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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第6章 研究開発の戦略的重点化
第2節  重点4分野の研究開発の推進
4  環境分野の研究開発の重点的推進



(1) 研究開発の推進方策について

 環境分野は,多様な生物種を有する生態系を含む自然環境を保全し,人の健康の維持や生活環境の保全を図るとともに,人類の将来的な生存基盤を維持していくために不可欠な分野です。科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会では,環境分野における科学技術について推進方策を示しており,平成15年5月にはヨハネスブルグ・サミットの開催などの国際的動向を踏まえ,「地球環境科学技術に関する研究開発の推進方策について」(14年6月)について,国際的な連携・協力による全球的な観測の推進などの見直しを行いました。


(2) 環境分野における取組について

{1}地球環境問題解決のための研究

 近年,地球温暖化など地球的規模の環境問題の顕在化により,科学技術を活用してこれらの問題の解決を図っていくことが強く求められています。

 我が国は,平成14年6月に,温室効果ガスの排出量について法的拘束力のある数値目標を盛り込んだ京都議定書を締結しました。また,14年3月に策定された「地球温暖化対策推進大綱」では,革新的な環境・エネルギー技術の開発や観測・監視体制の強化,調査研究において科学技術の役割が明確化されています。

(ア)地球的規模の諸現象の解明に関する研究開発等

 地球規模の諸現象の解明に関する研究開発は,多国間の連携・協力により効果的に実施することが重要です。このため,文部科学省では,地球圏・生物圏国際共同研究計画(IGBP)など国際的な研究計画に積極的に参加し,外国の研究機関などと共同研究を進めています。

 また,気候変動に関する科学的知見を取りまとめ,各国政府に提供する「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」では,平成19年の第4次評価報告書の作成に向けた作業を進めており,我が国は,これまで以上に,地球温暖化にかかわる観測データや予測・影響評価に関する科学的知見を積極的に提供する必要があります。

(i) 地球シミュレータ計画の推進

 平成14年3月から,超高速ベクトル並列計算機システム「地球シミュレータ」が,海洋科学技術センター(平成16年4月より海洋研究開発機構。以下同じ。)において運用されています。高い計算性能から生み出されたシミュレーションの成果が評価され,3年連続「ゴードンベル賞」 (14年11月,15年11月,16年11月)を受賞しました。文部科学省では,今後も,地球規模の現象を正確に把握し,精度の高い地球変動予測を実現することを目指し,安定的かつ効率的な運用を進めます。

2) 現象解明研究の推進

 海洋科学技術センターは「地球フロンティア研究システム」において,気候変動予測,水循環予測,地球温暖化予測などに関する現象解明研究・モデル開発などを進めてきましたが,平成16年7月から「地球環境フロンティア研究センター」として地球環境予測研究を進めています。また,「地球観測フロンティア研究システム」において,研究開発に必要な観測データの収集・解析を行ってきましたが,16年7月から「地球環境観測研究センター」として地球環境観測研究を進めています。また,ハワイ大学の国際太平洋研究センター(IPRC)とアラスカ大学の国際北極圏研究センター(IARC)において,米国との研究協力を実施しています。

 また,文部科学省では,平成14年度から,精度の高い温暖化予測を目指す「温暖化予測『日本モデル』ミッション」と,将来の水資源・水災害の予測を目指す「水循環変動予測ミッション」の二つのミッションからなる「人・自然・地球共生プロジェクト」を実施しています。

 さらに,人間文化研究機構総合地球環境学研究所において地球環境問題の解決に向けた学問の創出のための総合的な研究を行っています。

 このほか,科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業において,「地球変動のメカニズム」や「水の循環系モデリングと利用システム」などに関する研究開発などを推進しています。

(イ)地球的規模の観測研究の推進

 地球的規模の諸現象の解明を図る上で必要な情報を集積するためには,人工衛星による観測や海洋観測等により地球に関する情報を得ることが必要であり,地球観測技術の研究開発が重要です。このため,文部科学省は以下の(i)〜(iv)の研究開発を推進しています。また,「統合地球観測戦略(IGOS)パートナーシップ」に参加し,全世界規模の海洋・水循環観測を推進しているほか,平成15年6月のG8エビアン・サミットを受けて,16年4月に東京で開催された第2回地球観測サミットにおいて今後10年間の地球観測実施計画の枠組みを取りまとめ,17年2月の第3回地球観測サミットにおいて実施計画がまとめられる予定です。

(1) 海洋観測技術

 海洋は,地球的規模の諸現象に大きくかかわっており,その果たす役割の解明が重要な課題となっています。このため,高緯度トライトンブイ(海洋観測ブイ)の実証試験など海洋観測技術の研究開発を推進するとともに,エルニーニョ現象をはじめとする大気・海洋間の相互作用や気候変動への影響解明などのため,北太平洋,インド洋などで海洋地球研究船「みらい」などを用いた観測研究を実施してきました。また,平成15年7月からは,1990年代前半に実施された世界海洋循環実験計画(WOCE)で観測された測線を再観測し,大洋スケールでの貯熱量・溶存物質量の分布や輸送について明らかにし,また,南半球の約500測点において,海面から海底までの水温・塩分・溶存酸素・栄養塩類などについて高精度に測定・分析を行う南半球周航航海「BEAGLE2003」を実施しました。なお,引き続き16年7月から「地球環境観測(写真提供:海洋研究開発機構)研究センター」において,本研究を進めています。

