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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第7章 科学技術システムの改革
第2節 産学官連携による研究開発成果の社会への還元の推進
1 大学等の研究成果の社会への還元


 21世紀は「知の世紀」といわれており,「知」の創造とその活用を図ることが,「科学技術創造立国」,「国際競争力のある国」を実現するために必要であり,産学官連携はそのための取組として重要です。

 我が国における産学官連携は最近大きく進んでおり,例えば国立大学等と産業界との共同研究数は5年間で3倍以上となり,大学などの研究成果を産業界に移転する専門機関(技術移転機関(TLO):16年10月現在38機関)による特許実施許諾件数は約1,200件,大学発ベンチャー *1 は916社(平成16年8月現在)と急増しています。しかし,世界でも最高水準にある我が国の大学の研究開発能力や欧米の大学の研究成果の活用状況を考えると,これらは必ずしも十分なものではなく,今後の産学官連携の一層の推進が必要です。

 また,知的財産に関しては,科学技術創造立国の実現を目指す我が国としては,その取得,活用などを戦略的に進めていくことが必要であるとの認識の下,「知的財産基本法」に基づく「知的財産の創出,保護及び活用に関する推進計画」(平成16年5月改訂「知的財産推進計画2004」)が策定されました。現在,政府部内並びに大学等において同計画に沿った具体的な取組が求められており,「知」の源泉としての大学が,知的財産の戦略的かつ組織的な創出・管理・活用を進めるための環境整備を図ることが急務になっています(参照: 第2部第9章第5節 , 第2部第13章第1節2 )。


(1) 産学官連携強化のための情報発信・交流の促進

{1}情報発信の充実

 産学官連携の強化を促進し,新産業の創出に寄与するためには,産業界と大学等の公的研究機関における積極的な情報交換・共有を図ることが重要です。このため,科学技術振興機構において,様々な研究開発支援情報や研究成果情報をデータベース化 *1 し,インターネットを通じて幅広く情報提供を行っています(http://jstore.jst.go.jp/)。

{2}研究交流の促進

 国公私立大学などは学外の組織・機関との研究協力を進め,研究成果を適切に社会還元するため,以下のような産学官連携活動に取り組んでいます。

 なお,平成16年4月の国立大学の法人化に伴い,各大学の個性・特色に応じた柔軟な産学官連携活動が可能となったことから,各大学などにおいては,これまで以上に積極的に産学官連携の取組を進めていくことが期待されています。

(ア)大学と企業との共同研究

 大学が持つ研究能力と企業の技術開発力を結集することにより,優れた研究成果が期待されることから,幅広い分野で実施されています。共同研究件数も年々増加しており,平成15年度には国公私立を合わせて9,255件となりました。

 また,共同研究を通じた試験研究を推進するための制度として,企業が国公私立大学と共同して行う試験研究などのために支出した研究費の一定割合を,法人税や所得税から控除できる税制上の特例措置が設けられています。

 なお,文部科学省では,平成14年度から,科学技術振興調整費の中で,企業と大学,独立行政法人などの研究機関との共同研究を通じた,企業の問題意識やニーズに基づく研究を促進するとともに,企業からの資金確保を促進するためのマッチングファンド *1 方式によるプログラム「産学官共同研究の効果的な推進」を実施しています( 図表2-7-3 )。

(イ)受託研究

 企業や国の機関,地方公共団体などが,大学に対して研究を委託する制度です( 図表2-7-4 )。受託した大学では,企業などが負担する経費で研究を行い,成果を委託者に対して報告することによって,企業の研究開発などに協力しています。

図表◆2-7-3 国立大学等と民間企業との共同研究の現状

図表◆2-7-4 受託研究の現状

(ウ)共同研究センター

 平成15年度の時点で,全国にある58の国立大学に共同研究センターが設置されており,これらは産業界との連携・協力に関する国立大学の窓口として機能するとともに,企業と行う共同研究などの実施の場となっています。また,企業の技術者に対する高度技術研修や研究開発に関する技術相談なども行い,地域産業との連携・協力やその活性化に貢献しています。

