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第1部   創造的活力に富んだ知識基盤社会を支える高等教育〜高等教育改革の新展開〜
第1章  子どもの心と体の健やかな発達のために
第2節 子どもの健康の保持・増進
1 食育の推進


 近年,食生活を取り巻く社会環境の変化に伴い,偏った栄養摂取,朝食欠食などの子どもの食生活の乱れや肥満傾向の増大などが見られます( 図表1-1-2 ), 序章・図表4 )。

図表◆1-1-2 児童生徒の朝食欠食状況

 成長期にある子どもにとって,健全な食生活は健康な心身をはぐくむために欠かせないものであると同時に,望ましい食習慣を形成するに当たって大きな影響を及ぼすものであり,極めて重要です。

 このため,栄養や食事のとり方,食品の品質や安全性について正しい知識・情報に基づいて自ら判断し,食生活を管理していく能力を子どもたちに身に付けさせることが必要となっています。

 食に関する問題は,家庭が中心となって担うものですが,社会環境の変化や,食品流通の変化等を背景として,食生活の在り方も大きく変化しつつあります。

 このような状況を踏まえ,平成17年4月から開始される栄養教諭制度を中心として,家庭,地域と連携しつつ,学校における食育を推進していきます。


(1) 栄養教諭制度の創設

 学校における食に関する指導は,これまでに,給食の時間,各教科,学級活動などで学校栄養職員を活用しつつ行われてきましたが,明確な指導体制の整備が十分ではなく,地域や学校ごとに取組はまちまちでした。しかし,近年の子どもの食を取り巻く環境の変化に対応して,食に関する指導を充実するために,学校において効果的な食に関する指導体制を整備する必要性が高まってきました。このため,平成16年1月の中央教育審議会答申「食に関する指導体制の整備について」を受けて,第159回通常国会に栄養教諭制度の創設のための法案(「学校教育法等の一部を改正する法律案」)が提出され,16年5月14日に全会一致で可決・成立し,同月21日に公布されました。これにより17年4月から栄養教諭制度が開始されます。

{1}栄養教諭の職務

 栄養教諭は,教育に関する資質と栄養に関する専門性を併せ持つ者として,食に関する指導と学校給食の管理を一体として行うことを職務としています( 図表1-1-3 )。

(ア)児童生徒等への個別的な相談指導

 生活習慣病を予防したり,食物アレルギー等の個々の児童生徒が抱える問題に適切に対応するために,児童生徒の食生活に関して,専門性を生かしたきめ細かな指導・助言を行います。


 これらの指導では,栄養教諭が必要に応じて,家庭,学級担任,養護教諭,学校医や学校歯科医,他の栄養の専門家,主治医や専門医などと適切に連携して対応していきます。

(イ)児童生徒への教科・特別活動等における教育指導

 食に関する指導は,個別指導以外にも給食の時間や特別活動,各教科,道徳,総合的な学習の時間といった学校教育全体の中で広く行われるものであり,その中で栄養教諭はその専門性を生かして積極的に指導に参画していくことが期待されています。特に給食の時間は,学校給食を教材として最大限に活用した指導を行うことができるだけでなく,食事の準備から後片付けまでを通じて,食事のマナーなどを学ぶ場としても活用できるなど,食に関する指導を行う上での中核的な役割を果たすものです。

(ウ)食に関する指導の連携・調整

 上で述べたように,学校における食に関する指導は,各教科等に幅広くかかわるものです。このため,効果的な指導を行うには,関係教職員が十分連携・協力して取り組むことが必要です。その中で,栄養教諭は,食の指導に係る全体的な指導計画の策定において中心的役割を果たすなど,教職員間の連携・調整の要としての役割を果たすことが期待されています。また,食に関する指導は,広く家庭や地域との連携を図ることが重要であり,給食だより等を通じた啓発活動や,食物アレルギーに対応した献立作成などについての保護者に対する助言,親子料理教室等の開催,地域社会や関係機関が主催する食に関する行事への参画などにおいて,栄養教諭がその専門性を発揮し,積極的に取り組んでいくことも大切です。このように,栄養教諭は,食に関する指導を効果的に進めていくために,学校の内外を通じて,教職員や保護者,関係機関等の連携を密接に図る,いわば,食に関する教育のコーディネーターとしての役割を果たすことになります。

 また,上記の食に関する指導とともに,栄養管理や衛生管理,検食,物資管理等の学校給食の管理も主要な職務の柱となります。

 このように,食に関する指導と学校給食の管理を主要な職務として担うことにより,例えば,栄養教諭が,体験学習等で栽培した食材や地域の食材を学校給食に用いることで,子どもに生産活動と日々の食事のつながりを実感させるなど,教育上の高い相乗効果をもたらすことが期待されています。

