ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第2章
教育内容の水準
1 要求される教育水準
(2) コースの決定


 青少年がどのような学校教育を受けるかは,かれらの人生の決定に相当強力な要素として働くことはまちがいない。したがって,学校教育がどういう系統に分けられるか,その分化がいつ開始され,どのような方式で分けられるか,またその分化がどの程度決定的なものであるかは,教育の問題としてきわめて重大である。


a 学校教育の分化とその時期

 以上見てきた諸国では,初等教育の前期においては,各国とも共通の教育を施していて分化はみられない。初等学校の後期に至ってはじめて分化がみられる国は,西ドイツ・フランスの両国であり,わが国・アメリカ合衆国・イギリス・ソ連の4か国においてはまだ分化していない。西ドイツは最も早く,初等学校の4年を終了後10歳で生徒は,高等学校・中間学校へ進学する者とそのまま初等学校にとどまる者との三つのコースにふり分けられる。フランスでは,中等学校への進学者と小学校残留者とのふり分けは,初等学校第5学年終了後(11歳)行なわれる。西ドイツ・フランス両国のどちらの場合も,初等学校残留者の教育は,完成教育であって,初等学校を卒業した後,社会に出て職につくわけで,定時制の職業教育を受けるが,全日制の教育はここで終了することになる。

 わが国・アメリカ合衆国・イギリス・ソ連の4か国では・初等学校を終了した全部の生徒が中等学校へ進学することになるが,この中等学校が分化している国と,そうでない国とがある。わが国の中学校,アメリカ合衆国の下級中等学校,ソ連の7年制学校は分化していないが,イギリスの場合には,進学コースの古典中等学校と,その学校を卒業すれば,ただちに実社会に由る技術中等学校,近代中等学校の3種に分化している。

 中等教育における分化には二つの型がある。教育目的によって学校を異にする場合と,学校は同一でも,学校内に分化したコースを設ける場合とである。西ドイツにおいては,進学コースの高等学校は,文科系の学校と,理科系の学校とに分化しているが,実業学校は,学校内に農・工・商業等のコースを設けて職業教育を施している。フランスはこれと逆に,進学コースの高等学校は,学校内で理科系・文科系のコースに分かれるが,職業教育を行なう技術中等学校は農・工・商業別にそれぞれの学校が設けられている。イギリスでは,進学コースの古典中等学校は,生徒の希望に従って文科・理科などのコースに分けられ,技術中等学校においても学校内に農・工・商などのコースを設ける。アメリカ合衆国では,職業中等学校や進学コースだけの中等学校もあるが,多くは進学・職業・普通の各コースをもつ総合制学校の形をとっている。わが国の高等学校は,アメリカ合衆国の中等学校と類似しているが,職業高等学校として独立している学校が約40%に達している。改革前のソ連の10年制中学校は,普通教育であるというたてまえから,コースが分化していないが,中等専門学校は専門によって学校が別々に置かれている。

 これらの国の学校教育をみるにあたって見のがすことができない点は,前期中等教育の段階で行なわれる完成教育の問題である。

 わが国・アメリカ合衆国・ソ連においては,この段階では,教育の分化は行なわれず,上級学校進学者を含むすべての生徒が同種の普通教育を受け,教育の分化は後期中等教育の段階において行なわれる。そして上級学校進学者を除くすべての生徒は,この前期中等教育を終えて,ただちに実社会に出る。

 これに対しイギリスにおいては,前期中等教育の段階において教育の分化が行なわれ,上級学校に進学しない生徒は近代中等学校において完成教育を受ける。

 フランスおよび西ドイツにおいては,教育の分化は早くも初等教育の段階から行なわれ,上級学校に進学しない生徒は,フランスでは小学校完成級,西ドイツでは国民学校上級段階において完成教育を受ける。しかしフランス・西ドイツについては,教育改革実施の後にはイギリスと同様な方式となるであろう。


b 生徒のコース決定の方法

 学校教育の分化が行なわれるにあたって,どのような方法によって生徒がふりわけられるかということが次に問題となる。

 イギリスでは,初等学校第6学年の全生徒に対して知能検査,国語,算数の試験を行なって,もっぱら生徒の能力と適性に基づいて選定が行なわれ,古典,技術,近代の3種の中等学校へ進学する者を決定する。この試験は各県教育局が実施する。

 フランスでは,初等学校第5学年修了後中等学校への進学希望者に対し,国の定める基準によって,各地方(数県を含む)ごとに実施する試験を課し,中等学校入学者を選抜する。西ドイツにおいても初等学校第4学年修了後中等学校進学希望者に対し,試験あるいは観察授業の方法による入学者選抜を行なう。多くの場合,進学を希望する中等学校で,その学校の教員と志願者を教えた初等学校教員とが1週間その生徒に授業を行なって観察するという方法がとられている。なお西ドイツ・フランスの教育改革の構想においては,改革後の中等学校の下級2年を適性観察コースにして,この2年間ですべての生徒の能力と適性を見わけ,それに基づいてそれ以後のコースを決定することにしている。ソ連では,4年制小学校・7年制学校の卒業試験に合格した者は,上級学校へ進学できる。ただし,中等専門学校への進学には,入学試験に合格する必要がある。

 アメリカ合衆国では,上級中等学校を終了するまで進路の決定は,すべて生徒の意志によって行なわれ,行政機関の行なう試験によってふり分けることはしない。そこで,この国の中等学校ではガイダンスによる進路選択の合理化を図ることが必要になる。

 わが国は,中学校まではアメリカ合衆国と同様の方式をとるが,高等学校へはいる場合には,県単位の学力検査が行なわれて,選ばれる制度となっている。

 以上みてきたように,主要国では,中等学校を制度的に分化し,この分化したコースで目的に適した教育を行なう国が多い。分化したコースに生徒をふり分ける場合に本人の才能に基づいてふり分ける方法がとられている。

 アメリカ合衆国では,これと異なるが,生徒の適性に応ずるという考え方は重視されている。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