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第2章
教育内容の水準
2 学力の水準
(2) 学力水準の国際比較


 わが国の学力水準を解明した結果,期待水準に対する到達度,それらの地域的不均衡等の問題はしだいに明らかにされてきたが,これを国際的水準に比較すればどのような位置づけが与えられるであろうか。

 このことについては,現在までいろいろな推測が行なわれてきたが具体的な資料はなかった。

 しかしながら,学力水準の高低を国際的に測ることは,非常に困難なことで,教科によってはほとんど不可能なものさえある。それゆえ,全般的な学力水準の国際比較は不可能であるが,教科の中には比較的容易なものもあると考えられる。その一つは数学である。

 ここに,イギリスの全国教育調査研究財団がイギリス全国にわたって実施し,続いて,オーストラリアのクイーンスランド州政府,アメリカ合衆国のカリフォルニア大学が同様の方法で実施した算数の学力調査の試みがあるので,同じ問題をわが国の児童に実施した結果を示して,この問題を検討する一助としたい。

 調査対象はイギリス・オーストラリア・アメリカ合衆国とも,調査日現在,11歳年齢の児童であったので,わが国では小学校第5学年生・第6学年生を対象とした。

 イギリスの場合は,全国の調査該当生徒数から,層別無作為抽出を行な

って対象生徒を決定した。アメリカ合衆国の場合は,カリフォルニア州,オーストラリアの場合は,クイーンスランドの各1州ではあるが,その州については,イギリスと同様の方法で調査対象を抽出している。

第23表 4か国の算数学力調査対象

上の表 にみるように,わが国の調査対象は,第5学年をとっても,第6学年をとっても,年齢・修業年限ともにこれら3か国と一致しないが,同一年齢層の学力の比較という点からは,わが国の場合は第5学年をとったほうがこれら3か国により近い条件となる。しかし同一修業年数の比較となれば,イギリス・オーストラリアとの比較はわが国の場合,第6学年の成績を用い,アメリカ合衆国との対比は,第5学年の結果によるべきであろう。

 なお,この調査は早急に実施したため,対象学校が東京近県に限られ,都市に所在するものが多かったので全国平均からみれば多少上位にある学校が選ばれている。

 調査に使用された問題は37問で,第T部計算問題10問いと,第U部文章で表現した問題27問に分れる。イギリスの調査問題は前者が40問、後者が60問であった。

 わが国の調査で37問に限ったのは,金額計算と度量衡計算の問題63問を省いたからである。この省略は単位の相違とその単位がわが国のように10進法によらないためである。

 このように調査を実施する条件が,イギリス・アメリカ合衆国・オーストラリア3か国と多少異なっており,しかもわが国の対象は全国を代表しているともいえないので,この調査結果の比較からわが国の学力水準を国際的水準との比較において明らかにしたということは必ずしもいえないが,一応の参考資料として以下に掲げてみた。その結果を全問題平均の正答率と領域別の正答によって示し,これを他の3か国の結果と比較してみると, 第24表 のようになる。

第24表 問題領域別にみた正答率の4か国比較

 まず,わが国でとりあげた37問について,その平均正答率を,同一年齢層によって比較すれば,オーストラリア45%,イギリス4%,日本42%の順である。

 次に,修学年数によって比較すると,わが国の第6学年と,イギリス・オーストラリアとは比較ができ,わが国の第5学年と,アメリカ合衆国と比較することができる。前者の場合には,わが国50%,オーストラリア45%,イギリス44%の順と、なっている。後者の場合には,わが国は42%で,アメリカ合衆国の28%をはるかに上回っている。

 この二つの尺度のいずれをとるかについては,それぞれの理由があるが,ここでは自然年齢のほうを比較の基準とすることにした。その理由は,イギリス・オーストラリアの第1学年は5歳でありその教育内容は幼稚園的色彩を帯びており,わが国の小学校第1学年生とは同一に考えられないためである。

同一年齢層を尺度として問題の領域別に正答率を比較すると,第T部の基礎的な計算問題では,整数の四則については,4か国ともほぼ同様の成績を示しているが,時間の計算問題では,わが国はアメリカ合衆国よりも高いが,オーストラリア・イギリスに比べてかなり低い。

 第U部の文章で表現した問題は,各領域を通じてわが国の児童は他の3か国に比べて劣っているとはいえない。しかし,単純な計算問題では,オーストラリア・イギリスに比較して成績がよくない。これはこの領域の問題の中に次のような分数の四則計算が含まれていて,これは,わが国では第5学年の第1学期ではその指導がじゅうぶんに行なわれていないからである。すなわち,


 数概念については,わが国は最もよい成績を示している。すなわち,〔問〕「次の中でいちばん小さな分数を選びなさい。

  1/3, 1/10, 1/8, 1/6, 1/4」という問題については,


 という結果で非常によくできている。ただし,同じく数概念の問題でも,なかには 〔問〕 「20,15,16のすべてで割り切れる数でいちばん小さな数はいくらか。」  という最小公倍数の問題のように,わが国では中学校段階で指導されるような問題は第5学年では1%,第6学年でも6%という低い正答率を示している。この問題は,アメリカ合衆国5%,オーストラリア7%,イギリス12%という正答率で,比較的むずかしい問題である。

 量と測定の問題では,時間・距離・面積とも,わが国は他の3か国に比べて決して低くはない。たとえば時間の問題についてみると,〔問〕 「午前9時30分から同じ日の午前10時45分までの間は何分間ですか。」という問題の正答率は,


 となっている。

 割合の問題では,わが国は,ほぼ中ぐらいのできばえである。たとえば,〔問〕 「ある人は自転車にのって毎時15kmの速さで走ります。この速さでいくと90km行くのにどのくらいかかるでしようか。」という問題の正答率は,


となっている。

 このような試みでは,その結果を用いてじゅうぶんな比較ができないことは前述の通りである。したがって各国との比較がじゅうぶんに行えるように調査の条件を整えて実施することを将来計画すべきであろう。


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