(エ)新しい形態の産学官連携手法の構築

 大学と産業界の連携・協力を一層推進するため,平成11年度より,我が国の文化風土に対応した21世紀にふさわしい新しい形態の産学官連携手法の構築を目指したモデル研究を,大学と共同して行っています。

{3}人的交流の促進(国立大学教員等の兼業)

 平成16年度から法人化した国立大学においては,教職員は法人職員として,国家公務員制度の適用を受けないこととなりました。これにより,民間企業役員兼業をはじめとする教職員の兼業の許可基準については,各国立大学法人の判断で自主的に設定することが可能になったほか,雇用形態や給与・勤務時間体系などについても柔軟な人事制度を実現することが可能となりました。

{4}国立大学法人等による出資

 国立大学法人法において,国立大学法人の業務として「研究成果の普及とその活用の促進」が位置付けられるとともに,国立大学法人が研究成果の活用を促進する事業を行う者へ出資することが可能になりました。現在,出資対象として認められている機関は,国立大学法人法施行令で承認TLO(TLO:Technology Licensing Organizaton=技術移転機関)とされています。


*1 大学発ベンチャー

 大学,大学共同利用機関,高等専門学校,国立試験研究機関,研究開発型独立行政法人・特殊法人の独創的研究開発を基に設立された新規企業のこと。


*2 データベース化

 大量の情報を集め,いつでも検索できるようにすること。


* マッチングファンド

 企業などからの資金提供を前提とする共同研究に対して,大学等の負担する経費を助成する仕組み。


(2) 大学等の研究成果の社会への還元の推進

{1}技術移転機関(TLO)

 平成10年8月に「大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律」が施行されました。この法律は,大学などの研究成果の特許化や産業界への移転の促進を通じて,新たな事業分野の開拓や産業の技術の向上,大学などの研究活動の活性化を図ることを目的としています。同法に基づき,16年10月現在,38のTLOが承認されており,各地域において精力的な活動を行っています。

 また,平成11年10月に施行された産業活力再生特別措置法により,TLOの特許出願費用などが2分の1に軽減されています。

{2}大学知的財産本部整備事業

 大学における特許などの研究成果の取扱いについては,平成16年度からの国立大学法人化に合わせ,「原則として個人帰属」から「原則として機関帰属」に大きく転換されました。このため,文部科学省では,15年度から,大学知的財産本部整備事業として,34件のモデル整備機関と9件の「特色ある知的財産管理・活用機能支援プログラム」支援機関を指定し,国公私立大学等における知的財産の創出・取得・管理・活用を戦略的にマネジメント(運営管理)できる体制の整備を進めています。

 このような体制整備により,産学官連携や技術移転の一層の推進が図られ,大学などにおける新たな研究開発が進められるとともに,大学などで生み出される優れた知の活用を通じて我が国の経済が活性化することが期待されています。

{3}産学官連携支援事業

 文部科学省では,平成14年度から,産学官連携を推進する際に不可欠な各種専門知識を有する人材を,大学などのニーズに応じて配置する産学官連携支援事業を行っています(16年7月現在で110名配置)。

{4}科学技術振興機構の技術移転事業

 科学技術振興機構では,大学や公的研究機関などの優れた研究成果の発掘・特許化の支援から,実用化が著しく困難なものについて実用化開発に至るまでの一貫した取組を推進しています。

(ア)研究成果の権利化

 技術移転支援センターにおいて,大学などの研究成果の知的財産化(特許化)を促進するために,大学などにおける戦略的な外国特許取得を支援するための事業を行っています。

(イ)研究成果の基礎段階から育成段階での取組

 研究成果の掘り起こしから実用化までを技術移転プランナー *1 の一貫したサポート(支援)の下で行う研究成果最適移転事業では,研究成果の育成段階に応じて,基本的特許に基づき,その周辺特許を戦略的に取得するための試験研究で試作品開発を行ったり,ベンチャー起業に向けた実用化研究などを行っています。

