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第4章 初等中等教育の充実

総論

 教育は,子供たち一人一人の人格の完成を目指すものであり,子供たちが将来にわたって幸福な生活を営んでいく上で不可欠です。また,将来この国や社会を担っていく人材を育てていくという使命もあり,このような教育の重要性はどのような時代にあっても変わることはありません。特に,昨今では,グローバル化や知識基盤社会の到来,少子高齢化の進展など,社会が急速な変化を遂げており,教育の重要性はますます高まっています。
 このような時代の中で子供たちへの教育を一層充実していくよう,文部科学省では,教育機会の確保や教育水準の維持向上のため,学習指導要領が目指す教育の実現,科学技術系人材を育成するための理数教育の推進,グローバル人材の育成に向けた教育の充実,キャリア教育・職業教育の推進,高等学校教育改革の推進,教科書の充実,いじめ・不登校等の生徒指導上の諸課題への対応,道徳教育の充実,人権教育の推進,子供の健康と安全の確保,きめ細かで質の高い教育に対応するための教職員の資質能力向上や指導体制の整備,生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の振興,障害のある子供一人一人の教育的ニーズに応じた特別支援教育の推進,地方教育行政の在り方と地域とともにある学校づくり及び幼児・児童・生徒に対する経済的支援の充実など,様々な施策を実施しています。

第1節 学習指導要領が目指す教育の実

 現学習指導要領は,子供たちが全国どこにいても一定水準の教育を受けられるようにするために,学校が編成する教育課程の大綱的基準として,国が学校教育法等に基づいて定めるものです。これまで,おおむね10年ごとに改訂してきています。現行の学習指導要領では,「確かな学力」,「豊かな心」,「健やかな体」の知・徳・体のバランスを重視した「生きる力」を育むことを目指しています。

1 新学習指導要領について

 近年,情報技術の飛躍的な進化等を背景とした人工知能(AI)の急速な進化やグローバル化の進展などに伴い,社会の変化は加速度を増し,複雑で予測困難となってきています。そのような社会の中で,子供たち一人一人が,直面する様々な変化を柔軟に受け止め,感性を豊かに働かせながらどのような未来を創っていくのか,どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかを考え,予測できない変化に受け身で対処するのではなく,主体的に向き合って関わり合い,その過程を通して,自らの可能性を発揮し,よりよい社会と幸福な人生の創り手となっていけるようにすることが必要です。
 このような時代において,子供たちが未来を切り拓(ひら)くために必要な資質・能力を確実に育成するため,平成29年3月に幼稚園教育要領及び小・中学校学習指導要領を,30年3月に高等学校学習指導要領を改訂しました。

(1)改訂のスケジュール

 学習指導要領改訂に向けては,平成26年11月に文部科学大臣から「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」諮問が行われたことを受け,中央教育審議会において議論を重ねられ,28年12月に「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」が取りまとめられました。本答申の内容を踏まえ,29年3月には新しい幼稚園教育要領及び小・中学校学習指導要領が,30年3月には新しい高等学校学習指導要領が公示されました。また,特別支援学校幼稚部教育要領,特別支援学校小学部・中学部学習指導要領は29年4月に,特別支援学校高等部学習指導要領は31年2月に公示されています。
 新しい幼稚園教育要領は,周知・徹底期間を経て,平成30年度から実施されています。
 小・中学校では,周知・徹底期間を経て,平成30年度から移行期間が始まっています。移行期間中においては,円滑な移行のため内容の一部を加える等の特例を設けるとともに,教科書等の対応を要しない場合などには,積極的に新学習指導要領による取組ができるようにしています。また,小学校の新学習指導要領において,小学校3年生から6年生で外国語科及び外国語活動の標準授業時数が増加することを踏まえて,標準授業時数に関する特例も設けています。今後は,教科書の作成・検定・採択・供給等を経て,令和2年度から小学校より順次,新学習指導要領を実施することとしています。

 図表2‐4‐1 学習指導要領改訂に関するスケジュール

(2)改訂の基本的な考え方

 新学習指導要領では,教育基本法,学校教育法などを踏まえ,これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積を活(い)かし,子供たちが未来社会を切り拓(ひら)くための資質・能力を一層確実に育成することを目指します。その際,子供たちに求められる資質・能力とは何かを社会と共有し,連携する「社会に開かれた教育課程」を重視しています。
 また,知識及び技能の習得と思考力,判断力,表現力等の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で,知識の理解の質を更に高め,確かな学力を育成することとしています。
 加えて,先行する特別教科化など道徳教育の充実や体験活動の重視,体育・健康に関する指導の充実により,豊かな心や健やかな体を育成することとしています。

(3)知識の理解の質を高め資質・能力を育む「主体的・対話的で深い学び」

1.「何ができるようになるか」を明確化

 知・徳・体にわたる「生きる力」を子供たちに育むため,「何のために学ぶのか」という学習の意義を共有しながら,授業の創意工夫や教科書等の教材の改善を引き出していけるよう,全ての教科等を,1.知識及び技能,2.思考力,判断力,表現力等,3.学びに向かう力,人間性等の三つの柱で再整理しています。
 例えば,中学校理科の生命領域においては,前述の三つの柱に沿って,1.生物の体のつくりと働き,生命の連続性などについて理解させるとともに,2.観察,実験など科学的に探究する活動を通して,生物の多様性に気付くとともに規則性を見いだしたり表現したりする力を養い,3.科学的に探究しようとする態度や生命を尊重し,自然環境の保全に寄与する態度を養うことを目標としています。

2.我が国の教育実践の蓄積に基づく授業改善

 我が国のこれまでの教育実践の蓄積に基づく授業改善の活性化により,子供たちの知識の理解の質の向上を図り,これからの時代に求められる資質・能力を育んでいくことが重要です。
 小・中学校においては,これまでと全く異なる指導方法を導入するということではなく,地域や学校によっては年齢構成の不均衡により,30代,40代の教員の数が少なくなっている中,これまでの教育実践の蓄積を若手教員にもしっかり引き継ぎつつ,授業を工夫・改善する必要があります。
 学校における喫緊の課題に対応するため,平成29年3月に「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」が改正されました。これにより,16年ぶりの計画的な教職員定数の改善が図られています。教員が授業準備などを行う時間や子供と向き合う時間を確保するための条件整備や「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」の策定などによる業務負担の軽減などを一層推進しました。
 また,既に行われている優れた教育実践の教材,指導案などを集約・共有化し,各種研修や授業研究,授業準備での活用のために提供するなどの支援の充実も図ることとしています。

(4)各学校におけるカリキュラム・マネジメントの確立

 教科等の目標や内容を見渡し,特に学習の基盤となる資質・能力(言語能力,情報活用能力,問題発見・解決能力等)や現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の育成のためには,教科等横断的な学習を充実する必要があります。また,「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善においては,単元など数コマ程度の授業のまとまりの中で,習得・活用・探究のバランスを工夫することが重要です。
 そのため,学校全体として,教育内容や時間の適切な配分,必要な人的・物的体制の確保,実施状況に基づく改善などを通して,教育課程に基づく教育活動の質を向上させ,学習の効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントを確立することを目指します。

(5)教育内容の主な改善事項

1.言語能力の確実な育成

 言葉は,学校という場において子供が行う学習活動を支える重要な役割を果たすものであり,全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となるものです。したがって,言語能力の向上は,学校における学びの質や,教育課程全体における資質・能力の育成の在り方に関わる課題であり,文章で表された情報の的確な理解に課題があると指摘される中,ますます重視していく必要があります。現行学習指導要領では,児童生徒一人一人の思考力・判断力・表現力等を育むために,国語科をはじめ各教科等で記録,説明,要約,論述,話合いなどの言語活動の充実を図っています。新学習指導要領においても,国語科を要としつつ各教科等の特質に応じて,発達の段階に応じた語彙の確実な習得や,情報を正確に理解し適切に表現する力の育成など,言語能力の確実な育成を進めることとしています。

2.理数教育の充実

 次代を担う科学技術系人材の育成や国民一人一人の科学に関する基礎的素養の向上を図るため,理数好きな子供の裾野の拡大や子供の才能を見いだし伸ばしていくことが重要です。現行学習指導要領では,算数・数学,理科の授業時数や内容が充実され,観察・実験などの充実を図っています。新学習指導要領においては,育成を目指す資質・能力を明確化し,日常生活等から問題を見いだす活動や見通しを持った観察・実験などの充実により更に学習の質を向上させることとしています。

3.伝統や文化に関する教育の充実

 国際社会で活躍する日本人の育成を図るためには,我が国や郷土の伝統や文化を受け止め,その良さを継承・発展させるための教育を充実することが必要です。このため,新学習指導要領においては,我が国の言語文化,県内の主な文化財や年中行事の理解,我が国や郷土の音楽,和楽器,武道,和食や和服などの指導を通して,我が国の伝統や文化についての理解を深める学習の充実を図っています。

4.道徳教育の充実

 学校教育では,調和のとれた人間の育成を目指して,子供たちの発達段階に応じた道徳教育を展開することとしています。
 小学校では平成30年度,中学校では令和元年度から「特別の教科道徳」が全面実施されます。高等学校では,平成30年3月に公示した新学習指導要領において,校長のリーダーシップの下,道徳教育推進教師を中心に,全ての教師が協力して道徳教育を展開することを新たに規定するとともに,公民科の「公共」及び「倫理」並びに特別活動が,人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面であることを明記しました。
 これを見据え,文部科学省では,各地域の特色を生かした道徳教育を推進するため,研修の実施や地域教材の作成など,各学校や地方公共団体等の多様な取組を支援するとともに,映像資料等を紹介する「道徳教育アーカイブ」の内容の充実を図っています。

5.体験活動の充実

 生命や自然を大切にする心や他を思いやる優しさ,社会性,規範意識などを育てるため,学校において,自然体験活動や集団宿泊体験,奉仕体験活動といった様々な体験活動を行うことは極めて有意義です。現行学習指導要領では,自然や文化などに親しむとともに,人間関係などの集団生活の在り方や公衆道徳などについての望ましい体験等を行うために,特別活動の時間等において,体験活動の充実を図っています。新学習指導要領においても,生命の有限性や自然の大切さなどを実感するための体験活動の充実や自然の中での集団体験活動,職場体験を重視するといった体験活動の充実を進めることとしています。

6.外国語教育の充実

 グローバル化が急速に進展する中で,外国語によるコミュニケーション能力は,これまでのように一部の業種や職種だけではなく,生涯にわたる様々な場面で必要とされることが想定され,その能力の向上が課題となっています。現行学習指導要領では,外国語を通して,言語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や,情報や考えなどを理解したり伝えたりする力の育成を目標として掲げ,小学校高学年における外国語活動の導入や,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと」,「書くこと」の英語力を総合的に育成することを狙いとした改訂が行われ,学校現場においては,指導改善による成果が認められています。しかし,学年が上がるにつれて学習意欲に課題が生じるといった状況や,学校種間の接続が十分とは言えず,児童生徒が進級や進学をした後に,それまでの学習内容を発展的に生かすことができないといった状況も指摘されていました。また,中・高等学校における生徒の英語力では,習得した知識や経験を生かし,コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて適切に表現することなどに課題があるとされています。
 これらの成果や課題を踏まえ,次期学習指導要領においては,外国語教育の更なる改善・充実のため,国際的な基準であるCEFR(※1)などを参考にして,小・中・高等学校で一貫した,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと[やり取り・発表]」,「書くこと」の五つの領域により示す,領域別の目標を設定することとしました。
 各学校段階においては,小学校では,中学年から「聞くこと」,「話すこと」を中心とした外国語活動を通じて外国語に慣れ親しみ,外国語学習への動機付けを高めた上で(年間35単位時間程度),高学年から発達段階に応じて段階的に「読むこと」,「書くこと」を加え,総合的・系統的に教科として学習を行うこと(年間70単位時間程度)としています。これを踏まえ,中学校では,互いの考えや気持ちなどを外国語で伝え合う対話的な言語活動を重視し,授業を外国語で行うことを基本とし,具体的な課題等を設定するなどして,学習した語彙(い),表現などを実際に活用する言語活動を改善・充実することなどを中心として改訂を行いました。また,高等学校では,複数の領域を結び付けた統合的な言語活動を通じて,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと[やり取り・発表]」,「書くこと」の力をバランスよく育成するための科目群として「英語コミュニケーションI・II・III」を設定し,「英語コミュニケーションI」を共通必履修科目とするとともに,発信力の強化に特化した科目群として「論理・表現I・II・III」を新設する等の改訂を行っています。


  • ※1 CEFR(Common European Framework of Reference for languages):シラバスやカリキュラム手引の作成,学習指導教材の編集のために,透明性が高くて分かりやすく参照できるものとして,2001(平成13)年に欧州評議会(CouncilofEurope)が発表したもの。
7.国旗・国歌の指導

 学校における国旗・国歌の指導は,児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ,これを尊重する態度を育てるとともに,諸外国の国旗・国歌も同様に尊重する態度を育てるために,学習指導要領等に基づいて行っているものです。
 平成11年8月には「国旗及び国歌に関する法律」が施行され,国旗・国歌の根拠について慣習として定着していたものが成文法としてより明確に位置付けられ,学校教育における国旗・国歌に対する正しい理解が更に進められました。
 現行の学習指導要領では,小・中学校の社会科において我が国及び諸外国の国旗と国歌の意義を理解させ,これらを尊重する態度を育てるよう指導することとしているとともに,小学校の音楽科において,国歌を「歌えるよう指導すること」としています。加えて,小・中・高等学校の特別活動において「入学式や卒業式などにおいては,その意義を踏まえ,国旗を掲揚するとともに,国歌を斉唱するよう指導するものとする」と規定しています。この位置づけは,新学習指導要領においても引き続き維持しています。
 また,平成30年4月から実施される新幼稚園教育要領においては,「国旗に親しむ」ことに加え,国歌などに親しんだりすることを新たに規定しています。なお,幼保連携型認定こども園教育・保育要領及び保育所保育指針においても幼稚園教育要領と同様の内容が定められました。
 文部科学省では,引き続き,全ての学校において学習指導要領に基づいた国旗・国歌に関する指導が一層適切に行われるよう指導することとしています。

(6)新学習指導要領の円滑かつ着実な実施に向けた取組

 新学習指導要領の理念を確実に実現するためには,その趣旨を広く周知するとともに,その実施に必要な人材や予算,時間,情報,施設・設備といった資源をどのように整えていくのかという条件整備等が必要不可欠です。
 文部科学省では,趣旨の周知・徹底の取組として,文部科学省主催の説明会の開催や各都道府県教育委員会等が開催する説明会への講師の派遣,各教科等の改訂のポイントを解説する動画の作成などを行っており,令和元年度以降もそうした取組を更に進めていくこととしています。
 また,新学習指導要領の理念を実現するためには,新しい学習指導要領の趣旨・内容について,学校や教育関係者はもちろんのこと,保護者や地域の方々,産業界等を含め広く共有し,社会全体で子供の成長に関わっていくことが重要です。多くの方と新学習指導要領の趣旨・内容を共有するため,リーフレットの作成及び全小・中学校等(特別支援学校を含む。)の保護者への配付,動画の作成,ウェブサイトのリニューアルなど,新学習指導要領に関する周知・広報活動を進めています。
 そのほか,新学習指導要領の円滑な実施に必要な指導体制の整備のため,平成30年度予算においては,新学習指導要領における小学校外国語教育の早期化・教科化に伴う,質の高い英語教育を行う専科指導教員の充実などに必要な教職員定数の改善を計上しています。他にも,学校現場における業務改善の推進,教科書など教材の改善・充実,全国の優れた教育実践の収集・共有,研修に係る指導・助言などひとつひとつの施策にしっかりと取り組んでいくこととしています。

(7)教育課程の改善等に向けた取組

 文部科学省では,今後の教育課程の基準の改善に資する実証的資料を得るため,昭和51年から研究開発学校制度を設けています。この制度は,学校における教育実践の中から提起されてくる教育上の課題や急激な社会の変化・発展に伴って生じた学校教育に対する多様な要請に対応するため,研究開発を行おうとする学校を「研究開発学校」として指定します。学習指導要領等の現行の教育課程の基準によらない特別の教育課程の編成・実施を認め,その実践研究を通して新しい教育課程・指導方法等を開発していこうとするものです。
 これまでの研究開発の成果は,学習指導要領の改訂に関する中央教育審議会における審議等の中で,具体的な実証的資料として生かされてきています。例えば,今回の学習指導要領改訂においても,育成を目指す資質・能力,小学校における外国語教育,高等学校における「歴史総合」,「公共」の新設等を検討するに当たって,研究成果が活用されています。
 また,学校が,地域の実態に照らしたより効果的な教育を実施できるよう,学校又は地域の特色を生かした特別の教育課程の編成・実施を認める「教育課程特例校」制度を設けています。具体的には,東京都品川区の「市民科」,世田谷区の「日本語科」など,学校の創意工夫を生かした教育課程が編成・実施されています。

2 我が国の子供たちの学力・学習状況

 子供たちの学力・学習状況を調査するため,我が国では「全国学力・学習状況調査」を実施するとともに,「OECD生徒の学習到達度調査(PISA:ピザ)」,「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)」に参加しています。これらの調査結果を踏まえ,世界トップレベルの学力・規範意識を育むための取組を一層推進することが重要です。文部科学省では,1.言語活動や理数教育の充実などを図った学習指導要領の着実な実施とフォローアップ,2.教職員定数の改善や,教職員の資質向上によるきめ細かな指導体制の整備,3.「全国学力・学習状況調査」の継続的な実施による教育の検証改善サイクルの確立などに取り組んでいます。

(1)全国学力・学習状況調査の実施

 文部科学省では,平成19年度から,全国の小学校6年生と中学校3年生の児童生徒の学力状況などを把握する「全国学力・学習状況調査」を毎年4月に実施しています。この調査は,1.義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から,全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し,教育施策の成果と課題を検証し,その改善を図ること,2.学校における個々の児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てること,3.以上のような取組を通じて,教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立することを目的として実施しています。教科は国語と算数・数学で,30年度調査までは,それぞれ主として「知識」に関する問題(A問題)と主として知識・技能の「活用」に関する問題(B問題)を出題していましたが,31年度(令和元年度)調査からは,「知識」と「活用」を一体的に問う調査問題としています(24年度,27年度及び30年度調査では理科も実施。31年度(令和元年度)調査では中学校英語も実施)。また,学力を問う教科の調査だけでなく,児童生徒の生活習慣や学習環境,学校の指導方法等の調査も行い,学力との関連を分析しています。
 調査結果を活用することで,各教育委員会や学校は自らの教育の成果と課題を検証し,教育施策や教育指導の改善・充実に生かすことができ,教育に関する継続的な検証改善サイクルの構築が着実に進むことが期待できます。文部科学省としては,各教育委員会や学校に積極的な調査結果の活用を促しています。文部科学省及び国立教育政策研究所では,調査結果を踏まえた教育指導の充実や学習状況の改善に向けた取組への支援として,1.設問ごとに分析結果や指導改善のポイントを示した「報告書」の作成,2.課題が見られた事項について,授業の改善・充実を図る際の参考となるよう授業のアイディアの一例を示した「授業アイディア例」の作成,3.調査結果を活用した指導改善に向けた説明会の開催,4.都道府県教育委員会等の要請に応じて助言を行うための学力調査官等の派遣,5.教育委員会・学校における調査結果を活用した優れた学校改善の取組事例の収集・普及,6.専門家等による追加的な分析・検証などを行っています。また,調査実施から調査結果を提供するまでの間も,各教育委員会や学校において教育施策や教育指導の改善・充実に資するよう,問題ごとに出題の趣旨や学習指導の改善・充実を図る際のポイントなどを示した「解説資料」を配布しています。

(2)平成30年度全国学力・学習状況調査の概要

 平成30年度は,国語,算数・数学及び理科の3教科での悉しっ皆調査を4月17日に実施しました。30年度の調査結果の特徴としては,中学校理科の一部(習得した知識・技能を活用して,観察・実験の結果を分析して解釈することなど)について,改善の傾向が見られました。一方,学校種や教科を超えて,各教科を通じ,特にB問題における適切な根拠に基づいて説明することなどに課題が見られました。課題が見られたものとして,例えば,「目的に応じて複数の資料から適切な内容を取り上げて,それらを関連付けて理解したり,表現したりすること」(小学校国語),「事象を数学的に解釈し,問題解決の方法を数学的に説明すること」(中学校数学)などが挙げられます。
 質問紙調査では,児童生徒に対する調査と学校に対する調査を実施しています。平成30年度の調査においては,29年度に引き続き,同年に告示された新学習指導要領に関連した質問項目や,3年ぶりに教科に関する調査を実施した理科に関する質問項目を設定しました。継続的に調査している項目については,経年での推移を示すとともに,教科に関する調査とのクロス分析を行っているほか,30年度調査から質問紙調査項目間のクロス分析も行っています。
 その結果,主に以下のような特徴が見られました。

  1. 主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に関する取組状況については,平成29年度同様,児童生徒・学校共に,肯定的な回答を選択した方が,教科の平均正答率が高い傾向にありました(図表2‐4‐2)。また,就学援助を受けている児童生徒の割合を統制変数とした三重クロス分析の結果でも,就学援助率にかかわらず,同様の傾向が見られました。
  2. 学校運営に関する取組状況として,「学校として業務改善に取り組んでいますか」という新規の質問に対し,肯定的に回答した小中学校の割合が9割を超えました。また,こうした小中学校は,教育課程に関するPDCAサイクルの確立や,学校指導等の計画作成時の教職員同士の協力が積極的に行われている傾向が見られました。
  3. 理科に関する状況は,児童生徒の興味・関心については,全体として見ると肯定的な回答が若干の増加又は横ばいの状況で,小学校よりも中学校の方が肯定的な回答に増加傾向が見られました。また,児童生徒の理科への興味・関心につながるような学校の取組についての質問項目に対しては,小中学校ともに,全てにおいて増加傾向が見られました。
  4. 児童生徒の自己肯定感に関する状況については,「自分にはよいところがあると思いますか」という質問に対して,肯定的に回答している児童生徒の割合が約8割となり,増加傾向が見られました。また,「主体的な学び」や「他者との協働」を行っていると回答した児童生徒の方が,自己肯定感が高い傾向が見られました。
  5. 地域や社会と学校の連携・協働に関する状況として,「保護者や地域の人との協働による取組は,学校の教育水準の向上に効果がありましたか」という新規の質問に対し,肯定的に回答した小学校は8割,中学校は9割を超えました。また,「教育課程の趣旨について,家庭や地域と共有を図る取組を行っていますか」という新規の質問に対しては,肯定的に回答した小学校は9割,中学校は8割を超えました。

