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第2部   文教・科学技術施策の動向と展開
第3章 高等教育の多様な発展のために
第4節  高等教育機関の多様な展開
1  国公私立大学の充実



(1) 国公私立大学の整備充実

【国立大学】

 平成16年度4月より法人化された国立大学(国立大学法人の制度の概要については,参照: 第2部第3章第1節2 )においては,法人化のメリットを生かして個性的かつ魅力的な教育研究を展開すべく,教育研究組織の整備についても様々な取組を行いました。

{1}学部の整備充実

 学問の進展や社会ニーズの変化に対応し,鳥取大学では島根大学における教員養成学部との再編・統合により教育地域科学部を地域学部に改組するとともに,岐阜大学では今日の食品産業や医薬品産業などの新しい生物産業の発展に対応するため,旧来の食糧生産を中心とした農学部を応用生物科学部に改組しました。

{2}大学院の整備充実

 学術研究の動向や社会的要請に対応して,先端的・学際的分野などの教育研究の推進や高度な専門的能力を有する人材の育成のため,教育組織と研究組織を分離した組織の設置をはじめ,学部とは独立した組織の設置を行うなど大学院の整備充実を図っています。

 平成16年度においては,高度の専門性を要する職業に従事するために必要とされる専門的知識及びその能力の育成に特化した実践的教育を行う高度専門職業人を養成するため,法科大学院として北海道大学が法学研究科に法律実務専攻を設置するとともに,専門職大学院として東京大学が公共政策教育部に公共政策学専攻を設置するなど,21大学が24専攻を設置しました。

 また,研究科以外の教育研究上の基本組織として,新たに東京農工大学,東京大学,九州大学,徳島大学が大学院に「教育部」と「研究部」を設置するとともに,4大学が情報科学研究科,黒潮圏海洋科学研究科など6研究科を,35大学が世界遺産専攻,原子力エネルギー安全工学専攻,経営意思決定専攻など128専攻を設置しました。

【公私立大学】

 公私立大学においては,平成15年4月より,{1}社会のニーズや学問の発展への柔軟な対応,{2}大学間の競争の促進といった観点から,大学などの新増設・収容定員の増加についての抑制的な取扱いを廃止するとともに,学部・研究科などの設置に届出制を導入しました(参照: 第2部第3章第1節3(1) )。

 近年の公私立大学などの設置状況は図表2-3-17のとおりとなっています。全体の状況を見ると,届出制の導入を背景として平成16年度の開設件数は374件(認可185件,届出189件)となり,平成15年度から大幅に増加しました。また,構造改革特別区域制度の下,初の株式会社立の大学が設置されました。

{1}学部の整備充実(短期大学については,(3)を参照)

 大学の新設は平成15年度と比較しほぼ同数,学部及び学部の学科の設置は2倍となり,特に学科の設置の多くが届出によりなされました。短期大学を4年制大学又はその学部へ移行するものが7校,複数の公立大学を一つの大学として統合するものが1校あります。

 また,社会的な要請に対応して,看護学系・医療系に加え,保育士・栄養士など専門的な職業の人材を養成する学部の整備が進んでいます。平成16年度は,特に薬学部が大学新設2校を含め8校で設置されています。そのほか,政策マネジメント学部,スポーツ健康福祉学科,こども文化学科といった多様な学部・学科が設置されています。

{2}大学院の整備充実

 大学院の新設は平成15年度とほぼ同数でしたが,研究科などの届出制の導入及び専門職大学院制度の創設を受けて,研究科及び専攻の設置が大きく増加しました。また,教育研究上の必要から,学部を置かず大学院のみを置く大学院大学の開設が4校ありました。

 高度専門職業人を養成するための専門職大学院に関係する大学院・研究科の設置は合計57校あり,そのうち48校が法務研究科など法科大学院関係で,そのほかに総合科学技術経営研究科, デザイン経営研究科などがあります。一般の大学院については,コミュニティ振興学研究科,光科学研究科,老年学専攻といった多様な研究科・専攻が設置されています。


* アドミッション・オフィス入試

 詳細な書類審査と時間をかけた丁寧ていねいな面接等を組み合わせることによって,受験生の能力適性や学習に対する意欲,目的等を総合的に判定する選抜方法。


(2) 教育内容・方法の改善・充実

{1}大学を取り巻く社会状況の変化
図表◆2-3-17 近年の公私立大学等の設置状況

 大学,特に学部段階においては,大学進学率の上昇や高等学校教育の多様化,社会人や留学生の受入れ増加などにより,学生も多様化してきています。また,知識基盤社会への移行を背景に大学に対する社会的要請も大きく変化しており,大学は,このような不断の変化を常に的確に受け止め,カリキュラムや教育方法を弾力的かつ機動的に改善し続けていく必要があります。文部科学省においても,様々な手段を通じて,大学における教育内容・方法の改善・充実を促しています。

{2}教育内容の在り方

 大学の教育課程に関する法令上の規定としては,

 ○大学は,その教育上の目的を達成するために必要な授業科目を開設し,体系的に教育課程を編成すること

 ○大学は,教育課程を編成するに当たっては,学部などの専攻についての専門の学芸を教授するとともに,幅広く深い教養と総合的な判断力を培い,豊かな人間性を涵養するよう適切な配慮をすること

