30%である。

この増加の内容を見ると,学校教育のための経費よりもむしろ家庭教育の経費の増加率がいっそう大きく,小学校90%,中学校50%,高等学校初%といずれも学校教育のための経費の増加率を上回っている。

一方,この間の国民1人あたりの所得年額は,50%以上の増加となって〜)て,父兄負担教育費の増加と歩調をーにしているものといえるであろうが,父兄負担学校教育費は,一部公費による負担の転換もあって,国民所得の増加率を相当下回っているのに対し,家庭教育費はこの増加率に近く,その中でも小学校のそれは大きくこれを上回っている。これ′らの事情は,1人あたり国民所得の増加があれば,家計支出の中で飲食費の占める比重が漸次低下して,逆に教育,文化,教養などの経費の占める比率が漸次増加していく傾向と相応ずるものであるから,父兄負担教育費が問題となるのは,学校教育費b分についてである。なぜならば家庭教育費は,その支出がまったく父兄の任意にまかせられ,なんらの強制的性格をもたず,したがってまた,負担の軽減とか公費負担への切り替えなどの問題の生ずる余地がないからである。最近の父兄負担教育費の増加傾向は,必ずしも憂慮すべきものではない。

父兄負担学校教育費の内容は, 第24図 のとおりであるが,これと公費負担の学校教育費を合わせて学校教育が行なわれるので,その分担の割合をアメリカ合衆国と比較すると,わが国においては,アメリカ合衆国よりも父兄負担の割合が高く,公費負担の割合が低いことが知られる。

第74表 初等・中等学校生徒1人あたり学校教育費 の公費・私費別の比率の比較

アメリカ合衆国の初等・中等学校においては,教科書,一部の学用品,通学費,授業料(高等学校)など,わが国で父兄の負担とされているものが,公費によって負担されているから,アメリオ合衆国の父兄負担の割合がわが国より低いことは,容易に予想されることであるが,そのアメリカ合衆国でさえ学校教育費の31%を父兄が負担しており,わが国との間にさほどのひらきがないということは注目すべきことであろう。なお,わが慝の高等学校の父兄の負担する経費の割合は55.1%という高率であるが,こころみにアメリカ合衆国と同様に,寄付金,授業料,入学金,交通費等を公費負担に移して計算すれば,25.5%となって,アメリオ合衆国の父兄負担の割合を下回る。

また,高等学校に子弟を1人通学させるために父兄が負担しなければならない学校教育費の家庭収入に占める比率について,サンプル調査の結果によってわが国とアメリカ合衆国とを比較してみると,わが国ではアメソカ合衆国の場合に比べ,その収入のかなり多くの部分をさかなければならない。それは,アメリカ合衆国における家庭の収入の水準がわが国よりも高いということにもよるのであろうが,またアメリカ合衆国の高等学校においては,わが国で父兄が負担する学校教育費のかなりの部分が,公費負担にくり入れられていることにもよるであろう。

第75表 家庭収入に占める高等学校生徒1人為たり父 兄負担学校教育費の比率の比較

高等学校の場合と同様,義務教育学校についても,わが国の父兄負担教育費の中には,アメリカ合衆国では公費負担となっているものが相当含まれているが,そのすべてを公費に切り替えるかどうかは別問題としても,わが国では,施設設備のための寄付金などのような,今日すでに社会通念として,公費負担に切り替えることが当然であると考えられているものが父兄の負担とされている。これらについては,財政事情の許す限りすみやかに公費に切り替えられるべきであろう。諸外国においては少なくとも義務教育に関する限り,教科書,一部の学用品,通学費,給食費などについても,すでに公費負担としている例が多いのである。

以上のように,わが国の国民所得に対する教育費総額の比率は,高い水準に達しており,国民の教育費に対するなみなみならぬ努力を示しているが,1人あたり国民所得の低水準により,1人あたり教育費が主要国に及ばないのは遺憾である。戦後のわが国における国民経済の成長率,国民所得の増加速度はめざましいものがあるが,その発展のために教育のいっそうの振興が望まれることを思えば,教育費の水準の向上のために,すでに喝げた諸問題の解決へのいちだんの努力が要望される。


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