 図表2‐4‐2 主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に関する取組状況

(3)OECD生徒の学習到達度調査(PISA:ピザ)

 OECDでは,義務教育修了段階の15歳児(日本は高等学校1年生)が,自らの知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価するため,「生徒の学習到達度調査(PISA)」を実施しています。調査は,2000(平成12)年から3年ごとに読解力,数学的リテラシー,科学的リテラシーの3分野について行われています。前回の2015(平成27)年調査から,従来の筆記型調査からコンピュータ使用型調査へ移行しました。2015(平成27)年調査の結果からは,日本は,科学的リテラシー,読解力,数学的リテラシーの各分野において,国際的に見ると前々回調査に引き続き,平均得点が高い上位グループに位置していることが分かりました。一方,読解力は前々回調査と比較すると,平均得点が有意に低下しています(図表2‐4‐3)。また,生徒の科学に対する態度については,OECD平均と比較すると指標の値が依然として小さいものの,例えば,自分の将来に理科の学習が役立つと感じている生徒の割合が,2006(平成18)年調査と比較すると増加するなどの改善が見られました。読解力においては,コンピュータ使用型調査に対する生徒の戸惑いが見られましたが,解答状況の分析などからは,子供たちを取り巻く情報環境が大きく変化する中で,学習指導要領改訂に向けた検討においても指摘された諸課題が,具体的に見られたものと考えられます。文部科学省では,こうした結果を踏まえながら,学習指導要領の改訂により国語教育の改善・充実を図り,学習基盤となる言語能力や情報活用能力を育成するとともに,読解力の向上に関する調査研究の充実や学校ICT環境整備の加速化を推進することとしています。

 図表2‐4‐3 PISA平均得点及び順位の推移

(4)国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:ティムズ)

 国際教育到達度評価学会(IEA)では,小学校4年生,中学校2年生を対象とし,初等中等教育段階における児童生徒の算数・数学と理科の教育到達度を測定し,学校のカリキュラムで学んだ基本的な知識や技能がどの程度習得されているかを評価するため,「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」を4年ごとに実施しています。
 前回の2015(平成27)年調査の結果からは,日本は,教育到達度の平均得点については,小・中学校の算数・数学,理科の全てにおいて,国際的に見て引き続き上位に位置しており,前々回調査と比較して,平均得点が有意に上昇したことが明らかになりました(図表2‐4‐4)。さらに,成績下位の児童生徒が減少し,成績上位の児童生徒が増加している傾向も見られました。算数・数学,理科に対する意識については,小学生の「理科は楽しい」を除いて国際平均を下回っている項目が多いものの,「算数・数学,理科は楽しい」と思う児童生徒の割合が増加しており,中学校においては国際平均との差が縮まっている傾向が見られました。

 図表2‐4‐4 TIMSS平均得点及び順位の推移

第2節学校における働き方改革の推進

1 「学校における働き方改革」についての検討

(1)検討の背景・経緯

 今日の学校を取り巻く環境は複雑化・多様化しており,貧困問題への対応や保護者からの要望への対応など,学校に求められる役割も拡大しています。また,新学習指導要領を踏まえ,我が国の教科教育等の蓄積と向き合い,目の前の子供たちが次代を切り拓(ひら)くに当たって日々の学びが持っている大きな意味を子供たちに伝え,学びの充実を図ることも求められています。こうした中,平成30年9月に公表された教員勤務実態調査(平成28年度)の確定値においても,看過できない教師の長時間勤務の実態が示されている中で,「日本型学校教育」を維持し,新学習指導要領を着実に実施するには,教師の業務負担の軽減が喫緊の課題です。
 こうしたことを踏まえ,平成29年6月に中央教育審議会に諮問を行って以降,「学校における働き方改革特別部会」における計21回にわたる審議を経て,31年1月に「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」(以下,「答申」という。)が取りまとめられました。

(2)中央教育審議会答申

 中央教育審議会答申の主なポイントは以下の通りです。

1.学校における働き方改革の目的

 文章の意味を正確に理解する読解力,教科固有の見方・考え方を働かせて自分の頭で考えて表現する力,対話や協働を通じて知識やアイディアを共有し新しい解や納得解を生み出す力といった我が国の学校教育が重視してきた資質・能力は,AIの飛躍的な進化,Society5.0といった社会の構造的変化の中でも引き続き求められます。これまで高い成果を上げてきた我が国の学校教育を持続可能なものとするには,教師の働き方の改革が必要です。
 答申では,「‘子供のためであればどんな長時間勤務も良しとする’という働き方は,教師という職の崇高な使命感から生まれるものであるが,その中で教師が疲弊していくのであれば,それは‘子供のため’にはならない」とされ,教師の働き方を見直し,教師が我が国の学校教育の蓄積と向かい合って自らの授業を磨くとともに日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで,自らの人間性や創造性を高め,子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようになることが,学校における働き方改革の目的とされています。

2.勤務時間管理の徹底と勤務時間・健康管理を意識した働き方改革の促進

 労働安全衛生法の改正により労働時間の状況の把握が事業者の義務として明文化されたことに加え,業務改善を進めていく基礎としても,ICTやタイムカード等の客観的な方法による勤務時間の把握は不可欠です。公立学校の教育職員については,「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(以下,「給特法」という。)により,正規の勤務時間を超えて勤務させる場合は,「政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする」とされ,「公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令」で定める業務(いわゆる「超勤4項目」)に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限られています。勤務時間管理の徹底に関し,文部科学省では平成31年1月に「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」(以下,「上限ガイドライン」という。)を策定しました。この上限ガイドラインでは,「超勤4項目」以外の時間外勤務も含めて「在校等時間」として外形的に把握し,所定の勤務時間を超える「在校等時間」を1か月45時間以内,1年間360時間以内とすること等としています。答申では,上限ガイドラインの実効性を高めるため,その根拠を法令上規定するなどの工夫を図るべきとされており,今後文部科学省において検討を進めていきます。
 また,教師が心身ともに健康に教育に携われるよう,労働安全衛生体制整備やストレスチェックの実施,教職員の意識改革に向けた研修や人事評価等が提言されています。

3.学校及び教師が担う業務の明確化・適正化

 答申では,これまで学校・教師が担ってきた代表的な業務の在り方に関する考え方が表(図表2‐4‐5)の通り整理されました。業務の明確化・適正化のため,文部科学省には,社会と学校との連携の起点・つなぎ役としての役割を前面に立って果たすことが求められていることから,何が教師としての職務であるかの明確なメッセージの発出や,勤務時間管理の状況の把握と公表等の取組を着実に進めていくこととしています。また,各教育委員会には,各地域で発生する業務について誰が担うべきかの仕分けや学校・家庭・地域の連携・協働体制の構築等が,各学校には,校長による業務の大胆な削減や教職員一人一人による業務見直しの機会の設定等が求められています。校長が削減することを提言されている業務の例としては,夏休み中の高温時でのプール指導や,勝利至上主義の下での早朝練習の指導,形式的に続いている研究指定校の業務,地域や保護者の期待に応えることを重視した運動会等の過剰な準備等が挙げられています。

 図表2‐4‐5 学校・教師が担ってきた代表的な業務

4.学校の組織運営体制の在り方

 学校がこれまで以上に組織的に対応できるよう,主幹教諭や指導教諭等のミドルリーダーがリーダーシップを発揮する組織運営や,ミドルリーダーによる若手支援,事務職員の活躍に加え,校内委員会・校務分掌の整理統合や管理職のマネジメント能力向上が提言されています。

5.教師の勤務の在り方を踏まえた勤務時間制度の改革

 給特法を含む公立学校の教師の勤務時間制度の検討に当たっては,教師の専門職としての専門性を踏まえる必要があり,答申では,給特法の基本的枠組みを前提に,勤務時間管理の徹底や学校や教師の業務の明確化・適正化を行うべきとされています。なお,教職調整額の水準については,必要に応じ,中長期的な課題として検討すべきとされています。
 一年単位の変形労働時間制については,これが勤務時間削減の切り札ということではなく,まずは業務の明確化・適正化などの総合的な方策により業務の縮減を行った上で,かつて行われていた長期休業期間の休日のまとめ取りのように,長期休業期間中の休日確保の仕組みとして,全国一律ではなく,地方自治体の判断で導入できるよう措置すべきとされています。なお,育児・介護中の教師等に対して適用しないことや,学期中の勤務の長時間化を防ぐことといった留意点も指摘されています。
 なお,中長期的な課題として,労働法制や教師の専門性の在り方,公務員法制の今後の動向等を踏まえ,公立学校の教師に関する労働環境について,法制的な枠組みを含め,必要に応じて検討を重ねることが必要と指摘されています。

6.学校における働き方改革の実現に向けた環境整備

 答申では,教職員定数をはじめ,様々な専門スタッフ等,学校指導・運営体制の充実の必要性が提言されています。また,働き方改革に関連し,今後引き続き検討すべき事項として,小学校の教科担任制の充実,年間授業時数や標準的な授業時間の在り方等を含む教育課程の見直しや免許制度の在り方などが挙げられています。

7.学校における働き方改革の確実な実施とフォローアップ等

 取組の進展状況を市区町村別に公表することや,3年後を目途に勤務実態調査を行うことが挙げられています。答申の最後には,中央教育審議会から保護者・PTAや地域の方々へのメッセージが掲載されています。

2 「学校における働き方改革」のための文部科学省の取組

(1)学校における働き方改革推進本部

 中央教育審議会の答申のとりまとめを受け,学校における働き方改革はここからがスタートであるという認識の下,平成31年1月25日に柴山文部科学大臣を本部長とする「学校における働き方改革推進本部」を設置し,1月29日に第1回本部を開催しました。第1回本部では,社会全体に向けて学校における働き方改革の推進に対する理解と協力を呼びかける「大臣メッセージ」を発出するとともに,文部科学省として取り組むべき内容をまとめた工程表を作成しました。3月18日に開催した第2回本部においても,関係府省・関係機関,地域・保護者,教育委員会・学校向けに,それぞれ大臣メッセージを発出しています。こうしたメッセージも活用しながら,学校における働き方改革を強力に推進するための理解・協力を呼びかけていきます。

(2)「学校の働き方改革」公式プロモーション動画

 学校や教育委員会に「お任せ」ということでは,学校における働き方改革は進みません。教師が教師でなければできないことに全力投球できるよう,文部科学省には,社会全体に対し,何が教師本来の役割であるのかというメッセージを発信し,学校と社会の連携の起点・つなぎ役としての役割を前面に立って果たすことが求められています。
 そこで,上述の大臣メッセージの発信に加え,学校における働き方改革の趣旨・目的等を分かりやすくご理解いただけるよう,総勢10名の働き方改革に取り組む当事者と有識者の方々のインタビューを収録した公式プロモーション動画を作成しました。(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/hatarakikata/index.htm)

 「学校の働き方改革」公式プロモーション動画

(3)教育委員会等への通知

 答申においては学校における働き方改革を進めるために,文部科学省,都道府県・指定都市教育委員会,市町村教育委員会,設置者,校長などの管理職,一人一人の教職員が,自らの権限と責任に基づき,それぞれの立場で取り組むべきことが指摘されています。これを踏まえ,文部科学省から教育委員会等に対して,平成31年3月18日に「学校における働き方改革に関する取組の徹底について」通知をしたところであり,各学校における業務改善及び勤務時間管理等の一層の促進に向けて,取組を進めてまいります。

(4)学校における働き方改革のための学校指導・運営体制の構築

 学校における働き方改革の推進に向け,令和元年度予算において,教職員定数の改善をはじめ,スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置拡充やスクール・サポート・スタッフの配置,中学校における部活動指導員の配置などの専門スタッフ・外部人材の活用,学校の業務改善のための実践研究やアドバイザー派遣事業などに必要な予算を計上しています(※2)


  • ※2 参照:第2部第4章第13節

第3節 科学技術系人材を育成するための理数教育の推進

(1)理数好きな子供の裾野の拡大

 文部科学省では,理数教育を着実に実施するため,教員によって負担の大きい実験の準備・調整等の業務を軽減するための理科観察実験アシスタントの配置支援や,「理科教育振興法」に基づいた,公・私立の小・中・高等学校等における観察・実験に係る実験用機器をはじめとした理科,算数・数学教育に使用する設備の計画的な整備を進めています。
 科学技術振興機構では,科学技術分野で活躍する女性研究者・技術者,女子学生等と女子中高生の交流機会の提供や実験教室,出前授業の実施等を通して女子中高生の理系分野に対する興味・関心を喚起し,理系進路選択の支援を行う「女子中高生の理系進路選択支援プログラム」等の取組を実施しています。

(2)子供の才能を見いだし伸ばす取組の充実

 文部科学省では,平成14年度から,先進的な理数教育を実施する高等学校等を「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」に指定し,科学技術振興機構を通じて支援を行うことで,生徒の科学的能力や科学的思考力を培い,将来の国際的な科学技術人材の育成を図っています。令和元年度においては,全国212校の高等学校等が特色ある取組を進めることとしています。
 科学技術振興機構では,平成29年度から,理数分野で特に突出した能力のある小中学生を対象に,その能力の更なる伸長を図るため,大学等が特別な教育プログラムを提供する「ジュニアドクター育成塾」を開始しています。また,意欲・能力のある高校生を対象とした,国際的な科学技術人材を育成するプログラムの開発・実施を行う大学を「グローバルサイエンスキャンパス」において選定し,支援しています。
 さらに,全国の高校生等が学校対抗・チーム制で理科・数学等における筆記・実技の総合力を競う場として,「第8回科学の甲子園」が埼玉県さいたま市において開催され,愛知県代表チームが優勝しました。中学生を対象に茨城県つくば市で開催された「第6回科学の甲子園ジュニア」では愛知県代表チームが優勝しました。
 このほか,科学技術振興機構では,数学・化学・生物学・物理・情報・地学・地理等の国際科学技術コンテストの国内大会の開催や,国際大会への日本代表選手の派遣,国際大会の日本開催に対する支援を行っています。国際科学オリンピックの国内大会の参加者数は,平成30年度は2万340人となっています。同年度の国際科学オリンピックの日本代表選手は,金メダル7個,銀メダル13個,銅メダル7個の合計27個のメダルを獲得しました。

第4節 グローバル人材の育成に向けた教育の充実

 初等中等教育段階から国際的な視野を持つグローバル人材を育成するため,文部科学省では,小・中・高等学校を通じた外国語教育の強化,高校生の海外留学の促進,スーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定や国際理解教育の推進に取り組んでいます。また,海外で学ぶ子供や帰国・外国人児童生徒等に対する教育の充実に取り組んでいます。

1 グローバル社会の中で特に求められる力

 グローバル化が進行する社会においては,多様な人と関わり様々な経験を積み重ねるなど「社会を生き抜く力」を身に付ける過程の中で,未来への飛躍を担うための創造性やチャレンジ精神,強い意志を持って迅速に決断し組織を統率するリーダーシップ,国境を越えて人々と協働するための英語等の語学力・コミュニケーション能力,異文化に対する理解,日本人としてのアイデンティティーなどを培っていくことが,一層重要になってきます。
 これらを踏まえ,文部科学省では以下に述べるように小・中・高等学校を通じた外国語教育の強化,高校生の海外留学の促進,スーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定や国際理解教育の推進に取り組むとともに,海外で学ぶ子供や帰国・外国人児童生徒等に対する教育の充実に取り組んでいます。
 また,国際社会で活躍する日本人の育成を図るためには,我が国の歴史や伝統文化,国語に関する教育を推進していくことも重要です。このため,新学習指導要領においては,我が国の言語文化,県内の主な文化財や年中行事の理解,我が国や郷土の音楽,和楽器,武道,和食や和服などの指導を通して,我が国の伝統や文化についての理解を深める学習の充実を図っています。また,平成27年度から,地域の伝統や文化に関する教材の作成や指導方法の開発等を行う地方公共団体等の取組を支援しています。

2 英語をはじめとした外国語教育の強化

 外国語教育の更なる改善・充実を図るため,文部科学省では,これまで学習指導要領の改訂に向けて議論を重ねてきました。平成28年12月21日には,中央教育審議会より次期学習指導要領の方向性として,小学校外国語教育の早期化・教科化,中・高等学校における更なる改善・充実等が提言され,29年3月には小・中学校学習指導要領が,30年3月には高等学校学習指導要領が改訂されました(※3)。
 文部科学省では,学習指導要領の改訂を行うとともに,教育環境の整備にも努めています。小学校外国語教育の早期化・教科化に対応するための小学校中学年・高学年用の新教材については,平成29年9月に高学年用教材“We Can!”を,同年12月に中学年用教材“Let’sTry!”を公表し,3年生から6年生の児童用冊子,教師用指導書,デジタル教材を,希望する全ての学校に配布しています。
 また,平成26年度から,小学校教員や中・高等学校の英語担当教員の指導力・英語力向上のため,各地域で研修講師や助言者としての役割を担う「英語教育推進リーダー」を養成する中央研修を行うとともに,「英語教育推進リーダー」が各地で講師となって行う研修等の取組を支援しています。この取組は30年度で5年目を迎え,合計約2,400人の英語教育推進リーダーを養成しています。さらに,28年度からは現職の小学校教員が教科としての外国語科の指導に対応するため,中学校教諭免許状も取得可能となる「小学校英語教科化に向けた専門性向上のための講習の開発・実施事業」を大学等に委託し,実施しています。加えて,一定の英語力を有し,質の高い外国語教育を行う専科教員を確保するため,令和元年度予算において,平成30年度に引き続き加配定数の改善(+1,000人,平成30年度と合計で2,000人)を盛り込みました。
 こうした取組に加え,新学習指導要領の全面実施へ向け,小・中・高等学校の授業実践例や学習指導要領改訂のポイントをまとめた有識者・現場教員へのインタビュー動画の作成など,新学習指導要領を踏まえた授業改善に向けて支援を行っています。
 また,英語以外の外国語については,新学習指導要領に基づいたカリキュラムや教材の開発等を実施する「グロ―バル化に対応した外国語教育推進事業」を実施しています。
 このほか,文部科学省は,総務省及び外務省と共に「語学指導等を行う外国青年招致事業(JETプログラム)」を推進しています。本プログラムは,外国語教育の充実や地域レベルでの国際交流の進展を図ることを通じて,諸外国との相互理解を増進するとともに,我が国の国際化の促進に寄与することを目的としています。本プログラムに外国語指導助手(ALT)として活躍する参加者は,児童生徒が生きた外国語に触れたり,実際に外国語を使ったりする機会の充実に貢献しています。平成30年度は,本プログラムにより招致した5,044人のALTが,語学指導,国際理解のための活動に従事しています。さらに,28年度からは,市町村におけるJET‐ALTの生活支援,緊急事態対応や学校との連絡調整等の業務を担う「JETプログラムコーディネーター」の活用に対する支援も行っています。


  • ※3 参照:第2部第4章第1節1(5)6

3 高校生の国際交流

(1)高校生留学の促進等

 第3期教育振興基本計画において,伝統と文化を尊重し,それらを育んできた我が国と郷土を愛するとともに,他国を尊重し,国際社会の平和と発展に寄与する態度や,豊かな語学力・コミュニケーション能力,主体性・積極性,異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野でグローバルに活躍できる人材を育成することを目標に掲げていること等を踏まえ,高校生の海外留学をはじめ,グローバル人材の基盤形成に取り組む都道府県を支援しています。
 具体的には,自治体,学校,民間団体等が主催する海外派遣プログラムへの参加に対し,都道府県を通じて留学費用の一部を支援する事業を,年間1,500人程度の高校生を対象に,実施しております。
 また,都道府県における高校生留学を推進するため,留学フェア等を開催し,留学経験者や海外勤務経験者による講話の機会等を提供するとともに,留学に関する各種相談や関係機関との調整等に対応するコーディネーターの設置を支援し,留学への機運醸成に取り組んでいます。
 このほか,著名な科学者による講義や他国からの参加高校生との交流を深めることを目的とする「オーストラリア科学奨学生(ハリー・メッセル国際科学学校)事業」に高校生を派遣するための選考及び支援を行っています。同事業は,オーストラリア・シドニー大学内物理学財団が隔年で約2週間にわたり実施するものです。令和元年度はその開催年であり,10人の高校生を派遣する予定です。

(2)外国人高校生の受入れ

 文化や伝統,生活習慣の異なる同世代の若者が交流を深めることは,広い視野を持ち,異文化を理解し,これを尊重する態度や異なる文化を持った人々と共に生きていく資質・能力を育成する上で重要です。
 文部科学省では,民間の高校生留学・交流を扱っている団体を通じて,海外で日本語を学習している外国人高校生を6週間程度日本に招致し,日本の高等学校への体験入学等を行う「異文化理解ステップアップ事業」を実施しています。平成30年度は14か国115人の高校生を招致しました。
 また,平成30年度から,アジアで日本語を学ぶ高校生を日本全国の高校に招へいする「アジア高校生架け橋プロジェクト」を開始し,17か国より100名の高校生が6か月間,ホームステイや寮生活をしながら,日本の高校生と共に学び合い,国際交流を深めました。令和元年度は200人の高校生を8か月間程度招へいする予定です。

4 スーパーグローバルハイスクール

 文部科学省では,平成26年度から,社会課題に対する関心と深い教養,コミュニケーション能力,問題解決力等の国際的素養を身に付け,将来,国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成に資する教育課程等の研究開発及び実践を行う高等学校等を「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に指定し支援しています。30年度において,全国の123校を支援しています。また,30年度には「2018年度SGH全国高校生フォーラム」を開催し,全国のSGH高校生や留学生がグローバルな社会課題・ビジネス課題の解決に向けた日頃の学びを英語でディスカッションしたり,ポスター発表したりしました。また本フォーラムにおいて最も優秀な発表を行った学校に対して,文部科学大臣賞を授与し,その学びをたたえました。また,30年度は,SGHにおける成果や課題を検証するための事業検証を行い,SGH対象生徒の「卒業時のCEFRB1レベル~B2レベル(英検2級~準1級程度)の比率」の上昇など,SGHの取組成果が出ています。文部科学省では,「SGH専用ホームページ」において,取組の優良事例を広く周知するなど,積極的な普及活動にも取り組んでいます。

