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第1章
教育の普及度
4 義務教育後の中等教育


 わが国の義務教育終了者の上級学校進学率は戦後大幅に増加した。昭和9年の小学校卒業者の中等学校↓(注)↓への進学率は20%弱にすぎなかったが、昭和33年の中学校卒業者の高等学校進学率は53.7%に増力1している。

 (注)中等学校には、わが国では戦前の中学校・高等女学校・師範学校・実業学校,戦後の中学校・高等学校が該当する。

第6表 高等学校進学率と県民所得

 しかし,これを地域別に見ると, 第6表 のようにかなりのひらきがある。

 なお,これを県民所得との関係において見ると,進学率の高い県はおおむね1人あたり県民所得も高く,進学率の低い県は県民所得も低い。

 この義務教育終了者の進学率を諸外国と比較してみると, 第4図 に示すとおりである。

第4図 主要国における義務教育後の在学率

 この図のなかの数字は義務教育最終学年の生徒数を100として,そのうちどれだけの者が上級の学校または学年に進むかを示している。

 わが国の場合には定時制高等学校の生徒数を含めたが,外国の場合には全日制中等学校の生徒数だけを取り上げ,定時制教育機関の生徒数を除いた。これは,外国の定時制課程がわが国の定時制高等学校とは異なり,授業時数も少なく,全日制課程と同じ資格が与えられないためである。

 それぞれの国の在学者の比率について説明すると,次のとおりである。

 日本……1954年(昭和29年)の中学校第3学年生徒数を100として,そのうち,全日制および定時制の高等学校の第1・2・3学年および定時制高等学校第4学年に進んだ者の比率を示した。第10学年,すなわち高等学校第1学年に進んだ者の比率は53%で,第12学年(高等学校第3学年)に進んだ者の比率は47%である。第13学年の6%という数字は,定時制高等学校の第4学年に進んだ者の比率を示している。

 アメリカ合衆国……1952年の第9学年生徒数を100として,そのうちどれだけの者が第10・11・12学年に進んだかを示している。 第2表 にあるように,アメリカ合衆国では大半の州が9年の義務制をとっているが,10年制をとっているところが3州,11年制が3州,12年制が1州ある。また,9年あるいは8年の義務制をとっている州でも,就学義務の終了後も中等教育を継続して受ける者の比率が高い。このため,アメリカ合衆国では,第10学年に進む者の比率が非常に高くなっている。しかし,これ以後は,中途退学者がかなり多いために,第11・12学年では,生徒数がかなり減少している。

 イギリス……1954年の満14歳の中等学校生徒数を100とし,そのうち15歳〜19歳まで中等学校に残った者の比率を示した。

 イギリスの中等学校には古典中等学校,技術中等学校,近代中等学校の3種がある。古典中等学校は主として大学入学の準備教育を行なう学校,技術中等学校は中級技術者を養成するための学校,近代中等学校は主として比較的に早く社会に出る者を教育する学校である。小学校卒業者の大半は近代中等学校に入学し,第10学年で義務教育が終了するので,大部分の生徒は社会に出る。このため,第11学年の在学者の比率はかなり低く30%となっている。また,その後学年が進むにつれて在学者の比率はしだいに減少しているが,これはこれらの学年で社会に出る者や大学その他の教育機関に入学する者が多いためである。

 西ドイツ……図のなかの数字は1956年度の学年別生徒数によって算出したものである。

 西ドイツの義務教育年限は一般に8年であるが,9年のところもある。児童の大半は,義務教育の終了とともに社会に出る。このため,第9学年の在学者数は49%に,第10学年の在学者数は30%に,それぞれ減少している。中等学校には,大学入学の準備教育を主とする高等学校のほかに中間学校と実業学校があり,高等学校は第13学年までであるが,中間学校は第10学年まで,実業学校は第10学年または第11学年までである。第11・12学年の在学者が減少するのは,一つには,このような学校制度のためであり,また一つには,これらの学年で中等学校を中途退学して社会に出るものが多いためである。

