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「教育は人なり」といわれるように,使命感や責任感を持ち,高い専門知識と指導力を備えた教員を確保することは,教育行政上の重要課題の一つです。最近の学校教育が抱える課題の複雑・多様化,家庭や地域社会の教育力の低下などを受け,学校や教員に対する期待は一層高まっています。一方で,いわゆる指導力不足教員の増加などを背景に,国民の教員に対する信頼は揺らぎつつあり,今後,国民や社会から信頼される学校づくりを進めていくためには,学校教育の直接の担い手である教員に質の高い優れた人材を確保することが極めて重要です。
こうした状況を踏まえ,中央教育審議会では,教員養成部会を中心に審議が行われ,平成18年7月11日に「今後の教員養成・免許制度の在り方について」(答申)を取りまとめました。
答申では,教員が国民や社会から尊敬と信頼を得られる存在となるため,以下の二つの改革の方向を示しています。
以上のような基本的な考え方に立ち,答申では,主に以下の三つの具体的方策を提言しています。
我が国では学部段階の教員養成が中心となっている現状を踏まえると,まずは既存の教職課程,特に学部段階の教員養成教育の改善・充実を図ることが重要であり,大学の学部段階の教職課程が,教員として必要な資質能力を確実に身に付けさせるものとなるためには,何よりも大学自身の教職課程の改善・充実に向けた主体的な取組が重要であるとしています。
こうした観点から,教職課程の履修を通じて,教員としての使命感や責任感を持って教科指導や生徒指導等を実践できる資質能力を確実に身に付けさせるとともに,その資質能力の全体を明示的に確認するため,教職課程の中に,新たに必修科目「教職実践演習(仮称)」を設けることを提言しています。
教育実習については,大学が,教育実習の全般にわたり,学校や教育委員会と連携しながら,責任を持って指導に当たることが重要であるとしています。
また,大学の教職課程が法令や審査基準に照らして適切に運営されているかどうかを事後的・定期的にチェックし,必要な改善等を促すため,大学に対して教育課程の内容や教員組織等に関する定期的な報告を課し,専門的な見地から事後評価を行い,その結果,問題が認められた場合には是正勧告を行うこと,さらに改善が見られない場合には最終的に教職課程の認定の取消しを可能とする仕組みを整備することについて提言しています。
近年の社会の大きな変動の中,様々な専門的職種や領域において,大学院段階で養成される,より高度な専門的職業能力を備えた人材が求められています。教員養成分野についても,より高度な専門性を備えた力量ある教員を養成し,また,教職課程改善のモデルとなるよう,教員養成に特化した専門職大学院として「教職大学院」制度を創設することを提言しています。
具体的には,教職大学院は,次のことを主な目的・機能としています。
そのため,次のことなどを提言しています。
学校教育を取り巻く激しい変化に対応するためには,養成段階を修了した後も,その時々で求められる教員として必要な資質能力が確実に保持されることが重要です。このため,教員免許制度の再構築が必要であるとの観点から,教員免許状に一定の有効期限を付し,その到来時に,知識・技能の刷新(リニューアル)を図るための方策として,教員免許更新制の導入を提言しています。
答申では,今回の更新制が,いわゆる不適格教員の排除を直接の目的とするものではなく,教員が,更新後の10年間を保証された状態で,自信と誇りを持って教壇に立ち,社会の尊敬と信頼を得ていくという前向きな制度であることを明示しています。
具体的には,教員免許状に10年の有効期限を付し,有効期限の満了前の直近2年間程度の間に30時間程度の「免許更新講習」を受講・修了することで更新されることとしています。
免許更新講習を受講しない,あるいは修了しないなど更新の要件を満たさない場合には,免許状は失効することとなりますが免許更新講習と同様の講習を受講・修了すれば,再授与の申請は可能とすることとしています。
以上のほか,答申では,教職生活の全体を通じて,資質能力の向上を図る観点から,採用や現職研修,人事管理,教員評価の改善・充実などについても提言しています。