 「2018年度SGH全国高校生フォーラム」ポスターセッション(全体)の様子
 「2018年度SGH全国高校生フォーラム」ポスターセッション(全体)の様子

 「2018年度SGH全国高校生フォーラム」文部科学大臣賞受賞者等
 「2018年度SGH全国高校生フォーラム」文部科学大臣賞受賞者等

5 国際バカロレアの推進

 国際バカロレア(IB)は,国際バカロレア機構が提供する世界標準の教育プログラムであり,国際的に活躍できる人材を育成する上で優れたプログラムとして評価されています。国際バカロレアの教育理念や手法は,学習指導要領の目指す方向性と軌を一にするものであり,語学力のみならず課題発見・解決能力,論理的思考力,コミュニケーション能力など,グローバル化に対応した素養・能力を育む上で適したものです。
 国際バカロレアには,生徒の発達段階や目的に応じて,次のようなプログラムがあります。

  1. プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)(対象:3歳から12歳)
  2. ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)(対象:11歳から16歳)
  3. ディプロマ・プログラム(DP)(対象:16歳から19歳)
  4. キャリア関連プログラム(CP)(対象:16歳から19歳)

 これらの中でも高校レベルのDPは,2年間のカリキュラムを履修し,最終試験を経て所定の成績を収めることで,国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を取得できます。この資格は,世界の主要な大学の入学者選抜等で広く活用されています。
 国際バカロレアの導入が進むことによって,日本の生徒の進路・進学先が国内だけでなく海外の大学に拡大することや国際バカロレアの特徴的な手法やカリキュラムが日本の初等中等教育改革に積極的な波及効果を与えること等も期待されます。政府は,2020年度までに日本の国際バカロレア認定校等を200校以上に増加させる目標を掲げて普及拡大に取り組んでいます。平成31年1月現在で国際バカロレア認定校等はPYP認定校等52校,MYP認定校等27校,DP認定校等58校の延べ137校となっています。
 日本における国際バカロレアの普及拡大に向けては,特に,DPでは母語を除く全ての科目を原則として英語で教える必要があったことから,指導可能な教員(外国人指導者等)の確保が大きな課題でした。このため,文部科学省では,平成25年度から国際バカロレア機構との協力の下で,DPの一部の科目を日本語でも実施可能とする「日本語デュアルランゲージ・ディプロマ・プログラム」(日本語DP)の開発・導入を進めています。日本語DPの活用によって国際バカロレア認定校で指導することができる優秀な日本人教員の確保が以前と比べて容易になります。さらに,平成27年8月に「国際バカロレア・ディプロマ・プログラム認定校における教育課程の基準の特例」を定め,一部単位の読み替えを可能とすることにより,授業時間数の過大な負担なく両方の課程を履修できるようになりました。加えて,同年9月に,DPの導入に当たり必要な経費や設備の要件,認定までのプロセス等を日本語によりまとめた「国際バカロレア認定のための手引き」を作成しました。これらの取組によって日本の高等学校等に国際バカロレアの導入が進むことが期待されます。
 また,日本国内における国際バカロレアの普及に当たっては,大学入学者選抜において国際バカロレア資格やその成績の活用を促進することも重要です。このため,大学に対して積極的な情報提供や様々な情報交換を進めており,国際バカロレアを活用した大学入試が大きく広がりつつあります。平成30年12月現在で国際バカロレアを活用した大学入学者選抜を導入している国公私立大学は61大学となっています。
 更に,文部科学省では,平成30年度より「文部科学省IB教育推進コンソーシアム」(※4)を立ち上げ,関係者間における包括的な連携体制,及び効率的な情報共有等を行うためのプラットフォームを構築しています。この枠組みを活用し,教員養成等の支援や,上述の大学入学者選抜における活用促進をはじめ,国際バカロレアの普及に取り組んでいます。


  • ※4 https://ibconsortium.mext.go.jp/

6 在外教育施設における教育の充実

 我が国の国際化の進展に伴って多くの日本人が子供を海外に同伴しており,平成30年4月現在,海外に在留している義務教育段階の子供の数は8万4,247人となっています。
 文部科学省では,海外子女教育の重要性を考慮し,日本人学校や補習授業校の教育の充実・向上を図るため,日本国内の義務教育諸学校の教師を派遣するとともに,退職教師をシニア派遣教師として,正規に採用される前の若手教師をプレ派遣教師として派遣するなど,高い資質・能力を有する派遣教師の一層の確保に努めています。平成30年度は現職教師989人,シニア派遣教師274人,プレ派遣教師11人が50カ国1地域で活躍しました。
 また,教育環境の整備として,義務教育教科書の無償給与,教材整備・通信教育の支援などを行っています。
 さらに,平成28年5月に「在外教育施設グローバル人材育成強化戦略」を策定しました。本戦略に基づき,29年度から在外教育施設における課題対応や高度なグローバル人材育成に取り組む「在外教育施設の高度グローバル人材育成拠点事業」の実施や派遣教師の魅力を高める「トビタテ!教師プロジェクト」の立ち上げなど教育環境の更なる整備・充実に取り組みました。本プロジェクトの一環として,30年度は,帰国教師の知識,経験を国内の教育に還元・共有するため,帰国教師間のネットワーク作りに取り組んでいます。
 このほか,外国における災害,テロ,感染症などに対応するため,在外教育施設派遣教師のための安全対策資料の作成などを行うほか,有事の際には,関係省庁や現地の在外教育施設などと緊密な連携を図り,教職員や子供の安全確保に努めています。なお,海外子女教育・帰国児童生徒教育に関する情報は,総合ウェブサイト(通称「CLARINET:クラリネット(※5)」)に掲載しています。


  • ※5 参照: https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/main7_a2.htm

7 帰国児童生徒・外国人の子供等に対する教育の充実

(1)公立学校に在籍する帰国・外国人児童生徒等の現状

 平成29年4月1日から30年3月31日までの1年間で,海外に1年以上在留した後に帰国した児童生徒は,公立の小学校,中学校,義務教育学校,高等学校及び中等教育学校を合計して,8,788人です。また,公立学校に在籍する外国人児童生徒は30年5月1日現在9万3,139人です。28年5月現在,日本語指導が必要な外国人児童生徒は3万4,335人であり,26年度と比べて5,137人増加しています。さらに,日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒(帰国児童生徒のほか,本人が重国籍又は保護者の一人が外国籍である等の理由から,日本語以外の言語を家庭内言語として使用しており,日本語能力が十分でない児童生徒が含まれる。)は9,612人であり,26年度と比べて1,715人増加しています。

(2)帰国児童生徒・外国人の子供等への支援施策

 文部科学省では,このような児童生徒について,国内の学校生活への円滑な適応を図るだけでなく,児童生徒の特性の伸長・活用など,海外における学習・生活体験を尊重した教育を推進するため,以下のような施策に取り組んでいます。

  1. 公立義務教育諸学校の教員定数について,平成29年3月の「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の改正により,これまで毎年度の予算の範囲内で措置してきた加配定数を基礎定数化し,29年度以降,日本語能力に応じた特別の指導を行う児童生徒の数に応じて教員の定数を算定することとした。
  2. 受入れから卒業後の進路まで一貫した指導・支援体制を構築するため,各地方公共団体が行う帰国・外国人児童生徒等の受入れ促進,日本語指導の充実,指導・支援体制の整備に関する取組を支援する補助事業を実施
  3. 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施を促進(「学校教育法施行規則」を一部改正,平成26年4月1日施行)
  4. 学校において児童生徒の日本語能力を把握し,その後の指導方針を検討する際の参考となる「外国人児童生徒のためのJSL(※6)対話型アセスメント~DLA(※7)~」及び教育委員会等が帰国・外国人児童生徒等教育に関する研修会を計画する際の参考となる「外国人児童生徒教育研修マニュアル」を普及
  5. 教職員支援機構により,外国人児童生徒等教育に携わる教員や学校管理職及び指導主事等を対象として,日本語指導法等を主な内容とした実践的な研修を実施
  6. 平成27年度から,就学に課題を抱える外国人の子供を対象に,公立学校や外国人学校等への就学に必要な支援を学校外において実施する地方公共団体の取組を支援する補助事業を実施
  7. 「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援に関する有識者会議」において今後取り組むべき施策の方向性について議論を行い,平成28年6月に「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援の充実方策について(報告)」を公表

  • ※6 JSL(Japanese as a Second Language):第 2 言語としての日本語
  • ※7 DLA(Dialogic Language Assessment):対話型アセスメント

第5節 キャリア教育・職業教育の推進

1 キャリア教育の推進

(1)初等中等教育におけるキャリア教育の推進

 今日,日本社会の様々な領域において構造的な変化が進行しており,特に,産業や経済の分野においてその変容の度合いが著しく大きく,雇用形態の多様化・流動化に直結しています。このような中で現在の若者と呼ばれる世代は,例えば,若年層の完全失業率や非正規雇用率の高さ,無業者や早期離職者の存在などに見られるように「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていないという点において大きな困難に直面していると言われています。
 こうした状況に鑑み,子供たちが,「働くことの喜び」や「世の中の実態や厳しさ」などを知った上で,将来の生き方や進路に夢や希望を持ち,その実現を目指して,学校での生活や学びに意欲的に取り組めるようになることが必要です。そのためには,「学校から社会・職業への移行」を円滑にし,社会的・職業的自立に必要な能力や態度を身に付けることができるようにするキャリア教育を推進していくことが重要です。小・中・高等学校の新学習指導要領においても,キャリア教育の充実を図ることについて明示されました。このようなキャリア教育を推進するため,文部科学省では,キャリア教育の実践の普及・促進に向けて様々な施策を展開しています。

〈平成30年度実施施策〉
  1. 児童生徒が自らの学習活動等の学びのプロセスを記述し振り返ることのできるポートフォリオ的な教材「キャリア・パスポート」の導入に向け,その活用方法等に関する調査研究を行い,その成果や課題等の実証的なデータを得るための「キャリア・パスポート普及・定着事業」の実施
  2. チャレンジ精神や他者と協働しながら新しい価値を創造する力など,これからの時代に求められる資質・能力の育成を目指した「小・中学校等における起業体験推進事業」の実施
  3. 小学校段階での進路選択等のキャリア教育の在り方や課題等について調査研究を行い,実証的なデータを得るための「小学校における進路指導の在り方に関する調査研究」の実施
  4. 都道府県等にキャリアプランニングスーパーバイザーを配置し,地域を担う人材育成・就労支援を促進するための「地域を担う人材育成のためのキャリアプランニング推進事業」の実施
  5. 学校側が望む支援と地域・社会や産業界等が提供できる支援をマッチングさせる特設サイト「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」を運営
  6. 厚生労働省,経済産業省と連携して「キャリア教育推進連携シンポジウム」を合同開催(平成31年1月18日)
  7. キャリア教育の充実・発展に尽力し,顕著な功績が認められた学校,教育委員会等に対する「文部科学大臣表彰」,また,学校,地域,産業界,地方公共団体等の関係者が連携・協働して行うキャリア教育の取組に対する「キャリア教育推進連携表彰」(経済産業省と共同実施)を実施

(2)職場体験,インターンシップ(就業体験)等の体験活動の推進

 職場体験やインターンシップ(就業体験)は,生徒が教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会となり,1.異世代とのコミュニケーション能力の向上が期待されること,2.生徒が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり主体的な職業選択の能力や高い職業意識の育成が促進されること,3.学校における学習と職業との関係についての生徒の理解を促進し学習意欲を喚起すること,4.職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となることなど,極めて高い教育効果が期待されます。このため,キャリア教育の中核的な取組の一つとして,学校現場における職場体験,インターンシップの普及・促進に努めています。
 公立小学校では,多くの学校において職場見学が実施されています。公立中学校における職場体験は,平成29年度の実施率が98.6%と,ほとんどの中学校において実施されています。こうした職場体験を一過性の行事として終わらせることのないよう,学校における事前指導や事後指導の実践に当たっては,日常の教育活動と関連付けて職場体験の狙いや効果を高めることを目的とした実践にするなど更なる工夫が求められます。
 公立高等学校(全日制及び定時制)におけるインターンシップの実施率は84.8%となっています。しかし,参加が希望制となっている学校が多いため,在学中にインターンシップを体験した生徒の割合は,全体で34.9%,普通科では22.3%となっており,参加率の向上が今後の課題となります。

2 職業教育の推進

(1)専門高校における職業教育の現状

 高等学校における職業教育は,農業,工業,商業,水産,家庭,看護,情報,福祉の専門高校を中心に,我が国の産業経済や医療・福祉の発展を担う人材を育成する上で,大きな役割を果たしています。平成30年5月現在,専門高校の数は1,514校,生徒数は約59万人であり,高等学校の生徒数全体の約18.34%を占めています。また,生徒の進路状況は,30年3月卒業者のうち,大学などへの進学者約21.4%,専門学校などへの進学者約22.3%,就職者約53.4%と多様です。

(2)専門高校における教育内容の充実

1.学習指導要領の円滑かつ着実な実施に向けた取組

 現行の高等学校学習指導要領(職業に関する教科)の円滑かつ着実な実施に向け,文部科学省においては趣旨や内容の広報・周知に努めるとともに,先進事例の共有や課題の協議を行うなどの取組を実施しています。
 また,平成30年3月末には,高等学校学習指導要領の全面改訂を行いました。職業に関する教科については,地域や社会の発展を担う職業人を育成するため,社会や産業の変化の状況等を踏まえ,持続可能な社会の構築,情報化の一層の進展,グローバル化などへの対応の視点から各教科の教育内容を改善しました。特に,職業に関する教科全てに共通して職業人に求められる倫理観に関する指導を引き続き重視することとしたほか,教科の特質に応じて,六次産業化など経営感覚の醸成に関わる内容,技術の高度化や情報技術の進展に対応する内容,環境保全に関する内容などを充実しています。今後も引き続き,令和4年度入学生からの年次進行による円滑な実施に向け,新高等学校学習指導要領の趣旨や内容についての説明や周知を図っていきます。

2.特色ある教育内容を展開する専門高校への支援と成果の普及

 近年の科学技術の進展等に伴い,産業界で必要な専門知識や技術は高度化し,従来の産業分類を越えた複合的な産業が発展しています。これに対応した高度な知識・技能を身に付け,社会の第一線で活躍できる専門的職業人を育成するため,先進的で卓越した取組を行う専門高校を「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)」に指定し,実践研究を行っています。

(3)専門高校活性化に資する取組

1.全国産業教育フェア

 全国産業教育フェアは,専門高校等の生徒の学習成果を全国的な規模で総合的に発表することで,新しい時代に即した専門高校等における産業教育の活性化を図り,その振興に資することを目的として開催しています。平成30年度は山口県において開催し,2日間を通して約5万6千人の来場があり,産業教育の魅力を全国に発信するフェアとなりました。なお,令和元年度のフェアは新潟県で開催します。

2.教員研修の充実

 教職員支援機構等では,教員等の資質を向上し,その指導力の強化を図るため,産業教育担当の教員などを対象として,情報化・技術革新その他社会情勢の変化に適切に対応した最新の知識・技術を習得させる研修や,大学や企業等の産業教育に関わる施設に派遣する研修などを行っています。

3.施設・設備の補助

 産業教育振興のため,産業教育施設・設備基準に基づいて,必要な施設・設備の整備に関する経費の一部を支援しています。

(4)専修学校高等課程(高等専修学校)における取組

 専修学校高等課程(高等専修学校)は,その柔軟な制度的特性を生かして社会的要請に弾力的に応える教育を行うことによって,中学校卒業段階で職業に対する目的意識を持った生徒等を対象に,実践的な職業教育・専門技術教育の機会を提供しています。
 また,実学を重視する専修学校高等課程は,不登校や中途退学を経験している生徒等,高等学校等の教育になじまない生徒にも教育の機会を与えており,その社会的・職業的自立に向けて積極的に対応しています。
 専修学校高等課程は,高等学校等と並び,多様な教育の選択肢を提供する後期中等教育機関の一つとしてその役割を果たしていくことが今後とも期待されています。

3 高等学校卒業後の就職の状況

 高校生の就職については,平成30年3月新規高等学校卒業者の就職率(就職希望者に対する就職者の割合)は98.1%(30年3月末現在)となり,前年同期から0.1ポイント上昇しました。就職率は8年連続で前年同期を上回りました。
 しかし,卒業までに就職に至らなかった生徒も数多く存在し,それらの生徒は,卒業後もハローワーク等の支援を得て就職活動を継続してきました。
 文部科学省では,学校とハローワークが連携した就職支援を促すなど,厚生労働省・関連経済団体等と連携して,高等学校卒業者の就職支援に取り組んでいます。

第6節 新しい時代にふさわしい教育の推進

1 「新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けて~柴山・学びの革新プラン~」の実現

 Society5.0の時代においては,人工知能(AI),ビックデータ等の先端技術が高度化してあらゆる産業や社会生活に取り入れられ,社会の在り方そのものが現在とは「非連続的」と言えるほど劇的に変わると予測されます。
 このような急激な社会的変化が進む中で,次代を切り拓(ひら)く子供たちが,自ら課題を見いだし,その解決に向けて主体的・協働的に学ぶことを通じて,豊かな創造性を備え持続可能な社会の創り手として,社会の形成に参画するための資質・能力を,これまで以上に身につけることが必要と考えます。
 公教育や教師の役割の重要性はかわるものではありませんが,ICTを基盤とした遠隔技術などの先端技術を効果的に活用することで,教師の指導や子供の学習の質をさらに高め,「子供の力を最大限引き出す学び」を実現していく必要があります。
 そのため,文部科学省は,平成30年11月に新時代の学びを支える先端技術のフル活用に向けた基本的な方向性を「柴山・学びの革新プラン」として打ち出しました。この「柴山・学びの革新プラン」を踏まえて,文部科学省では先端技術の活用方策の具体化の検討を進め,一定のとりまとめとして平成31年3月29日に「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」の中間まとめを公表しました。
 中間まとめは,目指すべき次世代の学校・教育現場を具体的に提示するとともに,その現状と課題を整理したものであり,今抱えている課題を解決し,目指すべき次世代の学校・教育現場を実現するための方策として

  • (1)遠隔教育の推進による先進的な教育の実現
  • (2)教師・学習者を支援する先端技術の効果的な活用
  • (3)先端技術の活用のための環境整備

 を柱に据えています。

(1)遠隔教育の推進による先進的な教育の実現

 遠隔教育は,学校同士をつないだ合同授業の実施や外部人材の活用,幅広い科目開設など,教師の指導や子供達の学習の幅を広げることや,特別な支援が必要な児童生徒等の学習機会の確保を図る観点から重要な役割を果たすものです。
 文部科学省では,遠隔教育の普及に向けた具体的な施策の検討に先立ち,各自治体における遠隔教育の実施状況や活用の意向について調査を実施しました。その調査結果も踏まえ,

  1. 遠隔教育の連携先の紹介をはじめとした様々な支援・助言が受けられる環境の整備
  2. 「遠隔教育特例校」の創設を含めた,実証的取組の推進
  3. 遠隔教育を実施するための基盤としての,世界最高速級の学術通信ネットワーク「SINET」

 の初等中等教育への開放
 などの施策を実行していきます。

(2)教師・学習者を支援する先端技術の効果的な活用

 現在,学校現場においては,遠隔技術をはじめとして,協働学習支援ツールやAIドリルのように様々な民間企業で開発された先端技術を導入している学校も少なくありません。このような先端技術の活用を通じて,教師や児童生徒を支援し,アクティブ・ラーニングを推進し,学習指導要領の目指す資質・能力の育成につなげる必要があります。
 そこで,現在の学校現場で使われている先端技術とその効果の整理を行いました。この整理に基づいて,どのような場面でどのような先端技術を活用することが効果的かについて基本的な考え方等を整理していきます。

(3)先端技術の活用のための環境整備

 遠隔技術をはじめとした先端技術を活用するためにはICT環境の整備が急務であり,文部科学省として,「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」を策定し,自治体における学校のICT環境整備の促進に努めているところですが,各自治体におけるICT環境整備は十分に進んでおらず,地域間格差も生じています(※8)。
 今後,ICT環境整備を加速させるため,

  1. 世界最高速級の学術通信ネットワーク「SINET」の初等中等教育への開放(※(1)でも言及)
  2. 管理コストの低減,データ連携の促進に向けたパブリッククラウドの利活用も含めた「教育情報セキュリティ」の在り方の検討
  3. 安価な環境整備に向けた具体策の検討・提示
  4. 市町村ごとの整備状況等の更なる「見える化」をはじめとする,関係者の専門性を高める取組の推進

 などを実施していきます。
 令和元年6月には,(1)から(3)の施策の更なる具体化を図り,最終まとめを示していく予定です。

 ※ 中間まとめは,写真や図等を使いよりわかりやすく内容を示しておりますので,HP(https://www.mext.go.jp/a_menu/other/1411332.htm )もご覧ください。


  • ※8 参照:第2部第11章第1節2(1)

2 夜間中学について

(1)夜間中学の現状

 夜間中学は,戦後の混乱期の中で,生活困窮などの理由から昼間に就労又は家事手伝い等を余儀なくされた学齢生徒が多くいたことから,これらの生徒に対し,義務教育の機会を提供するため,昭和20年代初頭から設けられてきました。30年ごろには,設置数は80校以上を数えましたが,就学援助策の充実や社会情勢の変化に伴って減少し,現在は9都府県27市区に33校の設置に止まっています。平成29年7月に文部科学省が実施した調査結果によると,1,687名の生徒が夜間中学に通っています。

