第14章 行政改革・政策評価等の推進

総論

 政府は,平成25年1月,国民本位で時代に即した合理的かつ効率的な行政を実現するため,全閣僚を構成員とする「行政改革推進本部」を設置しました。政府全体で各種の行政改革を進めている中で,文部科学省も業務・予算の一層の効率化や効果的な運用を進めています。
 また,効果的かつ効率的な行政の推進に当たっては,既存の政策の効果やその後の社会経済情勢の変化に対応しながら,自らの政策を積極的に見直す姿勢が求められます。文部科学省は,政策評価制度と独立行政法人評価制度を通じて,個々の政策や独立行政法人の業務の必要性・有効性・効率性等を客観的かつ厳格に評価し,その結果を踏まえた見直しを行ってきました。この見直しを引き続き進めていくことによって,行政における企画・立案(Plan),実施(Do)に加え,業績の測定・評価(Check),その結果を踏まえた次の企画・立案への反映(Action)という循環型の行政管理(PDCAサイクル)の推進,活用を目指しています。政策評価と独立行政法人評価の結果については,随時ウェブサイト等で公表することによって国民への説明責任を果たすことに努めています(※1)。
 なお,文部科学省が所管する教育,科学技術・学術,スポーツ,文化芸術の各分野の政策は,財政状況に対応して伸縮し難い面を持つとともに,その成果の発現が中長期にわたることなどを踏まえて,評価を実施していく必要があります。


  • ※1 政策評価・独立行政法人評価については参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/hyouka/

第1節 文部科学省における再就職コンプライアンスの取組

 文部科学省では,平成29年3月に調査結果を公表し,職員が国家公務員法に定める再就職等規制に違反する行為を行ったことを確認するとともに,再就職あっせんの仕組みは文部科学省の組織的な関与の中で運用されてきたことを明らかにしました。このことにより失った文部科学行政に対する信頼の回復とともに文教・科学技術施策の充実に向けて文部科学省は職員一丸となって取組を進めてきました。
 再就職等規制違反の再発防止については,「文部科学省における再就職等規制違反の再発防止策に関する有識者検討会」が,平成29年7月に再就職等規制違反の再発防止策に関する提言を取りまとめました。(図表2-14-1)
 この提言においては,第三者によるコンプライアンス体制の確立などの再就職等規制違反の再発防止に直結するような対策から,人事慣行の見直しなど文部科学省の組織の在り方に関わるものまで,幅広い再発防止策が盛り込まれています。
 提言を受けて,文部科学省では,平成29年8月に第三者による再就職コンプライアンスチームを設置するとともに,省内に担当室を設置し,新たなチェック体制を整えました。また,再就職コンプライアンス研修の実施や,人事に関する慣行や仕組みの見直し,管理職のマネジメント能力の育成など,提言に示されたその他の再発防止策についても着実に実行に移しているところです。今後ともこれらの取り組みを進めることで,再発防止の徹底に努めてまいります。

 図表2-14-1 文部科学省における再就職等規制違反の再発防止策に関する提言(概要)(平成29年7月27日)

第2節 行政改革等の推進

1 地方分権改革

 地方分権改革については,平成26年から地方分権改革に関する「提案募集方式」を導入していますが,地方公共団体に対する事務・権限の委譲等を更に推進するため,政府において,30年12月に「平成30年の地方からの提案等に関する対応方針」(30年12月25日閣議決定)が策定されました。この閣議決定を受けて,第9次地方分権一括法案が第198回通常国会で提出され,成立するなど,地方公共団体の自主性の強化,自由度の拡大が図られています。
 第9次地方分権一括法において文部科学省に関係する措置としては,幼保連携型認定こども園の保育教諭の資格要件を緩和する等の特例を更に5年間延長する教育職員免許法等の改正,公立大学法人が,大学業務及び附帯業務に該当しない土地等を貸し付けることを可能とする地方独立行政法人法の改正,博物館,図書館,公民館等の公立社会教育施設について,地方公共団体の判断で条例により,地方公共団体の長が所管することを可能とする社会教育法等の改正があります。

2 国家戦略特区

 国家戦略特区とは,経済社会の構造改革を重点的に推進することによって産業の国際競争力を強化するとともに,国際的な経済活動の拠点の形成を推進する観点から,国が定めた区域において,規制改革等の施策を総合的・集中的に推進する制度です。
 文部科学省関係では,公立学校の管理を民間に委託することを可能とする学校教育法の特例や,国際的な医療人材育成のために1校に限り医学部を新設することを可能にする特例告示,獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するために1校に限り獣医学部を新設することを可能にする特例告示があります。

