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第3章
教育条件・機会均等施策等・教師の水準
1 教育条件の水準
(4) 教材・教具


 次に教育の場において重要な役割を果たしている教科書その他の教材・教具についてふれる。
a 教科書

 わが国の教科書制度は過去において゜2回重要な切り替えを行なっている。小学校教科書は明治20年から検定制度が実施されてきたのであるが,明治36年から国定制度に切り替えられた。さらに第二次世界大戦後はふたたび検定制度に移行している。

 したがって,現在,教科書の検定は文部省が行ない,この検定に合格した教科書の中から教育委員会が選択採用することになっている。現在94の出版社によって1,300を越える種類の教科書が発行されている。

 イギリス・フランス・イタリアの各国においては,教科書は自由に出版され,その採択も,フランスの初等学校を除いては教師の自由にまかされている。

 一方,アメリカ合衆国の一部の州とソ連の連邦構成共和国と西ドイツの各邦では,州・共和国・邦が教科書の発行または検定を行なっている。

 教科書の検定・発行やその採択についてはそれずれの国の特殊性により各国まちまちである。

 なお,主要国においては教科書の無償貸与がたてまえとなっており,ソ連がごく低価格で児童生徒に対して提供しているのを除いては,イギリス(全国)・アメリカ合衆国(36州)・西ドイツ(大半の邦)・フランス(大半の市町村)が無償で貸与することを定めている。
b 教材・教具

 戦後従来の教科書中心の教育方法が児童の生活体験を重視する方向に移行したことや教育技術の進歩などによって教育手段としての教材・教具の重要性がきわめて太きくなってきた。しかし,その整備の責任をもつ市町村はもっぱら当面する学校建築に追われ,設備にまで手が回らないものが多く,いきおいPTAその他の寄付金や学校徴収金などが,本来公費で負担すべき教材・教具の購入に多く充てられるようになり,これが慣習化すると共にその傾向は年々増大してきたため,なんらかの施策を必要とする声が高まってきた。

第31表 教材用設備・備品費の財源別割合

 一方産業教育や科学技術教育の振興について積極的な対策の樹立が強く叫ばれるに至り,これに必要な設備の充実は当面の重要な問題となった。

 このような情勢の下に教材・教具の面にもようやく力が注がれることとなり,昭和27年義務教育費国庫負担法の成立とともに教材費の一部を国が負担することとなり,さらに昭和33年には半額国庫負担となったのをはじめ,昭和26年産業教育振興法が成立し,高等学校を中心とする産業教育の施設・設備に対して国の補助金・負担金が交付されるようになり,次いで昭和29年理科教育振興法の成立により科学技術教育振興の基礎となる小・中・高各学校の理科設備に対して補助金の交付が始まった。同年さらに学校図書館法が成立し,教育方法の改善に伴う学校図書館の重要性に基づき学校には学校図書館を必ず設置させるとともにその整備充実のために国庫負担金が交付されるようになった。

 このように最近になって努力がつづけられているが,なお不足の状況は教材・理科設備の面で著しい。教材費は年々増加しつつあるがなお不足しており,また32年度現在において理科設備の基準に対する充足度は小学校28%,中学校34%という憂慮すべき状態であり,基準に到達するまでには莫大な資金を必要とするのに対し,国庫補助はきわめて少ない状態である。

 産業教育施設・設備については,高等学校における既存の設備の更新,施設の充実ももとより必要であるが,最近産業振興の観点から,高等学校の工業関係課程の増設,産業科の新設が図られており,それに伴う施設・設備の拡充が緊急の問題となっている。また,中学校教育課程の改訂に伴う中学校の技術・家庭科の設備の充実も必要である。

 主要国の教材・教具の整備状況についてはじゅうぶんな資料を得られないし,各国の教育方法の相違によって一概に論ずることはできない面もある。しかし,たとえばフランスでは最近にいたり教材費の負担額を大幅に増加し児童生徒1人あたり4,000フラン(約3,000円)を国が負担することとなった。教材費の内容はめいりようでないがわが国の教材費国庫負担額(1/2)の予算単価が小学校200円,中学校300円モあり,昭和32年度地方教育費の調査による総教材費は公費・私費の全体を含めても児童生徒1人あたり小学校約670円,中学校1,000円であって著しく低い。

 最後に教育方法の進歩とともにわが国において戦後普及してきた視聴覚教材についてみると,全国学校数に対する視聴覚教材の保有率は次のとおりである。

第32表視聴覚教材の保有状況     (33年8月現在)

 ラジオ受信機は全国小学校の92%(昭和31年),中学校の95%(昭和33年)に及んでおり,その普及率はきわめて高い。学校放送(NHK学校放送だけ)の利用状況は,小学校では全国の67%,中学校では受信機を持つ中学校の50%である。またテレビの普及率はまだきわめて低いが,32年に教育テレビ局2,準教育テレビ局3が発足したので今後の普及が期待される。

 主要国における視聴覚教材の利用状況をみると,現在アメリカ合衆国ではテレビについては253のチャンネルが割り当てられ,大学などを中心として小地域の実態に応じた教育を行なっており,全国的には49局が教育テレビを行なっている。また,ラジオでは教育放送局が148局あり,学校教育に役だっている。このような状況の下においてラジオ・テレビは一般学校における教育の補助手段としての利用にとどまらず,小規模高等学校における教科の拡充やへき地の初等・中等教育に用いられ,その普及度も高い。

 イギリスでは1958年においてラジオを持っている学校は29,000校で,聴取可能な地域の学校の73%以上に達している。また学校に対するテレビ放送が公営・民営放送局により,1957年から始められ,漸次普及の段階にある。フランスやカナダにおいては学校教育に取り入れられつつある段階である。

 わが国の視聴覚教材の整備状況はヨーロッパ各国と比べ劣ってはいないと思われるが,これは戦後新しい教育方法を取り入れることにおいて積極性を示したことによるもので,この努力はさらに続けられる必要がある。

 反面,在来の教材・教具の充足がおろそかにされることがないよう注意しなければならない。


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