(2)夜間中学の(潜在的)入学希望者

 平成22年の「国勢調査」では,未就学者(※9)が全ての都道府県(※10)に存在し,少なくとも12万人以上いることが明らかとなっており,夜間中学には潜在的なニーズがあると考えられます(※11)。
 このような中,文部科学省においては,平成27年7月に,不登校など様々な事情から実質的に十分な教育を受けられないまま学校の配慮等により卒業した者で,中学校で学び直すことを希望する者(入学希望既卒者)について,夜間中学での受入れが可能であることを示しました。このことにより,29年7月に文部科学省が実施した調査において,73名の入学希望既卒者が夜間中学に通っていることが明らかとなりました。
 さらに,不登校児童生徒の多様な教育機会の確保という観点から,必要な教育整備を図りつつ,不登校となっている学齢生徒の夜間中学での受入れも考えられる旨を平成28年9月に発出した通知に記載したところです。
 また,平成30年12月に関係閣僚会議において決定された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」においても,夜間中学は「自国や我が国において義務教育を十分に受けられなかった者にとって,社会的・経済的自立に必要な知識・技能等を修得し得る教育機関」であり,「全ての都道府県に少なくとも一つの夜間中学が設置されるよう促進するとともに,日本語教育を含む夜間中学の教育活動の充実等の教育機会の確保等に関する施策を推進する」と明記されました。
 このように,現在,夜間中学には,義務教育を修了しないまま学齢期を経過した者(義務教育未修了者)や,不登校など様々な事情により十分な教育を受けられないまま中学校を卒業した者(入学希望既卒者),本国又は我が国において義務教育を修了できなかった外国籍の者などの,義務教育を受ける機会を実質的に保障するための様々な役割が期待されています。


  • ※9 在学したことのない人又は小学校を中途退学した人
  • ※10 全市町村の約96%
  • ※11 未就学者の定義について,小学校を卒業したが中学校を卒業していない者が含まれていないことから,文部科学省としては「国勢調査」の調査方法の改善を総務省に要望している。

(3)夜間中学の設置・充実

 平成28年12月7日に成立した「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(教育機会確保法)に基づき,文部科学省においては,29年3月に同法に基づく基本指針を策定しました。
 また,平成30年6月15日に閣議決定された第3期教育振興基本計画においては,「教育機会確保法等に基づき,全ての都道府県に少なくとも一つの夜間中学が設置されるよう促進するとともに,夜間中学の教育活動の充実や受け入れる生徒の拡大を図る」と明記されました。
 これらのことを受け,文部科学省においては,夜間中学の設置・充実のため以下の取組を実施しました。

  • 夜間中学を新たに設置する際に都道府県立も含めた検討が進むよう義務教育費国庫負担法の一部を改正し,都道府県が設置する夜間中学等の教職員給与に要する経費を国庫補助の対象に追加
  • 平成29年3月に告示した中学校学習指導要領の総則に指導方法等の工夫改善に努めることなど学齢経過者への配慮を明記するとともに,学齢経過者への指導の際,実情に応じた特別の教育課程を編成できるよう制度を整備
  • 教育機会確保法の内容も踏まえた夜間中学の現状等についての詳細な実態調査を実施し,平成29年11月に公表
  • これまで地方公共団体等を対象に行ってきた調査研究の成果を踏まえて,未設置の自治体において夜間中学を検討するに当たって行う効果的なニーズ把握の方法等を平成30年4月に取りまとめ,ウェブサイトに公表
  • 夜間中学の認知度を上げるためのフライヤーを作成し,ウェブサイトに掲載するとともに,平成30年4月に積極的な活用を各教育委員会に依頼
  • 夜間中学の設置・充実を通じた教育機会の確保に向け各地方公共団体において参考となるよう平成29年1月に作成した手引を,最新の動向や制度改正を含め夜間中学の設置に必要な情報を反映するため,30年7月に第2次改訂
  • 夜間中学における日本語指導を充実するため,夜間中学に勤務する教職員等を対象に,平成30年の夏に初めて研修会を開催
  • 第3期教育振興基本計画の閣議決定を受けて,平成30年8月に各都道府県等に夜間中学等の設置の取組をより一層推進するよう文書により依頼
  • 教育機会確保法附則第3条をふまえ,同法の施行状況について検討を加えるため,学識経験者のほか夜間中学を設置する自治体や自主夜間中学の関係者などをメンバーとする協議会を平成30年11月に設置
  • 平成29年8月に引き続き,全ての都道府県・政令指定都市の担当者を対象に教育機会確保法の趣旨や夜間中学の活動等を説明する説明会を東京・大阪の2会場で平成30年2月に開催

 文部科学省においては,今後も,教育機会確保法や第3期教育振興基本計画等に基づき各都道府県に少なくとも1校は夜間中学が設置されるよう促進するとともに,既存の夜間中学における教育活動の充実や多様な生徒の受入れ拡大を図る取組を行ってまいります。

第7節 高等学校教育改革の推進

1 高等学校教育をめぐる現状とこれまでの取組

 高等学校への進学率は,約99%まで上昇する等,今日では高等学校は中学校を卒業したほぼ全ての子供達が進学する教育機関として,極めて重要な役割を果たしています。特に,選挙権年齢や成人年齢が18歳に引き下げられる等の状況を踏まえると,高等学校は,社会の中で自立し,他者と連携・協働しながら社会を生き抜く力を育成していくことが一層求められます。
 また,今日の高等学校を取り巻く我が国の状況を見ると,人口減少を伴う少子高齢化や,就業構造の急速な変化,グローバル化,人工知能・IoT等の技術革新の急速な進展によるSociety5.0の到来など,大きな社会変化が予測されています。
 平成30年6月には,文部科学大臣のもとで,Society5.0における人材像や学びの在り方,今後の教育政策の方向性(「Society5.0に向けた人材育成~社会が変わる,学びが変わる~」)を取りまとめました。高等学校においては,

  1. 義務教育を終えた子供たち一人一人がSociety5.0を生き抜くために必要となる「共通して求められる力」の育成
  2. 将来,技術革新や価値創造の源となる飛躍知を発見・創造したり,それらの成果と社会課題をつなげ,プラットフォームを元とした新たなビジネスを創造したりする「新たな社会を牽引する人材」として活躍するための基盤となる力の育成
  3. 各地域への課題意識や貢献意識を持ち,Society5.0を地域から分厚く支えていく人材の育成

 等を重視して改革を進めていくことが求められています。

2 高等学校教育の質の確保・向上に向けた取組

 文部科学省においては,平成30年10月16日付けで高等学校行政を司る組織である「参事官(高等学校担当)」を新たに設置し,以下の取組等を実施しています。

(1)Society5.0に向けたリーディングプロジェクト

 Society5.0に向けたリーディングプロジェクトとして,令和元年度予算において,

  • 高等学校等と国内外の大学,企業,国際機関等が協働し,高校生へより高度な学びを提供する仕組みを構築し,「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム」における拠点校を整備(※12)
  • 高等学校と自治体,高等教育機関,産業界等とが協働してコンソーシアムを構築し,地域課題の解決等の探究的な学びを実現する取組(※13)に必要な経費を計上しています。
     これらの取組を通じ,1.「共通して求められる力」の育成,2.「新たな社会を牽引する人材」として活躍するための基盤となる力の育成,3.Society5.0を地域から分厚く支えていく人材の育成を推進します。

  • ※12 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/1412062.htm
  • ※13 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/1407659.htm

(2)「高校生のための学びの基礎診断」の仕組みの構築

 平成30年3月,高大接続改革の一環として「高校生に求められる基礎学力の確実な習得」と「学習意欲の喚起」を図るため,文部科学省が一定の要件を示し,民間の試験等を認定する制度を創設しました。平成30年12月末には,認定基準に基づき,9事業者25ツールを「高校生のための学びの基礎診断」として認定し,各ツールの詳細情報を文部科学省ホームページにて公表しています(※14)。
 本制度において,多様な民間の試験等の開発・提供,その利活用を促進することにより,高校生の基礎学力の定着に向けたPDCAサイクルの取組を促進します。


  • ※14 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kaikaku/1393878.htm

(3)教育再生実行会議における検討について

 このように,Society5.0の進展や地方創生の推進,高大接続の進捗等を踏まえ,生徒一人一人が多様な選択肢の中で,必要な学びを能動的にできる場を実現することが,高等学校には求められています。これを踏まえ,総理の下で開催される教育再生実行会議において,平成30年8月から「新しい時代に対応した高等学校の在り方」について検討が進められ,令和元年5月17日に第十一次提言がとりまとめられました。第十一次提言では,約7割の生徒が通う普通科について,学習の方向性に基づいた類型の枠組みを示すことや,文系・理系科目をバランス良く学ぶ仕組みの構築等を含め,高校教育全般の改革について,提言されています。

(4)中央教育審議会における検討について

 平成31年4月17日に中央教育審議会に新時代に対応した高等学校教育の在り方を含む「新しい時代の初等中等教育の在り方について」諮問が行われました。今後,教育再生実行会議の提言等も踏まえつつ,生徒の学習意欲を喚起し能力を最大限伸ばすための普通科改革など学科の在り方や,文系・理系にかかわらず様々な科目を学ぶことなどについて専門的・実務的に検討が進められる予定です。
 文部科学省においても,教育再生実行会議の提言や中央教育審議会の議論等を踏まえ,新しい時代に対応した高等学校改革に取り組んでまいります。

第8節 教科書の充実

 教科書は,学校における教科の主たる教材として,児童生徒が学習を進める上で重要な役割を果たすものです。教育の機会均等を実質的に保障し,全国的な教育水準の維持向上を図るため,小・中・高等学校,特別支援学校などにおいては,教科書を使用しなければならないとされています。教科書は,次のような過程を経て,児童生徒の元に届けられ,使用されています(図表2‐4‐6,図表2‐4‐7)。

 図表2‐4‐6 教科書が使用されるまで

 図表2‐4‐7 小・中・高等学校の教科書の検定・採択の周期

1 教科書検定

 教科書検定制度は,民間の発行者の創意工夫による多様な教科書の発行を期待するとともに,1.全国的な教育水準の維持向上,2.教育の機会均等の保障,3.適正な教育内容の維持,4.教育の中立性の確保などの要請に応えるため実施しているものです。
 教科書検定は,学習指導要領や教科用図書検定基準に基づき,各分野の専門的な知見を有する教科用図書検定調査審議会の委員によって,専門的・学術的な審議に基づいて厳正に行われています。
 国民の教科書に対する高い関心に応え,教科書への信頼を確保するとともに,検定への一層の理解を得るため,検定結果の公開を行い,透明性の確保を図っています。平成30年度は,29年度に行った中学校(特別の教科道徳)及び高等学校(主として高学年)用教科書の検定結果を公開しました(※15)。
 令和元年度には,主に,29年に公示された新学習指導要領に基づく中学校用の教科書検定を行うこととしています。


  • ※15 参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/1402900.htm
    https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/kentei/1405491.htm

2 教科書採択

 教科書採択は,地域や児童生徒の実情に応じて,学校で使用する教科書を決定することであり,公立学校(公立大学法人が設置する学校を除く。)では設置者である都道府県や市町村の教育委員会,国立学校・公立大学法人が設置する学校・私立学校では校長が行っています。公立の小・中学校等において使用される教科書の採択については,都道府県教育委員会が,市町村教育委員会の意見を聴いて採択地区を設定します。複数の市町村から構成される採択地区では,地区内の市町村教育委員会は,規約を定めて採択地区協議会を設け,その協議の結果に基づいて種目ごとに同一の教科書を採択することになっています。
 教科書採択においては,採択権者の判断と責任の下,1.教科書の内容に関する十分な調査研究,2.静ひつな採択環境の確保,3.採択結果・理由等の公表などが求められています。文部科学省では,各教育委員会に対して,採択の公正性・透明性の確保,調査研究のより一層の充実,採択事務のルール化などの採択手続の明確化,採択地区の適正規模化など,採択のより一層の改善に努めるように指導しています。
 また,平成30年度には,「特別の教科道徳」の中学校用教科書の初めての採択が行われました。

3 義務教育教科書無償給与

 義務教育教科書無償給与制度は,「日本国憲法」第26条が掲げる義務教育無償の精神をより広く実現する制度として,昭和38年度以来50年以上にわたって実施され,国民の間に広く定着しています。この制度は,次代を担う児童生徒に国民的自覚を深めてほしいという国民全体の願いを込めて行われているものであり,同時に教育費の保護者負担を軽減するという効果を持っています。教科書無償給与の対象となるのは,全ての義務教育諸学校の児童生徒が使用する全教科の教科書であり,本制度の実施のため,平成30年度には約432億円の予算が計上され,約980万人の児童生徒に対して,合計約1億冊の教科書が給与されました。

4 教科用特定図書等の普及充実

 平成20年の「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」の制定を受け,拡大教科書など障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等の普及を図っています。
 具体的には,できるだけ多くの弱視の児童生徒に対応できるような拡大教科書の標準的な規格を定めるなど,教科書発行者による拡大教科書の発行を促しているほか,全国5ブロックで,都道府県教育委員会等を対象とした音声教材の普及推進のための会議を開催しています。
 平成30年度に使用される小・中学校用の検定教科書のほぼ全点について標準規格に適合する拡大教科書が,必要な児童生徒に供給されています(図表2‐4‐8)。また,教科書発行者が発行する拡大教科書では対応できない児童生徒のために,児童生徒一人一人のニーズに応じた拡大教科書などを製作するボランティア団体などに対して,教科書デジタルデータの提供を行っています。
 このほか,発達障害等の障害により検定教科書において一般的に使用されている文字や図形などを認識することが困難な児童生徒が使用する教科用特定図書等として音声教材の整備充実を図るため,ボランティア団体の協力等を得ながら,調査研究などを行っています。

 図表2‐4‐8 拡大教科書の発行点数(平成30年度)

5 学習者用デジタル教科書の制度化

 教育の情報化が進展する中,新学習指導要領を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善や,特別の配慮を必要とする児童生徒等の学習上の困難低減のため,学習者用デジタル教科書を制度化する「学校教育法等の一部を改正する法律」等関係法令が公布され,平成31年4月から学習者用デジタル教科書を導入することができるようになりました。併せて,文部科学省では,その効果的な活用の在り方等に関するガイドラインや実践事例集を公表するなど,学習者用デジタル教科書の円滑な導入に取り組んでいます。

第9節 いじめ・不登校等の生徒指導上の諸課題への対応

1 生徒指導上の諸課題

(1)生徒指導の在り方

 生徒指導は,全ての児童生徒を対象として,学校のあらゆる教育活動の中で,それぞれの人格の健全な発達・成長を目指すとともに,現在及び将来における自己実現を図っていくために,児童生徒が自らを導いていく能力を育成すること,そして,学校生活が有意義で興味深く,充実したものになることを目指して行われるものです。生徒指導の積極的な意義を考慮し,児童生徒に社会的な資質や能力,態度などを修得・発達させるような指導・援助が行われています。
 一方,いじめの問題や少年による重大事件などは教育上の大きな課題となっています。文部科学省では,毎年度,各都道府県教育委員会などを通じて調査を行い,暴力行為,いじめ,不登校などの生徒指導上の諸課題の実態把握に努めています。平成29年度の調査結果では,小・中・高等学校における暴力行為の発生件数は約6万3,000件,小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は約41万4,000件,小・中・高等学校における不登校児童生徒数は約19万4,000人となっています。
 学校においては,日常的な指導の中で,教師と児童生徒との信頼関係を築き,全ての教育活動を通じて規範意識や社会性を育むきめ細かな指導を行うとともに,問題行動の未然防止と早期発見・早期対応に取り組むことが重要です。また,問題行動が起こったときには,粘り強い指導を行い,指導を繰り返してもなお改善が見られない場合には,出席停止や懲戒などの措置も含めた毅然とした対応を取るとともに,問題を隠すことなく,教職員が一体となって対応する必要があります。さらに,教育委員会は学校を適切にサポートする体制を整備すること,そして,家庭や地域社会,警察・法務局・児童相談所等の関係機関の理解と協力を得て地域ぐるみで取り組む体制づくりを進めていくことが重要です。
 文部科学省では小学校段階から高等学校段階までの組織的・体系的な取組を進めるため,生徒指導の概念・取組の方向性等を整理した学校・教員向けの基本書として「生徒指導提要」を作成し,各教育委員会及び学校などに配布するとともに,指導や研修での活用を促し,生徒指導の一層の充実を図っています。

(2)いじめ

 「いじめ防止対策推進法」(以下,「法」という。)においては,いじめは「児童等に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」(第2条第1項)と定義されています。個々の行為が「いじめ」に当たるか否かの判断は,表面的・形式的にすることなく,いじめられた児童生徒の立場に立つことが必要です。
 いじめ問題については,まず,「いじめは絶対に許されない」との意識を社会全体で共有し,子供を「加害者にも,被害者にも,傍観者にもしない」教育を実現することが必要です。また,いじめ問題に適切に対処するためには,子供たちの悩みや不安を受け止めて相談に当たることも大切です。
 平成24年度には,いじめの問題を背景として生徒が自らその命を絶つという痛ましい事案をきっかけに,大きな社会問題となりました。25年6月に法が成立したことを受け,文部科学省では,同年10月に「いじめの防止等のための基本的な方針」(以下,「基本方針」という。)を策定しました。
 文部科学省では,法や基本方針の策定を受け,教育委員会関係者や教職員に内容の周知を図り,いじめの防止等への取組を徹底するため,「いじめの問題に関する指導者養成研修」や「いじめの防止等のための普及啓発協議会」を開催しています。加えて,平成28年度においては,法施行後3年を経過したことを受け,「いじめ防止対策協議会」において法の施行状況の検証を行いました。この検証の結果を踏まえ,国の基本方針の改定及び「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」の策定を行いました。
 また,平成29年度,全国の国公私立の小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は約41万4,000件,いじめを認知した学校数は約2万8,000校で学校総数に占める割合は約74.4%となっています(図表2‐4‐9)。
 いじめは,どの子供にも,どの学校にも起こり得るものですが,いじめの認知件数については,問題行動等調査における1,000人当たりの認知件数の都道府県間の差が大きく,実態を正確に反映しているとは言い難い状況にあります。このため,文部科学省としては,いじめの認知件数が多い学校について,「いじめを初期段階のものも含めて積極的に認知し,その解消に向けた取組のスタートラインに立っている」と極めて肯定的に評価し,いじめの積極的な認知を徹底するよう促しています。
 その他,総務省によるいじめ防止対策の推進に関する調査の結果に基づき,平成30年3月16日,総務大臣から文部科学大臣に対し,いじめ防止対策の推進について,勧告がなされました。文部科学省では,総務省による勧告を踏まえ,「いじめ防止対策の推進に関する調査結果に基づく勧告を踏まえた対応について(通知)」(平成30年3月26日付け初等中等教育局児童生徒課長通知)を発出し,いじめ防止対策を推進する上での留意事項を整理し,全国の教育委員会等に対して,周知徹底を求めました。

 図表2‐4‐9 いじめの認知(発生)件数の推移

1.いじめ対策・不登校支援等総合推進事業

 いじめの未然防止,早期発見・早期対応や教育相談体制の整備及びインターネットを通じて行われるいじめへの対応を充実するため,「いじめ対策・不登校支援等総合推進事業」を拡充し,地方公共団体におけるいじめの問題等への対応を支援しています。

2.いじめ防止対策協議会の開催

 文部科学省では,学校関係者や各種職能団体等の関係団体から有識者の参画を得た「いじめ防止対策協議会」を開催し,法に基づく取組状況の把握と検証を的確に行うとともに,いじめの問題に取り組む関係者間の連携強化を図っています。平成30年度においては,同協議会の議論を踏まえ,30年9月に「いじめ対策に係る事例集」を作成するとともに,いじめの重大事態に係る調査報告書の分析の在り方について検討を進めました。

3.全国いじめ問題子供サミットの開催

 いじめを未然に防止するためには,子供たちが自らの手でいじめの問題に取り組み,解決につなげていく意識を高め,実行していくことが効果的です。このため,子供自身の主体的な活動の中核となるリーダーを育成するとともに,全国各地での多様な取組の実施を一層推進するため,平成29年度に引き続き,31年1月に「全国いじめ問題子供サミット」を開催しました。

4.「ネットいじめ」への対応

 近年,インターネットや携帯電話を利用したいじめ(いわゆる「ネットいじめ」)が深刻な問題になっています。また,「ネットいじめ」のうち,SNSでのいじめについては,第三者が閲覧できないため従来の取組で対応できない場合もあります。こうしたいじめの未然防止のためには,子供たちが自らの手でいじめの問題に取り組み,解決につなげていく意識を高め,実行していくことや情報モラルを身に付けさせることが重要です(※16)。また,改定後の基本方針に,インターネット上のいじめは,「刑法」上の名誉毀損罪や侮辱罪,民事上の損害賠償請求の対象となり得ることや,インターネット上のいじめが重大な人権侵害に当たり,被害者等に深刻な傷を与えかねない行為であることを理解させる取組を行うことを盛り込みました。
 文部科学省では平成26年度から,ネットパトロール監視員や民間の専門機関の活用等による学校ネットパトロールなど都道府県・指定都市における取組への支援を行っています。

5.東日本大震災により被災した児童生徒又は原子力発電所事故により避難している児童生徒に対するいじめへの対応

 文部科学省では,原子力発電所事故により避難している児童生徒がいじめに遭い,学校等が適切な対応を行わなかった事案について,平成28年12月,被災児童生徒を受け入れる学校に対して,被災児童生徒がいじめを受けていないかどうか確認を行うことなどの対応を求める「東日本大震災により被災した児童生徒を受け入れる学校の対応について」(平成28年12月16日付け初等中等教育局長通知)を発出しました。また,29年3月,基本方針を改定して,原子力発電所事故の避難者である児童生徒に対するいじめの未然防止・早期発見に取り組むことを新たに盛り込み,教職員に対して適切な対応を求めています。さらに,同年4月に,被災児童生徒へのいじめの防止について,全国の児童生徒等に向けて,文部科学大臣からメッセージを発表するとともに,上記28年12月に発出した通知により各教育委員会に求めたいじめの状況等の確認について,フォローアップ結果を公表しました。


  • ※16 参照:第2部第11章第1節

(3)暴力行為

 平成29年度,全国の国公私立の小・中・高等学校の児童生徒が起こした暴力行為(対教師暴力・生徒間暴力・対人暴力・器物損壊)の発生状況は,学校の管理下で発生したものが,全学校の31.6%に当たる約1万1,000校において約6万件,学校の管理下以外で発生したものが,全学校の5.7%に当たる約2,000校において約3,100件となっており,依然として相当数に上っています(図表2‐4‐10)。

