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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第9章 国際交流・強力の充実に向けて
第5節 no title!
1 科学技術活動の国際展開科学技術活動の国際展開


 科学技術は,人類が共有し得る知的財産を生み出すとともに,地球環境問題やエネルギー・資源問題などの地球規模の諸問題の解決,産業経済の発展に資するものです。このような科学技術活動を国際的に積極的に展開することは,我が国の国際社会における役割を積極的に果たすものであるとともに,我が国における科学技術活動の一層の発展に資するものです。

 我が国は,世界41か国との間で科学技術協力協定などの国際約束に基づき,二国間における幅広い科学技術協力を実施するとともに,多国間の科学技術・学術協力を推進しています。


(1) 多国間協力の推進

{1}主要国首脳会議(サミット)に基づく国際協力

 2004(平成16)年6月に開催されたシーアイランド・サミットでは,「不拡散に関するG8行動計画」が採択されました。この中で核不拡散に関して,核兵器の拡散やテロリストによる核兵器取得等の危険を低減しつつ,原子力平和利用の恩恵を享受できるようにする取組として,核燃料物質の濃縮・再処理にかかわる機材・技術の移転の制限に取り組むことや,国際原子力機関(IAEA)保障措置協定追加議定書の批准の促進などについて意見の一致を見ました。また,放射線源のセキュリティ(安全性)に関して,危険性の高い放射線源の輸出入管理に関する指針がIAEAによって迅速に承認されることを目指すことについて合意されました。

 このほか,2003(平成15)年に開催されたエビアン・サミットにおいて採択された「持続可能な開発のための科学技術」に関する行動計画の対応状況の報告などが取り上げられました。この中で,よりきれいで効率的なエネルギーの一つとして次世代原子力技術開発の取組が報告されるとともに,地球観測に関して,2005(平成17)年の第3回地球観測サミットにおいて全球地球観測システム(GEOSS)に関する今後10年間の実施計画を採択することなどについて報告されました。

{2}国際連合における協力

 国際連合においては,全地球的視野で解決する必要のある天然資源,エネルギー,食料,環境,自然災害などに関する諸問題に対して,積極的な活動が展開されています。2002(平成14)年8〜9月に,南アフリカ共和国において開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)」では,科学的な知見の持続可能な開発への貢献に関し,我が国から水循環や災害防止のための共同観測・研究,さらに衛星を利用した地球観測技術の開発と利用拡大を提案し,これらが実施計画に盛り込まれました。この実施計画を受けて,宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,東南アジアにおける教育セミナーとして,2004(平成16)年にタイ,カンボジアにおいてリモートセンシング *1 に関する教育訓練をそれぞれ実施しました。また,2003(平成15)年12月にタイ地理情報宇宙技術開発機関(GISTDA)と2005(平成17)年に打ち上げ予定のALOS(陸域観測技術衛星)データを用いた国土管理・都市計画分野での利用実証を目的とした協定を締結しました。インドネシアとのパイロットプロジェクト(実験的な事業)においては,漁業・水産・海洋分野におけるデータの利用促進を実施しました。

 そのほか,ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)においては,科学分野における最優先分野を「水資源及びそれと関係する生態系」に置き,国連が実施している「世界水アセスメント計画(WWAP)」の事務局を務めており,2003(平成15年3月)に京都で行われた第3回世界水フォーラムにおいて,世界水発展報告書(WWDR)を発表しました。我が国は,国際水文学計画(IHP)をはじめとする持続可能な開発のための科学振興事業や,生命科学の倫理的側面に関する考察などのユネスコの諸活動に積極的に参加・協力しています。

{3}経済協力開発機構(OECD)における協力

 OECDにおける科学技術活動は,科学技術政策委員会(CSTP),原子力機関(NEA),国際エネルギー機関(IEA)などを通じて,加盟国間の意見・経験などの交換,情報・人材の交流,統計資料などの作成,共同研究の実施などが行われています。

 2004(平成16)年1月にフランス・パリで開催されたCSTP第11回閣僚級会合には稲葉文部科学副大臣(当時)が出席し,「科学とイノベーション(技術革新)の交流」及び「科学技術系人材の養成と流動性」等について議論がなされました。特に,人材問題については各国の関心が高く,頭脳流出等の問題点に関する議論が行われるとともに,初等教育からの科学技術教育への取組強化などの重要性が指摘されました。これを受け,CSTPのサブ・グループの一つであるグローバルサイエンスフォーラム(GSF)などにおいて具体的な情報交換等が始められています。