3 構造改革特区

 構造改革特区とは,地域で設定した区域において,各地域の特性に応じて規制の特例措置の適用を受けて,様々な分野における構造改革を推進するとともに,地域の活性化を図り,国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与することを目的とした制度です。
 文部科学省関係では,特例措置として実施された事業のうち,各特区にとどめることなく全国展開などの措置を行ったものは25件あります(平成31年3月現在)。

第3節 政策推進・評価

1 政策推進のための新たな取組

 我が国の経済社会構造が急速に変化する中,限られた資源を有効に活用し,国民により信頼される行政を展開するためには,エビデンスの活用等を通じて政策課題を迅速かつ的確に把握して,有効な対応策を選択し,その効果を検証することが必要です。そのため,政府全体で,証拠に基づく政策立案(Evidence-based Policymaking(EBPM))が推進されています。文部科学省では,省内の関係部署の連携体制を構築し,EBPMの試行的実践に取り組んでいます。今後も,省内における実践実例の創出を進めるとともに,職員の能力向上のための研修等を実施し,EBPM的手法を活用することで政策の質の向上に取り組んでいきます。また,政府全体として,統計の点検検証が行われており,文部科学省においても,所管する基幹統計及び一般統計に関する点検を行いました。これらの結果も踏まえ,統計調査を適切に実施するとともに,データの利活用促進といった観点からEBPMに資する取組を進めていくこととしています。
 社会課題が複雑化・多様化する中で,政策の企画・立案には,これまで以上に産学官民の課題に関係する者(ステークホルダー)と連携しながら共創・協働していく姿勢が,求められています。このような背景を踏まえ,文部科学省の政策立案機能(事業設計含む)の向上のための取組として,「対話型政策形成」(政策の企画立案及び実施の各過程において,ステークホルダーとの対話を通じて政策形成を行う取組)を推進しています。「科学技術改革タスクフォース報告(平成30年8月3日)」においても,様々なステークホルダーとの共創を重視し,その策定過程にも政策対話を取り入れています。現在,取組の一環として,民間企業等とのワークショップや様々な分野の有識者を交えた政策対話を進めています。また,目指すべき未来の地域社会像をデザインし,その実現に向けて,科学技術イノベーションによる課題解決の方法を共創する政策対話を「未来社会を見据えた課題解決のための政策立案に関する調査研究」で行いました。引き続き,ニーズに即した政策の一層の展開を目指し,産学官民の幅広いステークホルダーとの政策対話の拡充を図ってまいります。

 政策対話の様子
 政策対話の様子

 さらに,「今後の文部科学省の在り方を考えるタスクフォース報告(平成29年7月21日)」において,政策立案機能の強化等が戦略として掲げられており,文部科学省職員は,既存の思考にとらわれることなく,様々な立場の方との対話を通じて,社会の理解を得ながら政策の企画立案や実施に取り組む姿勢・能力が求められています。これらの姿勢・能力を醸成する機会を提供するため,政策立案教養研修を実施しています。未来社会における学校の役割や,子供の貧困問題など様々なテーマについて,試行的に民間企業とのワークショップ,外部有識者による講演会や勉強会などを行いました。政策立案機能を強化するため,今後も省内外の方々の協力を得ながら,一層の取組を進めてまいります。

 政策立案教養研修の様子
 政策立案教養研修の様子

2 政策評価の実施

 文部科学省は,政策評価に関する中長期的な計画である「文部科学省政策評価基本計画」と年度ごとの実施計画である「文部科学省政策評価実施計画」を策定しており,これらに基づいて政策評価を実施しています。また,「文部科学省の使命と政策目標」(以下「政策体系」という。)を定め,政策の体系を明らかにしています(図表2-14-2)。
 政策評価制度では,政策を実施する者が自ら評価を行うことが基本とされていますが,客観性及び厳格性を確保するため,学識経験者などを構成員とする「政策評価に関する有識者会議」を開催し,目標・指標の設定等について助言を得ています。

(1)事前評価の実施

 平成30年度は,以下の三つの事項について,必要性・有効性・効率性等の観点で事前評価を行いました。

1.予算要求を行う事項

 平成31年度概算要求では,10億円以上の新規の研究開発事業及び拡充部分に10億円以上の新規性を含む研究開発事業の計4事業を対象に,事前評価を実施しました。

2.規制の新設・改廃を行う事項

 平成30年度は,法律又は政令の制定又は改廃により,規制(国民の権利を制限し,又は義務を課する作用)を新設又は改廃するもの4件を対象に,事前評価を実施しました。

3.税制改正要望を行う事項

 平成30年度税制改正要望を行おうとするもののうち,法人税・法人事業税・法人住民税に関する租税特別措置・税負担軽減措置の要望を行うもの4件を対象に,事前評価を実施しました。