 図表2‐4‐10 学校の管理下・管理下以外における暴力行為発生件数の推移

(4)不登校

 平成29年度の全国の国公私立の小・中学校の不登校児童生徒数は約14万4,000人,高等学校は約5万人と,依然として相当数に上っています(図表2‐4‐11)。
 文部科学省では,総合的な不登校施策について検討を行うため,平成27年1月から「不登校に関する調査研究協力者会議」を開催し,28年7月に最終報告を公表しました。この最終報告を受け,「不登校児童生徒への支援の在り方について」(平成28年9月14日付け初等中等教育局長通知)を発出し,不登校は多様な要因や背景から結果として不登校状態となっており,問題行動と判断してはならないことや,不登校児童生徒への支援は,学校に登校するという結果のみを目標とするのではなく,児童生徒の社会的自立を目指すことなど,新たな不登校児童生徒への支援の在り方を示しました。
 また,フリースクール等で学ぶ子供たちの現状を踏まえ,平成27年1月から「フリースクール等に関する検討会議」を開催し,29年2月に,教育委員会・学校と民間の団体等が連携した支援を推進することなど,不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援の充実等について提言した報告を公表しました。
 さらに,平成28年12月には,不登校児童生徒が学校以外の場で行う多様で適切な学習活動の重要性や,個々の不登校児童生徒の休養の必要性等を規定した,「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が成立し,不登校児童生徒への支援について,初めて体系的に法律で規定されました。同法に基づき,文部科学省では,29年3月に不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針として,「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」を策定しました。
 本基本指針では,全ての児童生徒にとって,魅力あるより良い学校づくりを目指すとともに,いじめ,暴力行為等の問題行動を許さないなど,安心して教育を受けられる学校づくりについても推進するとともに,不登校児童生徒への支援は,児童生徒が社会的に自立することを目指し,個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援を行うことなどを基本的な考え方とし,不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針を定めています。
 これらを踏まえ,平成29年度予算において,教育支援センターの設置促進やフリースクールなど民間団体との連携による支援を推進するため,学校以外の場における教育機会の確保等に関する調査研究を実施し,令和元年度予算においても引き続き,同調査研究を実施するなど,個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援の推進を図っています。

 図表2‐4‐11 不登校児童生徒数の推移

(5)高等学校中途退学

 平成29年度の全国の国公私立の高等学校における中途退学者数は約4万7,000人,在籍者に占める中途退学者の割合(中退率)は1.3%となっています(図表2‐4‐12)。中途退学の理由としては,「学校生活・学業不適応」(34.9%),「進路変更」(34.7%)などが挙げられます。
 高等学校中途退学への対応については,各高等学校において,一人一人の生徒が主体的に目標や意欲を持って学ぶことができるよう,生徒の能力・適性・興味・関心などに応じて魅力ある教育活動を展開するとともに,キャリア教育の充実や一層きめ細かな教育相談を実施することなどが重要です。また,就職や他の学校への転・編入学など積極的な進路変更について支援していくことも大切です。
 文部科学省では,教育相談体制の充実を図るため,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置を拡充しているほか,中途退学者に対する学校段階からの切れ目のない支援のため,地域若者サポートステーション等の関係機関と学校との連携を促進しています。
 また,平成29年度には,文部科学省において,全国の公立高等学校における妊娠を理由とした退学等の実態把握を行いました。その結果,27年4月から29年3月までの2年度間に生徒の妊娠の事実を学校が把握した件数(2,098件)のうち,妊娠を理由に懲戒として退学の処分を行った事案は認められなかったものの,生徒又は保護者が引き続きの通学を希望していた等の事情があるにもかかわらず学校が退学を勧めた事案が32件認められました。これを踏まえ,30年3月,「公立の高等学校における妊娠を理由とした退学等に係る実態把握の結果等を踏まえた妊娠した生徒への対応等について」(平成30年3月29日付け初等中等教育局児童生徒課長・初等中等教育局健康教育・食育課長通知)を発出しました。同通知では,生徒が妊娠した場合には,関係者間で十分に話し合い,母体の保護を最優先としつつ,教育上必要な配慮を行うべきこと,その際,生徒に学業継続の意思がある場合は,安易に退学処分や事実上の退学勧告等の対処を行わないという対応も十分考えられることなど,基本的な考え方を示しました。同通知の趣旨を徹底するよう,全国の生徒指導担当者を対象とした会議等において周知を図っています。

 図表2‐4‐12 高等学校における中途退学者数及び中途退学率の推移

(6)自殺

 厚生労働省・警察庁「平成30年中における自殺の状況」(平成31年3月)によると,30年中の小・中・高等学校の児童生徒の自殺者数は369人となっています。また,29年には人の目の届きにくいSNSを利用し,自殺願望を投稿するなどした高校生等の心の叫びに付け込んで,言葉巧みに誘い出し殺害するという極めて卑劣な事件が発生し,これを受けて,29年12月19日に,座間市における事件の再発防止に関する関係閣僚会議において「座間市における事件の再発防止策」が取りまとめられました。
 文部科学省では,命の大切さを学ぶ教育などを通じて児童生徒の自殺の防止に取り組むとともに,その特徴や傾向などを考慮した対策を検討するため,平成20年度から有識者会議を開催しています。また,児童生徒の自殺予防や,不幸にして自殺が起きたときの緊急対応に必要な学校・教職員向けの資料を作成し,各教育委員会や学校に配布してきました。26年度には,学校における自殺予防教育導入の手引である「子供に伝えたい自殺予防」,「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の改訂版及び「子供の自殺等の実態分析」を作成しました。30年度も引き続き,各教育委員会等の生徒指導担当者や校長・教頭などの管理職を対象に「児童生徒の自殺予防に関する普及啓発協議会」を開催し,児童生徒の自殺対策について周知を図っています。
 また,平成30年1月には,文部科学省・厚生労働省の連名で「児童生徒の自殺予防に向けた困難な事態,強い心理的負担を受けた場合等における対処の仕方を身に付ける等のための教育の推進について」(平成30年1月23日付け初等中等教育局児童生徒課長・厚生労働省大臣官房参事官(自殺対策担当)通知)を発出し,新たな自殺総合対策大綱(平成29年7月25日閣議決定)に定められた「SOSの出し方に関する教育」の推進を求めたほか,同年8月には,「SOSの出し方に関する教育」の推進に当たって参考となる教材例を周知しました。
 さらに,18歳以下の自殺は,学校の長期休業明けに掛けて急増する傾向があることから,長期休業前から期間中,長期休業明けの時期に掛けて学校における早期発見に向けた取組,保護者に対する家庭における見守りの促進,学校内外における集中的な見守り活動,ネットパトロールの強化を実施するよう,夏休み等の長期休業前にそれぞれ対応を求めたところです。

2 教育相談体制の整備・充実

 児童生徒のいじめの問題などに適切に対処するためには,児童生徒の悩みや不安などを受け止めて,速やかに相談できるよう教育相談体制を整備することが重要です。
 文部科学省では,平成27年12月に「教育相談等に関する調査研究協力者会議」を開催し,29年1月に,今後の教育相談の在り方,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの職務内容,学校及び教育委員会における体制の在り方など,児童生徒の教育相談の充実について提言した報告を公表しました。
 さらに,平成27年12月の中央教育審議会「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」等を踏まえ,「学校教育法施行規則」の一部を改正し,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーについて,スクールカウンセラーは,「小学校における児童の心理に関する支援に従事する」,スクールソーシャルワーカーは,「小学校における児童の福祉に関する支援に従事する」と同規則(中学校,高等学校等にも準用)に職務内容を規定したところです(29年4月1日施行)。
 また,学校等における教育相談体制を整備するために,スクールカウンセラーや,スクールソーシャルワーカーを配置する都道府県等に対して補助を行っています。
 平成30年度は公立小学校及び全公立中学校にスクールカウンセラーを配置するために必要な経費の補助を行ったほか,貧困・虐待対策のための重点加配を行いました。令和元年度予算では,全公立小中学校に対するスクールカウンセラーの配置に加えて,引き続き,生徒指導上の大きな課題を抱える公立中学校等でスクールカウンセラーによる週5日の相談体制を実施し,常時生徒が相談できる体制づくりを推進することとしています。また,公立小学校については,小中連携型配置を含む1万7,500校への配置の拡充を行います。さらに,貧困・虐待対策のための重点加配(1,400校)に必要な経費を計上しています。
 また,平成30年度は,小・中学校等にスクールソーシャルワーカーを配置するために必要な経費の補助を行ったほか,貧困・虐待対策のための重点加配を行いました。令和元年度予算では,全中学校区に対するスクールソーシャルワーカーの配置拡充(10,000人)に加え,貧困・虐待対策のための重点加配(1,400人)と質向上のためのスーパーバイザー配置(47人)に必要な経費を計上しています。
 さらに,文部科学省では,夜間・休日を含め24時間いつでも子供のSOSを受け止めることができるよう,「24時間子供SOSダイヤル」を整備しています。なお,平成28年度からは同ダイヤルが無料化され,電話番号が「0120‐0‐78310」に改められています。
 加えて,近年,若年層の多くが,SNSを主なコミュニケーション手段として用いているとともに,SNS上のいじめへの対応も大きな課題となっている状況を受け,文部科学省では,いじめを含む様々な悩みに関する児童生徒の相談に関して,SNS等を活用する利点・課題等について検討を行うため,平成29年7月に有識者会議を開催し,30年3月,「SNS等を活用した相談体制の構築に関する当面の考え方(最終報告)」を取りまとめました。また,30年から地方公共団体に対し,SNS等を活用した児童生徒向けの相談体制の構築を支援しています。
 さらに,平成25年度から,都道府県や市区町村における,第三者的立場からいじめ問題等を調整・解決する取組や,外部専門家を活用して学校を支援する取組に対して補助を行っています。

3 体罰の禁止

 体罰は,「学校教育法」により厳に禁止されており,児童生徒の人権の尊重という観点からも許されるものではありません。また,体罰は,違法行為であるのみならず,児童生徒の心身に深刻な悪影響を与え,教員等及び学校への信頼を失墜させる行為であり,児童生徒に力による解決への志向を助長させ,いじめや暴力行為などの連鎖を生むおそれがあります。
 しかし,平成24年度には,部活動中の体罰が背景にある生徒の自殺事案が発生し,大きな社会問題となりました。この事案や教育再生実行会議の第一次提言「いじめ問題等への対応について」を踏まえ,懲戒と体罰の区別等についてより一層適切な理解促進を図るとともに,教育現場において,児童生徒理解に基づく指導が行われるよう,「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」(平成25年3月13日付け初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長通知)を発出しました。同通知では,懲戒と体罰の区別について,具体例を示して分かりやすく説明するとともに,部活動指導に当たっての留意事項を示しています。さらに,「体罰根絶に向けた取組の徹底について」(平成25年8月9日付け初等中等教育局長・スポーツ・青少年局長通知)を発出し,厳しい指導の名の下で,若しくは保護者や児童生徒の理解を理由として,体罰や体罰につながりかねない不適切な指導を見過ごしてこなかったか,これまでの取組を検証し,体罰を未然に防止する組織的な取組,徹底した実態把握,体罰が起きた場合の早期対応及び再発防止策,事案に応じた厳正な処分など,体罰防止に関する取組の抜本的な強化を図るよう求めました。
 平成24年度以降は,国公私立学校における処分が行われた体罰の状況についてまとめた調査結果を毎年度公表し,体罰の実態を把握するとともに,その禁止の徹底に努めています。
 部活動における体罰禁止の徹底については,平成25年3月に「運動部活動の在り方に関する調査研究協力者会議」を開催しました。同年5月には運動部活動の指導者が,指導に当たって萎縮しないよう,また,体罰に頼らない指導の充実が図られるよう「運動部活動での指導のガイドライン」を策定しました。このガイドラインにおいては,運動部活動における指導と許されない指導の一定の考え方を示すとともに,運動部活動の指導に係る運営,体制等についても必要事項を掲載しています。
 さらに,平成30年3月には,「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」,同年12月には,「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を新たに策定し,校長及び部活動の指導者は,生徒の心身の健康管理,事故防止及び体罰・ハラスメントの根絶を徹底することについて示しました。
 文部科学省では,これらのガイドラインを各学校等に周知し,部活動の現場から体罰を根絶するよう努めています。

第10節 道徳教育の充実

 学校教育では,調和のとれた人間の育成を目指して,子供たちの発達の段階に応じた道徳教育を展開することとしています。幼稚園では,各領域を通して総合的な指導を行い,道徳性の芽生えを培うこととしています。小・中学校では,道徳の時間(週当たり1単位時間)を要として,各教科,総合的な学習の時間,特別活動などそれぞれの特質に応じて適切な指導を行い,学校の教育活動全体を通じて道徳教育を行うこととしています。高等学校では,人間としての在り方生き方に関する教育を,学校の教育活動全体を通じて行うことにより,その充実を図ることとしています。
 他方,小・中学校に道徳の時間が設置されてから約70年がたちますが,これまで学習指導要領の趣旨を踏まえ,学校の創意工夫を生かした素晴らしい実践が行われている一方で,道徳教育が本来の役割を果たしきれていないのではないかという指摘もなされてきました。また,今後,人工知能をはじめとする技術革新が進むなど,将来を予測することがますます困難な時代になると予想されます。このような時代を前に,私たち人間に求められるのは,感性を豊かに働かせながら,自分なりに試行錯誤したり,多様な他者と協働したりして,新しい価値を生み出していくことであり,こうした中で,より良く生きるための基盤となる道徳性を養う道徳教育の役割はますます重要となっています。
 文部科学省では,このような状況を踏まえ,道徳教育の更なる充実のため,道徳の時間を「特別の教科道徳」(道徳科)として位置付けることなどに係る学習指導要領の一部改正等を行いました。このことにより,答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の児童生徒が自分自身の問題と捉え,向き合う,「考える道徳」,「議論する道徳」へと転換が図られるものと考えています。
 今回の改正の主なポイントは次のとおりです。

  1. 内容について,いじめの問題への対応の充実や発達の段階をより一層踏まえた体系的なものに改善
  2. 問題解決的な学習や体験的な学習などを取り入れ,指導方法を工夫
  3. 数値評価は引き続き実施せず,児童生徒の道徳性に係る成長の様子を継続的に把握
  4. 道徳科に検定教科書を導入

 今回の改正を踏まえ,小学校では平成30年度から,中学校では令和元年度からそれぞれ道徳科が全面実施されます。また,平成27年度から小・中学校それぞれの実施年度までの間は移行措置として,改正学習指導要領の趣旨を踏まえた取組が可能となっています。
 また,評価や指導要録の在り方等については,平成28年7月の「道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議」の報告を踏まえ,同月に文部科学省から「学習指導要領の一部改正に伴う小学校,中学校及び特別支援学校小学部・中学部における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(平成28年7月29日付け初等中等教育局長通知)を発出し,道徳科の評価の在り方や指導要録の参考様式について周知・徹底を図りました。
 その中では,従来どおり数値による評価は行わないことを前提として,以下のとおり基本的な考え方を示しています。

  1. 他の児童生徒との比較による評価ではなく,児童生徒がいかに成長したかを積極的に受け止めて認め,励ます個人内評価として記述式で行うこと
  2. 個々の内容項目ごとではなく,大くくりなまとまりを踏まえた評価とすること
  3. 児童生徒がより多面的・多角的な見方へと発展しているか,道徳的価値の理解を自分自身との関わりの中で深めているかといった点を重視すること
  4. 道徳科の評価は,入学者選抜の合否判定に活用することのないようにすること

 また,高等学校では,平成30年3月に告示した新学習指導要領において,校長のリーダーシップの下,道徳教育推進教師を中心に,全ての教師が協力して道徳教育を展開することを新たに規定するとともに,公民の「公共」,「倫理」,特別活動が,人間としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面であることを明記しました。
 さらに,文部科学省では,道徳科の全面実施に向け,道徳教育の充実のための資料等をホームページ上で公開する「道徳教育アーカイブ」を平成29年5月に開設し,各学校の児童生徒の実態に応じた多様な創意工夫を生かした授業づくりを支援しています。このほかにも,各地域の特色を生かした道徳教育を推進するため,研修の充実や外部講師の活用,郷土の歴史や偉人などを取り上げた地域教材の作成,家庭・地域との連携を強化する取組など地方公共団体等における多様な取組を支援する「道徳教育の抜本的改善・充実に係る支援事業」を実施しています。

第11節 人権教育の推進

 「日本国憲法」及び「教育基本法」の精神にのっとり,学校教育・社会教育を通じて人権尊重の意識を高める教育を推進することは重要なことです。「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」及び「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成14年3月15日閣議決定,23年4月1日一部変更)に基づき,政府全体として人権教育・啓発を推進しています。学校教育においては,児童生徒の発達段階に応じて,学校の教育活動全体を通じて人権尊重の意識を高めるための指導を進めており,一人一人を大切にする教育の推進に努めています。
 文部科学省では,学校教育の分野において,「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]」(平成20年3月)等を踏まえつつ,学校・家庭・地域社会が一体となった総合的な取組や学校における指導方法の改善充実について実践的な研究を行う「人権教育研究推進事業」を実施し,人権教育の先進的な取組の普及に努めています。
 平成23年度から27年度まで人権教育の全国的な推進を図るため,人権教育の実践事例の収集・公表を実施したほか,28年度においては,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(平成28年法律第68号)が施行されたことを踏まえ,学校における外国人の人権尊重に関する実践事例を収集し公表しました。さらに,30年度には,学校における人権教育の一層の推進に資するため,各都道府県・指定都市教育委員会における人権教育指導資料の作成状況を一覧化し公表しました(※17)。
 また,「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」(平成27年4月30日付け初等中等教育局児童生徒課長通知)を発出するとともに,「性同一性障害や性的指向・性自認に係る,児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」(※18)を28年4月に作成し,学校へ周知しました。
 そのほか,平成22年度から開始した都道府県等の人権教育担当指導主事等を対象とする「人権教育担当指導主事連絡協議会」を引き続き開催しており,人権教育の重要性について改めて認識を共有するとともに,国連「児童の権利に関する条約」や,「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」及び「部落差別の解消の推進に関する法律」(平成28年法律第109号),北朝鮮当局による拉致問題や「性同一性障害や性的指向・性自認に係る,児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施について(教職員向け)」等について引き続き周知を図っています。


  • ※17  参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinken/siryo/1404244.htm
  • ※18  参照:https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/04/__icsFiles/afieldfile/2016/04/01/1369211_01.pdf

第12節子供の健康と安全

 学校は,子供の健やかな成長を目指して教育活動を行う場であり,子供の健康と安全を保つことは重要です。文部科学省では,学校における食育の推進,心と体の健康問題への対応,学校における子供の安全確保に向けて,様々な施策に取り組んでいます。
 また,学校における食育の推進並びに安全に関する指導及び心身の健康の保持増進に関する指導については,これまでも学校の教育活動全体として取り組むことが重要であるとされてきましたが,平成29年3月に公示された新たな学習指導要領の総則においては,体育科(保健体育科),家庭科(技術・家庭科)及び特別活動の時間はもとより,それ以外の各教科や総合的な学習の時間等においても適切に行うよう示しています。さらに,教育課程の編成及び実施にあたっては,学校保健計画,学校安全計画,食に関する指導の全体計画等,各分野における学校の全体計画等と関連づけながら効果的な指導を行うこととしています。

1 学校における食育,学校給食の推進

(1)学校における食育の推進

 近年の子供の食を取り巻く環境の変化に対応するためには,学校において,栄養教諭が中核となって各教職員が連携・協力して食育を推進する体制を整備し,学校の教育活動全体を通じて体系的・継続的に食に関する指導を行うことが重要です。
 また,文部科学省では,平成29年度から,栄養教諭と養護教諭等が連携した家庭へのアプローチや,体験活動を通した食への理解促進など,学校を核として家庭を巻き込んだ取組を推進し,子供の日常生活の基盤である家庭における食に関する理解を深めることにより,効果的に子供の食に関する自己管理能力の育成を目指す「つながる食育推進事業」を実施しています。

(2)学校給食の充実

 学校給食は,栄養バランスの取れた食事を子供に提供することによって子供の健康の保持増進を図ることに加え,食に関する指導を効果的に進めるための教材として活用することができるなど大きな教育的意義を持っています。平成30年5月現在,小学校では1万9,453校(全小学校の99.1%),中学校では9,122校(全中学校の89.9%)が学校給食を実施しています(図表2‐4‐13)。

 図表2‐4‐13 学校給食実施状況(国公私立)

 各学校では,学校給食の食材として地場産物を活用したり,地域の郷土料理・伝統料理などを献立に活用したりする取組が進められています。
 食育基本法に基づく「第3次食育推進基本計画」(平成28年3月閣議決定)では,令和2年度までに,学校給食における地場産物の使用割合を30%以上(29年度の使用割合は26.4%),学校給食における国産食材の使用割合を80%以上(同76.7%)とすることを目指すこととされています。
 文部科学省では,平成28年度から,学校給食において,食品ロスの削減,地産地消の推進,伝統的食文化の継承などの社会的課題に対応するため,食品の生産・加工・流通等の関係者と連携しつつ,学校給食をより効果的かつ効率的に運用するための手法を開発する「社会的課題に対応するための学校給食の活用事業」を実施しています。
 この他,学校給食におけるアレルギー対応の改善・充実のための資料として,「学校給食におけるアレルギー対応指針」・「学校におけるアレルギー疾患対応資料(DVD)」(文部科学省作成),「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」(文部科学省監修)を,全国の教育委員会や学校等へ配布し,全教職員に対する理解の促進と事故防止の徹底を図っています。