(ウ)実用化段階での取組

 大学や公的研究機関などの優れた研究成果のうち,実用化が著しく困難なものについては,企業に委託することにより新技術を開発する委託開発事業を行っています。

(エ)大学発ベンチャーの創出推進

 大学発ベンチャーの創出及び事業展開を通じて,大学等の研究成果の社会還元を推進するため,大学等の研究成果を基にした起業が実現されるために必要な研究開発を支援しています。

{5}新興分野における人材養成(知的財産)

 我が国では,知的財産の確保・活用に精通する人材の不足が従来より指摘されていました。そのため,文部科学省では,平成14年度から,科学技術振興調整費の新興分野人材養成プログラムの中で対象領域を定め,知的財産の確保・活用に関する専門知識を有し,将来,研究現場などにおいて専門的業務を担うことができる人材などの養成を実施しています。

{6}公私立大学の設置者や国公私立大学教員の特許料等の軽減

 大学などの研究成果が企業で活用されるためには,研究成果を特許という形で自主的かつ積極的に取得していくことが必要です。そのため,産業技術力強化法に基づき,公私立大学の設置者や国公私立大学教員に関する特許料などを2分の1に軽減しました。なお,国立大学の法人化に伴い,従来「国」であった国立大学が国としての優遇措置を受けることがなくなることとされますが,平成16年度からの3年間は,経過措置として従来と同じ扱い(特許料の免除)を受けることとなっています。

{7}構造改革特区における研究交流促進法の特例。

 研究交流を一層促進することによって,地域における経済の活性化に貢献するために,文部科学省では,構造改革特別区域法(平成14年12月公布)において,研究交流促進法に関する特例措置を講じました。

 これは,特区内の国有の試験研究施設などを廉価で使用できる対象を拡大するとともに,施設の使用にかかわる要件の緩和を図るものです。これらによって,地域における研究交流の一層の促進が期待されます。


* 技術移転プランナー

 実用化の観点から研究成果の技術調査,特許調査,市場調査などを実施し,当該研究成果の最適な技術移転の方策を策定する人(目利き)。


(3) 産学官連携に関する最近の動き

{1}地域・一日知的財産本部

 文部科学省と科学技術振興機構では,国の知的財産戦略・産学官連携に関する施策説明,大学及び地方公共団体における産学官連携・知的財産活用方策への取組等に関する情報交換・交流を行うため,大学,産業界,地方公共団体やTLOなどの関係者による連絡・交流会議(「地域・一日知的財産本部」)を開催しました(平成15年12月:大阪,16年1月:東京)同会議では,大学知的財産本部の取組事例の紹介や産業界関係者の講演などを基調として,今後の知的財産戦略・産学官連携について意見交換を行いました。

{2}利益相反マネジメントを考える会

 産学官連携活動を推進するに当たり,各大学や研究機関において日常的に生じ得る「利益相反」に適切に対応していくことが極めて重要となっている状況を受け,文部科学省では,各大学等の関係者が「利益相反」への認識と情報を共有するため,平成16年8月に「利益相反マネジメントを考える会」を開催しました。会議では,「利益相反マネジメント体制の構築」及び「臨床研究・臨床試験における利益相反への対応」をテーマに活発な意見交換がなされ,利益相反マネジメント体制の構築を促進するための提言が行われました。

{3}科学技術・学術審議会

 科学技術・学術審議会技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会において,国立大学の法人化の状況を踏まえつつ,研究試料の取扱いなど産学官連携活動の推進における諸課題や大学知的財産本部の整備などについて検討を行っています(参照: 第2部第5章第3節 )。

{4}その他

 産学官連携については,文部科学省のみならず,政府全体として取組が進められており,平成15年11月に企業・大学・行政の代表者約1,000人以上が参加した,内閣府などの主催による「第3回産学官連携サミット」が東京で開催されたほか,16年6月には,全国から企業・大学・行政の代表者や第一線で活躍する研究者や実務家が約3,000人以上参加した「第3回産学官連携推進会議」が京都で開催されました。なお,「第3回産学官連携推進会議」では,産学官連携活動で著しく成果を収めた事例に対し「第2回産学官連携功労者表彰」を行い,文部科学省は主催省の一つとして,3事例に対し文部科学大臣賞を授与しました。


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