刊行に寄せて

文部科学大臣 伊吹 文明

 平成18年度文部科学白書では,特集テーマとして,「教育再生への取組/文化芸術立国の実現」を取り上げました。

 戦後,日本の教育は,豊かな経済社会や安心な生活を実現する原動力となるなど,多くの成果をあげてきました。しかし,現在は,科学技術の進歩,情報化,国際化,少子高齢化など,我が国をめぐる状況が大きく変化し,様々な課題が生じています。
 こうした中,約60年ぶりの教育基本法の改正により,教育再生に向けた第一歩を踏み出しました。教育問題は国家百年の計であるだけに,その成果は,何世代か後に現れてくるものです。そのことを肝に銘じ,関連諸法の改正,教育振興基本計画の策定,必要な教育予算の充実など,様々な具体的施策に取り組むとともに,何よりも我々を含め教育に携わる者の意識改革を進め,教育新時代を切り拓いてまいります。
 私は,日本社会に受け継がれてきた良き習慣,伝統により,自由競争原理・市場経済のどうしても避けえぬ欠点を補い,自助の気概と創意工夫が生かされる,活力ある「日本の国のかたち」の形成を目指してまいりました。人間力回復の教育改革により,自由競争原理の副作用を抑え,品性ある国民による品格ある国・日本を創りあげたいと願っています。

 また,文化芸術は,人々に生きる喜びをもたらし,心豊かな人生を送るうえで大きな力となるものであり,社会に活力と潤いを与えるものです。本年2月に,第2次の「文化芸術の振興に関する基本的な方針」が閣議決定されました。この方針に基づき,文化芸術で国づくりを進める「文化芸術立国」の実現に向け,より一層戦略的に文化芸術の振興に取り組んでまいります。

 本書が国民の皆様に幅広く活用され,文教・科学技術施策全般に関し,理解を深めていただく一助となれば幸いです。

平成19年3月