2 学校保健の充実

(1)子供の健康課題に対する総合的な取組

 現代の多様化・深刻化する子供の健康課題に対応するため,心の健康や性に関する問題,喫煙,飲酒,薬物乱用防止について記述した「児童生徒の心と体を守る啓発教材」を文部科学省ウェブサイトに掲載するとともに,全国の小学校,中学校,高等学校等に周知しました。
 また,退職した養護教諭をスクールヘルスリーダーとして派遣する事業の実施や,メンタルヘルスの問題,各種感染症,アレルギー疾患など学校だけでは解決することができない児童生徒の現代的な健康問題について地域検討委員会を設置し地域の医療機関等と連携して解決を図る事業を実施するなど様々な施策を講じています。そして,学校におけるアレルギー疾患の対応の充実を図るため,教職員や指導主事などを対象とする講習会を毎年全国6か所で開催しており,「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン」などの普及啓発を一層推進しています。
 さらに,学校,家庭,地域の専門機関等が連携し,学校における健康課題を協議することによって児童生徒等の健康づくりを推進する学校保健委員会の設置を推進しており,平成28年度の設置率は96%と高い水準を実現しています。

(2)がん教育の推進

 がん対策については,厚生労働省が中心となって,「がん対策基本法」の下で政府が策定する「がん対策推進基本計画」に基づいて行われています。令和4年度までの「第3期がん対策推進基本計画」では,がん教育に関する個別目標として,国は,全国の実施状況を把握した上で,地域の実情に応じた外部講師の活用体制を整備し,がん教育の充実に努めるとされています。文部科学省では,同計画の達成に向けて,がん教育の実施状況に関する調査を実施し,各都道府県等が主体的に行うがん教育に関する取組に対して支援を行うことによって各地域におけるがん教育の充実を図っています。

(3)薬物乱用防止教育の充実

 近年の青少年の薬物乱用問題については,これまでの諸対策によって,薬物は絶対に使うべきではないと考える児童生徒の割合が高くなるなど規範意識の向上が見られ,一定の成果が認められています。一方,平成29年中の大麻事犯の検挙人員については,全体の約半数を少年及び20歳代までが占めており,青少年を中心に大麻の乱用の裾野が拡大していることが指摘されています。
 文部科学省では,すべての中学校及び高等学校において,年に1回は薬物乱用防止教室を開催するとともに,地域の実情に応じて小学校においても薬物乱用防止教室の開催に努めるなど,薬物乱用防止に関する指導の一層の徹底を図るよう都道府県教育委員会等を指導しています。また,学校における効果的な指導方法や内容の検討等を行う都道府県教育委員会等に対する支援や,大学生等を対象とした薬物乱用防止のためのパンフレットの作成・配布等を通して,薬物乱用防止に関する啓発の強化を図っています。

3 学校安全の推進(※19)


  • ※19 防災教育については参照:第 2 部第 2 章第 4 節1

(1)子供の安全に関する総合的な取組

 平成21年4月に施行された「学校保健安全法」に基づき,学校安全を取り巻く様々な課題に対して学校全体としての取組体制を整備充実させるため,文部科学省では,29年3月,「第2次学校安全の推進に関する計画」(※20)を策定しました。同計画には,学校安全の推進の方向性として目指すべき姿や施策目標を明示した上で,新たに,学習指導要領の改訂等を踏まえた安全教育の充実方策や,第1次計画策定後の新たな安全上の課題への対応等を盛り込んでおり,同計画に基づき,学校安全の取組を推進することとしています。


  • ※20 参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1383652.htm

(2)学校での子供の安全確保の充実

 学校は児童生徒等が安心して学習を行うことが求められる場所であり,学校においてその安全な環境を整備し,事件・事故を防止するための取組を進める必要があります。
 このため,安全対策として実施する防犯カメラや非常通報装置,自動体外式除細動器(AED)の設置などに関する経費に対して地方財政措置が講じられています。また,文部科学省では,学校における安全教育や安全管理の充実に資するため,教職員向け学校安全資料として,スマートフォンやSNSの普及に伴う犯罪被害(※21)や,ミサイル・テロ等,突発的に大規模な災害をもたらし得る危険が発生するような新たな危機事象など,近年の様々な安全上の課題等を踏まえ,学校が危機管理マニュアル作成の手引となる参考資料「学校の危機管理マニュアルの作成の手引」(平成30年2月)等の活用を促しています。
 また,学校の管理下で発生した様々な事故の教訓を踏まえ,平成26年度から27年度にかけて開催された「学校事故対応に関する調査研究」有識者会議での議論に基づき,事故後の対応の在り方や再発防止に関する「学校事故対応に関する指針」を28年3月に取りまとめ(※22),学校等における適切な対応を促しています。
 さらに,熱中症事故を防止するため,毎年暑くなり始める前の5月と熱中症救急搬送者数の多い7月を中心に各種通知の発出やメールマガジン,文部科学省ホームページ等により熱中症に対する注意喚起を行っています。


  • ※21 青少年を有害情報から守るための取組については参照:第 2 部第11章第 1 節7
  • ※22 参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1369565.htm

(3)地域ぐるみで子供の安全を守る環境整

 備学校内のみでなく登下校時を含めた子供の安全を確保するためには,地域社会全体で子供の安全を見守る体制の整備が必要です。
 登下校の安全を確保するため,これまでも学校,教育委員会,道路管理者,警察などの関係機関が連携して実施する通学路の交通安全対策を促すとともに,各地域における定期的な合同点検の実施や対策の改善・充実等の継続的な取組を促すなど,通学路における交通安全の確保に向けた取組を推進しており,また,平成30年5月に新潟市において下校中の児童が殺害される痛ましい事件を受け,関係省庁により取りまとめられた「登下校防犯プラン」を踏まえ,地域における連携の強化を促すとともに,防犯の観点による通学路の緊急合同点検の実施や登下校時における安全確保対策の強化に取り組んでいます。
 また,スクールガード・リーダー(※23)やスクールガード(学校安全ボランティア)を活用した地域ぐるみでの学校内外における子供の安全を見守る体制の整備に努めています。
 さらに,令和元年5月に発生した滋賀県大津市の保育園における園外活動中の事故や,神奈川県川崎市において登下校中の子供たちが殺傷された事件を踏まえて,子供の安全確保に向けた更なる対策を関係省庁と連携して早急に検討していくこととしています。


  • ※23 スクールガード・リーダー:学校等を巡回し,学校安全体制及び学校安全ボランティアの活動に対して専門的な指導を行う者

(4)実践的な安全教育の充実

 学校における安全教育においては,児童生徒等が自他の生命を尊重し,日常生活全般における安全のために必要な事柄を実践的に理解し,生涯を通じて安全な生活を送ることができるような態度や能力を養う安全教育を,生活安全・交通安全・災害安全のそれぞれの分野において行うことが重要です。特に,子供の安全を確保するためには,子供自身に危険を予測し,危険を回避する能力を育成するよう実践的な安全教育を推進する必要があります。このため文部科学省では,各種の教職員用の資料や教材を作成し,これらの活用を促しており,平成31年3月には,「第2次学校安全の推進に関する計画」や「学習指導要領」の改訂を踏まえるとともに,東日本大震災を踏まえた防災教育資料「『生きる力』を育む防災教育の展開」と合わせた資料として,学校安全の総合的な参考資料である「『生きる力』をはぐくむ学校での安全教育」を改訂して,各学校等に配布しています。また,「学校安全総合支援事業」において,セーフティプロモーションスクール(※24)等の先進事例を参考とするなどして,学校安全の組織的取組と外部専門家の活用を進めるとともに,各自治体内での国立・私立を含む学校間の連携を促進する取組等を支援しています。
 さらに,各地方公共団体や学校において,学校安全を推進する上で必要な情報や優れた取組事例を参考にできるよう,文部科学省や各地方公共団体が作成した資料等を掲載した学校安全ポータルサイト(※25)を開設し,平成28年4月から運用しています。


  • ※24 セーフティプロモーションスクール:学校が,地域の学校安全関係者や関係機関等と連携・協力し,PDCAサイクルに基づき,学校安全計画の評価やその評価を次年度計画へ反映させるなど,安全推進の取組を継続的に実践する学校を大阪教育大学が認証する取組
  • ※25 参照:https://anzenkyouiku.mext.go.jp/

第13節 きめ細かで質の高い教育に対応するための教職員等の指導体制の整備

1 教師の資質能力の向上

(1)教師の養成・採用・研修の一体的な取組

 我が国の未来を担う子供たちへの教育の充実には,教育の直接の担い手である教師の資質の向上が不可欠です。教師には,これからの時代に求められる質の高い学びを実現するとともに,複雑化する教育課題に適切に対処するための指導力の向上が求められており,そのためには,教師自身が教職生涯にわたり学び続けていくことが必要です。一方で,近年,教師の大量退職・大量採用等によって教師の年齢構成や経験年数に不均衡が生じていることや,主に教師の養成を担う大学と主に研修を担う教育委員会等の連携が不十分であることなどの課題が挙げられていました。
 こうした状況を受け,平成28年11月に教育公務員特例法等の一部改正を行い,教育委員会と大学等の連携・協働を強化しつつ,教師の養成・採用・研修の各段階を通じてキャリアステージに応じた資質の向上を図る体制の整備に取り組んだところです。

1.教師の養成における取組

 教師の資質能力の向上において,教員免許状を得るための教職課程の在り方は大変重要です。文部科学省では,平成29年11月に教育職員免許法施行規則を改正し,小学校教諭に係る外国語(英語),ICTを活用した指導法,特別支援教育等について必修化・内容の充実化を図りました。これを受け,30年度,特別支援学校教諭免許状の課程を除く全ての教職課程は,これらに対応する授業科目や専任教員などの体制を整えて,改めて文部科学大臣の認定を受けました(※26)。これにより,31年4月以降に入学する学生は,改正後の新しいカリキュラムを大学等で学び,教員免許状を取得することとなります。
 また,近年の急速なグローバル化の進展及び情報通信技術の発達という状況の変化に鑑みて,国際的な視野を持つ教師を育成することを目的として,平成30年12月に教育職員免許法施行規則を改正し,31年4月以降は,文部科学大臣が小学校,中学校又は高等学校と同等の教育課程を有するものとして認定した在外教育施設において教育実習を実施できることとしました。
 このほか,免許外教科担任制度について,平成29年12月に設置した「免許外教科担任制度の在り方に関する調査研究協力者会議」における議論を踏まえ,免許外教科担任の許可件数の更なる縮小と,許可が行われる場合の教育の質の向上を図るため,「免許外教科担任の許可等に関する指針」を作成しました(※27)。
 また,「教員の養成・採用・研修の一体的改革推進事業」を実施しており,新たな教育課題に対応するための科目を教職課程に位置付けるための枠組みの構築に向けた取組や,教科教育に関して修得すべき資質能力の詳細を明らかにするためのコアカリキュラムの研究等を支援しています。


  • ※26 当該認定は,平成31年1月25日の中央教育審議会答申に基づいて行われました(平成30年8月2日に中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会において諮問,同部会の専門家の委員により,授業科目や担当教員等について審査)。 当該答申により,教職課程の認定がなされた大学等は以下のとおり。
    〈大学等数〉合計836大学
    (※大学に大学院,大学専攻科,教職特別課程を併設している場合,及び,短期大学に短期大学専攻科を併設している大学は1 大学と計上。)
    〈教職課程数〉合計18,766課程
    (※幼稚園689課程,小学校486課程,中学校6,786課程,高等学校10,325課程,養護教諭247課程,栄養教諭233課程)
  • ※27 参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/1410441.htm

2.教師の採用における取組

 文部科学省では,真に教師としての適性を有する人材の確保の観点から,各都道府県教育委員会等における採用選考の改善を促しています。都道府県教育委員会等では,学力試験の成績だけでなく,面接試験や実技試験の実施,受験年齢制限の緩和,様々な社会経験を適切に評価する特別の選考等を通じて,人物評価を重視する方向で採用選考方法が改善されています。個性豊かで多様な人材を確保するため,教職経験や民間企業等での勤務経験を有する者,英語に関する資格を持つ者,スポーツ・芸術での技能や実績を持つ者等を対象とした特別の選考などが実施されています。(図表2‐4‐14)。

 図表2‐4‐14 平成29年度実施公立学校教員採用選考実施方法等

 また,試験問題,解答,配点,選考基準の公表や,成績の本人開示など,採用選考の透明性を高めるための取組,不正を防止するための取組については,全ての県市で行われています。

 なお,条件付採用期間制度(※28)を適正に運用し,新規採用者の教師としての適格性を見極めるよう,各教育委員会の取組を促進しています。
 優れた社会経験のある者を学校現場に迎え入れるための取組としては,上記の民間企業等での勤務経験を有する者を対象とした社会人特別選抜のほか,特別免許状(※29)を授与し,教諭の職に就くことができる制度が整備されており,都道府県教育委員会等が行う採用選考において,特別免許状の授与を前提とした社会人選考も行われています。
 さらに,幅広い経験を持ち,優れた知識や技術などを持っている社会人や地域住民が,様々な形で学校教育に参加することも,学校教育の多様化・活性化を図るために極めて重要です。現在,教員免許状を取得していなくとも,各教科や総合的な学習の時間の一部などを担当することができる特別非常勤講師制度の活用が広がっており,平成29年度の活用件数は,全国で2万376件となっています。
 文部科学省では,こうした特別非常勤講師や特別免許状の利用を促すため,各都道府県での活用事例を集めた「特別免許状等の活用に関する事例集」を平成29年3月に作成し,各都道府県に配布して周知しています(※30)。
 また,近年では,ALTやICT支援員,特別支援教育支援員等の,教員免許状を持たない外部人材との協働も活発に行われています。
 このほか,「教員の養成・採用・研修の一体的改革推進事業」において,特別免許状などの制度を活用した専門人材の登用を支える仕組みの構築を支援するとともに,新規採用の教師の円滑な入職のため,都道府県教育委員会等が教師志望者を対象として,入職前に実践的な研修や学校現場体験の機会を設ける,いわゆる「教師塾」を実施し,大学と連携したプログラムの開発や効果検証を行う取組を支援しています。


  • ※28 採用選考において一定の能力実証を得た者について真に実務への適応能力があるかどうかを見極める制度であり,児童生徒の教育に直接携わる教諭・助教諭・講師については,その職務の専門性等から特に,条件付採用期間が1年間とされ,かつ,その間に初任者研修を受けることとなっています。
  • ※29 授与権者(都道府県教育委員会)の行う教育職員検定により学校種及び教科ごとに授与する「教諭」の免許状(免許状は10年間有効。更新可。)。平成元年度から平成29年度までの累計授与件数は,1,270件。
  • ※30 参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoin/katsuyou/1385308.htm

3.教師の研修における取組

 教師には,その職責を遂行するため絶えず研究と修養に努めることが求められており,様々な研修が実施されています。
 教職員支援機構(NITS)では,各地域で学校教育において中心的な役割を担う校長・副校長・教頭・中堅教師・事務職員等に対する学校経営研修や,いじめ・道徳教育などの喫緊の重要課題について地方公共団体が行う研修の講師や企画・立案などを担う指導者を養成するための研修等により,地域の中核となるリーダーを養成しています。
 新学習指導要領の円滑な実施も支援しています。小学校等の学習指導要領の改訂のポイントを説明した動画をインターネット上の動画配信サイトを利用して,教科ごとに提供しています。また,アクティブ・ラーニングに関する指導方法等を充実させるため,全国6会場でセミナーを開催するとともに,機構のホームページでは,主体的・対話的で深い学びの観点からの授業改善に取り組んでいる「授業実践事例200事例」,授業改善につなげるための「研修プログラムモデル」を提供しています。各教育委員会主催研修等へは講師派遣を行っています。
 多様な研修機会の提供にも努めています。職務多忙等から,職場を離れての研修参加が困難な状況にある教師等に対して,20分の講義動画を「校内研修シリーズ」として87タイトル提供しています。
 また,学校に共通する課題は多く,経験やノウハウを共有することで新たな展開が期待できることから,全国の学校等が課題解決に向けて実践した活動を募集し,表彰する「NITS大賞」を実施しました。第2回となる平成30年度は,86点の応募があり,優秀賞10点の中から,大賞に石巻市立万石浦中学校が選ばれました。受賞者による発表動画15本と,全応募シートを教職員支援機構のウェブサイトに掲載するとともに,優秀賞受賞作品をまとめた事例冊子を発行し,全国の優れた取組を共有しました。
 また,公立の小学校等の校長及び教員としての資質の向上に関する指標について,相談窓口にて専門的な助言を行うとともに,全国を俯瞰し特色を分析した結果,先進的な取組等について情報提供を行いました。
 さらに,教育委員会等の研修企画担当者を対象として,研修企画セミナーを実施したほか,調査研究の成果報告会を開催し,5つの調査研究プロジェクトの報告書を配付するとともに,成果発表動画を教職員支援機構のホームページで提供しました。
 これらに加えて都道府県教育委員会等においては,教師がその経験,能力,専門分野等に応じて必要な研修を受けることができるよう,初任者研修,中堅教諭等資質向上研修,長期社会体験研修,大学院等派遣研修等が行われています。

 大賞を受した宮城県石巻市立万石浦中学校の小山晴美教諭(左)と教職員支援機構の高岡信也理事長
 大賞を受した宮城県石巻市立万石浦中学校の小山晴美教諭(左)と教職員支援機構の高岡信也理事長

(2)人事評価と優秀教職員表彰,指導が不適切な教員への対応

1.人事評価に関する取組

 人事評価については,組織的な取組,業務改善,地域との協働について評価するなど学校組織全体の総合力を向上させる工夫や,教職員自身による特長や課題の認識,面談等における管理職との認識共有を通じて人材育成に資する工夫を行うなど,一層の改善充実に努めることが重要です。
 平成26年5月,地方公務員について,人事評価制度の導入等によって能力及び実績に基づく人事管理の徹底を図ること等を目的として,「地方公務員法」の一部が改正され,28年4月1日から施行されました。
 従来,教育公務員を含む地方公務員の勤務評定については,「地方公務員法」第40条等に基づき,任命権者たる教育委員会が,職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い,その評定の結果に応じた措置を講ずることとされていましたが,この法改正により,勤務成績の評定に代わり,職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行われる人事評価制度が導入されることになったものです。人事評価制度においては,能力・業績の両面からの評価により実施され,評価基準の明示や自己申告,面談,評価結果の開示などの仕組みにより客観性等を確保しつつ,評価結果が任用,給与,分限その他の人事管理にも活用されることとなりました。
 文部科学省では,これまでも,評価結果を人事,給与,優秀教職員表彰,当該教職員の資質能力の向上に必要な研修機会の付与等に活用するよう促してきました。現在も各教育委員会において,既に能力評価や業績評価等による人事評価が実施され,評価結果が適切に活用されています。文部科学省では,各教育委員会に対して,地方公務員法の趣旨にのっとり,教職員評価を活用した人事管理に一層努めるよう促しています。

2.優秀教職員表彰に関する取組

 優秀な教職員を表彰することは,当該教職員の意欲の向上とさらなる活躍につながるとともに,教職員の模範となることを通して,他の教職員の意欲及び資質能力の向上に資するものであり,学校教育全体の活性化を図るための重要な取組の一つです。文部科学省においても,平成18年度から文部科学大臣優秀教職員表彰を実施してきました。28年度には,個人に加え教職員組織も表彰の対象に加えたほか,勤務環境の改善等における顕著な成果についても表彰することとし,30年度からは推薦候補の働き方も含めて他の教職員の模範となるような実践による成果に基づく推薦を各推薦者に求めたところです。30年度の被表彰者については,全国の国公私立学校の現職の教職員のうち,学校教育における教育実践等に顕著な成果を上げた者や教職員組織の中から,都道府県・指定都市教育委員会などが候補者を推薦し,773人の教職員と46の教職員組織が表彰されました。

3.指導が不適切な教員への対応

 教員の指導は,心身ともに発達段階にある児童生徒に大きな影響を及ぼすものであることから,指導が不適切な教員が児童生徒の指導に当たることがないようにしなければなりません。指導が不適切な教員の認定及び指導改善研修等の実施に当たっては,人事評価の結果を活用するとともに,文部科学省が取りまとめた「指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン(平成20年2月8日)」などを踏まえて,公正かつ適正に実施するよう,引き続き各教育委員会を促していきます。
 また,指導が不適切であるとの認定までには至らないものの,指導に課題があるとされた教員については,その資質能力の向上のための対策に取り組むほか,条件附採用制度を適切に運用するなどして,人事管理システムの公正かつ適正な運用に努めるよう,各教育委員会を促しています。(図表2‐4‐15)

 図表2‐4‐15 指導が不適切な教員の認定者数等について

(3)非違行為を行う教職員に対する厳正な対処

 わいせつ行為や体罰などの非違行為は,それ自体許されないものであるだけでなく,教職員に対する信頼,ひいては学校教育全体に対する信頼を著しく損なうものです。
 体罰事案については,各教育委員会において引き続き,体罰の未然防止,徹底した実態把握及び早期対応に努めるとともに,体罰を行ったと判断された教職員については,客観的な事実関係に基づき厳正な処分などを行うよう促しています。特に,児童生徒に傷害を負わせるような体罰を行った場合,児童生徒への体罰を常習的に行っていた場合,体罰を起こした教職員が体罰を行った事実を隠蔽した場合,特別な支援を要する児童生徒に体罰を行った場合などについては,より厳重な処分を行うよう各教育委員会に対し指導しています。
 また,児童生徒に対するわいせつ行為などについては,教職員として絶対に許されないものであり,各教育委員会において対策を強化するとともに,こうした非違行為があった場合には,原則として懲戒免職とするなど,厳正な対応をするよう指導しています。あわせて,文部科学省では,各教育委員会に対して,懲戒処分全般の基準を作成することや,処分事案について,児童生徒などのプライバシー保護に十分配慮しつつ,できるだけ詳しい内容を公表するよう指導し,教職員の服務規律の一層の確保を促しています(図表2‐4‐16)。

 図表2‐4‐16 公立学校教育職員に係る懲戒処分等の状況について(平成29年度)

