第13章 防災・減災対策の充実

総論

 文部科学省は,児童生徒等の安全で安心な生活を確保するため,防災教育の充実や学校施設の防災機能強化などの災害予防,災害応急対策,災害復旧の支援及び防災に関する研究開発の推進など,防災・減災対策の充実に取り組んでいます。

第1節 防災・減災対策の充実

1 防災体制の確立

 地震,津波,暴風,竜巻,豪雨,火山噴火などの自然災害や事故災害に対し迅速かつ適切に対処するためには,総合的かつ計画的な防災対策を進めることが重要です。
 文部科学省は,「災害対策基本法」などを基に,防災に関し必要な事項を定めている「文部科学省防災業務計画(※1)」を策定し,防災対策の充実に努めています。また,「文部科学省首都直下地震対応業務継続計画(※2)」を策定し,文部科学省の所掌事務の中で,非常時においても国民生活上重要かつ停滞してはならない事務を必要最低限継続できるよう,防災体制の確立に努めています。
 都道府県や市町村においては,「防災基本計画」や「文部科学省防災業務計画」などを基に地域防災計画を作成し,学校などにおける防災体制の整備・充実を進めています。


  • ※1 参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/gyoumu/1329040.htm
  • ※2 参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/keizoku/index2.htm

2 災害予防の推進

 文部科学省は,災害時において児童生徒等が自ら適切な行動をとれるようにするため,防災教育のより一層の充実を図っています。また,児童生徒等の学習・生活の場であり,災害時には地域住民の避難所等としての役割を果たす学校施設について,防災機能の強化に向けた取組を推進しています。

(1)防災教育の充実(※3)

 各学校における安全教育のうち防災教育については,児童生徒等に自然災害等の危険に際して自らの命を守り抜くための「主体的に行動する態度」等を身に付けさせるために,学習指導要領に基づき関連教科や特別活動など学校の教育活動全体を通じて行われています。自然災害等を想定した避難訓練や地域住民・関係機関等と連携した避難所運営訓練を実施するなど,知識の習得にとどまらない実践的な防災教育が展開されています。
 文部科学省は,地域や学校の抱える防災をはじめとした学校安全上の課題に対して,地域の実情に応じた教育手法を開発したり,安全管理体制及び地域住民・関係機関等との連携体制を構築したりする地域や学校を支援するほか,教職員に対する研修の実施についても支援しています。


  • ※3 参照:第2部第2章第4節

(2)防災機能強化の推進

 災害時には多くの学校施設が避難所等として活用されます。一方で,平成28年熊本地震では,非構造部材の損傷等により体育館が使用できなかったり,トイレや電気,水の確保等において様々な不具合,不便が生じたりするなど,避難所に関する様々な課題が生じました。
 このため,文部科学省は,学校施設における防災機能の向上の観点から,避難所に必要な防災機能の保有状況等を調査(※4)するとともに,防災部局が中心となって教育委員会等と連携し,学校施設ごとに避難所として求められる役割・備えるべき機能・施設利用計画等を明確化し,適切な協力体制の構築を図るよう,教育委員会等に周知しました。
 また,文部科学省は従前より,学校施設の耐震化等,災害に強い学校施設整備のための技術的な支援を行うとともに,過去の災害から得られた知見の提供や,安全・安心な学校づくりに取り組む地方公共団体の事例紹介を行うセミナーを開催するなど,学校設置者に対し防災機能の強化に関する普及・啓発を行っています。
 さらに,学校設置者が実施する学校施設における津波対策や防災機能強化の取組に対して,国庫補助を行っています。


  • ※4 参照https://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/bousai/1394437.htm

3 災害応急対策の取組

 文部科学省は,自然災害が発生した場合,被害情報の収集に努めるとともに,児童生徒等の安全確保及び二次災害の防止などに当たって必要な措置を講じるよう,都道府県教育委員会等の関係機関に要請しています。
 また,地震によって文教施設が被災した場合,余震などによる建物の倒壊や落下物による二次災害から児童生徒等や避難住民などの安全を確保するため,地方公共団体などからの要請に応じて,建物の当面の使用可否を調査する文教施設応急危険度判定士を被災地に派遣する体制を整備しています。

4 災害復旧への支援(※5)

 文部科学省では,自然災害により被害を受けた公立学校施設において,教育活動を円滑に実施できるよう,施設の復旧に要する経費の一部を国庫負担(補助)しています。特に,激甚災害(※6)に指定された災害に関しては,地方公共団体ごとにその財政規模に応じて国庫負担率が引き上げられます。
 また,国立学校施設についても,自然災害により被害を受けた施設の復旧に要する経費を国庫補助しています。
 さらに,私立学校施設についても,激甚災害に指定された災害により被害を受けた施設の復旧に要する経費の一部を国庫補助しています。

 被災した学校施設(土砂流入による昇降口の被害)
 被災した学校施設(土砂流入による昇降口の被害)


  • ※5 参照:第1部特集2第1節1(2)
  • ※6 激甚災害:国民経済に影響を及ぼし,かつ,地方財政の負担緩和や被災者への特別の助成を行うことが特に必要な災害。

5 防災に関する研究開発の推進

 科学技術を生かして自然災害による被害の軽減を図るため,文部科学省は,地震調査研究推進本部の方針に基づき,地震の発生とそれに伴う津波の予測についての調査研究を進めています。あわせて,防災科学技術研究所は,我が国の防災・減災研究の基盤となる陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)等の整備・運用を行うとともに,それらを活用した研究開発を実施しています(※7)。


  • ※7 参照:第1部特集2第4節,第2部第7章第3節2

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-- 登録:令和元年11月 --