 フランス……図のなかの数字は,1951年度の学年別生徒数によって算出したものである。

 フランスの中等学校としては,高等学校・技術中等学校・近代中等学校・小学校補習科があり,高等学校は第6学年から第12学年まで,技術中等学校は第9学年から第12学年まで,近代中等学校と小学校補習科とは第6学年から第9学年までである。第9学年に比べて第10学年の在学者の率が激減しているが,これは一つには近代中等学校と小学校補習科の生徒が第9学年で卒業するためである。

 また,高学年になるほど,生徒数が著しく減少するのは,中等学校の途中で社会に出る者が多いためである。

 ソ連……図のなかの数字は,1955年度の学年別生徒数を推計して算出したものである。

 従来,ソ連の義務教育年限は一般に7年であったが,大都市・工業中心地では10年制をとっていた。

 ソ連の初等・中等学校には義務教育を施す4年制小学校・7年制学校・10年制中学校と,職業教育を施す中等専門学校(第8〜11学年)の4種がある。この図において,第8学年から第10学年までの生徒数には中学校の上級学年と中等専門学校の生徒数が含まれており,第11学年の生徒数には中等専門学校の最終学年の生徒数だけが含まれている。

 6か国を比較すると,まず,義務教育を終える生徒のうち上級の学校または学年に進む者の比率においては,アメリカ合衆国がいちばん高く,次でソ連,フランス,日本,西ドイツ,イギリスという順序である。

 次に,これら上級学校(または学年)に進んだ者のうち,中等学校の高学年まで進む者がどれだけあるかを比較する。比較の便宜上,義務教育終了後の3箇学年の在籍者の比率について見ると,わが国では高等学校第1学年に進学した者のうち,第3学年に進級するまでに約1割が学校を離れてゆくだけであるが,アメリカ合衆国とソ連では,このような生徒は約1/3であり,フランスでは半数,イギリスと西ドイツでは3/4に達している。

 このように,わが国では,高等学校入学者のほとんどすべてが卒業まで残るのに対して,特にイギリス・西ドイツ・フランスの各国では,中等学校高学年の生徒数が義務教育終了直後の学年の生徒数に比べてかなり減少していることが注目される。

 以上の比較については,中等学校の性格と学校制度の型が国によって異なることを考慮すべきである。

 また,わが国では一定の学校の卒業免状を持っているかどうかが就職に強く影響するのに対して,イギリスや西ドイツ・フランスなどでは,職業人としての一定の資格免状を持っているかどうかが就職に強く影響しているということも見落とすことはできない点である。イギリス・西ドイツ・フランスの3か国では定時制の教育機関が広く発達し,定時制課程によって技能者や技術者などの資格を獲得する道が開かれているのである。たとえば,イギリスでは技能者や技術者として社会で働くためには,技術者団体の行なう検定試験に合格することが要求されており,多数の定時制教育機関(テクニカルカレッジ)においてこの試験のための準備教育が行なわれている。授業日数は,課程の種類によってまちまちであるが一般に毎週1回1日(朝からタ方まで)または毎週夜間3回である。

 西ドイツでは,義務教育を終えた後,上級の学校または学年に進まない者に対して,都会では18歳まで,農村では17歳まで,定時制の職業学校(ベルフスシューレ)に通うことを義務づけている。授業時間数は,毎週または2週間に4時間〜12時間である。

 フランスでも,西ドイツと同じように,都会では18歳まで,農村では17歳まで定時制職業学校に通学することが義務となっている。

 フランスでも,西ドイツと同じように,義務教育の終了後,中等学校に進まない勤労青少年は次のような定時制教育を受けることが義務づけられている。すなわち,都市の商工業に従事する青少年は,満18歳までの定時制補習教育を,農業に従事する子女は,満17歳までの農業補習教育または農業家政補習教育を受けることを義務づけられている。


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