の二つの点が大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)において定められています。平成3年までは,大学設置基準において,科目の区分やそれぞれの科目について卒業までに修得すべき単位数などを定めていましたが,これらの規定を廃止し,代わりに上記の二つのみ規定することにとどめました。以降,各大学におけるカリキュラム改革が順次進められ,3年の改正時から現在までの間に,ほぼすべての大学においてカリキュラム改革が実施されており,科目区分や必修・選択の区分の見直しなどが積極的に進められています( 図表2-3-18 )。

図表◆2-3-18 カリキュラム改革の内容(平成14年)

 これらのカリキュラムの改革に当たっては,学部段階では課題探求能力(主体的に変化に対応し,自ら将来の課題を探求し,その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことができる力)を育成することを基本としつつ,教養教育の重視,教養教育と専門教育の有機的連携の確保,専門教育における基礎・基本の重視などの観点に立って,カリキュラムの在り方を検討していくことが重要となります。

{3}教育方法の工夫・改善

学部教育において,ますます多様化する学生を対象に教育を行い,各大学の教育理念・目標を達成するためには,カリキュラム改革という教育内容面での改善のみならず,授業方法の工夫や大学の組織的な教育に対する取組などの工夫も重要です。

(ア)責任ある授業運営等

 我が国の大学教育は,1単位の授業科目を45時間の学修を必要とする内容をもって構成することを標準とする単位制度を基本としています。この1単位という学習量は,教室内における授業の時間のみならず,授業の事前・事後に教室外で学生が行う準備学習・復習も合わせて構成されることが前提となっています。したがって,各大学においては,各授業科目の教育目標や,目標達成のための授業方法,年間の授業計画を,シラバス などを通じてあらかじめ学生に明示するなど計画的な授業設計を行った上で,その授業科目の趣旨を学生に周知・理解させ,教室外での学習も含めた学習上の指導を適切に行うことが求められます。また,これにより,学生の側における主体的な学習への取組を喚起することも期待されます。このような詳細な授業計画を示したシラバスを作成する大学は年々増加しており,現在では,ほとんどの大学でシラバスが作成されています。

 そのほか,単位制度の実質化を目的とした1年間又は1学期に学生が登録できる履修科目の単位数の上限設定,成績評価基準の明示,厳格な成績評価の実施などの取組も行われています。

(イ)ファカルティ・ディベロップメント

 大学教育の充実を図るためには,学生に対して直接教育活動を行う教員が,自らの教授能力を向上するよう不断の努力を重ね,学生の学習意欲を喚起するような授業を展開していくことが重要です。また,個々の教員はもとより,教育組織として,大学全体あるいは学部,学科としての教育理念・目標を明らかにし,それを実現するという観点からカリキュラム編成や個々の授業科目の開設を行い,その上で個々の教員がその趣旨に沿った授業を行うという一連の取組も重要となります。

 このような組織的な教育体制を構築する一環として,全学あるいは学部・学科全体で,その教育理念・目標や教育内容・方法について組織的な研究・研修(ファカルティ・ディベロップメント)を実施する大学が増えつつあります。文部科学省においても,平成11年に大学設置基準を改正して,大学においてファカルティ・ディベロップメントを実施することを努力義務とするなど,大学の積極的な取組を促す方策を講じています( 図表2-3-19 )。

図表◆2-3-19 ファカルティ・ディベロップメントを実施する大学


* シラバス

授業科目名,担当教員名,講義目的,講義概要,毎回の授業内容,成績評価方法,教科書や参考文献,その他履修する上で必要となる要件について記した授業計画のこと。


(3) 短期大学における新たな展開

 短期大学は,学校教育法において4年制大学と目的及び修業年限を異にする大学として位置付けられており,制度創設以来,私立短期大学を中心に量的整備が図られ,特に女子の高等教育の場として大きな役割を果たしてきました。しかしながら,現在,科学技術の高度化,国際化・情報化の進展,生涯学習社会への移行などの社会の変化,18歳人口の減少や女子学生の4年制大学志向の高まりなど,短期大学をめぐる状況の変化を踏まえた対応が求められています。

 短期大学が,今後一層,社会において重要な役割を果たしていくためには,その特色を生かしつつ多様化・個性化を図り,{1}教養教育と実務教育が結合した専門的職業教育,{2}より豊かな社会生活の実現を視野に入れた教養教育,{3}地域社会と密着しながら社会人や高齢者などを含む幅広い年齢層に対応した多様な生涯学習機会の提供など,多様な要請にこたえて教育機能の一層の充実を図ることが重要です。

 このような状況に対する一つの取組として,社会人を含めた地域の多様な需要に,より柔軟に対応していくことを目的とした総合的な学科(地域総合科学科)の設置が進められています(平成16年度現在,14短期大学16学科)。

 地域総合科学科は,学科の分野を特定せず,複数の異なる分野の科目やコースを用意し,柔軟な履修を可能とすることで学生や地域の様々な需要にこたえていくことを目的とした学科であり,短期大学基準協会によって,その特色と教育の質を保証する適格認定が行われています。

 文部科学省では,特色ある大学教育支援プログラムにおいて優れた教育改善の取組への支援を行うなど,各短期大学の改革への積極的な取組を促しています。


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