{4}アジア太平洋経済協力(APEC)における協力

 APECでは,開かれた地域協力を掲げ,貿易・投資の自由化・円滑化,経済・技術協力の推進を目的に,産業技術・人材養成・エネルギーなどについて協力方策の検討を行っています。特に産業技術分野では,科学技術の情報流通の促進,研究施設の相互利用の促進などの具体的協力プロジェクトが進められています。2004(平成16)年3月にニュージーランド(クライストチャーチ)において第4回科学技術担当大臣会合が開催され,人材ネットワーク,研究・技術革新と産業の連携,科学技術政策などについて議論が行われ,APEC域内の持続的成長のために科学技術協力を推進していくことなどが合意されました。

{5}アジア欧州会合(ASEM)における協力

 ASEMは,アジアと欧州の関係を強化することを目的として,アジアと欧州の首脳が率直な対話を行う場として設けられたものです。

 1999(平成11)年には,ASEMにおける21世紀の科学技術協力をテーマとする科学技術大臣会合が北京で開催され,科学技術分野における協力活動の重要性が確認されました。その後の2002(平成14)年9月にコペンハーゲンで開催されたASEM第4回首脳会合では,水分野などにおける具体的な協力活動の報告が提出されました。

{6}ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム(HFSP)

 HFSPは,1987(昭和62)年6月のベネチアサミットにおいて我が国が提唱した国際的な研究助成プログラムで,生体のもつ精妙かつ優れた機能の解明のための基礎的な国際共同研究などを推進することを目的としています。具体的には,国際ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラム推進機構(HFSPO)が,国際共同研究チームへの研究費助成や若手研究者を対象としたフェローシップ(研究奨励金助成),ワークショップの開催を実施しています。また,このプログラムのグラント(研究費助成)受賞後,これまでに11人の研究者がノーベル賞を受賞しているなど,内外から高く評価されており,我が国は,このプログラムを積極的に支援しています。

 HFSPは2001(平成13)年から受賞者の研究成果発表の場として,受賞者会合を開催しており,日本でも平成16(2004)年5月に神奈川県箱根町において開催されました。また,2004(平成16)年6月にはHFSP第4回政府間会合がスイス(ベルン)において開催され,2007(平成19)年までの財政計画,外部評価などについて議論し,共同声明を採択しました。

{7}国際科学技術センター(ISTC)における協力

 ISTCは,旧ソ連邦諸国の大量破壊兵器などに関係した科学者に平和的研究活動に従事する機会を与え,旧ソ連邦諸国内・国際的な技術問題の解決に寄与することなどを目的として,1994(平成6)年3月に,日本,米国,EC,ロシアの4極により設立されました。2004(平成16)年9月現在,12か国とEUが加盟しており,これまで延べ約5万8,000人以上の研究者が本センターの活動を通じて研究を行ってきています。


* リモートセンシング

 離れた場所から直接触れずに対象物を人工衛星や航空機等に搭載されたセンサを用いて計測し,その性質を分析する技術。


(2) 二国間協力の推進

 諸外国との間では,二国間の科学技術協力協定 *1 などに基づき,ライフサイエンス,情報通信,地球科学,ナノテクノロジー,原子力,宇宙開発,エネルギー開発,環境保全など世界共通の問題を解決するため,様々な協力が活発に展開されています。最近の主な動きは以下のとおりです。

{1}アメリカ合衆国(米国)

 日米科学技術協力協定の下,2004(平成16)年2月,東京にて日米安全・安心な社会に資する科学技術に関するワークショップが開催されました。同ワークショップでは,両国政府代表団の参加を得て,両国の共通関心分野(感染症と農業と食の安全,国境と輸送機関の安全,重要情報基盤保護,社会基盤保護及び相互依存性解析,犯罪及びテロ対策のための科学技術)における今後の研究協力の方向性について意見交換が行われました。

 また,2004(平成16)年7月には,日米科学技術協力協定の有効期間が10年間延長されました。

{2}中華人民共和国(中国)・大韓民国(韓国)

 中国との間では,日中科学技術協力協定に基づく協力のほか,2003(平成15)年11月に中国にて「産学官連携」をテーマに文部科学省と中国科学技術部との間で科学技術行政担当官による政策対話が実施されました。

