新しい文部科学省の創生に向けた取組

1 文部科学省職員の事案に関する調査・検証

 この度,文部科学省の局長級幹部職員が,収賄容疑等で逮捕,起訴されるという事案が発生しました。この事案は,平成29年に起こった再就職等規制違反問題等への厳しい批判を受け止め,まさに,省改革に向けた歩みを進めていた最中に起こったものです。再び文部科学行政に対する国民の信頼を著しく損なう事態に至ったことについて猛省するとともに,国民の皆様に心よりお詫びいたします。
 今後は,文部科学省の担う重要な行政課題に,国民の十分な信託を受けつつ職員が安心して取り組み,公正な職務の遂行が果たせるよう職員一丸となって与えられた職責に全力で取り組んでいく所存です。
 以下,本事案の経緯や調査の概要について,国民の皆様に御報告いたします。

1.経緯等

 平成30年7月,文部科学省の幹部職員が平成29年度の文部科学省の公募型事業に関して受託収賄容疑で逮捕・起訴されました。また,同月,別の幹部職員が会社役員より,便宜を受けたいとの趣旨であることを知りながら飲食等の接待等を受けたとして収賄容疑で逮捕され,8月に起訴されました。この事案を踏まえ,文部科学省は8月15日に,文部科学副大臣を座長とした「文部科学省幹部職員の事案等に関する調査・検証チーム」を設置し,公募型事業の平成30年度の選定プロセスに係る調査,文部科学省職員の服務規律の遵守状況等に係る調査等を実施しました。

 ※調査報告については以下を参照:
 https://www.mext.go.jp/a_menu/other/1408375.htm

2.調査報告の概要等

(1)調査の方法

 「調査・検証チーム」は,副大臣を座長とし,客観性・第三者性を確保するため4人の外部有識者を構成員とするとともに,15名の作業チーム員(弁護士)に参画いただき,調査を実施しました。具体的には,職員の服務状況等に関して作業チームの弁護士が職員のヒアリング等を実施し,平成30年度の公募型事業に関して作業チームの弁護士が調査票の分析等を行いました。

(2)調査の概要

 職員の服務規律の遵守状況に係る調査では,会社役員との関係がある事案について,幹部職員等が供応接待を受けたなどとして,4件が国家公務員倫理規程違反について指摘を受けました。また,会社役員との関係以外の事案については,職員が1.コンペで「利害関係者」と共にゴルフをした事案,2.出張時の移動の際,「利害関係者」が利用するタクシーに料金を支払わずに同乗し役務の提供を受けた事案がそれぞれ2件ずつ国家公務員倫理規程違反について指摘を受けました。今回の調査結果を踏まえて処分等を行った職員の総数は12人となりました。
 平成30年度の公募型事業の選定プロセスに係る調査では,全642件について調査を行った結果,特定の者の恣意的な意向が反映されない制度や運用となっているかの観点から,特段問題となる事例は確認されなかったと結論づけられました。

3.再発防止に向けて

 「調査・検証チーム」からは,今後の再発防止に向けて,文部科学省内の「法令遵守の組織文化」,「国民の視点を重視する組織文化」,「風通しのいい組織文化」等の醸成など,組織としての統制環境の整備について検討する必要がある,といったことが指摘され,文部科学省では,平成30年10月30日に文部科学大臣のもと立ち上げられた文部科学省創生実行本部において,若手職員の意見もしっかり聞きながら,省一丸となって再発防止策の検討を行い,新生文部科学省の創生に向けて取り組むこととしました。

2 新しい文部科学省の創生に向けた取組

(1)文部科学省未来検討タスクフォースにおける検討

 文部科学省幹部職員の逮捕・起訴事案を契機として,職員の自発的意思による省改革の検討のため,平成30年8月に「文部科学省未来検討タスクフォース」を設置しました。本タスクフォースでは,省内公募により参画した若手・中堅職員中心の173名が,文部科学省の目指すべき姿や課題を議論し,平成30年12月,省改革に向けた報告を取りまとめました。
 報告においては,

  • 文部科学省職員の在り方,ビジョン・ミッションステートメント(基本方針)の策定
  • コンプライアンス・省改革を担う恒常的な専属組織の設置
  • 職階に応じて求められる能力(コンピテンシー)の明確化,360度評価(多面観察)の実施
  • 公募型プロジェクトチームの創設,政策コンペティションの実施
  • 事務次官を責任者とした業務改善体制の確立,省幹部による取組目標の宣言

 等を主に提案しており,本報告は「文部科学省創生実行本部」における議論に反映させるとともに,省として改革の実現に向けて可能なものから取り組んでいます。

(2)文部科学省創生実行計画の策定

 一連の不祥事を真摯に受け止めた上で,今一度,文部科学省に与えられた使命を見つめ直し,不祥事の原因を組織文化・組織風土の問題にまで遡って究明するとともに,国民に信頼される新しい文部科学省の在り方とその実行方策を検討するため,平成30年10月,文部科学大臣を本部長とし,外部有識者及び幹部職員を構成員とした「文部科学省創生実行本部」を設置しました。
 そして,前述の「文部科学省幹部職員の事案等に関する調査・検証チーム」及び「文部科学省未来検討タスクフォース」における省改革に関する提言も受け止めつつ議論を重ね,平成31年3月,「文部科学省創生実行計画」をとりまとめました。
 本計画では,不祥事の背景となったと考えられる,

  1. 法令遵守の精神,社会的影響力の自覚の欠如
  2. 健全な政策形成・実行を阻害する内向きの思考様式
  3. 硬直的な人事慣行や組織体制,縦割り意識
  4. 幹部のリーダーシップ,実効的なガバナンス体制の不備

 といった組織文化や体制に根ざす弊害を断ち切り,新たな文部科学省を創生するため,「文部科学省は,人と知の力を通じた豊かな未来の創出に貢献する」という全職員共通の基本方針を明示したほか,以下の具体的な省改革の取組について提言しました。

  1. コンプライアンス推進の専属組織として「省改革推進・コンプライアンス室」を設置するとともに,外部有識者からなる「コンプライアンスチーム」を設置することで,第三者の目も入れて不祥事を防止する内部統制環境を整備するなど組織風土改革や組織体制・ガバナンスの強化
  2. 採用区分(事務系・技術系,総合職・一般職,本省採用・転任等)や年次・年齢にとらわれない資質・能力・適性に応じた人事配置の徹底や研修の充実など文部科学省を担う人材の強化(人材育成・採用・配置等の改革)
  3. 「提案型政策形成(仮称)」の導入や現場との政策対話の促進など現場に根差した政策立案機能の強化
  4. 組織的な広報活動に向けた省内体制の整備や職員の広報意識とスキルの向上など広報機能の強化
  5. 事務次官を議長とする「業務改善実行会議(仮称)」の創設や有志職員の参画による業務改善推進体制の整備など業務改善の徹底

 また,これらの取組を継続的かつ着実に推進するため,平成31年4月に,文部科学大臣を本部長とする「文部科学省改革実行本部」を新たに設置し,アウトカム(成果)に基づく取組効果を検証し,必要に応じ,取組の支援や追加的な取組について検討を行うこととしています。
 文部科学省では,一日も早く国民の皆様からの信頼を回復するため,これらの改革にすみやかに取り組んでまいります。

 文部科学省創生実行計画概要

お問合せ先

総合教育政策局政策課

-- 登録:令和元年11月 --