(2)事後評価の実施

 平成30年度は,以下の三つの事項について,必要性・有効性・効率性等の観点で事後評価を行いました。

1.目標管理型の政策評価を行う事項

 目標管理型の政策評価とは,あらかじめ設定された目標の達成度合い等について評価を行うもので,5年を目安に各施策について事後評価をします。
 平成30年度は,「文部科学省の使命と政策目標」(図表2-14-2)に掲げる全44の施策目標のうち,6の施策目標の29年度までの実績について,事後評価を実施し,「文部科学省事後評価書(平成29年度実績)」(29年8月31日)としてとりまとめました。

2.規制の新設・改廃を行った事項

 平成30年度は「障害のある児童生徒等の就学手続の改正」を対象に事後評価を実施しました。

3.税制改正を行った事項

 平成30年度は「重要文化財等の譲渡に係る課税標準の特例措置」を対象に事後評価を実施しました。

3 政策評価結果の政策への反映

 政策評価の結果は,予算要求や法令による制度の新設・改廃等の政策の企画立案作業における重要な情報として活用され,適切に反映されることが重要です。文部科学省では,平成30年度に行われた政策評価の結果が,どのように政策に反映されたかについて,31年4月に「政策評価の結果の政策への反映状況(平成30年度)」として公表しました。

 図表2-14-2 文部科学省の使命と政策目標

第4節 独立行政法人評価

1 独立行政法人制度の概要

 独立行政法人は,平成13年の中央省庁等改革の一環として,国の政策を効果的・効率的に実現することを目的として創設された機関です。文部科学省所管の独立行政法人は,教育,科学技術・学術,スポーツ,文化芸術といった各分野の政策目標を達成する上で極めて重要な役割を担っています。
 「独立行政法人通則法」(以下,「通則法」という。)は,独立行政法人のうち,国民の需要に的確に対応した多様で良質なサービスの提供を通じた公共の利益の増進を推進することを目的とする独立行政法人を「中期目標管理法人」,我が国における科学技術の水準の向上を通じた国民経済の健全な発展,その他の公益に資するため研究開発の最大限の成果を確保することを目的とする独立行政法人を「国立研究開発法人」としています。各独立行政法人の主務大臣は,業務の質の向上や法人運営の透明性の確保のために,通則法等に基づき,中(長)期目標の策定・指示,中(長)期計画の認可,業務の実績に関する評価,業務及び組織の全般にわたる見直し等を行います。主務大臣は,中(長)期目標の策定においては,総務省の「独立行政法人評価制度委員会」の意見を聴かなければならず,業務の実績に関する評価並びに業務及び組織の全般にわたる見直しにおいては,同委員会に通知することになっています。また,国立研究開発法人については,これらに加えて,同委員会への意見聴取及び通知に際し,研究開発に関する審議会(文部科学省においては,「国立研究開発法人審議会」)の意見を聴かなければならないことになっています。さらに,主務大臣は評価の結果に基づき,必要があると認める場合には,当該独立行政法人に対する業務運営の改善その他の勧告を行います。
 これによって,主務大臣の下での一貫したPDCAサイクルが確立され,独立行政法人の政策実施機能が最大限発揮されることとなります。

2 独立行政法人評価の実施

 平成30年度には,文部科学省所管及び共管の24法人(日本私立学校振興・共済事業団(助成業務)を含む。)の「平成29年度における業務の実績に関する評価」,6法人の「中期目標期間における業務の実績に関する評価」を実施しました(図表2-14-3)。
 また,平成30年度で中期目標期間が終了する4法人に対しては,「中期目標期間の終了時に見込まれる業務の実績に関する評価」を実施するとともに,当該評価等を踏まえて,例えば日本学生支援機構では,事業規模の変化及び制度改正に対応し,経済的理由により修学が困難である者への的確な支援を行うことといった次期中期目標において取り組むべき「業務及び組織の全般に関する見直し内容」を決定しました。この見直し内容を基に令和元年度からの中(長)期目標を決定し,法人に指示するとともに,目標に基づき法人が作成した中(長)期計画を認可しました。

 図表2-14-3 平成30年度に実施した文部科学省所管独立行政法人等の業務の実績に関する評価結果

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総合教育政策局政策課

-- 登録:令和元年11月 --