 また日本・中国・韓国の3か国の間では,2004(平成16)年3月に東京で第2回日中韓科学技術協力局長級会議が開催されました。同会議では各国の科学技術政策を紹介するとともに,アジアの中核としての3国の役割や科学技術協力に関する大臣級会合の開催について意見交換が行われました。

{3}シンガポール

 日・シンガポール新時代経済連携協定(JSEpA)に基づいて,2003(平成15)年11月にシンガポールにおいて,科学技術に関する第1回合同委員会が開催されました。同委員会では,科学技術に関する協力が,マイクロ・エレクトロニクス,情報通信技術,生命科学の分野を中心に緊密に行われていることが確認されました。

{4}英国

 日英科学技術協力協定に基づいて,2004(平成16)年2月に東京にて第5回日英科学技術協力合同委員会が開催されました。同委員会では,両国政府の科学技術政策やイノベーション政策の動向,ライフサイエンス,地球観測及び気候変動,ナノテクノロジーなどの分野における今後の協力について意見交換が行われました。

{5}オランダ

 日蘭科学技術協力協定に基づいて,2003(平成15)年12月にハーグにて第3回日蘭科学技術協力合同委員会が開催されました。同委員会では,両国政府の科学技術政策及びイノベーション政策の動向,科学技術活動の国際化,研究協力と研究者交流,多国間科学技術協力における日蘭協力などの分野における今後の協力について意見交換が行われました。

{6}スイス

 日スイス間の科学技術協力の推進を目的として,2004(平成16)年7月に東京にて第4回日スイス科学技術ラウンドテーブルが開催されました。同ラウンドテーブルでは,両国政府の科学技術政策の動向や,バイオマテリアル,ナノテクノロジーなどの分野における今後の協力について意見交換が行われました。また,科学技術協力協定の交渉を開始することで合意しました。

{7}ノルウェー

 2003(平成15)年5月に締結された日ノルウェー科学技術協力協定に基づいて,2004(平成16)年6月にオスロにて第1回日ノルウェー科学技術協力合同委員会が開催されました。同委員会では,両国政府の研究・イノベーション政策の動向や,ナノテクノロジー・材料,エネルギー・環境,食品の安全などの分野における今後の協力について意見交換が行われました。

{8}クロアチア

 両国の研究内容の情報交換,長期的な協力の可能性の検討,既存の研究者のネットワーク強化や新規ネットワークの構築を目的に,2004(平成16)年9月にザグレブにおいて日本−クロアチア科学技術交流ワークショップが開催されました。

{9}オーストラリア

 日豪科学技術協力協定に基づいて,2004(平成16)年8月に東京において第11回日豪科学技術協力合同委員会が開催されました。同委員会では,両国政府の科学技術政策及び研究協力活動,ライフサイエンスや地球科学など各分野における今後の協力について意見交換が行われました。!0

{10}南アフリカ共和国

 日・南ア科学技術協力協定に基づいて,2004(平成16)年5月にプレトリアにおいて,日・南ア科学フォーラム及び第1回日・南ア科学技術合同委員会が開催されました。同フォーラム及び同委員会では,両国政府の科学技術政策の動向や,新材料・ナノテクノロジー,バイオテクノロジー,情報通信技術,感染症などの分野における今後の協力について意見交換が行われました。

{11}その他

 上記のほかにも,カナダ,フランス,イタリア,ロシア,フィンランド,ポーランド,ハンガリーなど,世界41か国との間で締結されている科学技術協力協定などに基づき,情報交換,専門家の交流,共同研究の実施などの協力を行っています。またECとの間では,日EC間の科学技術協力に関する協定の交渉を行っています。


* 科学技術協力協定

 我が国と外国との間で,平和目的のための科学技術分野の協力関係を促進するために締結される国際約束。協力活動の形態や合同委員会などの政府間協議の枠組みのほか,協力により生じる知的所有権の扱い等を定めており,この協定の下で,研究開発の情報交換,研究者交流,共同研究などの様々な協力活動が実施されている。合同委員会は,これまでの協力活動の報告や,今後の協力活動について協議するために,数年ごとに開催されている。