(4)教職員のメンタルヘルスの保持

 学校教育は教職員と児童生徒との人格的な触れ合いを通じて行われるものであり,教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることが重要です。しかし,公立学校の教職員の精神疾患による病気休職者数は,平成29年度においては5,077人と,19年度以降,5,000人前後で推移していることから,教職員のメンタルヘルス対策の充実・推進を図ることが喫緊の課題です(図表2‐4‐17)。
 平成25年3月に取りまとめられた「教職員のメンタルヘルス対策検討会議」の最終まとめでは,教職員のメンタルヘルス対策は,人事や学校運営と関連付けて,効果的・効率的に取り組むことが重要であり,教職員本人のセルフケア,校長等のラインによるケア,教職員が心身ともに健康を維持して教育に携わることができるような良好な職場環境・雰囲気の醸成等も含めた予防的な取組を推進することが必要であるとされています。それとともに,教職員が復職する際に,心身の快復状況に加え,授業等の業務を滞りなく行えるか等の本人の状況,産業医・嘱託精神科医等の意見などを踏まえ,教育委員会において慎重に判断することや,復職後の経過措置も含めた復職支援の充実を連携させて取り組むことが必要であるとされています。
 また,平成31年1月に中央教育審議会で取りまとめられた「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」においても,教育委員会や校長等は,労働安全衛生の観点から,ストレスチェックの実施や教職員への研修等,必要な対策を講じることとされています。
 文部科学省では,これらを踏まえ,教職員のメンタルヘルス対策の充実・推進について一層積極的に取り組むよう,各教育委員会に対して指導しています。

 図表2‐4‐17 公立学校教育職員の病気休職者数の推移

(5)民間人校長,民間人副校長・教頭制度の活用

 文部科学省では,地域や学校の実情に応じ,学校の内外から幅広く優秀な管理職を登用することができるよう,平成12年に校長の資格要件を緩和し,教員免許を持たず,教育に関する職に就いた経験のない者であっても校長に登用できることとしています(副校長については20年の設置時から,教頭については18年からそれぞれ可能となっています。)。
 これらの資格要件の緩和により,平成30年4月1日現在,全国の公立学校における教員出身でない校長の在職者数は116人,教員出身でない副校長・教頭の在職者数は118人となっています。

2 新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革のための指導・運営体制の構築

(1)学級編制と教職員定数

 国は,教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため,公立の小学校,中学校,義務教育学校,高等学校,中等教育学校及び特別支援学校における1学級の児童生徒数(学級編制)や教職員の配置(教職員定数)の「標準」を法律(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和33年法律第116号。以下,「義務標準法」という。)及び公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(昭和36年法律第188号))で定めています。公立の小・中学校の学級編制の標準は,現在,1学級40人(平成23年度から小学校第1学年は35人)となっており,各都道府県教育委員会は,これを標準として学級編制の基準を設定し,各市(指定都市を除く。)町村教育委員会は,都道府県が定める基準を踏まえ,学校の児童生徒の実態に応じ,柔軟に学級編制を行っています。また,指定都市教育委員会は,国が定める標準を踏まえ,学校の児童生徒の実態に応じ,柔軟に学級編制を行っています。
 なお,地域の実情や児童生徒の実態に応じた柔軟な対応が可能となるよう,各都道府県教育委員会の判断で,国の標準よりも少人数の学級編制基準を定めることが可能となっています。
 平成30年度は,63の都道府県・指定都市において国の学級編制の標準を下回る学級編制の取組が実施されています(図表2‐4‐18)。

 図表2‐4‐18 平成30年度において国の標準を下回る「学級編制基準の弾力的運用」を実施する都道府県・指定都市の状況について

 文部科学省では,少人数教育の推進,いじめ問題や特別支援教育の充実といった様々な教育上の課題に対応するため,これまで幾次にもわたって学級編制の標準や教職員定数の改善を重ねてきました。平成29年3月には義務標準法を改正し,これまで加配定数で措置していた定数の一部の基礎定数化を次のとおり実施しています。

  1. 障害に応じた特別の指導(通級による指導)の対象児童生徒13人に1人
  2. 外国人児童生徒等教育の対象児童生徒18人に1人
  3. 初任者研修の対象教員6人に対して1人
  4. 指導方法工夫改善加配のうち少人数教育の取組が定着している部分の約9,500人

 このうち,1.から3.については,令和8年度までの10年間で計画的に進めていくこととしており,この基礎定数化により,地方公共団体は,安定的・計画的な採用・研修・配置が行いやすくなるとともに,発達障害や日本語に課題のある児童生徒に対するきめ細かな指導の充実や,教員の質の向上に必要な研修体制の充実が図られるものと考えています。
 また,令和元年度予算においては,新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革を目指し,学校における指導・運営体制の効果的な強化・充実を図るため,小学校外国語教育の早期化・教科化に伴い,一定の英語力を有し,質の高い教育を行う専科指導教員の充実や中学校における生徒指導体制の強化に必要な教員の充実などに必要な教職員定数の改善(1,456人)を計上しています。
 さらに,いじめ・不登校,子供の貧困等の学校の課題に対応するための指導体制の在り方など,教育政策の効果を評価するため,平成28年度から,有識者や意欲ある地方公共団体の協力を得つつ,教育政策の形成に関する実証研究を実施しています。
 このほか,退職教職員や教員志望の大学生など多彩な人材がサポートスタッフとして学校の教育活動に参画する取組を支援する「補習等のための指導員等派遣事業」において,「学力向上を目的とした学校教育活動支援」(約7,700人)に加え,「スクール・サポート・スタッフ」の配置(約3,600人)や「中学校における部活動指導員」の配置(約4,500人)に係る予算を計上し,学校全体として指導体制を充実することとしています。

(2)義務教育費国庫負担制度

1.義務教育費国庫負担制度

 国は,教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため,「義務教育費国庫負担法」に基づき,義務教育に必要な経費の大半を占める教職員給与費について,原則,都道府県・指定都市が負担した実支出額の3分の1を負担しています(義務教育費国庫負担制度)。これによって,地方公共団体の財政状況にかかわらず,全国どの地域においても,教職員給与費を安定的に確保することが可能となっています。また,義務教育費国庫負担金の総額の範囲内で給与額や教職員配置に関する地方の自由度を大幅に拡大した「総額裁量制」の下で,教員を増員して少人数学級を導入するなど地域や学校の実情を踏まえた特色ある教育がより一層展開できるようになっています。

2.教員の給与

 教員の給与は,「学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法」(いわゆる「人材確保法」)によって,一般の公務員の給与より優遇されています。昭和55年の時点では,教員の給与は,一般行政職の公務員の給与と月額で比較して7%以上優遇されていましたが,その後,この優位性は年々減少しています。文部科学省では,人材確保法の初心に立ち返り,教員の処遇を確保するとともに,勤務状況を踏まえた処遇の在り方について検討してまいります。

(3)チームとしての学校の実現に向けて

 子供を取り巻く課題は複雑化・多様化しており,こうした課題に対応していくためには,組織として教育活動に取り組む「チームとしての学校」体制を創り上げ,学校の機能を強化していくことが必要です。文部科学省では,平成27年12月に中央教育審議会で取りまとめられた「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」で提言された三つの視点に沿って,引き続き,「チームとしての学校」の実現に取り組んでまいります。
 教師が,学校や子供たちの実態を踏まえ,学習指導や生徒指導等に取り組むためには,指導体制の充実が必要です。加えて,心理や福祉等の専門性を有するスタッフについて,学校の職員として,職務内容等を明確化し,質の確保と配置の充実を進める必要があります。具体的には,新学習指導要領の円滑な実施や,いじめ・不登校への対応強化などに必要な教職員定数の拡充を進めてまいります。また,平成29年4月からスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー,部活動の引率等を単独で行うことができる部活動指導員を法令上に位置付けました。文部科学省としては,その配置に係る支援を行うことで,配置を促進していくこととしております。
 専門性に基づく「チームとしての学校」が機能するためには,校長のリーダーシップが重要であり,学校のマネジメント機能を今まで以上に強化していくことが求められます。そのためには,優秀な管理職を確保するための取組や,事務機能の強化など校長のマネジメント体制を支える仕組みを充実することが求められており,引き続き,取組を進めてまいります。また,平成29年4月には,学校事務職員がより主体的・積極的に校務運営に参画することを目指し,その職務規定を見直したほか,学校の事務機能強化を推進するため,共同学校事務室の制度を法令上明確化しました。
 教職員がそれぞれの力を発揮し,伸ばしていくことができるようにするためには,人材育成の充実や業務改善の取組を進めることが重要です。具体的には,人事評価結果の処遇や研修への適切な反映や,小規模市町村において,専門的な指導・助言を行う指導主事の配置充実等に取り組んでまいります。また,平成31年1月に中央教育審議会で取りまとめられた「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」等を踏まえ,業務の役割分担・適正化や多様な主体との連携,必要な人材の確保等,「チームとしての学校」の機能強化に着実に取り組んでまいります。

第14節 生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の振興

1 幼児教育の無償化に向けた取組

 幼児期の教育は,生涯にわたる人格形成の基礎を培うものであり,子供たちに質の高い幼児教育の機会を保障することは極めて重要です。また,20代や30代の若い世代が理想の子供数を持たない理由は,「子育てや教育にお金がかかり過ぎるから」が最大の理由となっており,幼児教育の無償化をはじめとする負担軽減措置を講じることは,重要な少子化対策の1つです。
 文部科学省では,これまで幼稚園に通う園児の保護者に対する経済的負担の軽減や公私立幼稚園間における保護者負担の較差の是正を図ることを目的として,保育料を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して,幼稚園就園奨励費補助金によりその所要経費の一部を国庫補助し,この拡大を通じて幼児教育の無償化を段階的に進めてまいりました。
 平成29年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」及び30年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」において,「人づくり革命」の一環として,幼児教育の無償化等の教費育負担の軽減について盛り込まれ,30年12月には「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」が関係閣僚合意され,3歳から5歳までの子供たちの幼稚園,保育所,認定こども園等の費用を無償化すること等の,具体的な制度設計に向けた方針が示されました。同方針を踏まえ,子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案が第198回通常国会に提出され,令和元年5月10日に成立し,同年10月から全面的な無償化措置が実施することとしています。
 幼児教育の無償化では,幼稚園,保育所,認定こども園等に通う3歳から5歳までの子供たちの利用料を無償化するとともに,子ども・子育て支援新制度の対象とならない幼稚園については,月額2.57万円(国立大学附属幼稚園については0.87万円,国立特別支援学校幼稚部については0.04万円)までを上限として無償化することとしています。0歳から2歳までの子供たちについては,前述の施設を利用する住民税非課税世帯を対象として無償化することとしています。
 また,幼稚園の預かり保育を利用する子供たちについては,保育の必要性があると認定を受けた場合には,幼稚園保育料の無償化に加え,利用実態に応じて,認可保育所における利用料の全国平均額(月額3.7万円)との差額である月額1.13万円までの範囲で預かり保育の利用料を無償化することとしています。

2幼稚園の教育活動・教育環境の充実

(1)幼稚園教育の現状

 幼稚園は,満3歳から小学校就学前までの幼児であれば,誰でも入園することができる学校であり,我が国の幼児教育の中核としての役割を担っています。平成30年5月1日現在,全国で1万474園の幼稚園があり,約121万人の幼児が在園しています(図表2‐4‐19,図表2‐4‐20)。

 図表2‐4‐19 幼稚園数及び幼稚園児数等

 図表2‐4‐20 幼保連携型認定こども園数及び園児数

(2)幼児教育の質の向上

 幼児教育の重要性にかんがみ,平成18年に改正された「教育基本法」においては,国や地方が幼児期の教育の振興に努めることが定められ,19年に改正された「学校教育法」においては,幼稚園が義務教育及びその後の教育の基礎を培う学校であることが明記されました。
 幼稚園教育要領は,全国的に一定の教育水準を確保するとともに,幼稚園が編成する教育課程等の大綱基準として,国が「学校教育法」に基づいて定めるものです。子供の育ちの変化や社会の変化に対応して,おおむね10年ごとに見直しが行われており平成29年3月に新しい幼稚園教育要領が公示され,30年4月から実施されています。新しい幼稚園教育要領においては,5領域(「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」)のねらい及び内容に基づく活動全体によって育む幼稚園教育において育みたい資質・能力(「知識及び技能の基礎」,「思考力,判断力,表現力の基礎」,「学びに向かう力,人間性等」)を明確化しました。また「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を明確化し,小学校の教師と共有することにより,幼児期の教育と小学校教育の接続の更なる推進を目指しています。その他,幼児一人一人のよさや可能性を把握するなど幼児理解に基づいた評価の実施や,障害のある幼児や海外から帰国した幼児など特別な配慮を必要とする幼児への指導の充実などが図られています。30年度においては,新しい幼稚園教育要領について国及び都道府県における協議会で理解推進を図ったほか,新しい幼稚園教育要領の内容を踏まえた指導方法等に関する調査研究事業などを実施しました。
 また,文部科学省では,「幼稚園における学校評価ガイドライン〔平成23年11月改訂〕」を示し,幼稚園の特性に応じた学校評価を推進することによって幼稚園教育の質の向上を図っています。
 さらに,幼児教育の質の向上に向けた体制を整備するため,平成28年4月,国・地方公共団体が幼児教育振興策の政策立案を行う上で必要となる基礎データの収集・分析や政策効果に関する研究を行うための国の調査研究拠点として,国立教育政策研究所内に「幼児教育研究センター」を設置しました。また,同年度から,都道府県や市町村において研修等の拠点となる幼児教育センターの設置や,各園を巡回して助言等にあたる幼児教育アドバイザーの配置などにより,地方公共団体における幼児教育の推進体制を構築するためのモデル事業を実施しました。

3 子ども・子育て支援新制度

(1)子ども・子育て支援新制度の概要

 子ども・子育て支援新制度(以下「新制度」という。)は,「子どもの最善の利益」が実現される社会を目指すという考え方の下,全ての子ども・子育て家庭を対象に,幼児期の学校教育・保育,地域の子ども・子育て支援の「量の拡充」と「質の向上」を進めていくために創設され,平成27年4月に開始しました。
 この制度のポイントは,幼稚園・保育所・認定こども園に対する財政支援の仕組みを統一(「施設型給付」を創設)し,施設の類型や規模にかかわらず安定した経営となるようにしたことや,幼保連携型認定こども園について認可・指導監督を一本化するなど認定こども園制度を改善したことなどが挙げられます。
 新制度は,従前の私立幼稚園に関する諸制度(私学助成等)と大きく異なる部分もあることから,私立幼稚園については,地域の実情や収支の見通し等を踏まえて,自由に新制度への移行を選択できることになっています。また,私立幼稚園が新制度に移行する際には,1.幼稚園のまま移行するか,2.保育機能を付加した認定こども園(「幼保連携型」又は「幼稚園型))となって移行するかを選ぶことになります。(図表2‐4‐21)。
 平成30年度までに,全私立幼稚園(7,804園)中,41.9%(3,271園)が新制度に移行し,令和元年度までには更に541園増の,48.8%(3,812園)の幼稚園が移行する見込みです。(図表2‐4‐22)
 文部科学省では,内閣府等と連携しつつ,移行を希望する園が円滑に移行できるよう環境整備を行うこととしており,幼稚園が有する移行への懸案事項を踏まえて様々な取組を行ってきました。例えば,1.移行後の収入面の不安への対応として,大規模園における加算の充実や公定価格試算ソフトの改善等,2.事務負担の増大への懸念への対応として,移行準備に係る事務経費の補助の創設や大規模園における事務職員の配置の充実等,円滑な移行に向けた環境を整えてきました。これらの取組により,移行した園からは,「収入が増加し経営面でも安定した」,「職員数の増加や職員の処遇改善につながった」等の声も多く聞こえています。さらに,平成29年度においては,より質の高い幼児教育の実現に向けて,一人ひとりの幼稚園教諭等が自らのキャリアパスを描きながら長く働くことができるよう,1.全職員を対象とした更なる「質の向上」の一環としての2%の処遇改善,2.技能・経験を積んだ職員に対する追加的な処遇改善(中核リーダー・専門リーダー:4万円,若手リーダー:5千円)等を実施しました。また,幼稚園における待機児童の受入れ促進等を図るため,長時間及び長期休業期間中の預かりに係る補助の充実や幼稚園のまま保育を必要とする2歳児を定期的に預かる仕組みの創設等を行いました。

 図表2‐4‐21 新制度実施後の私立幼稚園の選択肢

 図表2‐4‐22 平成30年度までに新制度に移行する私立幼稚園の施設類型

(2)令和元年度予算の内容と今後の対応方針

 令和元年度予算において,子ども・子育て支援に関する「社会保障の充実」として,7,000億円を確保し,引き続き量的拡充・質の向上を実施することとしています。また,「新しい経済政策パッケージ」に基づき,令和元年10月に予定される消費税率10%への引き上げによる財源を活用し,これまで行ってきた処遇改善に加え,新たに1%の処遇改善を行っています。
 さらに,幼稚園における待機児童の受入れを更に促進するため,預かり保育の長時間及び長期休業中の預かりに係る補助の充実を行っております。
 文部科学省では,移行を希望する園が円滑に移行することができるよう,今後とも,制度全般やこれまでの対応等に関する周知を継続するとともに,事業者・地方公共団体の意見・要望を丁寧に受け止めながら,必要な制度・運用の改善に努めていきます。

第15節 障害のある子供一人一人のニーズに応じた特別支援教育の推進

1 特別支援教育をめぐる現状

 障害のある子供については,その能力や可能性を最大限に伸ばし,自立し社会参加するために必要な力を培うため,一人一人の教育的ニーズに応じ,多様な学びの場において適切な指導を行うとともに,必要な支援を行う必要があります。現在,特別支援学校や小・中学校の特別支援学級,障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導(※31)」)においては,特別の教育課程や少人数の学級編制の下,特別な配慮により作成された教科書,専門的な知識・経験のある教職員,障害に配慮した施設・設備等を活用して指導が行われています。特別支援教育は,発達障害も含めて,特別な支援を必要とする子供が在籍する全ての学校において実施されるものであり,通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対しても,合理的配慮の提供を行いながら,必要な支援を行う必要があります。
 平成29年5月1日現在,特別支援学校に在籍している幼児児童生徒と,小・中学校の特別支援学級及び小・中学校及び高等学校において通級による指導を受けている児童生徒の総数は約49万人です。このうち,義務教育段階の児童生徒は約41万7,000人であり,これは同じ年齢段階にある児童生徒全体の約4.2%に当たります(図表2‐4‐23)。特別支援学校に在籍している幼児児童生徒と,小・中学校の特別支援学級及び通級による指導を受けている児童生徒は年々増加しています。

 図表2‐4‐23 特別支援教育の概念図(義務教育段階)


  • ※31 通級による指導:小・中学校及び高等学校の通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対して,ほとんどの授業(主として各教科などの指導)を通常の学級で行いながら,一部の授業について障害に基づく種々の困難の改善・克服に必要な特別の指導を特別の場で行う指導形態。対象とする障害種は,言語障害,自閉症,情緒障害,弱視,難聴,LD,ADHD,肢体不自由及び病弱・身体虚弱。

2 多様な学びの場の整備

(1)特別支援教育に関する指導の充実

 障害のある子供には,特別支援学校や小・中学校の特別支援学級,通級による指導といった多様な学びの場が提供されています。平成30年度からは高等学校段階における通級による指導が開始され,30年度は45都道府県において実施,31年度からは全都道府県において実施されています。29年4月に新特別支援学校小学部・中学部学習指導要領,31年2月に新特別支援学校学習指導要領高等部を公示し,1.重複障害者である子供や知的障害者である子供の学びの連続性,2.障害の特性等に応じた指導上の配慮の充実,3.キャリア教育の充実や生涯学習への意欲向上など自立と社会参加に向けた教育等を充実させました。また,新特別支援学校学習指導要領等の円滑な実施のため,学習指導要領の趣旨を踏まえた教育課程の編成や,一人一人の障害の状態等に応じた指導方法の改善・充実について,先導的な実施研究を実施しています。
 幼稚園,小・中・高等学校における特別支援教育については,学習指導要領等において,個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成するなど個々の児童生徒等の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的・組織的に行うこととしています。また,平成30年8月には,学校教育法施行規則を一部改正し,特別支援学校に在籍する幼児児童生徒,小・中学校の特別支援学級の児童生徒及び小・中学校,高等学校において通級による指導を受けている児童生徒について,個別の教育支援計画を作成することとし,当該計画の作成に当たっては,当該児童生徒等又は保護者の意向を踏まえつつ,医療・福祉・保健・労働等の関係機関等と当該児童生徒等の支援に関する必要な情報の共有を図らなければならないこととしています。

(2)交流及び共同学習の充実

 障害のある子供と,障害のない子供や地域の人々が活動を共にすることは,全ての子供の社会性や豊かな人間性を育成する上で意義があるだけでなく,地域の人々が障害のある子供に対する正しい理解と認識を深める上でも重要な機会となっています。このため,幼稚園,小・中・高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等において,交流及び共同学習の機会を設ける旨が規定されているとともに,教育委員会が主体となり,学校において,各教科やスポーツ,文化・芸術活動等を通じた交流及び共同学習の機会を設けることにより,障害者理解の一層の推進を図る取組等を行っています。また,「ユニバーサルデザイン2020行動計画」(平成29年2月20日ユニバーサルデザイン2020関係閣僚会議決定)に基づき,「心のバリアフリー学習推進会議」を開催し,30年2月に交流及び共同学習の推進方策について提言を取りまとめました。提言を踏まえ,31年3月には,学校において交流及び共同学習を行う際の参考となるよう,「交流及び共同学習ガイド」の改訂を行い,幼稚園,小学校,中学校,高等学校,特別支援学校それぞれの観点からの取組事例を紹介しています。

(3)障害のある児童生徒の教科書・教材の充実

 特別支援学校の児童生徒にとっては,その障害の状態等によっては,一般に使用されている検定教科書が必ずしも適切ではない場合があり,特別な配慮の下に作成された教科書が必要となります。このため,文部科学省では,従来から,文部科学省著作の教科書として,視覚障害者用の点字版の教科書,聴覚障害者用の国語(小学部は言語指導,中学部は言語)及び音楽の教科書,知的障害者用の国語,算数(数学)及び音楽の教科書を作成しています。なお,特別支援学校及び特別支援学級においては,検定教科書又は文部科学省著作の教科書以外の図書(いわゆる「一般図書」)を教科書として使用することができます。
 また,文部科学省においては,拡大教科書など,障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等(※32)の普及を図っています。
 加えて,障害のある児童生徒の情報活用能力を育成するとともに,障害を補完し,学習を支援する補助手段として,情報通信技術(ICT)などの活用を進めることが重要であることから,文部科学省では,学習上の支援機器等教材の活用について,支援機器等教材の選定・活用に必要な指標及び学習評価方法の研究事業を実施しています。
 さらには,近年の教育の情報化に伴い,令和2年度から実施される新学習指導要領を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善や,障害等により教科書を使用して学習することが困難な児童生徒の学習上の支援のため,平成30年に学校教育法等の改正等を行い,令和元年度より,視覚障害や発達障害等の障害等により紙の教科書を使用して学習することが困難な児童生徒の学習上の困難を低減させる必要がある場合には,教育課程の全部において,紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書(※33)を使用することができることとなります。