▲高緯度トライトンブイ(海洋観測ブイ)(写真提供:海洋研究開発機構)

 また,全世界の海洋の状況を即時に監視・把握するため,文部科学省は,平成12年度から,国土交通省と共同で,国際協力の下,参加国が海面から水深2,000mまでの水温・塩分の鉛直分布を観測する中層フロート を,全世界で約3,000個展開する高度海洋監視システムの構築(ARGO計画)に参画しています。

(2) 人工衛星による観測に関する技術

 人工衛星による地球観測は,広範囲にわたる様々な情報を繰り返し連続的に収集することを可能とするなど,極めて有効な観測手段であり,現在,特に地球環境問題の解決に向けて,地球観測衛星委員会(CEOS)や国内外の関係機関と協力しつつ,総合的な推進を図っています。

 宇宙航空研究開発機構においては,熱帯降雨観測衛星(TRMM)に搭載されている降雨レーダ(pR)や地球観測衛星(Aqua)に搭載されている改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E)などから降水量や海面水温などのデータを取得しているほか,災害状況把握や地図作製などに貢献する陸域観測技術衛星(ALOS)の開発,温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)の開発研究,全球降水観測計画/二周波降水レーダ(GPM/DPR)の開発研究を,関係機関との協力の下に進めています。

 さらに,人工衛星からのデータの利用促進を図るため,宇宙航空研究開発機構の地球観測利用推進センターなどにおいて,地球観測データを利用した研究や地球観測情報ネット研究開発の戦略的重点化第6章ワークの整備を,関係機関と密接に連携をとりながら推進しています(参照: 第2部第6章第3節1(1) )。

(3) 南極観測

 昭和30年の閣議決定に基づき開始された我が国の南極地域観測事業は,文部科学省に設けられた「南極地域観測統合推進本部」(本部長:文部科学大臣)の下に,関係府省の協力を得て,中核的実施機関である情報・システム研究機構国立極地研究所が中心となって実施しています。平成16年度は,第45次観測隊(越冬隊)と第46次観測隊が,昭和基地を中心に,気象などの定常的な観測や地球規模での環境変動の解明を目的とする各種のプロジェクト観測とモニタリング(継続監視)研究観測を実施しています。

▲南極観測船「しらせ」と昭和基地

(4) 成層圏プラットフォーム(成層圏滞空飛行船)の研究開発

文部科学省は,総務省と連携し,成層圏に観測センサ・無線局などを滞空させ,地球観測,通信・放送などに利用するための成層圏プラットフォーム飛行船技術の研究開発を行っています。宇宙航空研究開発機構及び情報通信研究機構は,平成15年8月には成層圏滞空飛行試験を実施し,飛行船を成層圏高度(目標高度15km)に到達させることに成功しました。また,16年5月から11月までの間で,高度4kmに滞空させる動力付き無人飛行船による定点滞空飛行試験を実施し,飛行制御,運用,追跡・管制技術の実証に成功するとともに,通信放送及び地球観測技術の実証試験に成功しました。

{2}環境対策技術にかかわる研究開発

 我が国における経済社会の持続的な発展のためには,資源の投入,廃棄物などの排出を極小化する生産システムの導入や,生物資源を活用する技術など,環境への負荷ができる限り低減される循環型社会を構築するための研究開発が不可欠です。

 文部科学省では,平成15年度から,都市・地域から排出される廃棄物やバイオマス *1 を無害化・原料化・燃料化するための技術開発や,その技術の実用化と普及のための人体などへの影響・安全性評価,経済社会システムの一環として成立させるための社会システム設計などに関する研究開発を推進しています。

 また,化学物質の環境リスク対策については,試験法・測定法・無害化処理技術の開発・普及などの調査・研究開発を積極的に行っています。


*1 グリッド・コンピューティング

 分散設置された多数のコンピュータや記憶装置などをネットワークに統合的に接続して,あたかも一つのコンピュータのように連携させ,超高速演算処理を可能とするコンピュータシステム。


* 2bps

通信回線などのデータ転送速度の単位。bits per second1Gbps=109bps。


* 「ゴードンベル賞」

高性能計算技術分野において世界で最も権威のある賞。


* 中層フロート

自動的に海中を浮き沈みして水温・塩分濃度を測定・送信する高さ約1mの筒状の計測機器。


*1 バイオマス

生物資源(バイオ)の量(マス)を示すものであるが,ここではエネルギー源や化学・工業原料として利用される生物体の意味を用いており,再生可能な生物由来の有機性資源で化石燃料を除いたもの。


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