(3) 国際協力プロジェクトへの取組及び国際社会への貢献

{1}ITER計画

{2}国際宇宙ステーション計画

 国際宇宙ステーション計画は,日本,米国,欧州,カナダ,ロシアの5極が共同で,低軌道(高度約400km)の地球周回軌道上に有人の宇宙ステーションを建設する国際協力プロジェクトです。我が国が国際宇宙ステーション計画へ参加する意義は,宇宙における活動を通じて,(1)有人宇宙技術をはじめとする広範な技術の高度化等の促進,(2)経済社会基盤の拡充,(3)新たな科学的知見の創造,(4)国際協力の推進を実現することにあります。国際宇宙ステーションは,1998(平成10)年11月に建設が開始され,2000(平成12)年11月からは搭乗員が常時滞在して,一部の利用活動が開始されています。我が国は2010(平成22)年ごろの国際宇宙ステーション完成目標に向けて,2007(平成19)年度に打ち上げ予定の日本の実験棟(JEM,愛称:きぼう),2008(平成20)年度に打ち上げ予定の宇宙ステーション補給機(HTV),生命科学実験施設(セントリフュージ)の開発を進めています。

 2003(平成15)年2月に発生した,米国スペースシャトル・コロンビア号の事故の影響により,国際宇宙ステーションの組立てや補給作業に重要な役割を果たすスペースシャトルの飛行が休止されていますが,米国航空宇宙局(NASA)によりスペースシャトルの飛行再開に向けた取組が進められるとともに,参加各極が緊密な連携・協力を行いながら,計画の着実な推進に努力しています。なお,日本人宇宙飛行士については,継続して訓練を行っており,野口宇宙飛行士は,事故後初のスペースシャトル飛行(2005(平成17)年3月以降)に搭乗する予定です。

 また,国内においては,国際宇宙ステーションの利用計画の重点化や,運用・利用にかかわる官民協働体制の構築等,計画をより効率的かつ効果的に進めるための方策について,2004(平成16)年6月に宇宙開発委員会が最終報告をまとめました。

{3}統合国際深海掘削計画(IODP)

 IODPは,日米の掘削船を共同運用することにより地球深部を探査する日米主導の国際共同プロジェクトであり,温暖化などの環境変動メカニズムや地震などの地殻変動メカニズムの解明などに貢献するほか,地殻内生命の探索と生命の起源と進化の解明などが期待されています。

 2003(平成15)年4月22日に,文部科学大臣と全米科学財団長官によりIODPのための協力に関する覚書に署名を行い,同年10月よりIODPを開始しました。その後,2004(平成16)年3月16日に欧州12か国が,同年4月26日には中国が参加し,現在は15か国による共同プロジェクトとなっています。

{4}大型ハドロン *1 衝突型加速器(LHC)計画

 LHC計画は,欧州合同原子核研究機関(CERN)における陽子・陽子衝突型加速器計画であり,1994(平成6)年12月に同機関の理事会において建設計画が正式に決定され,CERN加盟国と日本,米国,ロシア,カナダ,インドなどによる国際協力の下で,2007(平成19)年の実験開始を目指して建設が進められています。

 LHCは,周長27kmにも及ぶ巨大な円形加速器であり,その円形トンネル内に超伝導磁石を並べ,陽子を逆方向に光に近い速度まで加速し,それらの陽子同士を衝突させるものです。その衝突の際に生じる膨大なエネルギー領域において,未知の粒子であるヒッグス粒子や超対称性粒子を発見し,物質の内部構造を探索解明することを目的としています。

{5}人道的観点からの対人地雷探知・除去技術に関する研究開発の推進

 アフガニスタンをはじめ,世界の数多くの国において埋設された地雷は,復興・開発上の大きな障害の一つとなっています。我が国では,外務省等の関係府省庁において,この問題に関する取組が行われています。研究開発の主体を担う文部科学省では,人道的観点から,より安全・確実かつ効率的に対人地雷を探知・除去できるよう,我が国の科学技術を駆使し,国際機関やNGOなどとも連携して,技術の開発を行い,「日本らしさ」のある国際貢献を行っていくこととしています。

 このために,科学技術振興機構において,産学官の幅広い研究開発能力を結集し,地雷の探知技術,地雷原への移動や接近を制御する技術の開発を進めています。


* ハドロン

 物質を構成している最小の単位である粒子の一種,クォークによって構成される複合粒子(陽子や中性子など)の総称。


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