  • ※32 教科用特定図書等:視覚障害のある児童及び生徒の学習の用に供するため検定教科書の文字,図形等を拡大して複製した図書(いわゆる「拡大教科書」),検定教科書を点字により複製した図書(いわゆる「点字教科書」),その他障害のある児童生徒の学習の用に供するために作成した教材であって検定教科書に代えて使用し得るもの。
  • ※33 学習者用デジタル教科書:紙の教科書の内容の全部(電磁的に記録することに伴って変更が必要となる内容を除く。)をそのまま記録した電磁的記録である教材。

(4)教師の専門性の向上

 平成30年5月1日現在,特別支援学校の教師の特別支援学校教諭免許状等の保有率は全体で79.8%となっており,全体として前年度と比べ2.1ポイント増加しているが,特別支援教育に関する教師の専門性の向上が一層求められている中で,専門の免許状等の保有率の向上は喫緊の課題となっています。
 このため,文部科学省では,各都道府県教育委員会等に対して,特別支援学校教諭免許状等の保有率の向上に向けて,採用,研修,配置等に当たっては免許状の保有状況を考慮することなどを要請しています。また,特別支援学校の教師の専門性を向上させることを目的として,各都道府県の教師等を対象とした研修を実施するなどの取組を行っています。

(5)自立と社会参加を推進するための職業

 教育等の充実障害者が,生涯にわたって自立し社会参加していくためには,企業などへの就労を支援し,職業的な自立を果たすことが重要です。しかし,平成30年5月1日現在,特別支援学校高等部卒業者のうち,福祉施設等入所者の割合が約61%に達する一方で,就職者の割合は約31%となっており,職業自立を図る上で厳しい状況が続いています(図表2‐4‐24)。この背景には,特別支援学校高等部卒業後の就職者数は増加しているものの,特別支援学校高等部在籍者数も大幅に増加しており,就職者の割合が微増にとどまっていることなどが挙げられます。
 障害者の就労を促進するためには,教育,福祉,医療,労働などの関係機関が一体となった施策を行う必要があります。文部科学省では,厚生労働省と連携して,都道府県教育委員会等に対し,就労支援セミナーや障害者職場実習推進事業等の労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用したり,福祉関係機関と連携を図り就労への円滑な移行を図ったりするといった取組の充実を促しています。
 また,特別支援学校高等部や高等学校等において,労働等の関係機関と連携し障害のある生徒の就労支援を行う就労支援コーディネーターの配置など福祉や労働等の関係機関と連携しながらキャリア教育・就労支援を充実するための研究に取り組んでいます。

 図表2‐4‐24 特別支援学校高等部(本科)卒業後の状況

(6)国立特別支援教育総合研究所における取組

 国立特別支援教育総合研究所は,我が国における唯一の特別支援教育のナショナルセンターとして,国の政策課題や教育現場等の喫緊の課題等に対応した研究活動を核として,各都道府県等において指導的立場に立つ教職員等を対象に,「特別支援教育専門研修」や高等学校における通級による指導などに関する「指導者研究協議会」を実施しているほか,インターネットを通じて,通常の学級の教師を含め障害のある児童生徒等の教育に携わる幅広い教師の資質向上の取組を支援するための研修講義の配信や特別支援学校の教師の免許状保有率の向上に資する免許法認定通信教育を実施しています。また,全ての学校を始めとする関係者に必要かつ有益な情報を提供するため,インターネットを活用し,発達障害に関する情報提供等を行う「発達障害教育推進センター」,合理的配慮の実践事例の掲載等を行う「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」及び支援機器等教材活用に関する様々な情報を集約した「特別支援教育教材ポータルサイト」などにより情報発信を行っています。さらに,研究成果の普及等を行う「研究所セミナー」(東京都)を開催しているほか,「教材・支援機器等展示会」(全国4か所),「発達障害地域理解啓発事業」(全国3か所)を実施するなど理解啓発活動も行っています。
 このほか,平成28年度に「インクルーシブ教育システム推進センター」を設置し,地域や学校が直面する課題を研究テーマとし,その解決を目指す「地域実践研究」,諸外国の最新情報の発信を行うとともに,障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に十分に教育を受けられるよう,一人一人の教育的ニーズに応じた多様で柔軟な仕組みの構築に関する相談支援等を通して,地域や学校における取組を強力にバックアップしています(※34)。


  • ※34 参照:http://nc.nise.go.jp/

3 地域・学校における支援体制の整備―発達障害を含む障害のある子供たちへの支援―

(1)学校における支援体制整備

 文部科学省では,障害のある子供に対する特別支援教育を充実するため,学校における体制の整備や留意事項などを示し,学校や教育委員会などの取組を促進しています(※35)。また,障害のある幼児児童生徒への支援体制の整備,巡回相談や専門家チームによる支援,研修体制の整備・実施,関係機関との連携など,支援体制整備の推進に係る経費の一部を補助しています。
 平成30年度特別支援教育体制整備等状況調査によると,小・中学校においては,「校内委員会」の設置,「特別支援教育コーディネーター」の指名といった基礎的な支援体制はほぼ整備されており,「個別の指導計画」の作成,「個別の教育支援計画」の作成についても着実な取組が進んでいます。また,幼稚園・高等学校における体制整備は進みつつあるものの,小・中学校に比べると課題が見られます(※36)。
 さらに,公立幼稚園,小・中学校及び高等学校に在籍する障害のある子供をサポートする「特別支援教育支援員」の配置に係る経費が各市町村に対して地方財政措置されています。


  • ※35 参照:https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07050101.htm
  • ※36 参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/1343888.htm

(2)切れ目ない支援体制整備(教育と福祉等の連携)

 文部科学省では,特別な支援を必要とする子供に対して,就学前から就労に至るまで,一貫した切れ目ない支援体制を整備等するため,自治体等が,(1)特別な支援を必要とする子供への就学前から学齢期,社会参加までの切れ目ない支援体制整備,(2)看護師,外部専門家の配置をする場合に要する経費の一部を補助しています。
 また,発達障害を始め障害のある子供への支援における教育と福祉の連携については,学校と障害福祉サービス事業者との相互理解の促進や,保護者も含めた情報共有の必要性が指摘されています。これを踏まえ,各自治体の教育委員会や福祉部局が主導し,支援が必要な子供やその保護者が,乳幼児期から学齢期,社会参加に至るまで,地域で切れ目なく支援が受けられるよう,文部科学省と厚生労働省では,両省連携による,家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクトを平成29年12月に発足させ,30年3月に,教育と福祉の連携を推進するための方策及び保護者支援を推進するための方策について取りまとめました。報告書には,具体的な今後の対応策として,各地方自治体において,教育委員会や福祉部局が主導し,学校と障害福祉サービス事業者との関係構築の場を設置することで教育と福祉の連携を加速させることや,相談窓口の整理を行うなど保護者支援の取組を充実させることなどを掲げています。両省では,同年5月に連名の通知を各地方自治体に対して発出し,報告書の趣旨を広く周知するとともに,自治体の好事例等も併せて示し,教育と福祉の一層の連携の推進に向けた積極的な取組を促しました。加えて,同年8月には,各自治体の福祉サービス等の情報が保護者に分かりやすく届くよう,作成・配布を求めている保護者向けのハンドブックについて,ひな型を示し,各自治体の取組を後押ししています。さらに,同年8月に,学校教育法施行規則の改正を行い,「個別の教育支援計画」の作成に当たっては,児童生徒等又はその保護者の意向を踏まえつつ,医療,福祉,保健,労働等の関係機関等と当該児童生徒等の支援に関する必要な情報の共有を図らなければならないこととしました。

(3)発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援

 文部科学省では,小・中学校,高等学校等における発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援に当たって,1.特別支援教育の視点を踏まえた学校経営構築の方法,2.学習上のつまずきなどに対する教科指導の方向性の在り方,3.通級による指導の担当教師等に対する研修体制の在り方や必要な指導方法,4.学校における児童生徒の多様な特性に応じた合理的配慮の在り方,5.学校と福祉機関との連携支援,支援内容の共有方法に関する研究を実施しています。
 また,文部科学省と厚生労働省の両省主催で「発達障害支援の地域連携に係る全国合同会議」を開催しました。

(4)医療的ケアが必要な子供に対する支援

 特別支援学校等には,日常的に医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が在籍しており,学習や生活を行う上で適切に対応する必要があります。
 現在,「社会福祉士及び介護福祉士法」に基づき,特別支援学校等の教師も一定の条件の下でたんの吸引等の医療的ケアを実施することができます。制度の開始から5年を経て,人工呼吸器の管理をはじめとした高度な医療的ケアへの対応や訪問看護師の活用など,新たな課題も見られるようになってきていることから,文部科学省では,平成29年10月に「学校における医療的ケア実施に関する検討会議」を設置し,有識者による議論をスタートさせました。この検討会議が取りまとめた「最終まとめ」を受けて,小・中学校を含む全ての学校における医療的ケアの基本的な考え方や医療的ケアを実施する際に留意すべき点等を整理し,平成31年3月に各都道府県教育委員会等に対して周知を図りました。
 文部科学省では,特別支援学校等における医療的ケアを必要とする児童生徒等の教育の充実を図るため,看護師等の配置に必要な経費の一部を補助しています。また,学校において高度な医療的ケアに対応するため,医師と連携した校内支援体制の構築や,医療的ケア実施マニュアル等の作成など,医療的ケアの実施体制の充実を図るモデル事業を実施しています。

(5)病気療養児に対する支援

 医療の進歩等による入院期間の短期化や,短期間で入退院を繰り返す者,退院後も引き続き治療や生活規制が必要なために学校への通学が困難な者への対応など,病院や自宅等で療養中の病気療養児を取り巻く環境は,近年大きく変化している。こうした状況のもと,病気療養児の教育機会を確保するとともに学習や学校生活に関する不安感を解消し円滑な復学につなげるため,遠隔教育等を活用した取組を進めています。
 小・中学校段階については,平成30年9月に通知を発出し,受信側において児童生徒の体調管理や緊急時に適切な対応を行うことができる体制を整えるなどの一定の要件の下,受信側に教科等に応じた相当の免許状を有する教師を配置せず,同時双方向型の授業配信を行った場合,校長は指導要録上出席扱いとすること及びその成果を当該教科等の評価に反映することができることとしました。
 また,高等学校段階については,一定の要件の下に行われる遠隔教育に加え,通信制課程に準じた特別の教育課程を編成すること(面接指導時間の減免のための遠隔教育・オンデマンド型の授業を含む)により単位認定をすることができる特例制度や,特別支援学校高等部の訪問教育において,遠隔教育・オンデマンド型の授業により単位認定をすることができることとする制度が設けられています。
 さらに,平成28年度から30年度までは「入院児童生徒等への教育保障体制整備事業」を実施し,令和元年度からは「高等学校段階における入院生徒に対する教育保障体制整備事業」を実施しており,在籍校・病院・教育委員会等の関係機関が連携して病気療養児を支援する体制の構築方法に関する調査研究を推進しています。

(6)就学支援

 文部科学省及び都道府県・市町村教育委員会では,障害のある児童生徒などの就学を支援するため,「特別支援学校への就学奨励に関する法律」などに基づき,特別支援教育就学奨励制度を実施しています。特別支援学校や小・中学校の特別支援学級などの就学に関する特殊事情を考慮して,保護者などの経済的負担を軽減することを目的とし,保護者等の負担能力に応じて,通学費や教科用図書購入費,寄宿舎費など特別支援学校等の就学に必要な経費の全部又は一部を負担しています。

第16節 地方教育行政の在り方と地域とともにある学校づくり

1 教育委員会制度

 教育委員会は,地方教育行政の中心的な担い手であり,地域の学校教育,社会教育,文化,スポーツなどに関する事務を担当する機関として,地域の教育行政における重要事項や基本方針を決定しています。教育委員会は,教育における政治的中立性,継続性・安定性の確保や,地域住民の多様な意向の反映を実現するため,地方公共団体の長から独立した合議制の執行機関として,全ての地方公共団体(都道府県及び市町村)に置かれています。
 従来,教育委員会制度に対しては,教育委員長と教育長の間で責任の所在が不明確であることなどの課題が指摘されており,教育再生実行会議の提言や中央教育審議会の答申を踏まえて,平成26年6月,「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」を改正し,教育委員会制度を刷新しました。
 新教育委員会制度では,教育行政の責任の明確化を図るため,教育委員会を代表する委員長と事務局を指揮監督する教育長を一本化した新たな責任者(新教育長)を設置しました。また,教育委員による新教育長へのチェック機能を強化したほか,地方公共団体の長が,教育,学術及び文化の振興に関する総合的な施策の大綱を定めることとするとともに,地方公共団体の長と教育委員会によって構成される総合教育会議を設けることとしました(図表2‐4‐25)。このほか,いじめによる自殺の防止等,児童生徒等の生命又は身体への被害の拡大又は発生を防止する必要がある場合に,文部科学大臣が教育委員会に対して指示ができることを明確にしました。改正法は,平成27年4月1日から施行されています。
 新教育長の任命状況は,平成30年9月1日時点で全体の約96%程度であり,平成30年度中には全ての地方公共団体で新教育長が任命されることとなります。
 文部科学省では,新制度への移行を踏まえ,新教育長,教育委員の資質・能力の向上を図るための研修機会の拡充等に努めているところです。

 図表2‐4‐25 教育委員会の組織

2 地域と学校の連携・協働の推進

(1)地域と学校の連携・協働のための仕組み

 第3章第3節3(1)「地域と学校の連携・協働のための仕組み」を参照。

(2)地域と学校の連携・協働の現状第3章第3節3

 (2)「地域と学校の連携・協働の現状」を参照。

第17節 少子化に対応した活力ある学校づくりの推進

 学校教育においては,児童生徒が集団の中で,多様な考えに触れ,認め合い,協力し合い,切磋琢磨(せっさたくま)することを通じて一人一人の資質や能力を伸ばしていくことが重要であり,小・中学校では一定の集団規模が確保されていることが望まれます。そのため,文部科学省では「学校教育法施行規則」及び「義務教育施設費負担法施行令」に基づき,公立小・中学校の適正規模を12学級から18学級とし,適正配置については通学距離を小学校4km以内,中学校6km以内としています。
 少子化の流れを受けて,この10年で公立小・中学校数はその1割に当たる約3,000が減少するとともに,標準規模に満たない学校が約半数存在しているのが現状です。今後,少子化の更なる進展により,学校の小規模化に伴う教育的デメリットの顕在化が懸念されています。一方,統合が困難な地理的特性や地域コミュニティの核としての学校の重要性への配慮も求められています。

1 公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引

 文部科学省では,市区町村の様々な取組を総合的に支援する一環として,学校統合により魅力ある学校づくりを行う場合,小規模校のデメリットの克服を図りつつ学校の存続を選択する場合,一旦休校とした学校を再開する場合のそれぞれの場合の検討に際しての基本的方向性や考慮すべき要素,留意点等をまとめた「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」を平成27年1月27日に公表し,全国の都道府県に通知するとともに,ウェブサイトで公表しました(※37)。
 各市区町村において,少子化に伴う学校の小規模化という課題に正面から向き合い,地域コミュニティの核となる魅力ある学校づくりが主体的に検討されることが期待されます。


  • ※37 参照:https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2015/07/24/1354768_1.pdf

2 学校規模の適正化及び少子化に対応した学校教育の充実策に関する実態調査の概要

 文部科学省では,平成26年度から隔年で,全ての地方公共団体を対象に,学校統合による学校規模の適正化や,統合困難な小規模校における教育の活性化など,各都道府県・市町村教育委員会における少子化に対応した取組の状況などについて調査(※38)を行っています。
 30年度の主な調査結果は以下のとおりです。

  • 一部の地域に過小規模の小・中学校はあるが,地理的要因や通学距離の関係上,統合困難であると回答した市町村の数は121であった。
  • 学校規模の適正化を図る上での課題や懸念に「よく当てはまる」として回答が多かったのは,保護者や地域住民との合意形成であった。
  • 小規模校のデメリットを最小化させる具体的な取組として回答が多かったのは,異学年集団での共同学習や体験学習を計画的に実施することであった。

  • ※38 参照:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tekisei/__icsFiles/afieldfile/2017/04/03/1384138_1.pdf

3 少子化に対応した活力ある学校づくりの推進

 「経済財政運営と改革の基本方針2015」に盛り込まれた「経済・財政再生計画」にのっとり改革を着実に推進するため,個別政策ごとに進捗状況及び今後の取組の進め方等を取りまとめた最新の改革工程表において,2021(令和3)年度に「学校の小規模化について対策の検討に着手している地方公共団体」の割合を100%にすることとされおり,2016(平成28)年度に58%であった学校の小規模化について対策の検討に着手している市町村の割合が,2018(平成30)年度の調査結果において79%まで上がっていることが分かりました。
 文部科学省においては,引き続き,統合による魅力ある学校づくりや統合困難な地域における教育環境の充実の取組モデルを創出するとともに,取組モデルを横展開するためのフォーラムを開催するなどして,市町村の主体的な検討や具体的な取組をきめ細かに支援していきます(図表2‐4‐26)。

 図表2‐4‐26 少子化に対応した活力ある学校教育への支援策

第18節 幼児・児童・生徒に対する経済的支援の充実

1 小学校就学前教育段階における経済的支援

 文部科学省では,幼稚園の入園料や保育料に関する経済的負担を軽減する就園奨励事業を実施している地方公共団体に対して,幼稚園就園奨励費補助金によって所要経費の一部を補助しています(※39)。


  • ※39 参照:第2部第4章第14節

2 義務教育に係る教育費負担軽減

 義務教育段階では,国公立学校の授業料,国公私立学校の教科書が無償となっていますが,これら以外にも学校生活を送るためには多くの費用が必要です。例えば,「平成28年度子供の学習費調査」によると,学用品費・遠足費・修学旅行費などの学校教育費や給食費などは,それぞれ公立小学校で年間約10万円と,公立中学校で年間約18万円となっています。
 このような費用を負担することが困難な児童生徒の保護者を経済的に支援するために,市町村が行う就学援助制度があります。
 就学援助制度とは,「学校教育法」の実施義務に基づき,各市町村が,経済的理由により小・中学校への就学が困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して,学用品の給与などの援助を行う制度です。就学援助制度の対象者は,「生活保護法」に規定する要保護者と,これに準ずる程度に困窮していると認められる準要保護者となっています。
 就学援助を受けている児童生徒の割合は依然として高止まり傾向にあり,就学援助制度は重要なものとなっています。
 市町村において実施される就学援助のうち保護者に係る所要の経費については国がその一部を補助しています。また,要保護者に準ずる程度に困窮していると認められる準要保護者に係る所要の経費については,地方財政措置が講じられています。
 平成29年度からは,小学校等についても「新入学児童生徒学用品費等」を入学前に支給できるよう制度改正を行い,各種会議や通知等で地方自治体に対して入学前支給の実施を促してきました。その結果,入学前支給の実施率は,28年度は小学校5.1%,中学校9.3%でしたが,30年7月の調査においては小学校72.8%,中学校78.6%まで拡大しました。
 平成30年10月に行われた生活保護基準の見直しにあっては,生活保護基準額が減額となる場合においても,児童生徒の就学援助に影響が及ばないよう,30年度においても,これまで援助を受けていた要保護者等を引き続き国による補助対象としました。また,地方自治体で独自に実施されている準要保護者に対する就学援助についても,できる限り影響が及ばないように対応する政府の対応方針を踏まえた対応を依頼しました。
 また,様々な事情から義務教育において私立学校を選択している一方で経済的に厳しい家庭をいかに支援できるかという観点から,平成29年度から令和3年度までの5年間,「私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業」を実施しています。具体的には,私立学校に通う年収400万円未満の世帯に属する児童生徒について,原則として年額10万円の授業料負担の軽減を行いつつ,私立学校を選択した理由や家庭の経済状況などについて実態調査を行っています。

3 高等学校段階に係る教育費負担軽減

 高校生等の修学支援として,まず,高等学校等の授業料を高等学校等就学支援金(以下,「就学支援金」という。)により支援しています。
 就学支援金は,国公私立を問わず,道府県民税所得割額及び市町村民税所得割額の合算額が50万7,000円(年収約910万円(※40))未満の世帯の生徒で,受給資格(※41)を認められた者には,公立高校の授業料相当の年額11万8,800円が就学支援金として支給されています。また,私立高校等に通う生徒の場合は,世帯所得に応じて最大2.5倍(年額29万7,000円)まで加算した額が支給されています。
 なお,平成29年12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」等により,令和2年4月から,政府全体として安定的な財源を確保しつつ,年収590万円未満世帯を対象とした私立高等学校授業料の実質無償化を実現する方針が示されており,この方針に沿って検討を進めています。
 また,低所得世帯の授業料以外の教育費負担を軽減するため,高校生等奨学給付金による支援をしています。平成30年度は,非課税世帯における給付額を増額し,制度の充実を図ったほか,新たに就学支援金及び高校生等奨学給付金について掲載したリーフレットを作成して全中学校に配布し,さらなる周知と活用促進に向け取り組みました(図表2‐4‐27)。

 図表2‐4‐27 高校生等奨学給付金の給付額(平成30年度)

 このほか,高等学校等を中途退学した者が再び学び直す際に就学支援金の支給期間を超えた場合の支援や,保護者等の失職・倒産などの家計急変により収入が激減した場合の支援,在外教育施設の日本人高校生への支援等も行っています。


  • ※40 年収は両親のうちどちらか一方が働き,高校生1人,中学生1人の4人世帯の場合の目安。
  • ※41 高等学校等に在学し,日本国内に住所を有する者で,1.高等学校等を卒業又は修了していない者,2.高等学校等に在学した期間が通算して一定期間を超えない者(全日制の場合36月)。

お問合せ先

総合教育政策局政策課

-- 登録:令和元年11月 --