図表◆1-1-3 食に関する指導の充実と栄養教諭に期待される役割

{2}栄養教諭の養成

 上記のとおり,栄養教諭の職務においては,栄養に関する専門性と教職に関する専門性が求められます。このため,それらの資質能力を制度的に担保するために,栄養教諭免許状が創設され,これを所持している者が栄養教諭として配置されることとなっています。

 栄養教諭の免許状の種類は,専修免許状,一種免許状,二種免許状の3種類とされ,免許状を取得するために,教諭や養護教諭と同様に大学等で必要な科目・単位を修得することが必要となっています。

 標準的な免許状である一種免許状の取得のためには,学士の学位及び管理栄養士又は管理栄養士養成課程修了(栄養士免許は必要)を基礎資格としています。その上で,文部科学大臣の認定を受けた大学の課程等において,「栄養に係る教育に関する科目」4単位,「教職に関する科目」(教職の意義等に関する科目,教育の基礎理論に関する科目,教育課程に関する科目,生徒指導及び教育相談に関する科目,総合演習,栄養教育実習)18単位を修得することが必要となっています。

 なお,現職の学校栄養職員が栄養教諭免許状を取得する場合には,学校栄養職員としての一定の在職年数と単位修得により,都道府県教育委員会が行う教育職員検定を経て栄養教諭免許状を取得できる措置が設けられています。

{3}栄養教諭の配置

 栄養教諭の配置は各地方公共団体等の判断によることとされており,公立小中学校等の栄養教諭については,平成17年4月の制度の開始に伴い,各都道府県教育委員会が,地域の状況を踏まえつつ,栄養教諭免許状を取得した者の中から栄養教諭として採用し,配置していくことになります。


(2) 学校給食の充実

{1}学校給食の現状

 学校給食は,栄養のバランスのとれた食事を提供することにより,正しい食習慣の形成に寄与しています。また,食に関する指導の場,教職員と児童生徒のコミュニケーションや児童生徒間の好ましい人間関係の育成の場として,大きな教育的意義を有しています。平成15年5月現在で,全国で約1,043万人の児童生徒などが学校給食を受けています( 図表1-1-4 )。

図表◆1-1-4 学校給食実施率(幼児・児童・生徒数比)の数

{2}食事内容・環境の改善

 各学校では,近年,学校給食の多様化が図られており,例えば,学校給食の食材として地域の産物を活用したり,地域の郷土料理を献立に活用したりする取組が進められています。このような学校給食における地域の産物の活用は,児童生徒に地域の産業や文化に関心を持たせるなどの教育的意義があり,文部科学省では,教師用の学校給食指導の手引きや児童生徒用の食生活学習教材などにおいて,地域の産物の活用について推進を図っています。また,学校食堂の整備など,食事環境の改善も進めています。

 米飯給食についても,日本人の伝統的食生活の根幹である米飯の正しい食習慣を児童生徒に身に付けさせることができるなどの教育的意義を踏まえ,文部科学省では,その普及・定着を図っており(平成15年度週平均2.9回),学校給食における食事内容の多様化にも寄与しています。また,文部科学省では,厚生労働省の「日本人の栄養所要量―食事摂取基準―」の趣旨を踏まえつつ,近年の家庭における食習慣の変化などを踏まえ,15年5月に児童生徒等の一人1日当たりの平均栄養所要量の基準の改定を行い,学校給食における食事内容の充実などを図っています。

{3}衛生管理体制の充実

 平成9年以降,学校給食を原因とする腸管出血性大腸菌O157による食中毒は発生していませんが,依然として食中毒の発生は続いており,衛生管理の徹底が求められています。

 文部科学省では,施設設備や調理過程などの指導を行うとともに,床を乾いた状態で使用して高湿度による雑菌などの発生を抑制する調理システム(ドライシステム)の導入など,施設面の改善充実を図っています。また,平成15年3月には,最近の学校給食を取り巻く状況などを踏まえ,食品の適切な温度管理や学校給食従事者の健康管理の徹底が図られるよう「学校給食衛生管理の基準」の改訂を行い,学校給食における衛生管理の一層の改善充実を図っています。さらに,学校栄養職員などに対する研修,各種会議を行うなど,衛生管理の徹底に努めています。


(3) 食育の推進のための各種の取組

 文部科学省では,食育の推進のためのシンポジウムを実施しているほか,平成13年度から全国の小学校1年生,小学校5年生,中学校1年生を対象として食生活学習教材を配布しています。さらに,16年度においては食に関する指導啓発パンフレットの作成や,学校を中心とした食育推進モデル事業など,様々な取組を通じて食育の推進を図っています。


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