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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第6章 研究開発の戦略的重点化
第3節  宇宙・航空分野の研究・開発及び利用の促進
1  社会的要請への対応



(1) 地球観測

 人工衛星を利用した地球観測では,地上からの観測と異なり,広範囲のデータを短時間に集めることができ,長期にわたる観測が可能です。台風や火山活動などの自然界の現象を観測して得られるデータは,気象予報や災害監視などに利用され,安全で安心な社会の構築,国民生活の豊かさと質の向上に大きく貢献しています。また,地球環境問題は,人類全体の生存にかかわる重要な問題であり,気候変動に関する政府間会合など国際的取組への貢献が進められています。

 我が国は,これまで様々な地球観測衛星を打ち上げており,地球観測データの取得,災害監視や資源探査など様々な場面において世界各国で利用されています。

{1}熱帯降雨観測衛星(TRMM)

 地球規模,特に熱帯地域の降雨現象を観測することにより,地球の水循環のメカニズムを解明することを目的として,日米共同プロジェクトであるTRMMを平成9年11月にH−2ロケット6号機によって打ち上げ,これまでに台風の立体構造やエルニーニョ現象などの把握に貢献するなど大きな成果を上げています。

{2}地球観測衛星Aqua

 Aquaは,地球観測衛星Terra,Auraなどと合わせて,地球環境変動の解明に貢献することを目的として米国航空宇宙局(NASA)が開発する地球観測システムの一つで,平成14年5月に米国で打ち上げられました。我が国は,Aquaに搭載する改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR−E)の開発を担当しました。AMSR−Eの観測データは,15年6月から提供開始されており,水蒸気量,降水量,海氷分布などの定量観測を行っています。

{3}環境観測技術衛星(ADEOS−II)「みどりII」

 地球観測プラットフォーム技術衛星(ADEOS)「みどり」による広域観測技術を更に高度化し,全地球的規模の水・エネルギー・炭素循環のメカニズム解明に不可欠な地球科学データを取得することを目的とし,「みどりII」を平成14年12月にH−2Aロケット4号機で打ち上げました。観測データを取得・処理し,校正・検証作業を行っていましたが,15年10月に太陽電池パドルの電力低下が発生し,観測運用を断念することとなりました。

{4}陸域観測技術衛星(ALOS)

 地球資源衛星1号(JERS−1)「ふよう1号」と「みどり」による陸域観測を継承・発展させ,地図作成,地域観測,災害状況把握,資源探査などにおいて有効なデータを提供し,社会に貢献することを目的とし,平成17年度の打上げを目指して開発を進めています。

▲陸域観測技術衛星(ALOS)(資料提供:JAXA)

{5}温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)

 京都議定書に基づく温室効果ガス削減状況の把握のための研究と検証などを目的として,温室効果ガスなどの観測を実施する衛星であり,平成19年度の打上げを目指して開発研究を進めています。

{6}全球降水観測(GPM)計画/2周波降水レーダ(DPR)

 全球規模の降水量を高精度かつ高頻度に観測することを目的として,国際協力によるGPM計画の検討が進められています。GpM計画は,主衛星と8機程度の副衛星群からなり,我が国は,TRMMの開発成果を最大限に活用し,主衛星に搭載予定のDPRについて研究を進めています。


(2) 通信・放送・測位等

 通信・放送などに人工衛星を利用することは,広域性,同報性,耐災害性などの面で多くの利点があります。我が国では,既に民間において,衛星放送をはじめとした通信・放送分野での衛星の利用が進んでおり,国民生活の利便性の向上が図られています。

 文部科学省においては,このような民間での利用を促進するため,民間では対応が困難なリスクの大きい先端的・基盤的技術や将来の宇宙利用を見据えた先導的技術の開発・宇宙実証を行っています。

{1}データ中継技術衛星(DRTS)「こだま」

 地球観測衛星や国際宇宙ステーションにおける我が国の実験棟(JEM,愛称:きぼう)などを用いたデータ中継実験を行うことにより,通信放送技術衛星(COMETS)のデータ中継機能を発展させ,より高度な衛星間通信技術の蓄積を図ることなどを目的として,「こだま」を平成14年9月にH−2Aロケット3号機で打ち上げました。15年2月には「みどりII」との衛星間通信により,広域の地球観測画像データを我が国で直接受信する実験に成功しています。また,17年度に打上げ予定のALOSとの衛星間通信実験の準備も進めています。

{2}技術試験衛星VIII型(ETS−VIII)

 大型衛星バス 技術,大型展開アンテナ技術,移動体衛星通信システム技術,移動体マルチメディア衛星同報通信システム技術,高精度時刻基準装置を用いた測位などにかかわる基盤技術の開発やそれらの実験・実証を行うことを目的とし,平成18年度の打上げを目指して,総務省と連携してETS−VIIIの開発を進めています。

▲技術試験衛星 VIII型(ETS−VIII)(資料提供:JAXA)

{3}超高速インターネット衛星(WINDS)

 超高速インターネット・大容量データ通信を可能とする衛星通信技術の確立と衛星通信を用いた超高速ネットワーク技術の検証を行うとともに,これを利用した新たな利用実験を産学官共同で実施することにより,新たな利用需要を喚起し,我が国におけるIT革命の進展を図ることを目的として,平成19年度の打上げを目指して,総務省と連携してWINDSの開発を進めています。

{4}光衛星間通信実験衛星(OICETS)

 衛星間通信システムに有効な光通信技術について,欧州宇宙機関(ESA)との国際協力により,同機関の先端型データ中継衛星(ARTEMIS)との間で捕捉追尾を中心とした要素技術の軌道上実験を行うことを目的とし,平成17年度の打上げを目指してOICETSの開発を進めています。

{5}準天頂衛星を利用した高精度測位実験システム

 平成20年度の打上げを目指して民間が計画している準天頂衛星システムへの搭載機会を活用し,GPS利用者の利便性を高めるため,関係研究機関と協力して,GPS補完・補強の技術と将来の測位衛星システムの基盤技術の開発・実証を行うことを目的とし,高精度測位実験システムの開発研究を進めています。


*1 衛星バス

衛星の機能を維持するために必要な基本的機器。


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