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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第6章 研究開発の戦略的重点化
第4節  原子力の研究開発の推進
1  原子力に対する安全確保と防災対策



(1) 原子炉等規制法等による安全規制

{1}原子炉等規制法等による安全規制

 文部科学省は,試験研究用原子炉等(平成16年9月末現在,運転中15基,建設中0基,解体中8基)に対して,設計・建設・運転の各段階で厳格な安全規制を実施しています。

 また,核燃料物質を研究などで使用する事業所(16年9月末現在,183事業所)に対して使用及び使用変更の許可のため審査を行うとともに,そのうち一定量以上の核燃料物質を使用する事業所(16年9月末現在,16事業所)に対しては,検査や保安規定の認可の審査など,厳しい安全規制を実施しています。さらに,核原料物質の使用者に対しては使用の届出を義務付けています。

 このほか,文部科学省における原子力安全行政の透明化・効率化を図るため,有識者により構成される原子力安全規制等懇談会や研究炉等安全規制検討会を開催し,安全規制行政に反映させています。

 平成14年8月以降に問題となった原子力発電所における自主点検記録の不正などを受けて,文部科学省としても国民の信頼回復と再発防止を目的として,16年2月に,試験研究の用に供する原子炉等の設置,運転等に関する規則,核燃料物質の使用等に関する規則の改正を行いました。本規則改正は,保安活動への品質保証の取り入れによる信頼性の向上,高経年化した原子炉への定期評価の取り入れ,安全上の管理に要する設備の検査(施設定期自主検査)の強化による保守管理の充実,事故・故障等の報告基準の明確化による透明性の向上を図るものです。なお,昨年6月に原子力委員会に「新計画策定会議」を設置し,17年中の取りまとめを目指して,新計画の策定作業を進めています。

{2}放射線障害防止法による安全規制

放射性同位元素や放射線発生装置は,医療,農業,工業,環境保全など様々な分野で利用されています。これらの利用に伴う放射線障害を防止するため,放射線障害防止法に基づいて安全規制を実施しています。放射線障害防止法に基づいて許可を受け,届出をした事業所は,全国で約5,000か所あります。

 各事業所は,放射線障害防止法に基づいて,施設の基準適合義務,使用等の基準の遵守義務,使用者等の管理義務といった様々な義務が課せられています。また,これらの事業所での放射性同位元素などの安全管理の充実を図るため,同法に基づく立入検査を行い,施設や使用方法に不適切な点があった場合には速やかに改善するように指導しています。

 平成15年度において,同法に基づいて文部科学省に報告された事故の件数は5件でした。引き続き,事故の再発防止のため,必要に応じて事業者に対する通知などを行い,安全管理の徹底を指導しています。

 また,国際原子力機関(IAEA:International Atomic Energy Agency)などが取りまとめた国際標準値(規制が免除される放射性物質の核種ごとの放射能と濃度の下限値)について,放射線安全規制検討会で国内法令への取り入れの基本的な考え方について検討が進められ,平成15年8月に報告書が取りまとめられました。これらを踏まえ,第159回通常国会において,放射線障害防止法改正法が成立し,16年6月に公布されました。本法は,公布後1年以内の施行が予定されています。


(2) 環境放射能調査の推進

 現在,自然放射線以外に放射線(能)水準に影響を与え得る放射線源として,原子力発電所・再処理施設などの原子力施設のほか,諸外国の核爆発実験に伴う放射性降下物などがあります。環境放射能調査は,環境に存在する自然放射線(能)水準と,人間の活動により付加される放射線(能)水準の調査を行うことにより,国民の被ばく線量の推定・評価に資することを目的としています。そのため,原子力艦寄港地周辺の調査や環境中の放射線(能)水準の監視と把握に必要な調査研究を進めています。

{1}原子力施設周辺等の放射能調査

 原子炉設置者等と関係道府県は,原子力施設周辺における環境放射能調査を実施しています。

 文部科学省は,関係都道府県が行っている調査分析の精度の向上,放射能調査のデータの収集管理,都道府県の分析実務者の技術研修,原子力施設周辺の沖合漁場を中心とした海洋環境放射能の調査・分析を通じて,放射能水準を総合的に評価・把握しています。

{2}放射性降下物への対応

 環境放射能調査は,諸外国で実施された核爆発実験の影響等を把握するため,関係省庁や都道府県などの協力の下で実施されています。

 現在の放射能調査は,空間放射線量率,大気浮遊じん,降水・降下物,上水,日常食,米,牛乳,魚介類,土壌,海水,海底土などの環境試料などについて行われています。また,関係機関においては,環境,食品,人体における放射性核種の挙動・分布などについての研究が行われています。

{3}原子力艦寄港に伴う寄港地沿岸及び周辺の放射能調査

 政府は,昭和39年8月以降,米国の原子力艦の我が国への寄港を認めています。原子力艦の寄港時には,文部科学省と関係機関が協力して,放射性物質の排出を監視するために寄港時調査を行っています。また,平常時には,放射線水準や海水などに含まれる放射能の長期変動を調査するために非寄港時調査を実施しています。

 これらの調査で得られたデータの一部は,ホームページ「日本の環境放射能と放射線」(http://www.kankyo-hoshano.go.jp)で公開されています。


(3) 原子力防災対策の充実強化等

 原子力災害対策特別措置法に基づくオフサイトセンターの整備,原子力防災専門官の現地での駐在,原子力総合防災訓練の実施等の取組や,原子力発電施設などから緊急時に放出された放射性物質の拡散や被ばく量を迅速に計算予測できるシステム(SpEEDIネットワークシステム)の整備,原子力防災に関するマニュアル整備や研修などを行っています(参照: 第2部第12章第3節2 )。

 また,平成14年4月に災害対策基本法に基づく「防災基本計画」が修正され,原子力艦の原子力災害発生のおそれがある場合,又は原子力艦の原子力災害が発生した場合の国及び地方公共団体の役割が明確に定められました。同計画では,文部科学省は放射線監視の実施や医療活動などを実施することとなっています。


(4) 原子力損害賠償制度について

 原子力の研究開発利用に当たっては安全確保を図ることが大前提ですが,万一の場合の原子力事故による被害者の救済などを目的として,「原子力損害の賠償に関する法律」(昭和37年3月施行)等に基づいて原子力損害賠償制度が設けられています。この法律は,{1}原子力事業者に無過失・無限の賠償責任を課すとともに,その責任を原子力事業者に集中し,{2}賠償責任の履行を迅速かつ確実にするため,原子力事業者に対して原子力損害賠償責任保険(通常の商業規模の原子炉の場合は600億円)への加入などの賠償措置を講じることを義務付け,{3}賠償措置額を超える原子力損害が発生した場合に国が原子力事業者に必要な援助を行うことを可能とすることなどについて定めています。この原子力損害賠償制度については,平成11年にJCO東海村ウラン加工施設での臨界事故を契機として賠償措置額の引上げを行うなど,諸情勢の変化に対応した改正を行ってきています。


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