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まえがき

 一国の経済・産業・学術・文化の発展向上を図るためには,それらを国際的な視野のもとに正しく認識することが必要であるが,教育の諸問題も国際的環境のなかで考察することによって,その将来の方向に多くの有意義な示唆を得ることができるであろう。

 その意味において,わが国の教育水準が,世界各国と比べてどのような位置にあるかを知ることは,教育関係者をはじめ広く一般からも深い関心をもたれ,きわめて必要なこととされていたが,これまでまとまった形において検討されなかった。その大きな理由は,じゅうぶんな資料が整備されていなかったためである。しかしながら,その必要性が痛感されてきた今日,そうした資料の不足を感じつつも,各国政府・ユネスコの報告・統計等によって,ここにあえてこの企てを試みたのである。

 本書では,わが国の教育水準すなわち国民の教育の普及度,教育内容,教育の物的・人的条件,教育費などについて,諸外国特に世界の主要国であるアメリカ合衆国・イギリス・西ドイツ・フランス・ソ連のそれらと比較した。

 わが国の教育の普及度は,これらの国とともに世界の最高の位置にありながら,その質的水準ではじゅうぶんでない点が少なくない。すなわち,教育内容に大きな影響をもつ教育の物的条件である施設設備・教材など,人的条件である教師の資格・養成など,あるいは機会均等施策や補助活動では,これらの主要国に比べていっそうの努力を要するところがみられる。このことは,一つの理由として,主要国と比べてわが国では,国民所得中,教育費の比率は最高位にあり,また,行政費総額中,公教育費の比率が劣っていないが,それにもかかわらず,これらの国と比べて生徒1人あたりの教育経費の少ないことによるのである。すなわち、わが国の1人あたり国民所得が少ないためであろう。

 一国の富を高め,国民の生活水準を向上させるには,さまざまの要因があるが,そのおもなものの一つは教育である。天然資源に恵まれない国でも,国民の教育水準が高ければ,豊富な知性と高度の技術によってそれらの資源をじゅうぶんに開発し,工業化し,生産力を増加することができる。この点,わが国民は教育のために多大の努力をはらっているが,いわゆる教育への投資の問題についてさらに考慮することが必要であろう。

 また,最近における科学技術の進歩,経済の拡大などによって,教育に対する社会的要請はますます高いものとなっている。このような情勢のもとに,教育改革が多くの国で積極的に進められているが,わが国が当面する問題,たとえば近い将来の教育人口激増に伴う教育水準の確保と向上,義務教育後の教育についての総合的なあり方,あるいは大学教育の方向などについて考えるとき,これら主要国の教育改革の内容などを念頭に入れることは,また必要なことである。

 第二次世界大戦のため,わが国は,教育の分野においても多くのものを失った。それにもかかわらず,国民の努力によって今日のような発展をみ,わが国の教育水準は世界の主要国とおおむね比肩することができるに至ったが,その質的な面についてなお改善充実を図る必要がある。


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