ここからサイトの主なメニューです
前(節)へ  次(節)へ
第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第8章 心豊かで元気のある社会を実現するための「文化力」の向上
第4節 文化財の保存と活用
2 有形文化財の保存と活用



(1) 有形文化財とは

 建造物,絵画,工芸品,彫刻,書跡,典籍,古文書,考古資料,歴史資料などの有形の文化的所産で,我が国にとって歴史上,芸術上,学術上価値の高いものを総称して有形文化財と呼んでいます。このうち,「建造物」以外のものを「美術工芸品」と呼んでいます。


(2) 国宝,重要文化財の指定

 国は,有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定し,さらに世界文化の見地から特に価値の高いものを国宝に指定して保護しています。平成16年11月現在,重要文化財1万2,426件(建造物2,260件,美術工芸品1万166件)の指定を行っており,そのうち1,068件(建造物211件,美術工芸品857件)を国宝に指定しています。

 最近新たに国宝,重要文化財に指定されたものの概要は以下のとおりです。

図表◆2-8-5 文化財保護の体系

{1}建造物

 建造物については,明治以降の近代のものの重要文化財指定を重点的に進めています。平成15年12月に「旧日光田母澤御用邸」(栃木県日光市)など12件を,16年7月に「萬代橋」(新潟県新潟市)など10件を新たに指定しました。

 「旧日光田母澤御用邸」は,明治後期から大正期に建設された木造建築群による大規模邸宅で,近代和風住宅の典型を示すものとして価値の高いものです。「萬代橋」は信濃川に架かる大規模な鉄筋コンクリート造の道路橋で,力学的合理性に基づく近代橋梁美が表現されたものとして高い価値があります。

 国宝については,平成14年5月に「知恩院三門」,「知恩院本堂(御影堂)」(京都府京都市)を指定しました。「知恩院三門」,「知恩院本堂(御影堂)」は,共に壮大で完成度の高い建築物であり,江戸時代初期の寺院建築を代表する例です。

▲「旧日光田母澤御用邸」(栃木県日光市)

▲「知恩院本堂(御影堂)」(京都府京都市)

{2}美術工芸品

 文化庁では,平成16年度に,美術工芸品について新たに,「紙本墨画淡彩慧可断臂図」(絵画),「絹本著色五大尊像」(絵画),「金色堂堂内諸像及天蓋」(彫刻),「奈良県藤ノ木古墳出土品」(考古資料)の4件を国宝に,「蘇言機(錫箔蓄音機)」(歴史資料)をはじめ,46件を重要文化財に指定しました。

 このうち国宝に指定された「紙本墨画淡彩慧可断臂図」は,我が国の絵画史上最大の巨匠の一人で,後世に絶大な影響を及ぼした雪舟の人物画の代表作であり,日本絵画史上最も迫力ある人物画の一つです。

 「絹本著色五大尊像」は,密教の五壇法の本尊であり,天台系智証大師請来様の図像による五大尊像として最古,かつ中世以前に遡る唯一の遺品であり,密教図像学史上にも極めて重要な遺例です。

 「金色堂堂内諸像及天蓋」は,藤原清衡が中尊寺内に建てた金色堂に安置される諸像について,その技法構造が一層よく把握され,混乱のあった所在位置を本来の場所に戻す復元的研究も進んだ状況を踏まえて,国宝へ格上げしたものです。

 「奈良県藤ノ木古墳出土品」は,古墳時代後期の円墳から出土した副葬品の一括で,当時の古墳副葬品の実態を考える上で欠かすことのできない資料です。

▲「紙本墨画淡彩慧可断臂図

▲「絹本著色五大尊像」

▲「金色堂堂内諸像及天蓋」

▲「奈良県藤ノ木古墳出土品」


(3) 保存・活用のための取組

 指定された有形文化財の管理・修理については,所有者が行うことが原則です。文化庁では,指定された有形文化財について,修理を必要とする周期などに応じて計画的な修理,保存や防災のための施設・設備等の設置などの事業を所有者などへの国庫補助により行っています。なお,所有者による管理が困難な場合などには,必要な管理・修理などが適切に行われるよう,文化庁長官が,地方公共団体などを管理団体として指定しています。

 また,地震や火災などの災害から文化財を守るためには,国や地方公共団体の協力の下で,所有者などが文化財の適切な管理に取り組むことが重要です。そのため,阪神・淡路大震災における文化財の被害状況を踏まえ,文化庁では文化財建造物の地震時における安全性の確保についての考え方を取りまとめ,具体的な耐震診断の指針と手引を策定しています。

 国宝高松塚古墳壁画の劣化については,平成16年6月から壁画の恒久保存を目的とした「国宝高松塚古墳壁画恒久保存対策検討会」による検討を開始し,今後の保存・活用について,従来の保存方針の見直しを含め,あらゆる可能性を排除しないで,最善の保存対策を検討しています。

 なお,有形文化財の活用については,文化庁では,美術工芸品について,重要文化財の鑑賞機会の拡大を図るため,展示や体験学習を行うのに適した文化財保存施設の整備を推進するとともに,博物館などの施設が開催する展覧会について一部の経費を負担しています(税制措置については,参照: 本章第1節4 )。

 また,建造物は,活用しながら保存することが重要であるため,文化庁では,重要文化財の活用に対する基本的な考え方と所有者が保存活用計画を策定するための指針を取りまとめて普及し,有効な活用が図られるよう支援しています。


(4) 文化財登録制度の推進

 文化財登録制度は,近年の国土開発,都市計画の進展,生活様式の変化等により,社会的評価を受ける間もなく消滅の危機にさらされている多種多様かつ大量の近代を中心とする文化財を後世に幅広く継承していくため,保存と活用の措置を特に必要とするものを国が文化財登録原簿に登録するものです。これは届出制と指導・助言・勧告を基本とする緩やかな保護措置を講じる制度であり,従来の指定制度(重要なものを厳選し許可制等の強い規制と手厚い保護を行うもの)を補完するものです。

 現行の文化財登録制度は,建造物に限定して実施しており,建設後50年を経たもので,国と地方公共団体が指定した文化財以外のものを対象としています。

 平成15年10月以降,「十和田ホテル本館」(秋田県小坂町),「平安女学院明治館」(京都府京都市),「野武左衛門翁旌徳碑」(岡山県倉敷市),「竹瓦温泉」(大分県別府市)などが登録され,16年11月現在,多種多様の建造物4,420件が文化財登録原簿に登録されています。

 登録された建造物については,修理の際の設計監理費の国庫補助,日本政策投資銀行の低利融資などの支援措置があります(税制措置については,参照: 本章第1節4 )。

▲竹瓦温泉(大分県別府市)

コラム9

文化財愛護シンボルマーク

 「文化財愛護シンボルマーク」は,文化財愛護運動を全国に展開するための旗印として,昭和41年5月に定められたものです。このシンボルマークは,広げた両方の手のひらのパターンによって,日本建築の重要な要素である[組み物]のイメージを表し,これを三つ重ねることにより,文化財という民族の遺産を,過去・現在・未来にわたり永遠に伝承していくという愛護精神を象徴したものです。


前(節)へ  次(節)へ

ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