第1節 教育再生の基本的考え方

1.教育をめぐる現状

 我が国の教育制度は,関係者をはじめ国民の地道な努力により,機会均等の理念を実現し,国民の教育水準を高め,その時々の時代の要請に対応しつつ,人材の育成を通じて,社会発展の原動力となりました。その結果,日本は,戦後の豊かな経済社会,安心な生活の実現など,世界が刮目する成果を収めてきました。
 しかし,戦後の教育制度が社会発展の原動力となる一方で,子どもを取り巻く環境が大きく変化し,様々な課題が明らかになっています。教育の現状に目を向けると,教育に対する信頼が揺らぎ,いくつもの大きな課題に直面している状況が見受けられます。具体的には,学校におけるいじめ,不登校,校内暴力のほか,子どもが犠牲となり,また加害者となるようなあってはならない悲惨な事件が起きています。また,社会全体の規範意識の低下,家族や地域についての価値観の変化などが子どもの健やかな成長に影を落としています。
 このような状況にあって,道徳心や自律心,公共の精神,国際社会の平和と発展への寄与などを,一層重視する教育が求められています。

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